(権藤克利)こちらです。
(土門薫)被害者はこの店の店主金山修49歳。
配達に来た出入りの業者によって発見された。
鍵は開いていたそうだ。
(榊マリコ)角膜は少し混濁。
全身に軽度の硬直が始まっている。
死後5時間から7時間ってところね。
死亡推定時刻は午前9時から11時頃ですね。
白昼堂々の犯行か。
(乾健児)指紋は付いてませんね。
血痕かしら?
(吉崎泰乃)他は結構指紋残ってますね。
ん?この辺り一帯だけ掃除した痕跡がある。
証拠隠滅を図ったという事か?でもどうしてこの辺りだけ?
(風丘早月)あら?ここに何か付いてる。
現場からも同じような粉が採取されています。
では解剖始めます。
ん?これなんだろ。
こちらも鑑定してみます。
(早月)被害者の胸に刺さっていた凶器は確か片刃だったわよね?はい。
見てこの刺創。
両刃で出来たもの。
本当ですね。
心臓部分に達している刺創を見る限り被害者は両刃の刃物で即死してる。
つまり犯人は既に死んでいる人間からわざわざ凶器を抜いて差し替えた。
そうなるかな。
なんのためにそんな事…。
傷口の形状から算出した結果被害者を殺害した凶器は刃長13センチ以上元幅2.5センチ以内の両刃の短刀だと思われます。
被害者の体に刺さってた短刀とは一致しませんでした。
(宇佐見裕也)その傷口から酸化鉄が検出されてます。
本物の凶器には錆があったのかもしれませんね。
ああそれと被害者の衣服に付着していたのはサクラの木くずでした。
(日野和正)サクラの木くず…。
現場から採取した繊維片は綿100パーセントの白い素材。
付着していたのはやはり血痕でした。
被害者の血痕とは一致しなかった。
じゃあ犯人の?その可能性は高いと思います。
現場での同一の血痕はなかったのでケガは大したものではないと思われます。
その他にその繊維片からゼラチンの成分も検出されました。
(日野)現場からも同じ成分が検出されているね。
(宇佐見)もしかしてそれニカワじゃないですか?ニカワ?はい。
ニカワはゼラチンの粗製品なので数値から見ても間違いないと思います。
戦前は接着剤として多く使用されていたので骨董品店から検出されても不思議じゃありません。
(日野)泰乃君指紋の結果は?これからAFISで照合します。
よろしく。
はい。
えー被害者の爪から採取されたのはシベリアというオリエンタル系のユリの花粉である事がわかった。
現場から採取されたオレンジ色の粉も同種の花粉である事がわかった。
でも現場にユリはありませんでしたよね?ねえ。
(早月)前科者リストから3名指紋適合者が出ました。
3名も?はい。
でもそのうち2名は再犯で逮捕されて現在服役中です。
残りの1人がこの男です。
(日野)磯村康男窃盗常習者か…。
磯村康男は片岡匠栄という仏像修復師のもとで働いている事がわかった。
仏像修復師。
木もニカワも使用するわね…。
ああこれからその仏像修復師の工房に行ってくる。
私も行くわ。
この辺りのはずなんだが…。
3の5…。
ここだな。
失礼します。
片岡さんいらっしゃいますか?
(磯村康男)あっ…。
(片岡匠栄)台座の周り掃除しとけ。
車回してくる。
(磯村)はい。
磯村康男さんですね?それで…何か?金山骨董店ご存じですよね?
(磯村)骨董品を見に立ち寄った事が…。
店主の金山修さんが昨日何者かに殺害されました。
失礼ですが昨日の午前9時から11時頃あなたはどちらにいらっしゃいましたか?工房に…。
それを証明出来る人は?いえ1人で作業していたので。
先ほどの方は…。
師匠の片岡匠栄です。
科学捜査研究所の榊と申します。
いくつか伺いたいのですが仏像修復にニカワは使用されますか?ええ。
でも自分は技術が未熟なのでニカワはまだ使用させてもらえませんが。
あちらの台座の仏像は…。
こちらに。
お預かりして修復するために…。
こちらの仏像はなんの木で作られたものですか?
(磯村)ヒノキです。
サクラの木で作られた仏像は?サクラですか?さあ…。
そちらの手袋ちょっと見せて頂けますか?これですか?ええ。
作業で使用されるものですか?ああ…普段はあまり使用する事はありませんが。
鑑定のためお借り出来ませんか?あ…はい。
こちらも鑑定のため…。
これは…駄目です。
これは一見ただのホコリに見えるかもしれませんが仏像修復に必要な大切なものなんです。
このホコリがですか?はい。
この中に仏像の破材が混ざっている可能性があるので全て持ち帰らなければならないんです。
それに最後の仕上げに必要なものなので。
最後の仕上げ?修復箇所を古い部材となじませるのに必要なんです。
わかりました。
ではこちらの手袋だけお預かりさせて頂きます。
あの人…。
(携帯電話)どうした?そうか…盗難届との照合を頼む。
何かあったの?ガイシャの金山修だが裏では盗品の売買も行ってたようだ。
だから前科者リストに3人も…。
じゃあ消えた本物の凶器は…。
盗品の可能性もあるな。
(宇佐見)ニカワの成分一致しました。
土門さん現場から採取した繊維片磯村さんと血液型が一致したわ。
手袋も同種のものだった。
その手袋から現場から採取したニカワの成分と同一のものも検出された。
ちょっと待ってください。
何かの間違いです。
どうして磯村を連れて行かなければならないんですか?それは取り調べで明らかにしますので。
ひとつ確認をさせて頂きたいんですが彼が金山骨董店に行ってる事ご存じでしたか?え?店内から本人の指紋が見つかっています。
また後日伺います。
現場から採取した繊維片がお前の手袋と一致したぞ。
同様のニカワの成分も検出された。
事件当日12時頃金山骨董店から出て行くお前を見たという目撃証言もあがっている。
お前が金山を殺したんだろう?ん?盗品を金山の店に流してたんじゃないのか?その事で金山ともめた。
だから殺した。
どうなんだよ!?正直に答えろ!なあ金山を殺害した凶器はどこにやった?どこに…?おいとぼけんな。
お前が最初に金山を刺した凶器だよ。
ニカワありました!戻ってすぐに鑑定しましょう。
(一同)はい!押収されたニカワの成分は現場のものと一致しました。
それと一緒にあった木材はケヤキでした。
サクラじゃない…。
(泰乃)採取した微物からはサクラの木やユリに繋がるものは出てきませんでした。
両刃に該当する凶器も見つかりませんでしたね。
繊維片に付着していた血痕は血液型は同じだったけど磯村さんのDNAとは一致しなかった。
じゃあ磯村さんは犯人じゃない。
でも現場の指紋。
あとニカワの成分は一致してます。
(日野)うーん…。
失礼します。
随分細かい作業なんですね。
経年変化による細かい傷みや虫食いの穴にひたすら地味に戦いを挑み続ける。
それが仏像修復にとってはとても大切な仕事なんです。
仏像を次の時代に残していけるかどうかは人の思いの連鎖が繋がっていくかどうかにかかっていますから。
思いの連鎖…。
磯村康男さんの事で少しお話を伺えますか?あいつは殺してません。
ですが現場から磯村さんに繋がるものが…。
指紋なんて店を訪ねた事があれば誰でも付く。
それだけではありません。
何が出たっていうんですか?磯村さんが使用されている手袋と同様の繊維片とニカワが。
ニカワ?そんなはずはない。
磯村にニカワは使用させていない。
でも磯村さんのアパートからニカワが見つかったんです。
え?磯村さんご自身もおっしゃってました。
自分は技術が未熟だからまだニカワは使用させてもらえないのだと。
どうしてそんな嘘をつかれたのでしょう?ニカワは木に優しくて接着力も強く乾燥に時間もかからないが熟練の修復師でもその扱いが難しいのでね。
もうひとつだけ伺ってもいいですか?サクラの木で作られた仏像を修復された事はありますか?ありません。
もうよろしいですか?仕事がありますので。
(乾)おはようございます。
(泰乃)おはようございます。
片岡さんが出頭してきた?金山が仏像を闇骨董市に流していると知人から聞いて…。
(金山)こっちは商売でやってるんだ。
盗品だろうがなんだろうがお前には関係ない。
帰れ!とっとと帰れ!カッとなって…。
気づいた時には店にあった刃物で刺していました。
店にあった刃物?はい。
それは差し替えた凶器の事か?どうしてわざわざ凶器を差し替えた?捜査を攪乱するために。
じゃあ本物の凶器はどこにやった?覚えてません。
覚えてないわけないだろ!いや本当です。
あの時は大変な事をしてしまったという思いで混乱していて…!
(乾)手袋ありました。
(乾)見つかりませんね凶器。
現場から採取した繊維片に付着していた血痕片岡さんのDNAと一致したわ。
ニカワの成分も一致しました。
(泰乃)採取した木くずからは微量ですがサクラが検出されました。
サクラが?でも工房内にサクラに繋がるようなものはありませんでしたよね。
ユリに関するものも。
(日野)その2つは事件と関係ないって事は?でも遺体からその2つは検出されている。
関係ないとも言いきれないか…。
出てこないからこそ気になりますね。
う〜ん…。
お茶でも淹れましょうか。
あっいいね。
お願いします。
お茶うけに甘いものでもあったら最高だな。
こういう時にね風丘先生がお菓子を持って「まいど!」って入ってきたらまた最高だな。
失礼します。
これが金山骨董店で取り扱っていた盗品のリストです。
風丘先生だったらよかったのに…。
えっ?別に。
(日野)掛け軸茶器絵画…。
うわっ仏像まである!罰当たりな男だね。
磯村さんは?処分保留で先ほど釈放に。
そう…。
ねえどうして磯村さんは金山骨董店に?激昂して「金山の店に行く」と言ったまま戻ってこない片岡を心配して様子を見に行ったそうです。
じゃあ片岡さんの犯行だと察して…。
強盗殺人に見せかけようとしたみたいですね。
お邪魔します。
仏像の胎内って空洞になってるんですか。
ええ。
内ぐりといって乾燥によるねじれや干割れを防ぐために中身をくりぬいてあるんです。
なるほど。
内ぐりをする事によって重量も軽く出来ますし胎内納入品といって先人たちはその中に経文や仏舎利など様々なものを納めていたんです。
なんかタイムカプセルみたいですね。
ええ。
で今日は?実はこちらの工房からサクラの木くずが検出されたんですが心当たりはないかと思いまして…。
サクラですか?いえ自分は…。
そうですか。
磯村さんどうしてニカワを使用した事がないと嘘をつかれたんですか?先生に気に入られていたのに黙って工房から持ち帰って練習していたので…。
使用を禁じた何か違う理由があるんじゃないですか?磯村さん教えてください。
たぶん昭次さんの事が原因だと思います。
昭次さん?ええ。
坂巻昭次さんといって私の兄弟子にあたる方なんですが…。
(風の音)自ら身を挺して…。
(磯村)ええ。
それで片岡さん責任を感じて…。
先生は昭次さんを1人残して帰られた事を悔やんでいます。
だから私に…。
同じような事故を二度と起こさせない。
そう思って磯村さんにニカワの使用を禁じていたんですね。
でも先生には感謝しています。
感謝?あの頃の私は荒んでいて生活のためとはいえ幾度となく盗みを繰り返していました。
そんなある日仏像には高値がつくと知って…。
(セミの鳴き声)そこで何をしてる!その時盗もうとしていた仏像が昭次さんが命がけで守ってくださったものでした。
その後先生に諭され自首した私に先生は罪を償ったら自分のところへ来いと言ってくださいました。
そうだったんですね。
先生や昭次さんのためにも一日も早く優れた技術を身につけたいんですが…。
磯村さんのその思いきっと片岡さんに伝わっていると思います。
(携帯電話)ちょっとすいません。
もしもし。
ええ今工房にいるけど…。
片岡匠栄が出頭する前に立ち寄った場所がわかった。
どうしてそんな場所に?わかった。
聞いてみる。
磯村さん。
昨日片岡さんが出頭される前に佛傳寺に仏像を納めに行かれた事ご存じですか?いえ…。
佛傳寺といえば先ほどお話しした仏像がまつられていたお寺ですが。
まつられていた…?実はその仏像去年盗まれてしまっていて…。
すいません片岡匠栄さんのお知り合いの方ではありませんか。
(坂巻小春)ええそうですけど…。
先日円空寺でご一緒のところをお見かけしたので。
そうですか。
申し遅れました。
私科学捜査研究所の榊と申します。
ある事件の事を調べていまして…。
あのー片岡さんとはどういったお知り合いで?あ…亡くなった主人が先生のお世話に。
もしかして坂巻昭次さんの…?ええ…。
すいません急いでますんで。
泰乃さん?ちょっと調べてほしいものがあるから今すぐ佛傳寺に来てもらえる?こちらの仏像ですが去年盗難に遭われたんですよね。
ええおっしゃるとおりです。
でも片岡さんが見つけてきてくれてようやく先日お戻りになったところなんです。
こちらはサクラの木で作られた仏像ではありませんか?はい。
この仏様はサクラの木で作られておりますが。
すいませんこちらの仏像お借り出来ますか?
(乾)金属類に合わせます。
凶器のデータと照合します。
中の短刀と凶器のデータは一致しました。
(宇佐見)仏像の台座から採取したホコリの中の木くずと金山の着衣から採取したサクラの木くずが一致しました。
こちらも一致しました。
決まりだね。
(引き戸を開ける音)榊さん…。
磯村さん…。
どうしてもあなたにお願いしたい事があります。
(片岡)なぜこんな場所に?ずっと遺体の周辺だけきれいに掃除してある事が気になってました。
でもあなたに会いに行ってわかりました。
あなたが金山骨董店に行った時金山さんの遺体のそばに仏像が壊れて散らばっていましたね?だからあなたは仏像修復のためにその周辺だけをくまなく拾い集めていった。
そしてあなたはその仏像の中に凶器を戻した。
そうまでして守りたかった人がいる…。
違いますか?何を言ってるんですか…。
片岡さんあなたが金山骨董店に行った時既に金山は殺されていた。
違う!私が殺したんです。
凶器に使われた短刀からあなたの指紋ともうひとつ別の指紋が検出されました。
その指紋は…片岡さんあなたの指紋の下から検出されたものです。
その人が最初に短刀を握っていた。
つまり金山さんを殺したのは…。
違う!そうじゃない。
私が殺したんだ!ああいう輩は生きていてはいけない。
そう思って…!
(小春)もういいんです先生!彼女が自供したぞ。
金山を殺したのは自分だと。
違う!私が殺したんだ!!先生!もう私をかばうのはやめてください!そんな事…主人は望んでなんかいません。
小春さん…。
金山の店の前をあの日通りかかったのも主人が私に教えたかったからだと思うんです。
主人のお墓参りに行く途中でした。
(小春の声)それは夫が命がけで守った仏像でした。
何か?どうしてこの仏像がここにあるんですか!?これは佛傳寺のものです!何言ってんだ…。
返してください!何言ってんだ…!こっちは商売でやってるんだ!これは売り物なんかじゃありません!返してください…!あっああっ…!お前…!
(小春の声)とっさに短刀を握っていました。
そのあとどうすればいいのかわからなくて先生にご相談しようと…。
先生実は…。
結局迷惑をかけると思い何も言えずに…。
でも片岡さんは知っていた。
金山が盗品の仏像を売買してると聞いて店に行ったら既に金山は殺されていた。
そうですね?あっ…。
これを見てすぐに胎内納入品だと気づいたんですね?はい…。
以前修復作業をしていたので。
証拠さえ見つからなければ彼女を守れると?でも守れなかった…。
先生…!全部私のせいなんです。
昭次が生きていれば小春さんもこんな事には…。
昭次を1人残して作業させなければ…!その自責の念から彼女をかばおうとしたんですね。
私がいつも仏像の命を繋ぐのが修復師の使命だと言っていたから…。
だからあいつは…!
(小春)先生のせいではありません。
夫はよく言ってました。
自分が携わった仏像は次の時代まで残したいと。
ずっとずっと先の未来まで残し続けたいと。
強くそう願ってました。
だから…だから…!もうご自分を責めるのはやめてください。
お願いします先生!片岡さん…。
あなたに見てほしいものがあります。
余計な事をしてすいませんでした。
先生が金山を殺したと勘違いして…。
本当になんておわびしたらいいのか…。
磯村…。
謝るのは私のほうだ。
お前が私をかばっていると気づきながらも仏像を元の形に戻すまではと真実を打ち明けられなかった。
このとおりだ。
許してくれ!やめてください先生!勝手に自分がやった事です。
いや…。
申し訳ありません!先生の許可なく勝手に自分が解体しました。
磯村…お前に頼みたい事がある。
はい。
この薬師如来像をお前の手でまた元の形に戻してくれないか?磯村ニカワを使ってやってみろ。
(磯村)え?ニカワで?おう。
(片岡)お前なら…もう出来るはずだ。
先生…。
片岡さんは…?死体損壊と犯人隠匿。
坂巻小春を守りたかったとはいえその罪には問われるだろう。
思いの連鎖…。
それぞれの思いが今回の事件を複雑にした。
でも罪の意識を抱えて生きていた片岡さんに磯村さんを引き合わせたのはきっと…。
2014/04/30(水) 15:05〜16:00
ABCテレビ1
科捜研の女11[再][字]
「VS仏像修復師!偽装された傷痕、消えた凶器の秘密!!」
詳細情報
◇番組内容
沢口靖子演じる京都府警科学捜査研究所研究員の榊マリコが、事件現場に残された微細証拠を手がかりに真相を究明する科学捜査ミステリー。
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志、風間トオル、斉藤暁、泉政行、奥田恵梨華、高橋光臣、若村麻由美、田中健 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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