聖母・聖美物語 #21【愛の母子篇〜母の決意】 2014.04.29

(聖美)私にあなたの子宮を貸してちょうだい。
私の代わりにあなたに産んでもらいたいの。
(聖美)陽のためのドナーベビーを。
(繁郎)どうかしてる。
正気の沙汰じゃない。
(愛美)ずっと前姉さんがおなかが大きかったときに私も一緒にお能の歌を聴いたことがありましたよね?
(波津子)謡曲ってこと?
(愛美)あれもう1回聴いてみたいんです。
・「左右へばっとぞ退いたりけるその隙に」・「宝珠を盗み取って逃げんとすれば」・「守護神追っかく」・「かねてたくみしことなれば」・「持ちたる剣を取り直し」・「乳の下をかき切り玉を押し込め」・「剣を捨ててぞ伏したりける」
(波津子)ああ。
すごい迫力。
ドキドキしちゃいました。
(愛美)ねえ。
さっきの何ですか?
(愛美)こうやって切ってたでしょ?おっぱいの下んとこ。
(波津子)お乳の下をかき切ってそこに奪い返した宝物の玉を隠すんです。
海の中は死のにおいが立ち込めて恐れた龍宮の守護神たちはもう追い掛けてこない。
お母さんは腰につけた縄を引いて合図をし海の上へ引き上げてもらうんです。
それで死んじゃったんだ?わが子の出世と引き換えに命を落とすってそういうことだったんだ。
あなたは誰よりもよく分かってるはずじゃない。
愛するわが子のために命を懸けるお母さんの気持ち。
いざとなったらどんな苦労もいとわない。
どんな危険を冒してでも愛するわが子を守る。
それが母親なのよ。
(弘明)《あんたの姉さんは並大抵の女じゃない》《よっぽど覚悟してかからないと太刀打ちできないぞ》お母さま。
これですよね?
(波津子)うん?どこですか?今やってたの。
(波津子)もう10年もやってるんだから。
すいません。
えーとねこれはね。
あっ。
ここよ。
あっ。
(波津子)ねっ。
ここ。
さっきほら剣をこうやって持って…。

(愛美)今夜はお鍋?いいねぇ。
いかにも家族の晩ご飯って感じがして。
みんなで一つの鍋を突っついて家族を一つにまとめる。
これで私も峻も名実共に柳沢家のファミリーってわけだ。
言ってたじゃない。
一緒に大きなファミリーつくろうって。
《2人してみんなのママになってファミリーをつくる》《生まれた赤ちゃんと陽と峻君と繁郎さんとお母さま》《私たちが味わったことのない大きくてあったかい家庭をね》いいよ。
なってあげる。
家族の一員に。
っていうか私がつくってあげる。
姉さんの理想のファミリーを。
それって…。
産んであげる。
姉さんの代わりに赤ちゃんを。
ホントに?私と繁郎兄さんの遺伝子を受け継いだカワイイカワイイ赤ちゃんをね。
ホントなのね?ホントに産んでくれるのね?かわいそうで見ていられなくなっちゃった。
赤ちゃんが産めなくてあがいてる姉さんの姿。
そこにいくと私はまだ若いし健康だし。
もう一人産むぐらい楽勝だもん。
そうと決まったらもう楽しみでしょうがない。
出産って女にとって人生で一番の感動だもん。
あの猛烈な痛みと赤ちゃんに初めて会ったときの何かこうあふれてくるような何とも言えない幸せな気持ち。
姉さんの知らないあの興奮をまた味わえるなんて。
だって姉さん人におなか切ってもらって陽産んでんだもんね。
だから私が教えてあげる。
本当の産みの苦しみがどんなものなのか。
痛みに耐えて力を振り絞ってその苦しみを乗り越えてこそ初めて本当の母親になれるんだってこと。
母親の価値は産み方で決まるんじゃないわ。
不愉快だって言ってるの。
そういう偏見は。
産んでもらいたいんでしょ?私に赤ちゃんを。
だったらそんなに上から物を言わない方がいいんじゃない?まあせいぜい頑張ってお兄さんを説得することね。
お兄さんがうんって言わなきゃ何にも始まんないんだから。
何だったら手伝ってあげよっか?手伝う?お鍋の準備。
どいてどいて。
おネギでも切ろっかな。
はい。
(愛美)ああー。
このだし最高。
いくらでも食べれちゃう。
いいな。
家族でお鍋を囲むのって。
峻もこんなの初めてだよね?
(波津子)陽が言ってたっけ。
僕の椅子今誰が座ってご飯食べてるんだろうって。
家族の食卓なんて言えないわね。
あの子がいないんじゃ。
お兄さん。
私が取ってあげます。
やめて!人が箸を突っ込んだものなんか食べれないよ。
(愛美)何で?じか箸禁止ようちは。
そこに取り箸があるでしょ。
(愛美)そんなこと言ってたらお鍋やってたってちっとも楽しくないじゃない。
他人じゃないんだから細かいことは気にしない気にしない。
(峻)母さん。
待ってあなた。
何か他の…。
もういい。
(峻)伯父さん。
ごめんなさい。
謝らなくていいのよ峻ちゃん。
お兄さんちょっと神経質過ぎるんじゃありませんか?そういうあなたががさつ過ぎるんです。
ハァー。
あなた。
うん?考えてくれた?あの話。
あなたの気持ちだって分からないわけじゃない。
ただ大事なのは今一番私たちが何を優先すべきかってことだと思うの。
逃げないで。
ちゃんと陽の命と向き合って。
ふん。
向き合ってないっていうのか?目をそらしてるっていうのか?この俺が。
陽の命から。
命は天から授かったものだ。
たとえ親だって好き勝手に操作するわけにはいかないんだよ。
神様は授けてくれなかったじゃない。
だから科学の力を借りたんじゃない。
結局はそこに行き着くんだな。
神様を持ち出したら陽を否定することになる。
代理母じゃなければいいのよね?問題のないやり方ができるなら陽を助ける道をここで閉ざしてしまう必要はないわよね?そんな方法あるわけない。
怖くなったよ君って女が。

(ドアの開く音)うん?ああっ!あっ。
あっ。
ごごご…ごめん。
ちょちょ…。
ちょっと顔洗おうと思って。
(愛美)あっ。
びっくりした。
もうみんな寝てるとばっかり。
ホントにごめんね。

(愛美)お兄さん。
こっちこそさっきはがさつなことしてごめんなさい。
はしゃいじゃったんです。
家族の一員として扱ってもらえるのがうれしくて。
でもやっぱり家にはその家なりのルールってものがあるんですよね。
これからは気を付けます。
兄さん?忍法かげろうの術。
フッ。
案外カワイイじゃん。
危ねえ。
ハァハァ…。
ああっ。
《パパは今お前のためにワインを集めてるんだ》《何十本もあるからね》《お前の誕生日が来るたびに毎年1本ずつ開けて30歳になっても50歳になっても80歳になってもまだなくならない》《お前が元気に生きていることをずっとずっとみんなで乾杯して祝い続けるんだ》陽。
《考えてくれた?あの話》《あっ》あっ。
ハァー。
肝機能障害?
(諏訪)重度ではありませんが少し黄疸が。
抗がん剤の副作用です。
貧血の症状が進んでくるとどうしても副作用が出やすくなる。
(諏訪)心臓や腎臓も要注意です。
貧血そんなひどいんですか?
(百合子)最近ではヘモグロビンの数値が10を切ることも。
輸血はじゅうぶんにできてるんですか?
(諏訪)ええ。
それはもちろん。
もっとどんどん新しい血を。
あっ。
そうだ。
私の血を使っていただけません?
(百合子)奥さまの?
(諏訪)そこまでしていただく必要は。
今はもう輸血を家族に頼る時代じゃありませんから。
(百合子)昔は大変だったんですけどね。
家族や知り合いの中から輸血ドナーを探すのが。
あっ。
そういうことじゃなく。
母親の血をあの子の体に入れてあげたいんです。
おなかの中であの子を育てたお母さんの血だもの。
何か特別な効果があるかもしれない。
陽だってきっとうれしいはずよ。
今ママの血が陽の体に入ってるんだよって言われたら。
何かせずにはいられないんです。
陽のためにどんなことでもしてあげたいんです。
お願いします。
(百合子)気分は悪くないですか?ええ。
あなたも大丈夫ね?
(百合子)ではしばらくこのままお待ちください。
(愛美)何で私までこんな目に?あなたは血液型もHLA型も私と同じなんだもの。
陽にとってはママの血に極めて近い純度の高い血液ってことになるわ。
使えるもんは何でも使う。
姉さんのそばにいたら骨までしゃぶり尽くされちゃう。
あなたは陽のもう一人の母親になるのよ。
それを忘れないで。
でうまくいってるの?お兄さんの説得工作は。
話したんでしょ?私の卵子使うってこと。
話してないの?そう簡単にはいかないわ。
だけど姉さん。
代理母出産じゃなければ大丈夫だって。
気を付けて。
声が大きい。
だって自信満々で言ってたじゃない。
かげろうくんには文句は言わせないって。
もうすぐ来ちゃうよ。
今度の排卵日。
これ逃したらひとつき無駄にすることになるんだからね。
分かってる。
あったかいでしょ陽。
ママの血が流れ込んであなたの血と混じり合って今ゆっくりと体の中を巡ってる。
ねっ。
ママの血はとってもあったかいでしょ?もう少し我慢して待っていてね。
きっと取って置きの素晴らしいプレゼントを用意してあげるから。

(弘明)プレゼントの時期ぐんと早める方法がありますよ。
弘明さん。
何のこと?時期を早めるって。
臍帯血?何ですか?その臍帯血って。
母親と胎児をおなかの中で結んでいる臍帯。
つまりへその緒と胎盤の中に含まれている血液のことです。
へその緒と胎盤。
この血液の中に造血幹細胞が豊富に含まれている。
骨髄や末梢血幹細胞と同じように血液細胞をつくりだすもとになるものです。
この臍帯血の移植が最近ようやく日本でも認可された。
白血病患者にとっては大変な朗報といってもいい。
移植できるの?陽にもその臍帯血を。
しかも臍帯血の場合HLAが完全に一致しなくてもいいという利点がある。
どんな形であれ愛美さんが赤ん坊を産めばまず確実に移植可能です。
しかも生まれてすぐに処置ができますからね。
骨髄移植のようにドナーベビーの成長を待つ必要もない。
生まれてすぐに?愛美さんを実母にするそうですね。
聞いたのね愛美から。
実の妹に夫の子供を産ませようだなんて考えようによっては代理母出産よりも衝撃的。
大胆な人だ。
より確実な方法をとることにした。
それだけのことよ。
生まれてくる子は愛の結晶ではなく新たな役目を担った運命の子。
倫理だ神様だって話なら聞く耳は持ちません。
私にとっては陽こそが神様なんだから。
俺はいつだって姉さんの味方です。
外見は穏やかで優しいのに何をしでかすか分からない危うさと怪しさをその身に秘めている。
そこを気に入ってるんです。
確かにあなたは私の最大の理解者かもしれないわ。
最後の手段。
愛美さんにそう言ったそうですね。
あなたの考えたそのとんでもない最後の手段が陽の命を救う。
人の運命をその手で操る神はあなただ。
いや。
陽が柳沢家の小さな神様ならあなたは神の母。
聖母ということになりますね。
うん?何やってんだここで。
(愛美)ああお兄さん。
おいおいおいおい。
ロマネコンティじゃないか。
もう。
よりによって秘蔵中の秘蔵の一本を。
今ね補給してたの。
赤いの飲んで。
補給?さっきね血をいっぱい抜かれちゃったから。
これ飲んだら血のもとになりそうでしょ?何で君の血を?姉さんに無理やり採血させられた。
陽にいい血を輸血してやるんだって。
あんたの息子のためだからね。
ワインの1本や2本開けたところで文句を言われる筋合いはないよね。
さあ出てってくれ。
ここは僕だけの城なんだ。
この部屋の清浄な空気をかき乱さないでくれよ。
ちょっと。
だったらもっと頑丈な鍵を掛けとけばいいじゃない。
ここには僕以外誰も入らないんだ。
暗黙の了解になってるんです。
必要だと思うな。
頑丈な鍵。
うん?はっ。
こんなの見つけちゃった。
返して。
誰?これ。
返しなさい。
お兄さんが撮ったの?そんなことどうだっていいんだ。
返せ。
返すんだ。
返しなさいもう!はっ。
駄目駄目駄目。
駄目。
駄目…。
差し向かいでワインで乾杯。
いいムードじゃん。
当ててみようか?この人が兄さんにワインと女の味を教えてくれた。
さしずめそんなところじゃない?図星だった?そんなんじゃないよ。
僕には手の届かない人だったから。
ふーん。
じゃあ憧れの人か。
ねえ兄さん。
この人のこと姉さんは知ってるの?本当に大切な思い出はそう簡単には手放さない。
それだけ大切だったってことなのね。
この人のこと。
フゥーッ。
ねえ。
飲まない?せっかく開けたんだもん。
いいワイン。
(峻)母さん。
(峻)母さん。
(愛美・繁郎)ああ…。
(愛美)ねえ。
覚えてる?私ここで繁郎さんにひっどいこと言ったんだよね。
うん?
(愛美)《峻。
こっちに来な》《こんなのと一緒にいたらうじ虫がうつっちゃう》《うじ虫?》《がきのころからずっとおふくろさんに守られてきたんでしょ?》《一人で手に負えないって分かったら泣いてママって逃げ出して》・「うじ虫毛虫」・「はさんで捨てろ」って。
ハハハ…。
世の中こんな恐ろしい女がいるのかってもう心底おぞけふるっちゃった。
ヘヘヘ…。
でも私繁郎さんは単なる弱虫じゃないと思うな。
ぱっと見常識だけのつまんない男に見えるけどきっとそれも違う。
フッ。
褒められてるんだかけなされてるんだか。
本当はすごく器が大きくてたくましい。
何せあの姉さんを嫁にしてるぐらいなんだから。
私繁郎さんの子だったら産んでもいいな。
産みたくなっちゃった。
あなたの赤ちゃん。

(峻)伯父さんいるの?
(峻)母さん?2014/04/29(火) 13:30〜14:00
関西テレビ1
聖母・聖美物語 #21[字][デ]【愛の母子篇〜母の決意】

白血病の息子のため、聖美(東風万智子)は妹の愛美(三輪ひとみ)に代理母となり骨髄移植ができる子どもを産んで欲しいと訴える。結果を急ぐ聖美は驚くべき方法を提案し…

詳細情報
番組内容
 波津子(丘みつ子)は、愛美(三輪ひとみ)に請われ、母の強さを題材にした能を舞う。自分の命を犠牲にしても子供を守ろうとする母の姿に自分を重ねた愛美は、聖美(東風万智子)に代理母出産を引き受けると告げる。感謝する聖美に愛美は、「出産の本当の喜びを教えてあげる」と挑発的な発言をするのだった。
 聖美は繁郎(原田龍二)に、愛美の出産を認めるよう再度迫る。しかし、繁郎は話し合いを拒絶。
番組内容2
さらに陽(平林智志)の容態が悪化し、焦る聖美に弘明(金子昇)から朗報が舞い込む。弘明の話を聞いた聖美は何としても愛美に子供を産んでもらわなくては、という思いを新たにする。
 代理母になると決めた途端、愛美は繁郎に興味を抱くように。繁郎の“城”であるワインセラーで繁郎が来るのを待ち伏せして…。
出演者
柳沢聖美:東風万智子
森尾愛美:三輪ひとみ
柳沢繁郎:原田龍二
柳沢弘明:金子昇
柳沢波津子:丘みつ子
星川真輔:風間トオル ほか
スタッフ
企画:横田誠(東海テレビ)
原作・脚本:いずみ玲演
演出:吉田使憲
プロデュース:西本淳一(東海テレビ)
中頭千廣(TSP)
神戸將光(TSP)
齋藤頼照(TSP)
音楽:辻陽
主題歌:「炎の花」ハルカ ハミングバード(ユニバーサル ミュージック)
制作著作:TSP
制作:東海テレビ
ご案内
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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