オイコノミア ぎゅっと!オイコノミア「アーユー下流?」 2014.04.30

今回は「ぎゅっ!とオイコノミア」。
これまでに放送したテーマをぎゅっと1本に濃縮してお送りします。
僕がテレビに出してもらう前につい最近まで住んでた…家賃3万2,000円風呂無しでトイレ共同のアパートに住んでたんですが…。
今は風呂ありますけどその時は全然風呂なくても大丈夫やと思ってましたね。
今家に風呂あると朝でも夜でもいつでも入れるんでやっぱり家に風呂あった方が便利という事に気付きましたけど。
僕の家はあんまり裕福ではなかったですね。
友達がもう何か「又吉の家」といったらちょっと笑うみたいなノリはありましたね。
ちょうどドアの目線の辺りが何かへっこんでてのぞき穴じゃないけど何か穴開いてるみたいな。
鍵閉めてる状態でも家族やったらこうグッグッとやったら開けれる変なコツみたいなのがあったりトイレの電気がずっとつかへんかったり。
日本では1990年代から「下流社会」「勝ち組・負け組」「ワーキングプア」など格差を表す言葉が流行し始めました。
かつては「一億総中流」と言われた日本も今では年間200万円以下の給与所得者がおよそ24%を占め生活保護受給者は過去最多の216万人に。
ひと事ではなくなった格差問題。
街の人々は将来への不安についてどう感じているのでしょう?突然なんですけど…あります。
あります。
将来これといって夢がないというか…。
ちゃんと職に就ける保証がないのでそれが不安です。
貯金ができてないんで貯金をしなきゃいけないっていう。
上流中流下流という言葉がありますけどご自分ではどれだと思いますか?中流だと思います。
いかがですか?中流ぐらいだと思います。
なるほど。
いかがですか?中流。
中流だと。
ご自分でどれだと思いますか?中の下ぐらいだと思います。
中流の…。
下。
下の上ぐらい。
いかがですか?え〜げりゅうです。
げりゅう?新しい言葉が出てきました。
下流。
下流ですね。
下流ですか?いかがですか?下流ですね。
下流じゃないですか?下流ですか。
夢は何なんですか?金持ちになる事です。
夢と不安が絡み合う格差の問題。
解説してくれたのは…格差って一体何なんやろうと。
みんなが不安に思ってる事の正体って一体何なのかなと思いまして。
そうですね格差というものがあるから我々が頑張るという部分もあるんですけれどもあまりにもその格差が広がってしまうと社会としての一体感がなくなってしまってその社会が不安定化するといったような事がありますし貧しい人というのが増えると家庭生活というものを長期的な視野をもって計画する事ができなくなってしまうので子供をつくれなくなってしまうとか結婚できなくなってしまうとかそういった問題も起きてきますよね。
格差社会とはいつ始まったのでしょうか。
日本の格差は明治維新のあと産業の発達と共に拡大しました。
第2次世界大戦まで僅か1%の富裕層が全体の所得の20%近くまで占めていました。
しかしその比率は急激に減少します。
所得の内訳を見てみると戦前はある程度の割合を占めていた地代や株式配当などの収入が戦後はほとんどなくなります。
戦時体制とその後の占領政策によって働かずに得られるお金が激減したのです。
戦後富裕層の所得は給与などの労働所得が大半を占めるようになりました。
そのため日本は長い間富裕層の所得がそれほど大きくはなかったのです。
やがて高度経済成長と共に世界的にも例を見ない格差の小さい「一億総中流社会」が誕生します。
「一億総中流」という言葉は聞いた事あるんですけどあれは一体何なんですかね?日本の戦後の経済成長の中で賃金格差があまり発生しない中で経済成長していったというそういう状態の事を言いますね。
戦争が終わった時には農村部に多くの人がいたんですけれどもその人たちが成長する製造業でブルーカラーとして働いたりとかいう中で労働者の技能も高い技能が求められるようになってきたのでそれに対応して高校への進学率とか大学への進学率というのも上がっていってだんだんとお給料が高くなるといったような好循環が起こって多くの人にチャンスが広がるような社会が出てきたというのが一億総中流の時代だったと言えると思います。
みんなが少しずつ伸びていったというかいい状態になっていったという。
そうですね。
一億総中流の時代っていうのは世界的に見てもあまりなかった時代なんですか?成長と平等化というものが同時に起こるというのはそれなりに珍しい事だったのかなと思いますね。
しかし一億総中流の時代は1970年代のオイルショック以降収束に向かいます。
そして今再び格差が広がってきたといわれています。
経済学では格差の大きさを表す指標としてよく「ジニ係数」という数値を用います。
所得の低い人から順々にその所得を足し合わせていったグラフを作ります。
もし国民全てが同じ所得つまり完全に格差のない社会ならグラフは直線になります。
しかし所得に偏りがあるとこのグラフは直線から外れ丸みを帯びていきます。
ジニ係数とは格差のない直線状態からどの程度グラフがずれたのか直線と曲線で囲まれた部分の面積で表したものです。
格差が大きくなるほどジニ係数は大きくなります。
これが…例えばこうだったらどうですか?この直線とこの曲線の間の面積が比較的小さいですので…これだと平等に近いという事ですね。
そうですね。
じゃあ…。
これだったらどうなりますかね?ここの所までの人というのが全く所得を得ていないという事になりますからものすごく貧しい人が半分ぐらいいてあとの人の中では比較的平等に所得が分配されてると。
ほぼ半分に分かれてるという感じですね。
そうですね。
こういう…。
この急に増える所までの人たちというのは平等に所得が配分されていて最後の1人というのが半分以上の所得を取っているようなそういう社会だという事になりますね。
日本ではさまざまな調査データによって数値に違いはありますが1970年代からジニ係数が上昇傾向にあります。
つまりこのデータで見ると格差はだんだんと大きくなっているのです。
もっともこれには格差の大きい高齢者層の人口に占める割合が上がってきたためという指摘もあり注意が必要です。
一億総中流と言われてた時代からなぜ日本は格差が広がってきたんですかね?一つは経済活動に国境がなくなってきたという事なんです。
それは発展途上国から日本やアメリカのような先進国が安い労働力を使って作ったものを輸入するようになったと。
それで日本の工場が海外に出ていってしまうという事も同時に起こってるわけですね。
それによって日本の中でその仕事をしてた人たちが貧しくなってしまうという事が起こりうる。
もう一つは又吉さんもコンピューターを使われてると思うんですけれど我々の生活の中にコンピューターがたくさん入ってきてますよね。
20年前のオフィスというのを見てみると伝票を処理したりとかあるいは全て紙ベースの書類なのでコピーをとったりとかそういう事務作業をしてる方というのはたくさんおられたんですね。
でも今その人たちの仕事というのはかなりコンピューターに置き換わってしまってるんですよね。
仕事がなくなったんですね便利になった分。
まさにそういう事で。
でもそういうふうにパソコンで処理したり海外に工場を持っていったりした方が会社の利益とかは上がるという事ですよね。
そうですね。
何とか皆で一回やめようとかできないんですかね?産業革命が起こった頃に機械を入れると格差が拡大するので労働者が機械を打ち壊そうとしたという「ラッダイト運動」というのがありましてだからやっぱりそういう考え方というのは当然出てきますよね。
現実に生活が苦しい人ってたくさんいるじゃないですか。
例えば公園で寝泊まりされてる方とかそういう人を見て子供の時に「どれくらいお金があったらその生活から脱出できるんだろう」とか「もし自分がそうなったらこれぐらいは必要やな」とか僕よく考えてたんですけど。
やはり厳しい現実があって一回貧しくなってしまってそこから抜け出せないという事があるとそれが本当の問題なのかもしれないですよね。
それで所得の分布というものを考えてみたいんですけれども。
横は所得の額で縦の方が人数なんですけれども大体どこの国の所得も比較的貧しい人の所にガッと固まっていてこう豊かな人がいるというようなこんな形の分布になるんですね。
この幅が広ければ広いほど格差が大きいという事になるわけですけれども。
ただその幅だけだと分からない事もあるんですよね。
一回貧しい状態になった人この辺の所にいる人ですよね。
この人たちが将来はここを抜け出して豊かになれると今は貧しいけれども将来は豊かになるというこの移動が生涯の中で大きければ一時点の格差が大きくてもそれほど生涯の格差というものが大きくないのかもしれませんし。
一方で一時点の格差が小さくても貧しい人がずっと貧しいままと。
逆に言ったら一度お金持ちになってしまったらそれがずっと続いてしまうというのも…この幅がちっちゃくても問題だという事になるでしょうね。
やはり努力をずっと続けていないとまた所得が落ちてしまうかもしれない社会の方が「流動性が高い社会」なんて言いますけれどもそういう社会の方がいい社会かもしれないですよね。
結構それってでもすごい怖いじゃないですか。
貧しい時代を経て努力してお金稼いでまだ大丈夫じゃないって事ですよね。
そうですね。
例えば数年前仕事が全然無かった頃の僕というのは本当にこの辺やったと思うんですけど今いろいろお仕事を頂いて平均的なこの辺にいるとして今後こうなっていくのが理想ですよね?そうですよね。
僕31なんですけど現時点でここでも来年どうなるかですよ。
そうですね。
32でここかここかという事ですよね。
先こっち言うのやめてもらえます?すいません。
選択肢の1つ目がここかっていう…。
ここかここですか。
そうですね。
格差社会を考える時最も重要な事は貧しい人々と富める人々の間で移動が可能かどうかという事です。
いつまでも貧しい人が貧しいまま富める人が富めるままでいる社会では将来に対する希望が抱けません。
今若い人々の間で「自分が一生貧しいままだ」と考える人が増えているといわれています。
この将来の希望に対する格差を「希望格差」といいます。
何で希望を持てない人がいるんですかね?それは日本の労働市場の特徴というのもあると思います。
やはり正社員で就職しようと思うと入り口がすごく集中しているわけですね。
例えば自分が学校を卒業する時に景気が悪かったと。
2008年に金融危機が起こりましたけれどもその直後に労働市場に出なければいけない新卒だった人は大変だったんですね。
自分が学校を卒業する時の景気の状況というのは全く運でしかありませんよね。
そうですよね。
一度うまくいかないで正社員になれなかったりするとそのあと正社員になるのがとても大変だと。
ですので運でかなり生涯に続く格差というものが決まってしまうという部分があるという事ですよね。
じゃあ途中から就職して新卒の人たちと同じように評価されるというか仕事を始められるという状況日本ではあまり無いんですか?やはり平均的に見てみるとアメリカなんかに比べるとなかなかそのチャンスが限られてるという事ですよね。
だから今僕がもし芸人できなくなったら何の仕事をするか具体的に考えていくとすごい怖くなるんですよね。
まず接客業…。
笑顔が苦手なのでできないじゃないですか。
腕力がないので荷物運びとかもできませんし声ちっさいんで指示を出すみたいな仕事もできない。
街を歩くだけの仕事とか…。
私自身も31歳の頃を考えて経済学者としての仕事が駄目ですと言われてしまったらどうしようかとやはり考えたと思いますので本当に次の仕事を探せるんだと思ってる人というのは実はそんなに多くないんじゃないですかね。
そうですよね。
格差の問題に希望を与えるある人物の言葉があります。
1987年世界に衝撃を与えた株価の大暴落。
後にノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・ベッカーはこう言いました。
「国の富の75%」とは人間が身につけた技能や知識の事。
だから株価が一時的に暴落しても心配はないと主張したのです。
人を育てる教育こそ国の富を生み出す源だという考え方です。
75%人間が持ってるって考え方すごい前向きでポジティブでいいですよね。
そうですね。
格差というのが一番どこから出てくるかというと教育とか仕事に就いてからの訓練で身につける技能であったり知識であったりそういった事が大きいわけですね。
そこの部分を平等にしていくという事が格差を縮小していくためにはとても大切だという事になります。
若者でもおじさんとかに「あいつはしっかりしてるから何があっても大丈夫だ」とか言われるやついるじゃないですか。
みんながああなればいいって事ですよね?そうだと思います。
みんながそうならどんな状況でもその75%は失われないという。
そうですね。
「あいつは大丈夫だ」って言われる人のその根っこの部分ってどこから来てるかというと親から受け継いだものもあるのかもしれないですけどやっぱり学校でいろんな社会のルールを学んだりとかあるいは勉強したりとかそういった部分から来てる部分も大きいわけですね。
日本は同じカリキュラムの下で小学生中学生が勉強する。
基本的に全国どこの市町村に行っても同じような費用で運営されている。
ですので格差の根本のところにある技能とか知識というものを学ぶための機会が比較的みんなに平等に与えられてる社会だと言えるかもしれません。
ここの部分をしっかりと守っていくという事がどうしても必要なのではないかと思います。
僕の家あんまり裕福じゃなかったんでその時に奨学金とか知っていればもしかしたら僕の人生が変わったかもしれないですね。
高学歴芸人になれてたかもしれないです。
奨学金芸人にもなれたかもしれないですし。
そういうチャンスがいっぱいあればいいですよね。
そうですね。
奨学金は将来得られる所得を当てにした借金ですから教育を受ける事がその人だけに返ってくる事じゃなくて社会全体に返ってくる部分もあるんですよね。
何かいいネーミングを又吉さんに考えて頂いて…。
単純に「ラッキーチャンス」とかでいいんじゃないですか?ほんなら何か深刻にならんで済むような気がしますけどね。
今日はありがとうございました。
ありがとうございました。
最後に…はい。
2014/04/30(水) 23:25〜23:50
NHKEテレ1大阪
オイコノミア ぎゅっと!オイコノミア「アーユー下流?」[字]

あなたは上流?中流?下流?日本では今、格差が広がりつつあるというが本当?これまで放送したテーマの中から反響の大きかったものを選び、1本に濃縮してお送りする。

詳細情報
番組内容
格差がどこから出てくるのか、経済学では教育や仕事に就いてからの訓練で身に着ける技能、知識などに要因があるとされている。逆に言えばその部分を手厚くすれば、格差は縮小すると考えられるのだ。また格差のある社会を考えるとき、貧しい人々と富める人々の間で移動が可能かどうかという点が、非常に重要になる。貧しい人が貧しいままだとすれば、格差が固定してしまっては、希望が抱けなくなってしまうからだ。
出演者
【出演】又吉直樹,【解説】一橋大学教授…川口大司,【語り】朴ろ美

ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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