警視庁捜査一課9係 2014.04.30

磯村さんを引き合わせたのはきっと…。

(物音)
(浅輪直樹)おおっ!なんじゃこりゃあ!?
(石川倫子)おはよう。
ごめんなさい!ちょっと探しものなの…。
本なんだけど…。
まさか元彼の…?柴田和彦の『夏色の女たち』って小説…。
ねえ聞いてる?あ?あっいやこれこれこれなんだこれ闘魂…。
あー!それね!ベランダに洗濯物と一緒につってたんだ。
女の一人暮らしがバレないように。
あっそうか!なんかそんな事じゃねえかなと思ったんだけど…。
ねえそれより柴田和彦〜…。
柴田和彦ねえ。
あれでしょ?なんか随分前に亡くなった小説家だよね確か。
最近遺稿が見つかって出版されたの。
なんかベストセラーだったんだよね。
ねえ引っ越す前に買ったんだよもう…。
ああそっか…。
どこに入れちゃったんだろ?それは困ったもんだね。
というかこのダンボールそろそろなんとかしようかねこれ。
あーっ!あった!ああ…。
やった〜…。
よかったよかった。
やったやった…。
よかったよかったそれはよかった。
(携帯電話)はいはいはいはい…よいしょ!はい浅輪です。
わかりました!
(村瀬健吾)遺体発見の通報があったのが午前7時です。
被害者は佐久間加代さん52歳。
発見通報してきたのがこの部屋の住人で被害者の友人でもあるスナック経営者の鈴木奈美さん。
ああそれと被害者は前日からこの部屋に泊まりにきてたようです。
浅輪。
あの2人は?青柳さんと矢沢…。
さあ…。
「さあ」ってお前…。
しかしこれ…背中一突きですね。
うん凶器はこの部屋の刃物が使われたようだな。
(小宮山志保)最後の力を振り絞って誰かに電話をかけようとしたのかしら?
(村瀬)みたいだな。
小宮山君知らないの?あの2人。
(志保)うん?またどっかでこそこそやってんでしょ。
あっ!この本…。
ここだけ折り目が入ってるんです。
(青柳靖)こっそりこちらへ…。
あのう…死体発見の時間7時ですけれども帰宅したのは何時頃ですか?
(鈴木奈美)私の店が終わったあと…知り合いの店で飲んで寝ちゃってそれで朝帰りに…。
(矢沢英明)なるほど。
被害者の佐久間さんとは古い友達だったと?加代ちゃんが東京でホステスしてた時だからもう20年以上になるかしら。
了解わかりました。
あと…
(矢沢・青柳)軽く隠してる事ありませんか?は?一人暮らしだと仰ってましたよね。
そうですよ!あの…洗面所でこんなもん見つけちゃったんですけど…。

(早瀬川真澄)ご遺体は背中から心臓を一突き。
即死に近い状態です。
死亡推定時刻は昨夜22時から23時の間。
(加納倫太郎)ガイシャの利き手ってどっちですかね?右ですね。
先生は?右ですけど…。
ガイシャに気づかれないように忍び込んで後ろから刺した。
それとも一緒にいてガイシャが振り返った瞬間に後ろから刺したのか…これ後者だとしたら顔見知りの犯行だという事になりますよね?なりますよね?あちょっと失礼…。
(電話)はいもしもし…。
あやっぱりそうだ。
なんなんですか?いや普通こう電話をかける時に利き手じゃない方の手で受話器を持って利き手でこうプッシュボタン押しますよね?先生さっきの画出してもらえますか?なんか不自然な感じしない?確かに言われてみると違和感ありますね。
佐久間加代さんの手帳によると加代さんは事件前日の夜青森から東京に到着。
鈴木奈美さんのアパートに宿泊している。
で事件当日…。
えーっと…加代さんは上京する度に奈美さん宅にお世話になっていたようです。
続けて…。
で事件当日まずは銀狼社という出版社を訪ねている。
でそのあと小石川に向かい…。
(村瀬)夕方にはホテルパラシオの喫茶で誰かと待ち合わせ。
この時誰と待ち合わせしてたかは残念ながら手帳には記されてない。
その夜奈美さんの元に被害者からもう一泊泊めてほしいと連絡があったそうです。
まあ了解したらしいですけど…。
急に予定変わったんですかね?係長と浅輪君は出版社を…。
青柳さんたちはホテルの方当たってください。
私と村瀬さんは…。
(青柳)えーっと…そういう高級ホテルはやっぱりそういうお二人が行った方がいいんじゃないかな?ね。
(矢沢)え?それって主任と村瀬さんの事ですか?
(青柳)オウイエイアーイエイ。
で青柳さんたちは?奈美さんのアパートって監視カメラとか防犯設備なかったんだろ?出入りした人間の確認急いだ方がいいんじゃないかな?な。
そっちは所轄が大動員かけてるけど…?人数はちょっとでも多い方がいいんじゃないですか?ならよろしくお願いします。
(矢沢)いってきます。
(青柳)あ矢沢その茶色い封筒のもの持ってきて。
(矢沢)はい。
怪しい…絶対怪しい!
(編集部員)100万部に届きました!
(貴島聡)乾杯!
(一同)乾杯!すいません失礼します。
あっ警察…。
(貴島)あどうもどうも!いやいやすいません。
どうぞどうぞおかけください。
いいですか?どうですか?1杯いきますか?いえいえ…。
さすがにねすいません。
いや〜すいません。
ねえ…加代さんが亡くなったというのに本当に…。
あの…「加代さん」という事は以前からご存じだったんですか?実はあの…佐久間加代さんは亡き柴田和彦の最後の愛人だった方です。
愛人?放浪癖のあった柴田和彦は最晩年の3年間を津軽で過ごしました。
その際同棲して作家の身のまわりの世話をしていたのが佐久間加代さんだったんです。
彼女と柴田さんが同棲するようになったきっかけってご存じでしょうか?彼女は地元のスナックホステスでたまたま店に立ち寄った作家と男女の関係になった。
じゃあ柴田さんは津軽でお亡くなりになったんですかね?いえ。
3年後柴田和彦は不治の病を得て東京の本宅へ戻り…。
ほどなくして亡くなりました。
じゃあ最期はご家族に見守られてって事ですか。
そうなりますね。
で加代さんは?作家の死後遺族は加代さんの存在を一切認めず葬儀へも参列を許しませんでした。
その事が彼女の恨みを買ったみたいで…。
恨みというと具体的には…?
(貴島)この本なんですが…。
知ってます。
これ最近になって原稿見つかったんですよね?実はこれ昨年加代さんの元で発見されたものなんです。
あそうなんですか?なんでも引っ越しの際預けっぱなしにしてた荷物に紛れていたらしくて…。
じゃあ見つかってよかったですね!それがですねえこの原稿加代さんは自分がもらったものだと主張する…。
作家の遺族はもちろん絶対許さない。
こりゃ大変だ。
しかもですね冒頭の献辞がですねこれなんですが…。
「K・Sに捧ぐ」。
カヨ・サクマ…?柴田先生のお嬢さんの名前は柴田カンナなんですよ。
えっ!?あのタレントの?はい。
そうですか…。
K・S?はい。
これはいよいよややこしい事になってきましたね。
しかしこれ文学的には非常に価値のある作品ですので黙って見てるわけにもまいりません。
あなた柴田さんとは長いんですか?長いですねえ…。
私が編集者になって最初についた作家ですから。
それはなおさらほっとけませんよね。
そこで私が仲介して加代さんに権利が渡らないように現金200万円を支払い原稿を受け取りました。
もうね…これで収まったはずなんですが小説の売れ行きを見て欲が出たんでしょうね。
もっと金を払えと…言ってきたわけです。
払わなかったら訴えるって…。
そこでさらにお金を用意しました。
この時期つまらない事で騒ぎ立てられてもこれ私どもとしましては…。
わかります。
しかし加代さんは…。
こんなはした金受け取れるかって!怒って…。
で受け取らなかったんですか?いやしっかり受け取って出て行かれましたよ。
ああそうですかへえ…。
あの…失礼ですけどいかほどですか?さらに200万円です。
200万…。
現場にあった空の現金封筒ありましたよね。
もしかしたら物取りの可能性ありますね。
うん。
係長ちょっと主任たちに報告してきます。
これはなんですか?「S.K.」。
(編集部員)柴田和彦のイニシャルサインです。
KSじゃなくて…SK?生前の先生のサインをそのまま使ってます。
(志保)すみません。
(店員)あはい。
(村瀬)こういった者ですが…。
(志保)ちょっとお話伺いたいんですが…。
昨日の夕方この方がこちらに見えてたと思うんですが…。
ええ。
2人でしたよ。
2人?もうひとりの人はどんな感じだったか覚えてますか?あの人ですよあの…。
柴田カンナ?
(店員)そう!そう!早速浅輪の報告と繋がったな。
(村瀬)なあ。
現場に落ちてた卓上カレンダー覚えてるか?ええ。
確か10月が開かれていてガイシャの左手がカレンダーを指していた。
10月は陰暦でいうと…?神無月。
そう…。
え?偶然?
(矢沢)赤木ーっ!待てー!待てっつって待つわけねえじゃんバカ!
(青柳)矢沢!今通りすぎた路地戻ってきて!これお前のだよな?ゆっくり話聞かせてもらうよ。
(柴田カンナ)佐久間加代となぜ昨日会ったかって?どういったご用件だったんでしょう?あの人が今ベストセラーになってる父の作品に関して相談したい事があるっていうから…。
だけど結局はお金の話。
それでそれは出版社にお話ししてくださいと言って別れました。
失礼ですが昨夜はどちらに…?アリバイって事?ええまあ…。
それなら証明出来ません。
え?テレビの収録を終えてから自宅で原稿を書いてたので…。
(カンナ)青山までお願いします。
見た?あのバッグ。
やっぱりパパの印税ってすごいのかなあ?何?結構するの?いくらすると思う?いくらって…。
10万!ブー!15万!惜しい!ゼロが1個足りない。
ゼロが…えっゼロ!?150万!?正解!
(矢沢)赤木さん。
(青柳)家いったら女いたよな?黙秘かよ!お前その女を殺して200万盗んだんじゃねえの?
(赤木周二)違う俺がアパートに行った時にはあの人もう死んでた。
怖くなってすぐ飛び出した。
(青柳)その調子もっと喋って。
あなた家に寄ったの何時頃ですか?12時ちょっと前…。
いやもっと早い時間だろ?
(赤木)いやいや本当です。
本当?死亡推定時刻10時から11時の間だったよな?
(矢沢)1時間ぐらいズレてますね。
早瀬川先生の間違いかな?お前嘘ついてるだろ!嘘じゃない!俺アパートに寄る前にコンビニ行ってます。
確認していいの?あはい。
確認しちゃうよ。
ああ…じゃあその赤木って男超重要参考人じゃないですか。
青柳さんまた隠してたんですか?お前に頼みがあんだよ。
そこ小石川だろ?「ええそうですよ」事件前後のアパート付近のコンビニの防犯カメラの映像を借りてきてほしいわけ。
了解しました!係長…。
ん?じゃあ僕はもうちょっとこの辺うろうろ…。
わかりました。

(矢沢)これ赤木じゃないですか?
(青柳)え?あ…。
(志保)あー…。
間違いない。
時刻も昨日の23時48分。
赤木がアパートに来たのは加代さんの死亡推定時刻の約1時間後。
残念でしたね青柳さん。
いやこれは殺害後コンビニに立ち寄った画だな。
それちょっと苦しいっすわ。
あっあっ…浅輪。
ちょっとこの映像戻してくれ。
はい。
ここら辺で…。
(村瀬)ストップ!はい。
このカバン!
(志保・村瀬)150万!
(村瀬)時刻は22時40分。
犯行推定時刻ドンピシャ。
すぐに任意同行かけて!了解!
(店内の音楽)いらっしゃい。
わあー。
やっぱりいい感じですね。
そうかい?ただ古いばっかしですよ。
出来て何年ぐらいになるんですか?もうかれこれ35年。
あっコーヒーください。
はい。

(店内の音楽)お待ちどおさま。
ありがとうございます。
あの…この人なんですけど…。
ああこの人昨日来たよ。
間違いないですか?昨日来たんでびっくりしたけどね…。
どうしてです?
(マスター)この人ね1年に1回同じ日に来るんだ。
同じ日に毎年?うん。
うちの孫の誕生日と同じ1月23日だね。
しかしなんで殺されなきゃいけなかったのかねえ…。
(村瀬)このバッグなんですが…。
バッグが同じだから私だっていうの?乱暴すぎるわ。
これ人物もあなたに似てるんですよ。
そんなのただの印象じゃない!
(村瀬)いやまあそれはそうなんですが…。
(志保)「事件現場にあった指紋を現在鑑識で解析中です」「指紋の照合にご協力頂けますか?」
(村瀬)これもし指紋が一致した場合あなたの心証が悪くなる事は避けられませんよ。
(カンナ)確かにあのアパートを訪ねました。
だけど殺したのは私じゃない!あの女『夏色の女たち』は偽物だって言ったの。
(佐久間加代)あの小説は偽物なの…。
何言ってるの?あなた自身が出版社に原稿渡したんじゃない!ねえお金だって受け取ったでしょ!なのにそんなでたらめ言ってまだお金が欲しいの!?いや…。
柴田さんそろそろお時間です。
会うんじゃなかった…。
あなた想像どおり最低な人間だね。
待って!
(カンナ)触らないで!
(志保の声)そのあとなぜアパートまで行ったんですか?あの女からもう一度会ってくれとメッセージがあったから…。
(志保)「憎んで別れたばかりなのに?」あの女はね私と母から父を奪った最低な女!だけど父の事は聞いてみたかった。
父は…いえ柴田和彦は晩年何を考え生きたのか私の事をどう思ってたのか…!
(カンナ)「それを知りたかった」お父さんの事愛してるんですね。
ええ。
(村瀬)…となるとあなたが加代さんを殺害する動機は十分という事になりますが…。
私があのアパートに行ったのは事実です。
だけど殺してなんかない!
(村瀬)「加代さんは死ぬ間際卓上カレンダーの10月を指さしてたんですよ」あなたの名前のカンナは神無月陰暦で10月の事ですよ。
(ドアの開閉音)青森から加代さんのお嬢さん到着しました。
佐久間和代さんですね?今日はつらいのにありがとう。
僕らお母さんの事件を調べてる刑事です。
じゃあ…ご確認お願いします。

(佐久間和代)お母さん…!お母さん…。
お母さん!
(和代の泣き声)お母さん…。
お母さん!
(和代の泣き声)もしもし和代です。
今からそちらにお伺いしようかと…。
浅輪君。
彼女の泊まるとこ決まってるの?今知り合いに連絡してるそうです。
僕が送ってきますので…。
頼む。
はい。
(和代)ありがとうございました。
今夜泊まるとこまで送ってくよ。
どうした?遠慮しなくていいんだよ。
え?ドタキャンで泊まるところがない?どうするつもりなの?多分ホテルとかそんな感じになると思う。
えーそんなのかわいそうだよ1人で…。
いいよ!うちに泊めてあげようよ心配だもん。
え?いいの?うんうん。
いいよ。
ああよかった。
(倫子)はーいお待ちどお〜。
待ってました〜。
(倫子)はいありがとう。
わあ美味しそう!でしょ?じゃあ食べよっか。
はーい。
じゃあいただきまーす!いただきまーす。
いただきます。
(倫子)はいどうぞ。
うん!美味しい!美味しい?うん!よかった。
(泣き声)大丈夫?
(泣き声)すいませんなんだか急に…。
ううんいいのよ。
つらい目にあったんだから…1人で我慢しなくていいの。
というわけで和代ちゃんはうちに泊まる事になりましたので…。
でもあなたと倫子さんが同棲…。
同棲してるなんてそんなぶっちゃけ話。
しかもこんなタイミングで?どう係長に伝えたらいいのよ…。
伝えなくていいですよ!僕と倫子ちゃんはただルームシェアしてるだけなんで…。
だってほら僕と和代ちゃんが2人でいたらこれ問題じゃないですか。
だから僕は主任に報告したんですよ?とにかくその被害者のお嬢さんよろしくね。
倫子ちゃんとのルームシェアの件はこれ絶対他言無用でお願いします。
絶対ですよ!わかったわ。
お先…。
わあっ!あはいお疲れさまでした。
いやあダメよ…絶対に隠せない。
(倫子)はーいどうぞ。
あーいいねえ。
ありがとうございます。
これ面白いですか?ああそれね。
うーん正直私は期待ほどじゃなかったかな。
中盤までは柴田和彦って感じなんだけどそのあとがらしくないっていうかね。
まあ和代ちゃんにそこまで言わなくてもいいんじゃないの?ハハッ。
気遣ってもらわなくて大丈夫です。
母と柴田さんの事は知ってますから。
ああ…そっか。
柴田さんが死んだあと未発表作品だとか全集が出版されるたびに週刊誌の記者がやって来て母にしつこくつきまといました。
ひどい目に遭ったんでしょう?
(和代)母が東京で体を売っていたとか柴田さんの遺産を狙っているとか柴田さんが死んだのは母のせいだとか。
(和代の声)田舎の町ですから噂はすぐに広まります。
私たちは居づらくなって何度も住む場所を変えました。
なのに母は柴田さんを絶対に悪く言わないんです。
代わりに柴田さんが母にとってどれだけ素晴らしい人だったかは何度も話してくれました。
それである時ふと思ったんです。
自分は柴田和彦の娘なんじゃないかって。
(和代)だけど母に尋ねる前にこんな事に…。
(和代の泣き声)大丈夫。
(矢沢早苗)ええ。
もうどうにもこうにも締め切りが迫ってて…。
ただいま〜!なので欠席で。
お願いします。
よろしく〜!ああ…。
邪魔しちゃった?ううんパーティーのお誘い断っただけ。
ああもったいなかったね。
いいの。
銀狼社の100万部突破パーティーなんて私あんまり関係ないし。
えっそれって柴田和彦?そうみたい。
これであそこもしばらくは持つわね。
えーっどういう事?銀狼社ってね貴島ってやり手編集者が立ち上げたんだけどここ数年ヒットもなくてね経済的にもかなりやばいって噂だったの。
ほほう。
えー被害者の佐久間加代さんなんですけれども世間のイメージと娘の和代さんの話は随分違いました。
これはこの事件を捜査する上で重要な問題なのでしっかりと頭に入れておいた方がいいと思います。
以上。
ありがとう。
俺もお前のイメージが随分変わったよ。
ハハットイレ行ってくる。
ああはい。
やるやるとは聞いてたけど本当にやるんだね。
えっ?えっ?俺もトイレ行ってくる。
ああ…。
いや〜俺もやってみたいよ。
そのルームシェアっていうの。
俺もトイレ行ってくる。
主任!えへっごめ〜ん。
だってほら係長には言わないでって言うから係長には言ってないからさ。
そんなの当然じゃん!係長現直するって。
(舌打ち)合流して連絡して。
もう〜出たよ。
もうマジ有り得ねえよ小宮山!小宮山!?この『夏色の女たち』これどうも後半の方から柴田和彦らしくないんですよね。
もう読んじゃったの?いやあの…まあ僕というよりも柴田ファンの友達が読んだんですけどね。
という事は殺された加代さんが訴えたように贋作の可能性があるって事?まあ証拠はないんですけど…。
あっその現場にあった加代さんの本にこういう折り目がついてたんですよ。
この後半の部分に。
ちょっと見せて。
はい。
あれ?ん?あら?おや?まさかの老眼ですか?あ…読みましょうか?ああ…。
えー…「ガランとした部屋。
日に焼けたポスターの跡は暮らした日々の長さを物語っていた」。
「最後に固定電話を外してしまえば全ては終わる」「だがカナは壁にもたれ動こうとはしなかった」「晩夏の夕闇にしばらくは抱かれていたかった」
(風鈴の音)しかしマスターこれすごいLPの数ですね。
いやこれはねSPさ。
SPってなんですか?LPレコードが出る前に既にあったレコードの事をSPレコードといってね。
LPはロングプレーの略。
SPはスタンダードプレーで収録時間が片面で5分ぐらいで短かったの。
ああそれ知らなかったです。
もっとも私が若い頃にはこれしかなかったからSPレコードなんて言わなかった。
ただのレコードさ。
浅輪君。
はい。
殺された彼女ひょっとしたら証拠を握ってたのかもしれない。
証拠ってどこに?証拠…今君が読んだ。
えっ?これからパーティーなんです。
聞きたい事があるならさっさと済ませてください。
加代さんがお父様の新刊について話していた事を詳しく教えてください。
あの女は父の新刊が偽物だと言ってました。
自分が編集者に渡したのは未完成の原稿でお金は勝手に送金された。
自分はこんなもの欲しくないと。
(村瀬)いやしかしあなた昨日加代さんがお金をたかりに来たような話し方されてましたよね。
そういう女だからよ。
結局そうじゃない!
(ノック)はい。
カンナさんあなたと同じようにお父様を愛しあなたと同じようにお父様の作品を大切にした人物がいます。
命かけて。
今日『夏色の女たち』の100万部突破記念パーティーですよね。
ええ。
よかったらご一緒していいですか?
(貴島)おいおいおいおい!こっちの花どうしたんだよおい!ほらてきぱき動けおい!はい!貴島さん。
貴島さん。
ええ?お宅の会社ここ数年経営があんまりよろしくなかったみたいですね。
まあこういう商売ですからね波はありますよ。
じゃあやっと波に乗ったっていう事ですか。
貴島さん本ここでいいですか?ああ今行く。
忙しいんですよちょっと。
ね?用件があるんだったら早く言ってください。
じゃあずばりお聞きしますけれども…。
あなたは会社の起死回生のために柴田さんの小説がどうしても欲しかった。
だから佐久間さんに金を払い小説原稿を頂いたと。
しかし佐久間さんの金の無心がやまずにそれに腹を立てたあなたが…佐久間加代さんを殺したと。
それだけですか?バカバカしい。
おいそれでいい。
大丈夫。
はい。
失礼する。
相当動揺してたよな。
いや全く。
舌打ちしてましたよ。
舌打ち…。
(貴島)ああカンナさん!ああお待ちしてました!いやいやいやいやお美しいなぁ!どうぞ会場です。
ご覧になってください。
どうぞどうぞ。
ちょっと一体あの刑事さんたちどうなってるんですか?こんな忙しいとこに押しかけてきて。
いや違うんですよ。
こちらの会社が経営不振だっていう話をちょっと聞いてただけなんですけど。
それで私を殺人犯に仕立てようとしてる。
しかしあれですね100万部突破記念パーティーって派手になさるんですね。
これも柴田先生の作品の力そしてカンナさんが私どもに出版を任せてくれたお陰です。
ハハハッ。
それで?あなた方一体なんの用ですか?ちょっとよろしいですか?加代さんの件なんですが加代さんが巷間噂されてるような悪女じゃなくて本当に心の底から柴田さんを愛し作品を大切にしてたとしたら全ての辻褄が合うんですよ。
まず加代さんが受け取った金はカンナさんが聞いたように勝手に送金されたものでした。
加代さんはその金を返すという目的もあり上京した。
バッグの中に入っていた空の現金封筒はその金が入っていたものだったんじゃないでしょうか。
銀狼社であなたがお金を受け取った。
あなたまで一体何を言い出すんだよ。
そのやり取りを聞いていた他の編集部員は加代さんの言葉の断片から彼女が金を強請っているんじゃないかと誤解した。
こんなお金で騙されません。
アパートに行った赤木お金奪ってなかったんですね。
やっぱり赤木は思ったとおり正直者だったんだ。
あなた加代さんにお金渡してないんですよ。
なぜ私がそんな嘘をつかなくちゃならないんだ。
あなたには隠しておかなければならない秘密があった。
加代さんはその秘密を知ってた。
加代さんが上京した目的はその秘密を告発する事です。
この小説は生前柴田先生がお書きになったものなのかもしれません。
でも本当は未完成で他の誰かが勝手に書き足したんだとしたら…。
贋作です。
本当は未完成で他の誰かが勝手に書き足したんだとしたら…。
贋作です。
柴田さん亡くなったのは17年前。
作品が出来たのはそれより2年前。
つまり19年と考えていいんですよね?ああそうだ。
えー…。
「ガランとした部屋。
日に焼けたポスターの跡は暮らした日々の長さを物語っていた」「最後に固定電話を外してしまえば全ては終わる」このページ亡くなった加代さんが唯一折り目をつけていた部分なんです。
「固定電話を外してしまえば全ては終わる」。
おわかりになりませんか?何を?19年前固定電話という言葉はまだないんです。
加代さんにそれ言われませんでした?固定電話という言葉は携帯電話が普及して初めて出来た言葉なんです。
これなんて言うんだっけ?ああレトロニムです。
例えば第1次世界大戦という言葉は第2次世界大戦が起きて初めて生まれる言葉ですよね。
それまでは世界大戦争って言ってましたからね。
ああ〜そうなんだ。
だから柴田和彦がこれを書いたわけがないんです。
被害者の加代さんは固定電話を抱えるようにして倒れていました。
電話をしようとしてたんじゃないかと考えるにはちょっと不自然な格好だったんですよ。
でもその固定電話について伝えようとしていたんだとすればそれおかしくないですよね。
ダイイングメッセージとして。
彼女は自分は未完成の原稿を発見したそう言ってたんです。
そうですよね?カンナさん。
ええ確かに。
だとするならばその小説を完成させた人物がいるはずなんですよ。
(貴島)誰だっていうんだよ。
あなたです。
あなたと亡き小説家は二人三脚として作品を発表してきた。
柴田和彦の作品についてあなた以上に精通してる人はいません。
バカな!一体なんの茶番なんだこれは!カンナさん。
(カンナ)はい。
お父様はいつも何で原稿を書かれていましたか?ペンで手書きです。
なるほど。
印刷会社に確認しました。
今回に限り原稿はフロッピーで渡されたと言っていました。
贋作者にとっては都合がいい話ですよね。
ワープロだと筆跡がばれない。
わざわざ手書きの原稿を打ち直して書き加えて完成させて。
で手書きの原稿はおさらばか。
いいえ。
編集者は作家の手書きの原稿をどんな理由があれ捨てる事は出来ません。
ですよね?貴島さん。
家宅捜索の令状です。
待ってくれ。
その必要はない。
原稿は俺のデスクの引き出しにある。
あなたが加代さんを殺害した。
そうだ。
これは…。
このベストセラーは俺の取り分だったんだ。
取り分?俺が柴田和彦のために尽くした報酬って事さ。
なのにあの女未完成原稿だった事を公表すると迫ってきた。
いくら金積んでも受け入れてくれなかった。
このお金は何度も言うように頂けません。
私の願いはただ1つ。
先生の恩に報いるためにもあの小説が先生の書いたものとは異なるという事をはっきりさせたいだけなんです!その思いなんとかのんでもらえませんか。
頼む!このとおりだ!先生と出会った頃私は人に騙されて死ぬつもりでした。
だけど先生は言ってくれたんです。
騙されたのが君でよかったんだよって。
君ならくじけずに頑張れるだろうって。
私はその言葉でもう一度生きる勇気が湧いてきました。
その恩に背く事は出来ません。
すいません…水もらいます。
(加代の悲鳴)ハッ!何が恩だよ!だったらこの俺に対する恩返しの方が先だろ!誰があいつをこんな売れっ子作家にしたと思ってる?俺だろう!この俺だろう!あいつの小説を世に出すために俺がどれだけ尽くしたか…。
借金の肩代わり…。
ハハハッ…女関係の後始末…。
書けない時は精神的に支え続けてきた!俺は全てを捧げたんだよ!なのにあいつは俺が独立して会社を興してから何も書いてくれなかった!なんにもだ!こんなひどい仕打ちあるか!それは…間違いだと思います。
この『夏色の女たち』これあなたのために書き始めた小説です。
冒頭の献辞…「K・Sに捧ぐ」。
娘のカンナさんあるいは加代さんとおっしゃいましたよね。
ああ。
ですが柴田さんは…。
自分でサインイニシャルで書く時に「S.K.」名字から書くんです。
という事は…。
「K・Sに捧ぐ」貴島聡あなたです。
バカな…!まさか…。

(貴島の嗚咽)いい話ね。
特にこのラストが超泣ける。
俺も泣いたよ。
100万部以上売れてる理由がよくわかるよ。
(青柳)なあ。
本人が書いたんじゃねえのにな。
それ言っちゃダメでしょ。
本人が書いたんじゃねえのにな。
青柳さんもこれ読んでみたら?すっごくいいよ。
はい。
いや俺はいいよ。
心が洗われますよ。
特にあなたみたいな心の人は。
お父さんの命日って1月22日ですよね。
ええ。
墓所はすぐそこの尊王寺です。
加代さん毎年1月の23日にこの喫茶店に来たそうです。
ご家族と鉢合わせしないように命日の次の日に墓参りしたんでしょうね。
彼女が父と私の時間を奪った事は今でも許せません。
ですが…彼女の父への気持ちは本物だった。
もしもっと早くそれを知っていたらもっとちゃんと彼女と話をしていたなら私は…。
もう取り返しがつきません。
加代さん亡くなる直前左手でカレンダー指してました。
10月神無月。
それに彼女のある心を感じます。
お父さんの墓参りに行ってみましょうか。
加代さんの娘さんの和代さん。
こんにちは。
私は柴田カンナ。
柴田和彦の娘よ。
つらい時によく来てくれたわね。
柴田先生の事は母から聞いていました。
そう。
どんな話か私にも聞かせてほしいの。
どうかな?もちろんです。
和代ちゃんの名前和彦さんと加代さん1文字ずつですね。
ああ本当だね。
もしかしたら本当に姉妹なのかもしれないですね。
たくさん話がありすぎて何から話したらいいのかわかんないです。
色々聞かせてね。
はい。
夏色の女が2人。
そうですね。
2014/04/30(水) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
警視庁捜査一課9係[再][字]

「殺人生原稿」

詳細情報
◇番組内容
規格外の捜査官7人で織りなす最強捜査チーム9係、ふたたび始動!先の読めない展開と、重厚かつ濃密な人間ドラマにさらなる磨きをかけた刑事・群像劇シリーズ第8弾!
◇出演者
渡瀬恒彦、井ノ原快彦、羽田美智子、吹越満、田口浩正、津田寛治、原沙知絵 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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