警視庁捜査一課9係 2014.05.01

(携帯電話)
(電話)
(小宮山志保)ん〜…。
(電話)はい9係。
えっ!?はい出動します。
大変だ大変だ…。
(パトカーのサイレン)
(青柳靖)ご苦労さまです。

(志保)お疲れさまです。
(村瀬健吾)お疲れさまです。
(志保)被害者は百武充さん。
元ファンドマネージャーです。
(村瀬)係長これ見てください。
(加納倫太郎)「今日は三つ星フレンチでアレックスのバースデイパーティー」?被害者の奥さんのブログです。
このアレックスっていうのは愛犬の名前ですね。
犬?ええ。
そのブログによると百武さん仕事の方は数年前に引退していて今は海外と日本を行ったり来たりの生活のようです。
第一発見者は近所の住人。
ジョギングをしていたら誰もいない工事現場から携帯電話の着信音が聞こえてきたそうです。
(矢沢英明)なんだかなぁ!
(青柳)表に高そうな車止まってるね。
(矢沢)被害者は自分で運転してここまで来たんですかね。
浅輪君被害者のお財布あった?
(浅輪直樹)ありました。
あと高級腕時計もしたままです。
はいまずは携帯。
物取りの可能性は低いって事か。
この現場3日前から工事が中断していて作業員の出入りはなかった。
被害者はその事を知っててここで誰かと待ち合わせしたんじゃない?うわっボッサボサ…。
最近主任さん色々捨てちゃってないか?ああ女とか。
だから今日当直だったからじゃないですか?今朝の7時台に奥さんから随分電話がかかってきてるわね。
で最後の通話はゆうべ9時48分。
青柳さんはこの番号の相手調べてきてください。
いいの?どうぞ。
いってきまーす。
私たちは奥さんを調べましょうか。
あ…ああ。
じゃああとお願いします。
はい。
じゃあ財布を取ってきます。
(早瀬川真澄)定規。
はい。
割創6センチ。
殴打の痕。
頭蓋骨が陥没している…。
致命傷はこれね。
両手のひらに同様の擦過傷。
(真澄)ん…?ガーゼ。
127?もしくは127。
左手の甲に書いてありました。
これ上着のポケットにボールペン入ってたんですけどこれで書いたのかもしれないですね。
角度から見て自分で書いたんだと思うんだけど一応インクの鑑定出してあります。
でもズボンのポケットに手帳も入ってたんですよ。
3桁の数字だったら例えば携帯のボイスメモでもいいわけじゃないですか。
わざわざ手の甲に書いたっていうのも…。
127か…。
(矢沢)さっきの電話番号ここの経済部の記者でした。
佐野実希子27歳。
10階ですね。
(佐野実希子)すいません。
すいません。
徹夜で原稿書いてさっきまで仮眠室で寝ていたもので…。
ああ…早速ですが昨夜の9時48分ぐらいに百武充さんと…。
座りましょうか。
はい。
どうぞ。
電話でお話しなさってますよね?はい。
百武さんが何か…?今朝死体で発見されました。
あっ…。
百武さんとは何を?取材の申し込みを。
(青柳)取材?伝説の男が再始動。
これは大きなニュースですから。
伝説の?ちょっとお待ちください。
(実希子)こちらをご覧ください。
百武さんはもともと証券会社の社員でしたが20代で独立して推定100億もの資産を作ったファンドマネージャーなんです。
100!?…億。
しかもリーマンショック前に引退したためその存在は伝説となりました。
それがなぜか今年になってあちこちのセミナーでこの会社に投資を募っていたんです。
(青柳)「日本海底資源開発」…。
今朝の現場この会社の本社ビル建設予定地ですね。

(志保)えっと…コンシェルジュが応対をすると。
(村瀬)コンシェルジュ?
(志保)これね。
(呼び出し音)
(小林克)はい。
コンシェルジュですが何か?警視庁ですが百武さんの奥様にお話を伺いたいんですが。
かしこまりました。
お通しします。
(小林)あっどうも。
ではそちらのエレベーターで27階へどうぞ。
27階の何号室でしょうか?27階は全フロア百武様のお住まいとなっております。
ああ…。
ワンフロア全部だって。
(桂木アキ子)どうぞこちらでお待ちくださいませ。
ペントハウスか…。
ウサギか。
(ほえる声)
(村瀬)うわっ!
(百武十和子)ダメよアレックス!
(村瀬)ちょっ…ちょっ…!ごめんなさい。
この子噛んじゃった?えっ?噛まれてないよな?全然噛まれてません。
でも安心して。
金曜日に予防注射してきたばっかりだから。
ねえ?かわいいですね。
ありがとう。
私が作ったのよ。
充君は本当に優しくて人の恨みを買うような人じゃありませんでした。
トラブルなどの心当たりは?
(十和子)全然…。
それに私仕事の事は何も知らないんです。
ご結婚されたのはいつ頃ですか?10年前清蓮大のミスキャンパスになった時に知り合いました。
君は一生働かなくていい。
いつまでもきれいでいてくれたらそれだけで僕は幸せだって。
奥さんはゆうべはどちらに?都内のスパに行っていました。
お一人で行かれたんですか?いえネイリストの白土弓恵ちゃんと一緒に。
白金にサロンがあるんです。
今度ご紹介しますわ。
いいえ私は仕事が忙しいので…。
あら!刑事さんだってお手入れすればきれいになるわ。
えっ?…ありがとうございます。
そうだ。
あれは…あれですか?えーご帰宅されたのは何時ですか?11時過ぎでした。
(村瀬)11時過ぎ…。
それは確かですか?私日曜日はお休みを頂いておりますので…。
(十和子)帰った時充君はいなかったけどどこかに出かけてるんだろうと思ってそのまま寝てしまったんです。
でも朝になってもまだ帰ってなくてそれで心配になって携帯に…。
(志保)さあ会議始めるわよ〜。
なんか女に戻ってる。
ああ。
いやだから色々あったんじゃないですか?
(志保)はい全員集合!あっそうだそうだ。
はい解剖所見配りまーす。
はい置いておきます。
はい。
えー死亡推定時刻は昨夜10時から12時までの間です。
死因は後頭部の打撲による脳挫傷。
他にもひざとか肩に打撲の痕がありました。
まあ要は後頭部を殴られて穴に転げ落ちたみたいな感じでしょうかね。
凶器は?まだわかってないんですけども現場に確認しましたところスコップが1本だけなくなってました。
だからそれじゃないかなと。
あとですねこれ被害者の両手にあった傷なんですけどもスコップの金属部分を握り締めた時についたんじゃないかなと想定されます。
それと被害者が自分で書いたと思われる左手の謎の数字…。
127?ん?127?なんの数字かしら?なんかの日付じゃないですか?12月7日とか1月27日とか…。
百武さんの手帳にはその両方の日になんの記入もなかったよ。
じゃあパスワードだな。
3桁のパスワードなんて聞いた事ないですけどね。
そういえばパソコンがないのよ。
パソコン?百武さんのパソコンです。
現場にもなかったし車にも自宅にもありませんでした。
昨夜9時48分。
これ百武さんがマンションから出てくるところの防犯カメラの映像です。
(矢沢)手ぶらじゃない。
(青柳)あれ?パソコンどこにあるんだろう?
(村瀬)しかし奥さんも知らないって言ってるんだし…。
あのね!
(村瀬)えっ?ああいう女はねしれっとした顔で嘘をつくのよ。
よーし!私と村瀬さんは百武十和子のアリバイを調べます。
青柳さんと矢沢さんは…。
黒吉建設をあたります。
(村瀬)え…?黒吉建設?はいこれが黒吉建設の2代目ボンボン社長黒吉岳男。
今年に入ってから百武と組んで海底資源絡みの会社に投資を募っていた。
日本海底資源開発って今朝の現場の?そう今朝の殺害現場。
ここの会社の本社ビルの建設現場だったんだよ。
でもこの工事の現場は確か…。
3日前から中断してる。
ねえ何かにおうでしょ?うーん…。
行きましょう!
(矢沢)百武さんとはビジネスパートナーだったようですね。
(黒吉岳男)はい。
新会社の投資顧問をお願いしていました。
日本海底資源開発でしたっけ?社運をかけた一大事業ですよ。
それなのになぜか建設工事は中断しちゃってますよね?それは…。
さっき社員の方に聞いたんですけど社長の鶴の一声で3日前に工事を中断したと。
社員の方はその理由全く聞かされてませんけど。
あんた百武さんともめてたんじゃないですか?百武さんと?まさか!じゃあ工事を中断した理由わかりやすく説明してください。
別にいいじゃないか。
別に…。
別にいいじゃないかって…。
うちの会社の工事なんだ。
私の一存で中断しようが何しようが…。
はいじゃあ質問を変えましょう…かっ。
質問を変えましょうか。
大丈夫ですか?ゆうべの10時から12時の間どちらにいらっしゃいました?ゆうべ…。
ゆうべって日曜ですよね?どうですかね?
(矢沢)ええ。
日曜…あっそうだ。
女といました。
あらいいですね。
(矢沢)親しい女性ですか?沢村葉子…。
広尾でアンティークショップを経営しています。
えっと…あったかな?あっこれだな。
よかったらどうぞ。
(青柳)じゃあ我々はこちらの葉子さんとやらに直接お会いしてお話をお伺いするとしようか。
どうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
あっ押すのか…。
ハハハハ。
おいどうなってんだ…。
もしもし葉子!僕だ黒吉だ。
今からそっちに刑事が行くからゆうべ僕と一緒にいたという事にしてくれないかな。
もう1つだけいいですか?127という数字に覚えはありませんか?
(アキ子)どうぞこちらです。
ほう…。
確かご主人は…ノート型っていうんですか?このくらいの小さいパソコンをお使いになっていました。
いつもはこの机の上に。
でもパソコンについては奥さんはあんまりご存じなかったみたいなんですけどね。
そりゃそうでしょう。
奥様はお掃除なんかなさいませんしそれにご主人は絶対に奥様の前で仕事の話はなさいませんでした。
あっそうですか。
あっすいません。
これって顧客リストですよね。
お預かりしてもいいですか?
(アキ子)どうぞ。
あっ何か袋でもお持ちしましょうか?ああすいません。
アキ子さんでしたっけ?はい桂木アキ子です。
この数字心当たりないですか?127…。
さあ?何かの記念日とか?お二人の結婚記念日は5月でしたし奥様の誕生日は10月ご主人は確か2月生まれですよ。
例えばなんですけど百武さんが浮気をしていたなんて事は…?それは絶対にありえません。
あんなに奥様の事を大切になさっている方は世界中探したっていやしませんもの。
(小林)失礼致します。
奥様に頼まれてました歌舞伎のチケットをお届けに上がりました。
私から渡しておくわ。
でももう観劇どころじゃないかもしれないけど…。
そんな事までされるんですね。
お客様のあらゆる要望にお応えするのが仕事ですから。
あっ小林さん。
はい。
すいません。
この数字に心当たりないですか?
(小林)127…。
12階の7号室でしたらIT企業の役員の方がお住まいですけど…。
でも百武様と交流がおありかどうかは…。
やっぱり仕事の関係の数字なんですかね?ところで刑事さん。
実は私もあの会社に投資してるんですけど…。
えっ!?いえね私も歳だからそろそろ引退して一人暮らし用の中古マンションでも買って…と思ってたんですよ。
ああそうですかそうですか…。
そしたらねご主人が今投資しておけば2年後には息子夫婦と同居出来る一戸建てが買えるよなんておっしゃるもんですから…。
それは素晴らしいじゃないですか。
ねえハハハ…。
あの…。
ちゃんと戻ってきますよね?私のお金。
あっそういう事はうちの上司に聞いてください。
ね?ね?ええ…。
痛え!いててて…。
ええ大丈夫です。
いらっしゃいませ。
恐れ入ります。
白土弓恵さんいらっしゃいますか?先生警察の方が…。
(白土弓恵)確かに昨日は百武十和子さんと2人でスパに行きました。
麻布に出来た会員制の高級スパでなかなか予約が取れないので有名なところです。
十和子さんとはずっとご一緒だったんですか?温泉に入って全身泥パックしてマッサージとエステのフルコース。
それからお食事もご一緒したので6時間ぐらいは一緒にいた事になります。
白土さん唐突なんですが127という数字に何か心当たりはないですか?127?ええ。
もしくは127。
(志保)百武さんか十和子さんに関係のある数字だと思うんですけど…。
私彼女とはそんなに親しくありませんから。
でも彼女はあなたを友人と…。
そう思わせるのも営業テクニックです。
じゃあ昨夜のスパも営業の一環ですか?スパのオーナーに頼まれたんです。
百武夫人を連れてきてくれって。
オーナー?不動産関係の仕事をなさっている後藤さんという方です。
(志保)後藤さん…。
(村瀬)後藤の会社不動産関係だと思って調べてみたらとんでもなかった。
指定暴力団礼旺会のフロント企業だったよ。
(志保)礼旺会!?
(村瀬)ああ。
後藤良二は組の会計を預かる金庫番でかなりの切れ者だったらしい。
スパの他にもクラブや料亭それに噂だと違法カジノなんかも経営している。
その後藤という人物ですけども百武さんの書斎にあった顧客リストにも名前載ってました。
この日本海底資源開発に3億円も投資してるんですよ。
3億…。
(志保)でもこんなヤクザがなんでわざわざネイリストに頼んでまで百武十和子をスパに招いたの?ただいま。
ただいま戻りました。
お疲れさま。
黒吉どうだった?どうもこうもねえよ。
とんでもねえボンボンだなあいつは。
もうアリバイ工作がバレた途端ぽんぽんが痛いぽんぽんが痛いとかでぐずりやがって…。
(志保)マジ!?もう1個決め手がありゃ任意で引っ張れるんだけどなぁ。
ああ127は?黒吉は全く心当たりがないそうです。
あっそう。
パソコンの行方だけでもはっきりすればな…。
ねえ明日さ時間帯を広げて防犯カメラの映像チェックしてみて。
百武の部屋からパソコンを持ち出した者がいないかどうか…。
わかりました。
浅輪君。
はい。
今日飲みに行かない?えっ?2人っきりでですか?うん。
もうちょい?ああちょっとやる事あるんですけど…。
じゃあ先行ってる。
お疲れさま。
(一同)お疲れさまでした。
ルームシェアの話バレちゃったのかな?主任!俺と倫子ちゃんの話係長に言ったでしょ!?係長には言ってないわよ私は。
俺は言ってないよ!ん?俺こそ言ってないよ!ん?出たよ…!絶対この中に犯人いるじゃん!僕厚揚げとネギ1本ずつ。
塩でお願いします。
へい!ああ…。
いや〜でも…。
初めてですよねこう係長と2人で飲むっつうのは。
そうだっけ?はい。
やっぱりあの事ですよね?うん。
黙っててどうもすいませんでした。
これ…。
えっ?百武さんの書斎の机の中に何個か入ってた。
ここの常連さんじゃないかと…。
ああ〜。
お客さん。
お客さんは百武さんのお知り合いですか?百武さんよく見えました?クリスタル証券に勤めてらっしゃった時からずっと…。
お金持ちになってからも時々ふらりやって来られてはここに座って飲まれていました。
勝ち組を絵に描いたような人だったのにまさかあんな死に方するなんて…。
人生というのはわからないものですね。
(組員たちの騒ぎ声)…するなって。
えっ?だから!こういった状況でも俺がついてるから心配するなって言って…!
(後藤良二)お待たせしました。
警視庁捜査一課の小宮山です。
村瀬です。
後藤と申します。
頂戴します。
どうぞ。
早速ですが後藤さん。
百武充さんの事はご存じですよね?はい。
彼が証券マンだった頃からの付き合いです。
若いのにリスクの高い仕事をする面白い男で…。
よく一緒に大儲けさせてもらいましたよ。
それは一緒に仕手戦を仕組んだという事ですか?して…?仕手戦です。
ある銘柄の株を意図的に釣り上げて十分に利益が出たところで売り逃げる…。
それが仕手戦と呼ばれる株価操作の手口ですよね。
勉強になります。
(村瀬)いやいやいや…。
あんた知ってるはずだそれ。
は…?は?じゃないだろ。
あなたは百武さんが扱っていた日本海底資源開発に投資なさってるようですが…。
彼が仕事を引退してから付き合いはなくなっていましたが最近になって絶対に儲かる投資話があると連絡があったんですよ。
それでポーンと3億も出したんですか?それくらいポケットマネーで。
奥様の十和子さんともお付き合いはおありなんですか?いいえ。
一昨日の夜スパにご招待なさってますよね?それは宣伝のためです。
(村瀬)宣伝?セレブな方のブログにでも載ったらスパのイメージアップになりますもんね。
では一昨日の夜10時から12時の間どこで何を?私どもスパ以外にいくつか店を経営しておりましてそれらの店の巡回です。
あっそうだ…。
さっきそこにいた男うちの運転手ですから呼んで証言させましょうか。
ね。
おいケンジ!
(ケンジ)はい!ちょっとなんか…。
30代で資産100億なんてまともじゃないと思ってたけど要するにヤクザの金を元手に荒稼ぎしていたわけでしょ。
百武殺しはなんらかの口止めかあるいは見せしめの可能性も出て来たって事だな。
そうねスパの件も不自然だし。
後藤は何かを隠してる。
(村瀬)うわぁビックリした!
(志保)うわぁ!来てこれ見て。
(村瀬)なんすか?子供かよ!これ新しく借りてきたマンションの防犯カメラの映像をチェックしてたんですけどね。
事件当日9時47分2人の男がマンションのロビーから入ってきます。
コンシェルジュは?7時までしかいないんですよ。
この時間は防災センターに警備員が詰めてるだけでこのロビーには誰もいなくなるんです。
でその1分後百武さんの部屋にこの2人の男が入っていきます。
昨日映像で確認したようにこの時間百武さんは駐車場から車に乗って外に出てるんですよ。
(志保)奥さんはスパに行ってたし家政婦さんは日曜休日…。
とすると2人を部屋に迎え入れたのは?誰でもないんです。
2人は合鍵持ってるんですよ。
(志保)えっ?ちょっと待て!えっ?これ後藤じゃないか?
(志保)えっ?ねえねえ顔顔…顔もっと映ってるとこないの?
(村瀬)キャップの方だキャップの方。
待って待って待って…。
(村瀬)早くしろお前。
キャップの方だぞキャップ…。
これかな?
(村瀬)ほらっ!
(志保)やっぱり後藤だわ。
あれ?一緒にいるの黒吉じゃない?
(矢沢)でもなんで黒吉と後藤が一緒にいるんですかね?それは本人に聞きゃあわかるだろ。
行くぞ矢沢。
はい。
よーし俺たちも行くぞ。
行くわよ。
あっ…はい。
浅輪君。
はい。
あの2人が出てきたとこもう1回見せて。
ああはいはい。
ストップ。
あっはい。
これさ上着の中になんか隠してない?ひょっとして…。
あんたの自宅からこんなもんが出てきた。
あんた上着の中に隠して百武さんの書斎からこのパソコン盗み出したんじゃないのか?あなたが十和子さんをスパに招待したのはマンションの鍵が目的だった。
合鍵を作るためにね。
しかしまあパソコンだけ手に入れてもパスワードがわかんなかったらなんの意味もないよな。
(志保)そこでパスワードを聞き出すために百武さんを呼び出し脅し殺害した。
(笑い声)
(黒吉)私たちは後藤さんが投資した金を取り返しに行ったんです。
投資って百武さんが募ってた?日本海底資源開発。
どうもあの投資は百武が仕組んだ詐欺だったようなんです。
ちと待てよ。
日本なんとか資源なんとかってあんたの会社でしょ?すっかり百武を信用して大船に乗った気でいて…。
でも事件の3日前新聞記者が私のところに訪ねてきてこれは詐欺だと。
(実希子)この特許既に海外で実用化されていますよ。
まさか…。
間違いありません。
アメリカの知人に調べてもらいました。
投資を集められるだけ集めてから隠していた事実をリークすれば会社は倒産。
社債も株券も紙切れ同然になる。
これって…詐欺じゃありませんか?詐欺だなんて失礼な…!集めた資金は今どこに?それはまだ…。
やっぱり…。
あなた…百武に騙されましたね。
(黒吉の声)百武が集めたはずの金はまだごく一部しか入金されてませんでした。
とりあえず私は工事を中断して後藤さんにだけは正直にお話しする事にしたんです。
後藤とはどこで知り合ったの?都内の…カジノです。
カージノ!?ただでさえ負けが込んできて…。
その上ヤクザを投資詐欺に遭わせたなんて事になったら私は…。
(青柳の声)普通はコンクリに詰められて東京湾だわな。
(黒吉の声)百武は集めた金を外国の隠し口座にプールしていたはず。
そこで後藤さんは百武のマンションに押し入りその場で本人を脅して百武の口座から金を振り込ませようと考えたんです。
でも百武は留守で…。
それで後藤さんがあいつのパソコンを…。
(2人)ふ〜ん…。
本当です。
本当にあの夜私たちは百武に会ってないんです。
(2人)ふ〜ん…。
(2人)「ふ〜ん…?」
(加納・志保)ふ〜ん…。
でも百武さん怖くなかったんですかね?ヤクザまで騙して。
多分百武は高飛びするつもりだったんだろう。
高飛び?ああ。
あれ?係長ずーっとやってたんですか?この127パスワードじゃないね。
(村瀬)それパソコンの事は専門家に任せた方がいいんじゃないんですか?ああそれより記者の佐野実希子と百武接点がありましたよ。
佐野実希子は1986年生まれの27歳。
北橋大学経済学部を優秀な成績で卒業し総日新聞に入社。
その父親がクリスタル証券で百武の元上司だったんです。
え?ただしその父親は10年前に顧客に大損をさせた事に責任を感じて自殺しています。
(村瀬)百武が頭角を現したのもその頃ですね。
佐野実希子に直接あたります。
ところであの2人は?うん早く来て出てった。
どちらに?フッフフ…聞いて正直に言う?おはようございます。
(実希子)おはようございます。
(青柳)「あんた百武の詐欺に気づいてそれを黒吉に教えたんだってね」
(矢沢)「この間会った時どうしてその事言ってくれなかったんですか?」「死んだお父さんとなんか関係があるんですか?」私の父は証券会社の社員でした。
面倒見がよくていつも若い社員を家に招いては夕食を…。
中でも一番目をかけていたのが…百武でした。
なのに…父は百武に裏切られたんです。
当時父は百武からある会社が画期的な新技術を開発したと聞かされ担当していた顧客に株の購入を勧めました。
ところがそれは百武が仕組んだ仕手株で…。
父はそれに気づかずに売り時を逃がしてしまって顧客に大損害を与えたんです。
父は責任を感じて自殺しました。
(実希子)ただいま。
(実希子)お父さ〜ん!いやーっ!
(実希子の声)あの男は詐欺師です!父だけじゃありません。
何人もの人を踏み台にして…。
一生使い切れないほどの資産を築いてそれでも足りずに人を騙して金儲けをしようとしている。
だから私あいつの息の根を止めてやろうと考えたんです。
それであの夜百武さんを呼び出したんですね。
(矢沢)これは?あの夜の会話は全て録音してあります。
録音?
(百武充)「驚いたな」「あの自殺した佐野さんのお嬢さんか?」
(実希子)私の書いた告発記事あなたの出方によっては明日の夕刊に掲載するつもりです。
相変わらずひどい方法でお金を集めてるんですね。
(百武)伝説のファンドマネージャーだから目をかけた後輩だからそんな理由で人を信用するからこんな簡単な詐欺に騙されるんだ。
詐欺だと認めるんだ。
(笑い声)何がおかしい?
(笑い声)私がどうして新聞記者になったか教えてあげましょうか?ペンの力であなたを叩き潰すため。
何?今までの会話も全て録音させてもらいました。
あなたが詐欺と認めたところもしっかりとね。
クソ女!
(百武)うわっ…うわぁ…!
(百武)ふざけるなこのアバズレ!
(百武)「おい!待て!」私が立ち去った時間違いなく百武は生きてました。
このレコーダーがその証拠です。
(実希子)「ただわからないのは…」なぜ100億もの資産を作った百武がこんな馬鹿げた詐欺を働いたかという事。
百武は何を焦ってたんでしょうか?先生!あっちょうどよかった。
例の手の甲に書かれていた数字ですが科捜研で分析してもらったところ遺体のポケットに入っていたペンで書かれたものではありませんでした。
え?ポケットに入っていたのはアメリカ製のボールペン。
でもこれはスイス製のボールペンに使われるインクだそうです。
ありがとうございました。
浅輪君!はいなんでしょう?持ってきました。
サンキュー。
今更被害者の車を調べて何が出てくるんですかね?何やってるんですか?係長。
あった!あったあった!あった。
ボールペン?百武さんはこのボールペンで自分の左手に必死になって字を書いた。
えっ!?
(エンジンをかける音)
(ラジオ)「さてJ‐WINDをお聞きの皆さんこんばんは」浅輪君…。
はい。
ラジオ局に行って番組の録音もらってきてくれる?ラジオの録音ですか?日曜夜10時前後の。
わかりました。
頼む。
いってきます。
(村瀬)百武の使ってたパスワードは結婚記念日の523をラテン語に置き換えたものだった。
これ523。
でね百武のパソコンを隅から隅まで調べたところなんと百武の預金残高合計100万円もなかったのよ。
(2人)えっ!?マジかよ…。
100億の資産どこ行ったんですかね?全て使い切ったんでしょあの奥様が。
おい…。
だから百武は危ない橋渡ってたんですね。
ねえ係長競馬でも始めたの?さあ…。
わかった!浅輪君行こう。
はいはいはい…。
この数字の意味がやっとわかったよ。
「警視庁の加納です」開けて。
(小林)あ…これは刑事さん。
あいにく十和子様はお留守ですが…。
いえ今日はあなたに用がありまして。
私に?実は百武さん殺害される前に左手の甲に127って書いてるんです。
その127っていうのやっと意味がわかりました。
これラジオJ‐WIND日曜の夜10時15分に放送されたものです。
(ラジオ音声)「いや参った。
第14回ゆうま記念今日のメーンレース523の3連単で127万馬券という大当たりが出たわけですが…」恐らく百武さんは運転中に聞いたんでしょうね。
急いでメモを取ろうとした。
恐らく信号待ちの短い時間の間にメモを出す暇もなくボールペンで手の甲に書き殴った。
127。
万馬券の配当金です。
百武さんが通っていた焼き鳥屋の大将が話していました。
百武さんは昔から競馬が大好きで結婚してからは毎週同じ数字にかけ続けていたと。
結婚記念日だよ。
百武さんの結婚記念日は5月23日。
先週のメーンレースで大当たりが出たのが523。
100円券で127万。
1万円だと1億2700万。
あなたは住民の方にチケット買ったり色々お手伝いしてあげてますよね。
百武さんにも毎週馬券を買いに行ってあげたんじゃないですか?私は…。
現場から凶器と思われるスコップがなくなっていました。
ご自宅を捜索させて頂いてもよろしいでしょうか?その必要はありません。
小林さん…?百武様を殺したのは私です。
「話して頂けますか?」百武様は競馬がお好きでした。
私も馬が好きだと申し上げたところ話がはずんで…。
523。
この馬券が好きなんだよ。
でも時々買い忘れちゃうんだよな。
それでしたらわたくしが買っておきましょうか?それじゃあ頼むよ。
(小林の声)それから毎週百武様の代わりに私が馬券を買いに行くようになったんです。
買うのはメーンレース。
3連単を523で1万円と決まってました。
でも滅多に当たらない3連単です。
それが先週…100万円馬券になった。
なのに私…買ってなかったんです。
えっ!?あの日に限って朝から体調が悪くて…。
ところが家でテレビを見てたらその523が100万円馬券に…。
私は百武様に誠心誠意謝ろうと心に決めてマンションに向かいました。
ところがそこで…何者かが百武様の部屋に侵入しようとしてるのを見つけました。
(小林)おい今の誰だ?
(警備員)えっ?もしもし百武様ですか?いやぁ…参った。
君のおかげで助かったよ。
百武様実は私…。
(携帯電話)もしもし?今から?黒吉建設の工事現場に?わかった。
あっ…。
(小林の声)結局私は…告白のタイミングを逃がしたんです。
私は百武様を追いかけました。
謝罪するなら早い方がいいし…。
それに何より様子が気掛かりで…。
(小林の声)黒吉建設の工事現場に行ってみると…。
(百武)おい誰か…誰か助けてくれ。
百武様!助けてくれ。
(小林)今お助けします。
はぁ…はぁ…。
(小林)これに…さあ…。
(百武)ああっ…。
もう一度…ほら…。
うぅ…。
はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…助かった…。
君こそ天使だ。
幸運の神様だ。
実は私…あなたにお話しする事がありまして。
わかってる。
523だろ。
やったぜ畜生!これで十和子と別れずに済む。
その事なんですが実は私…。
君にも少しお礼しなくちゃな。
馬券買ってなかったんです。
え?申し訳ありません!まさかこんな大当たりになるなんて夢にも思わず…。
買ってなかっただと?1億2700万だぞ。
1億2700万!買ってなかったで済むと思ってるのか!働いて少しずつでもお返しを…。
返すだと?貧乏人がどうやって返すって言うんだ?金の価値もわからない貧乏人が!
(小林)やめてください!離せ!離せ!
(百武)ああーっ!百武様…!?すぐに自首すべきでした。
でも勇気がなくて…。
ですが私にはどうしても納得出来ないんです。
100億もの資産を持ってる百武様がなぜあんなに激高されたのか…。
百武さんの預金通帳…。
もう家賃が払えないかもしれません。
まさか…。
奥さんをつなぎ止めておくためにどうしてものどから手が出るほどお金が欲しかった。
127万馬券かぁ…。
買っても外れるかもしんねえけど買わなきゃ当たんねえんだよな。
ちょっとやめてくださいよ。
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