地方のお墓で今遺骨を都市部に移す人が後を絶ちません。
これが、おやじなんですよ。
それでこれが、ばあさん。
お墓を守ってきた高齢者が地方で、どんどん少なくなってきているのです。
少子高齢化が急速に進む日本。
地方は、高齢者の年金を主とするいわば老人経済で成り立ってきました。
しかし今、その地方に異変が生じ始めています。
NHKが独自に調べたところ全国の5分の1に及ぶ自治体で高齢者がすでに減少していることが分かってきたのです。
さらにこうした高齢者の減少が新たな人口移動を生んでいます。
次の世代を担う若い女性たちが地方から東京に仕事を求めて向かう動きが加速しようとしているのです。
専門家のシミュレーションでは地方の若い女性の減少が国の予測を上回る規模で進む可能性があることが分かってきました。
高齢者が減少若年女性が流出することで存亡の危機に陥る地方。
その一方で大都市ばかりに人が集中し最終的には国全体が縮小していくいびつな極点社会。
新たなステージに移った人口減少の問題を考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
日本の人口はどうなるのか。
高齢化によって高齢者の割合が増えそして出生率が低いため人口が減っていくと見られてきました。
実際2008年から日本の人口は減少に転じているのですけれどもこの人口減少国の予想を上回る勢いで全国に広がっていることが分かってきました。
NHKは最新の住民基本台帳を基に全国1742の市区町村のこの5年間の人口の増減を調べました。
高齢者の人口が減っている自治体は全体の22%。
388の市町村に及んでいることが分かりました。
高齢化といえば高齢者の人口が増えていると思いがちなんですけれども実際には高齢者の人口が減っている自治体が少なくなくそのことによって地域経済そして雇用に大きな影響が及ぶのではないかと懸念されています。
さらに人口減少を食い止めることを難しくさせているのが子どもを産み育てる中心となる20代、30代の若年女性たちの人数が急速に減っているという現実です。
若年女性たちは将来を担う人材なんですけれどもただでさえ人数が減っている中で今、仕事を求めて高齢者が減っている地方から大都市へ移動する傾向を見せています。
出生率が低く子どもを産み育てることが難しいといわれる大都市に若年女性たちが移動することによって人口減少がさらに加速するのではないかと専門家は見ていまして日本の人口減少問題は新たな問題将来、極点社会に向かうと分析しています。
高齢者の人口が減っている自治体が多かった県の一つが徳島県です。
こうした地域で今何が起きているのか現状を取材しました。
徳島県の西の県境三好市です。
人口は、およそ3万人。
高齢者の占める割合は38%。
全国平均を大きく上回る自治体です。
若年世代が流出する中町の経済は、高齢者の購買力に支えられてきました。
しかし今その高齢者が減り始めています。
急増する空き家。
次々と取り壊しが行われています。
地域経済にも影を落としています。
お世話になります。
農協です。
地元の金融機関、JAでは個人預金が、ここ5年間で12億円以上減りました。
中でも大きな影響を受けているのは三好市の主要産業である介護や医療の事業者です。
この高齢者施設ではこれまで常に満床だった部屋に空きが出るようになっています。
稼働率が、ここ数年大きく低下。
これまであった1000万円ほどの利益がほとんどなくなってしまいました。
三好市では、このままでは地域を維持することができなくなっていくのではないかと強い危惧を抱いています。
こうした高齢者の減少が新たな人口移動を生み出しています。
徳島県を拠点に81の高齢者施設を展開する日本最大級の社会福祉法人の理事長です。
今後の経営に危機感を抱きみずから東京に出向いて自治体と交渉を行っています。
今後も高齢者が急増していく東京23区への進出を目指しています。
東京では今地方の社会福祉法人が次々に高齢者施設の建設を進めています。
10年前には3か所しか進出していなかった地方の特別養護老人ホームが10倍以上の35施設に増えています。
高齢者を求め東京に進出する地方の介護産業。
そこで働く若年女性も地方から東京へ移動し始めています。
東京に10の施設を持つ鳥取県の法人が地元で開いた就職説明会です。
都内の施設で働く女性を鳥取県内の専門学校や短大を回って募集しています。
次世代を担う若い女性が地方から次々と流出していることに危機感を抱く専門家のグループがあります。
中心は岩手県知事や総務大臣を務めた増田寛也さんです。
最新の統計データなどから20代から30代の若年女性の人口移動の将来予測を行いました。
その結果、このままいくと2040年、若年女性の数が半分以下になる自治体が全体のおよそ5割に上ります。
これまでの国の予測を上回る規模で若い女性が全国で急激に減少するとしています。
スタジオには、取材に当たってきました、特別報道チームの山記者です。
山さん、今ね、シミュレーションを2つ見てきたんですけれども、専門家チームが行ったそのシミュレーションでは、2040年に、若年女性の人口が50%減少するという自治体が896、およそ半分。
一方、国のシミュレーションでは373。
大きな開きがあるわけですね。
このギャップはなぜ生まれたんでしょうか?
端的に言いますと、将来の人口移動に対する予測が違うんです。
こちらをご覧ください。
20代、30代の女性について、1980年以降、5年ごとに、地方から東京に入ってきた人と、東京から出ていった人の数の差を表したグラフです。
2000年までは、入ってきた人よりも出ていった人の数が多かったんですが、2000年以降は、逆に入ってきた人のほうが多くなっています。
この10年間、地方の雇用が減少した影響で、大学に進学してそのまま東京に残ったり、20代以降に仕事を求めて、新たな上京してくる女性が、それ以前に比べて多くなったと見られます。
こうした傾向が、今後も続くと見ているのが専門家のグループで、国はこの傾向が5年程度で収束すると見ているんです。
国のシミュレーション、そして専門家のシミュレーションと、いずれも厳しいシミュレーションですけれども、なぜ、国のシミュレーションでは、5年後ぐらいに収束するというふうに見ているんですか?
国は人口移動は活発な時期と、停滞する時期が繰り返されると見ているんです。
もう1つグラフをご覧ください。
東京への人口の出入りを、もっと長い時間軸で見てみますと、高度経済成長や、バブル経済の時期を山に、入ってくる人が多くなる時期と、それが収束していく時期が、繰り返されていることが分かると思います。
国の予測は、こうした動きが今後も繰り返されるという前提に立っているんです。
一方、専門家のシミュレーションでは、都市から若年女性たちの流入がずっと続くと見てるんですね。
なぜ、そう見てるんですか?
先ほどのVTRでもご覧いただきましたように、介護や医療といった社会保障分野の労働力需要が今後、地方から東京へ大きくシフトしていくことを重く見ているんです。
もう一つ、グラフをご覧いただきたいのですが、こちらは、2005年から2010年の就業者数の増減を、都道府県別に見たものです。
青いグラフが全産業の合計、そして赤いグラフが医療・介護の就業者数です。
全産業の就業者数が、東京と沖縄を除いて減っている中で、医療や介護の就業者数は、すべての都道府県で増えていることが分かると思います。
医療や介護が地方の雇用の最大のよりどころになっている現状を表しているといえます。
そこで女性たちの人材力が求められているということなんですね。
さあ、専門家シミュレーションを行いまして、そこで座長を務められました、増田寛也さんにもお越しいただいています。
増田さん、このシミュレーションですけれども、確か日本の人口のピークは2008年がピークで、そしてそこから減少に転じたわけですけれども、こうやって、今見てみますと、高齢者の人口が減っている自治体が、実に5分の1。
びっくりしますね。
高齢者すらも減り始めていると。
それを上回る形で、若年者の方の人口が減り始めているわけですね。
都会から見ていますと、あるいは東京から見てますと、まだまだこれから高齢者が増えるっていうことで、実際の地域でどういう現象が起こってるかということが、なかなか理解しづらいと。
私、2040年に、総数で2000万人、これから減るんですが、地域的にそれが市町村ごとにどういうふうに減っているのかということを明らかにしないと、きちんとした、この問題の解決策には結び付かないのではないかと思います。
それで市町村ごとに出してみたと。
人口が減っていくことによって、コミュニティー全体の機能が失われてしまうということのおそれが出てきますよね。
さまざまな公共施設もある一定の人口がいるということを前提に作られているんですが、端的に言いますと、例えば人口1万人を割りますと、あっという間にもうそれが、人口が減っていきますので、そういったコミュニティーの機能を維持するための最低限のさまざまな公共施設などが、放棄させられてしまうと。
あるいは極端な話が、森林の管理だといったことが全く手がつかない。
そういう非常に厳しい現実が、そういった市町村には出てくると思います。
鍵を握っているのは、その若年女性の動向ですけれども、減っていくことによって、女性たちが大都会に出てくる傾向が見られてきたという。
やはり働く場、要は、所得、収入をどこで得るのかという問題なんですが、今、VTRにもありましたとおり、これまでは介護の現場というのは非常に有力な場だったんですが、なかなか地方で、特に若年の女性に合った仕事を作り出すことが、今までできていない。
何かこう、東京にまさにブラックホールに吸い寄せられるような、そういう状況が今、起こりつつあると思います。
今の増田さんの話にありましたように、地方から大都市へ、若年女性たちが流入する傾向が見られるわけですけれども、影響は地方だけにとどまりません。
多くの女性たちが流入することによって、日本全体の人口減少が加速する危険性が指摘されています。
若年女性の流入が続く東京。
1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる出生率は1.09。
全国で飛び抜けて低い数字です。
何が結婚や出産の障害になっているのでしょうか。
都内の介護施設で働く松尾亜佑美さん、25歳です。
仕事に就いて4年。
出身は長野県です。
地元で働く選択肢もありましたが介護需要の高い首都圏で安定した仕事をしたいと東京を選びました。
松尾さんは1人で18人の高齢者を見ることもあります。
結婚への思いはありますが多忙な仕事の中で異性との出会いがほとんどないといいます。
お疲れさまです。
仕事のあとに食事をする相手も、同僚がほとんどです。
結婚したとしても東京で子育てをすることに松尾さんは大きな不安を抱いています。
これは日本全国の家賃の平均金額を表したものです。
東京は7万6000円余り。
全国平均より2万円以上も高くなっています。
家族向けの広い住環境を求めるのは、重い負担となります。
子どもを預けられる保育所も慢性的に不足し待機児童は1万人を超えています。
他県に比べて群を抜いて多い人数です。
こうした状況の中で東京は女性の未婚率が42%と全国で最も高くなっています。
未婚率が高く、出生率も低い現状に危機感を抱き対策を講じようと動き始めたのが東京・新宿区です。
女性の未婚率が都内で最も高い53.8%。
出生率は1を下回っています。
新宿に今若年期の単身者が非常に多いと。
新宿区は、行政として異例の未婚女性の聞き取り調査を去年から始めました。
結婚しない理由として浮かび上がってきたのは「適当な相手に巡り会わない」「今は仕事に打ち込みたい」「収入面に不安がある」などでした。
新宿区は地方からの若年層の流入によって20代から30代の人口が多くなっています。
しかし、この世代が結婚せず子どもを産まないまま高齢化していけば将来的に区全体が縮小するのではと懸念しています。
増田さん、出生率の低い東京という街に、どんどん地方から女性たちが吸い寄せられていきますと、日本の人口減少問題がさらに悪化するという意味では、本当になんとか、流入というのを食い止めなくてはならないですね。
出生率が低いのはどこの欧米の国も一緒なんですが、この人口のね、大都市への流入ということは、日本独特の現象でですね、そのことによってなおさら、東京に来て、ああいう過酷な生活で、なかなか子どもさん産むっていう環境にならない。
ですから政策的に必ず止めなくてはいけないと思いますね。
地方としては何をすべきですか?
これは、貴重な若い女性の人たちの声を徹底的に聞いて、どうしたら地域でいい生活を送れるのかと。
今まではやはり、行政のトップも、そういった20代、30代の若い女性の声に、なかなか触れる機会、あるいは本当にそれを吸い上げる努力がやっぱり足りなかったんじゃないかなと思います。
危機感はどう感じてらっしゃいますか?
まだ、市町村別のデータが、やっとこういうふうな形で、われわれの推計でありますけれども、明らかになり始めたんで、まだまだ危機感という意味では少し薄いんではないかと思いますね。
そして、東京のやるべきことっていうのも、本当に山積みですね。
そうですね。
住宅の問題をどうするのかだとか、それから、今、ああいう若い人たちがね、厳しい環境の中で仕事をしているわけですけれども、それをどのようにこれから改善していくのか。
実はむしろ、スケールがでかいだけに、東京がこれから、東京オリンピックを過ぎて、一挙に全体が高齢化していく。
後期高齢者の数が東京は2040年には、今から2倍。
まだまだ高齢者増えて、支えていく若い人たちの数はずっと減っていきますので、この問題の解決に、本当に全力を尽くさなければいけないと思います。
しかし、深刻なのは女性の、若年女性の数そのものが今、急速に減っている。
残念ながらというか、第2次ベビーブーム世代ですね。
一番最後、1974年生まれの人が、ことし39歳。
なかなか子どもを産み育てるという、そういうチャンス、機会がないんだと思うんですね。
でも、諦めることなく、いろんな対策やっていかなければならないと思います。
出生率にばかりちょっと目を向けていましたけれども、本当に絶対数が減ってしまったと。
むしろ大事なのは、その若い女性の数、あるいは男女も含めた、20代、30代の数を、どのようにこれから危機感として捉えていくかだと思います。
そして、その極点社会。
これは具体的にどういうイメージですか?
なだらかな人口減少になれば、私いいと思うんですね。
人口減少社会は避けられないけれども、それを超えた極点社会になると、一挙に地方が500以上の自治体が消えてしまって、そして東京の過密さは、過酷さは変わらないという、極めてアンバランスな世界が、日本で生じてしまう。
ここに非常に危機感を感じます。
1年の遅れが、またその人口減少を加速するおそれがあるわけですよね。
ですから、できるだけ早くこの対策取りかからないと、5年遅れれば、300万人ずつ減っていきますので。
2014/05/02(金) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「極点社会〜新たな人口減少クライシス〜」[字][再]
日本は今、縮小化していく危機的な状況にある…。高齢者すら減少し始めた地方。一方、首都圏には若年女性の流入が止まらない。最新データを元に、日本の未来を可視化する。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京大学大学院 客員教授…増田寛也,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京大学大学院 客員教授…増田寛也,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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