狙われた復帰直後、ストーカー怖くてスナック辞める…大阪女性刺殺
大阪市平野区の路上で2日にスナック従業員・井村由美さん(38)=大阪府松原市=が刺殺された事件で、客からのストーカー行為に悩んだ井村さんが勤務先を一時辞めていたことが3日、分かった。事件は店に復帰した直後に起きた。大阪府警は、殺人容疑で逮捕した客の無職・松本隆容疑者(57)を送検。2本の包丁を用意し、計画的に待ち伏せするなど強い殺意を持っていたとみて調べている。
勤め先を辞める決断を迫られるほど、井村さんは松本容疑者のストーカー行為に恐怖を感じていた。知人男性(39)によると、井村さんは今年2月下旬~3月頃に「客のストーカーがすごくて、店を辞めたくないけど辞める」と話していた。その後、別の飲食店で働き始めたが、4月下旬頃に元の店に復帰。井村さんが襲われたのは直後の5月2日午前2時20分頃だった。
大阪府警によると、松本容疑者は事件前日の1日夕、平野区内のレンタカー店から車を借りて現場を訪れたとみられる。この車からは、井村さんの腹部に刺さっていた包丁とは別に、血の付いた包丁が見つかっていたことが捜査関係者への取材で判明。府警は松本容疑者が2本の包丁を用意し、強い殺意を抱いて井村さんが店からの帰宅途中、計画的に待ち伏せした疑いがあるとみている。
井村さんは松本容疑者から「殺される前に警察に電話してや。頭を冷やす時間を最後にくれや」などと執拗(しつよう)にメールがあり、3月2日にストーカー被害を府警に相談した。松原署は危険度を3段階のうち2番目と判定。口頭注意したが「たばこを始めた。(井村さんと)同じたばこやで」「このメールを警察に見せて(自分を)逮捕してもらえ」などとメールがやまなかったため、同12日に文書で警告。その時、松本容疑者は「もう関わる気はない」と話したという。
松本容疑者は井村さんとみられる女性と現場近くの居酒屋をたびたび訪れたが、3月中旬、その店に顔を出し、「近づいてはいけない。電話もしてはいけないと言われた」と落ち込んでいたという。4月2日、府警が井村さんに現状を確認すると「もう何も連絡はない」などと回答していた。
府警は、司法解剖の結果、井村さんの死因は左脇腹を包丁で刺されたことによる腹腔(ふくくう)内出血だったと明らかにした。腹の別の場所に刃渡り21センチの包丁が刺さった状態で見つかり、柄の部分しか見えないほどだった。首と頭にも大きな切り傷があり、抵抗した際にできる防御創を含め、十数か所の傷があった。