（愛美）来月また排卵日にしよう？
（繁郎）いや。
ちょっ…。
ちょっとごめんね。
ごめん。
（繁郎）もう二度とごねたりしない。
愛美さんの排卵日に合わせてちゃんと精子を提供します。
（聖美）どうしたの？急に。
（繁郎）どうしたもこうしたもないよ。
陽のためだ。
（愛美）認知はしてくれるんだよね？
（繁郎）えっ？
（愛美）繁郎さんがパパだってことはっきりさせてくれるんだよね？ねえ？どうなのよ？どうするのよ！いや。
き…急にそう言われても。
必要ないんじゃない？認知なんて。
どっちみち私たち夫婦の子として育てるんだもの。
正式に養子としてうちの戸籍に入れるんだから嫡出だとか嫡出じゃないとか関係ないでしょう？私その話ちゃんと聞いてない。
私の子なんだから私が育てたっていいわけでしょう？何で最初から自分たちで引き取るって決めてんのよ。
いや。
それはもともと私たち夫婦の子をあなたに産んでもらおうって話から始まったことだから。
勝手だよね。
自分の子を手放す母親の気持ちなんて何にも考えちゃいない。
生みの母親から引き離される子供の気持ちだって。
分かんないんだよ。
あんたは捨てられずにお母さんの手元に残された方だから。
私は…。
あのう。
そのことなんだけどちょっといいかな？あのう。
そもそもその子に父親は誰かって伝えるところから問題があるよね。
いや。
僕が父親だっていうのは公にはできないわけだしそうなると…。
（愛美）知られたっていいじゃない。
事実なんだから。
現実考えて物言ってちょうだい。
そうやってみんなお体裁ばっかり。
（弘明）自分の子なのに父親とは名乗らず養父として育てる。
こりゃ相当厄介だ。
だろう？じゃあどうしろっていうのよ？いや。
愛美さんが育てたいっていうならそうしてもらった方がいいんじゃないかなって。
いや。
もちろん生活費とか養育費はこっちで全面的に支援するってことでさ。
父親は？だからそれは愛美さんがどこかで誰かの子を産んでシングルマザーになったってことにするしかないんじゃないかな？でその子のＨＬＡがたまたま陽と一致してたってことにして。
何それ？どっかで誰かの子を産んだって？人をバカにするのもいいかげんにして！
（弘明）やめろ。
おい。
何やってんだ。
おい。
（愛美）放して！
（弘明）やめろ。
おい。
落ち着け。
おい。
落ち着け。
（弘明）ほら。
落ち着け。
（愛美）要するに出てけってことだよね？赤ちゃん連れて。
私もいらない。
赤ちゃんもいらない。
欲しいのは臍帯血と骨髄だけってことだよね。
自分の都合で私を遠くへ追いやって必要なものだけを赤ちゃんから奪っていこうなんて。
あまりに虫がよ過ぎるんじゃない？そんなんだったら降りる。
赤ちゃん産まない。
（弘明）ちょっ。
待て待て。
愛美。
愛美！
（弘明）ほら。
待てって。
おい。
愛美！出ていけなんて一言も言ってないわよ繁郎さんは。
もちろんこっちで一方的に引き取ってあなたと赤ちゃんを引き離すようなこともしない。
ただ繁郎さんが言うようなストーリーは必要かもしれないわね。
ストーリー？あなたには好きな人ができたってことにしてほんのしばらく家を離れてもらう。
でもまたすぐ帰ってくればいいのよ。
大きなおなかで出戻ってこいっていうの？相手の人とはうまくいかなかったことにするしかない。
あっ。
あなたには申し訳ないけど。
どっかの誰かさんねぇ。
帰ってきづらいよね。
男運のない不幸な女ってまた余計なレッテル貼られちゃう。
峻だってがっかりする。
また母さんがしくじったって。
だいたい峻に何て説明すればいいのよ？そ…そうだ。
峻君どうすんの？でっち上げの逃避行に一緒に連れてくわけにはいかないでしょう。
うーん。
あの子はこのままうちで預かるわ。
あなたもその方がいいでしょう？峻は医者になりたがってるから。
陽君の病気治してやりたいって。
そうだったんだ。
（愛美）あの子だけはずっとここにいさせてやってほしい。
たとえ私がどんなことになったとしても。
それは大丈夫よね？あなた。
ああ。
もちろん。
峻君の将来は約束されたも同然よ。
生まれた赤ちゃんを私たち夫婦の養子にするかあるいは愛美が育てるか。
そのことについてはできるだけあなたの気持ちを尊重する。
あなたがどうしたいかそれを最優先にするから。
お願い愛美。
力を貸して。
あなたのために。
峻君のために。
新しく生まれてくる赤ちゃんのために。
私たちみんなで力を尽くすわ。
お願い。
分かった。
やってくれるのね？愛美。
ハァッ。
（弘明）愛美さんもなかなか痛いところを突いてきますね。
《私もいらない。
赤ちゃんもいらない》《欲しいのは臍帯血と骨髄だけってことだよね》《自分の都合で私を遠くへ追いやって必要なものだけを赤ちゃんから奪っていこうなんて》《あまりに虫がよ過ぎるんじゃない？》あれを言われたらさすがのあなたもぐうの音も出なかろうと思ったら即席のストーリーで見事にひっくり返しちまった。
私弘明さんが思ってるほど人でなしじゃありませんから。
陽のところへ参りますので。
ハァー。
（波津子）あら。
また病院行ってたの？
（愛美）ええ。
ちょっと。
（波津子）何だか最近ちょこちょこと出入りしてる気がするけど。
姉さんにくっついて陽君のお見舞いに。
（波津子）あっ。
じゃあ私も顔見てこよう。
（愛美）あっ。
お母さん。
今度また謡を聞かせてもらえませんか？出産前の姉さんに毎日聞かせてたみたいに。
何だか情操教育によさそうだなと思って。
でもあなたあれは胎教でおなかの赤ちゃんに聞かせるために。
胎教。
いいじゃないですか。
（波津子）ママ。
どこ行ったの？
（陽）諏訪先生のとこ。
（波津子）へえー。
だったらあの人さっさと帰らないで陽のそばにいてくれたらいいのにね。
気が利かないわね。
（陽）誰のこと？
（波津子）愛美さんよ。
峻ちゃんのママ。
さっきママと一緒に来たんでしょう？来ないよ。
峻君のママ。
たまにしか会ったことないし。
（波津子）だってママにくっついてしょっちゅう来てるって。
（陽）ううん。
（波津子）そうなの？何か変よねあの人たち。
（瑞穂）大奥さま。
お久しゅうございます。
（波津子）あら。
あなた。
（瑞穂）お腰の具合はいかがでしょうか？いつの話？もうとっくに治ったわよ。
その節は差し出たことを申しまして。
金輪際ご家族のお邪魔になるようなまねはいたしません。
ですからまた以前のように何でも気軽にお申し付けいただけないでしょうか？少しでも大奥さまのお力になりたい。
それが私の生きがいなんです。
よしてちょうだい。
大げさな。
何かたくらんでらっしゃるように思うのですが。
たくらむ？
（瑞穂）これまでどんな小さなことでもお耳に入れるよう仰せ付かってまいりましたので念のため。
だから何のこと？えっ？誰が何をたくらんでるっていうの？内容は分かりません。
ですが最近院長先生と弘明先生。
それに若奥さまと妹さん。
４人揃って院内で何やらひそひそと。
繁郎と弘明も？お引き留めして失礼いたしました。
（波津子）ちょっと待って。
だからそれだけじゃ何のことか分からないわ。
お疲れさまです。
患者さんのスケジュール管理でしたら私がいたしましたのに。
（弘明）あんたには他にもやることがあるだろう？婦長さん。
（瑞穂）これも仕事のうちですわ。
（瑞穂）先生のお役に立ちたいんです。
何のことだ？院長先生と何をご相談されていたんです？それに若奥さまと妹さんもご一緒に。
ここんとこ静かでありがたいと思っていたらいよいよスパイ活動再開か。
で大奥さまは何を探れとおっしゃってるんだ？
（瑞穂）存じません。
（弘明）頼まれたんだろ？様子を探ってくるように。
間諜役はとっくにお払い箱になりました。
お払い箱？大奥さまにとって私はもう何の利用価値もないそうです。
さてはバレたか。
俺とのこと。
だとしたら病院からもお払い箱にされています。
何か秘密裏に進めてらっしゃるんでしょう？
（閉じる音）
（瑞穂）必要なときはいつでもおっしゃってください。
私きっと先生のお力になれますわ。
失礼いたします。
・「煙の浪をしのぎつつ海漫々と分け入りて」・「直下と見れども底もなく」・「邊も知らぬ海底にそも神變…」スケジュールできたって。
意外とマメなんだね弘明先生って。
ちょっと。
何これ？真夜中に注射って。
誰にも気付かれないようにこっそりとね。
誘発剤なんて打たなくたって毎月ちゃんと排卵してんのに。
卵１つじゃ普通に妊娠するのと変わらない。
いい卵子がたくさん必要なの。
めんどくさい。
どうせだったらちゃんとエッチして赤ちゃんつくりたかったな。
それができれば苦労は…。
・
（足音）お稽古お済みですか？お母さま。
あっ…。
お茶でも入れましょうか？
（波津子）いや。
あ…あのう。
ちょっとお手洗いにね。
後でいいわ。
（愛美）どうせいつかはバレるのに。
まだ何も始まってないこの時期に知られて反対されたんじゃ元も子もなくなってしまう。
じゃあいつまで秘密に？できるだけ長く。
いくら反対してももうどうすることもできないってところまで。
どえらい修羅場になりそうだね。
そんときは。
修羅場？
（峻）「木を植え続けていた」「１９１０年に植えたカシワが１０歳になって…」・
（足音）
（弘明）いい受精卵ができましたよ。
愛美さんの卵子もよく成熟してくれたし兄貴の精子も今回は元気によく動いてた。
いよいよなのね？
（弘明）緊張していますか？こうなったらまな板の上のコイ。
覚悟はできてるわ。
（弘明）では始めます。
（弘明）もう少し脚を開いてください。
おなかが痛いって？
（男性）うーん。
この下…。
・
（林田）何をやっとんだね？婦長。
（瑞穂）事務長。
（林田）おや。
若奥さまじゃないか。
失礼いたします。

（愛美）ハァー。
横になってた方がいいんじゃない？ここでいい。
大げさに布団なんかひくと峻が帰ってきたときに変に思うから。
ご苦労さまでした。
本当にありがたいと思ってる。
こんな大変な役割を引き受けてくれて。
あなたっていう妹がいなかったら。
そう思うと本当にお母さんに感謝したくなる。
上がったり下がったりお母さんも大変だ。
今日の愛美優しい顔してる。
そう？優しい柔らかい顔。
何でだろう。
ここに赤ちゃんがいるって思うと自然と穏やかな気持ちになる。
今はまだ赤ちゃんのもとだけどね。
女って不思議な生き物だよね。
大好きな男と愛し合って燃え上がって授かった赤ちゃんじゃなくてもちゃんと母性が湧いてくるんだから。
産みたかったな私も。
もう一人。
うらやましい。
ママになるあなたも。
パパになる繁郎さんも。
考えられないよね。
まさか私がお兄さんの赤ちゃん産むことになるなんて。
・
（物音）お母さま。
先生のお宅にお稽古にいらしたんじゃ？何かあるってそう思ったから。
けさのあなたたち見て何かおかしいって。
冗談よね？今の話ホントじゃないわよね？嘘でしょ？ねえ？嘘なんでしょ？この人が繁郎の子を産むなんて。
お母さま。
（波津子）お願い。
嘘だと言って。
もう。
嘘なんでしょ！？ねえ。
お願いよ。
お母さま！あっ。
ハァー。
何てことしてくれたの。
まさか。
まさかあんたたち４人でそんな恐ろしい計画を進めてたなんて。
これで陽の命が救われる。
その思いで私も繁郎さんも愛美も弘明さんも心を一つにしたんです。
いくら陽のためだからって実の妹に自分の亭主の子をはらませるなんてどうかしてる。
正気の沙汰とは思えない。
愛美しかいなかったんです。
妊娠できない私の代わりを務められるのは。
赤ちゃんが産めない私のために愛美は勇気を奮って普通じゃできない決心をしてくれたんです。
人殺しじゃないあの女は。
そんな女に。
そんな女に繁郎の子を産ませるなんて冗談じゃないわ。
愛美に罪はありません。
裁判でちゃんとそう…。
裁判なんて関係ない。
あの人はあの手にはさみを握って人を刺し殺したの。
生まれた子は表向き僕の子供ということにはしない約束に…。
だから何だっていうの？何で言ってくれなかったの。
何で一言相談してくれなかったの。
知ってれば絶対そんなことさせなかったのに。
だから言わなかったんです。
お母さまに話せば道が途絶えてしまうから。
陽の命をつなげなくなってしまうから。
さては弘明ね？あの男があんたたちをたらしこんで神をも畏れぬ悪魔の所業に手を染めさせたんだ。
母さん。
復讐しようとしてんだ。
この家を壊滅させようとしてんだ。
いや。
弘明はホントに親身になって陽のことを考えてくれてるんです。
もう誤解しないでやってくださいよ。
今すぐ流してしまって。
そんな子供。
すぐに弘明を呼んであの女に植え付けた赤ん坊を始末させなさい！2014/05/02(金) 13:30〜14:00
関西テレビ１
聖母・聖美物語　＃２４[字][デ]【愛の母子篇〜情操教育】

白血病の息子のため、聖美（東風万智子）は妹の愛美（三輪ひとみ）に代理母となり骨髄移植ができる子どもを産んで欲しいと訴える。結果を急ぐ聖美は驚くべき方法を提案し…

詳細情報
番組内容
　愛美（三輪ひとみ）は生まれてくる子供の認知をしてくれるのかどうか、聖美（東風万智子）を問い詰める。聖美が養子として柳沢家に迎え入れるつもりだったと知り、愛美は激怒。一切の相談もなしに何でも決める聖美や優柔不断な繁郎（原田龍二）の態度に、妊娠の話は白紙にする、と言い出す。
　聖美は家族のため、峻（谷藤力紀）のためと言葉巧みに愛美を落ち着かせる。
番組内容２
そのしたたかさに舌を巻く弘明（金子昇）に対して聖美は、「私はそこまでひとでなしではありません」と言うが…。
　聖美は波津子（丘みつ子）にだけは計画を知られぬよう、秘密裏に事を進める。ところが瑞穂（魏涼子）が聖美や弘明の不審な行動に気づき、波津子に報告。以来、波津子も聖美や愛美の言動に目を光らせるようになって…。
出演者
柳沢聖美：東風万智子
森尾愛美：三輪ひとみ
柳沢繁郎：原田龍二
柳沢弘明：金子昇
柳沢波津子：丘みつ子
星川真輔：風間トオル　ほか
スタッフ
企画：横田誠（東海テレビ）
原作・脚本：いずみ玲演
演出：吉田使憲
プロデュース：西本淳一（東海テレビ）
中頭千廣（ＴＳＰ）
神戸將光（ＴＳＰ）
齋藤頼照（ＴＳＰ）
音楽：辻陽
主題歌：「炎の花」ハルカ　ハミングバード（ユニバーサル　ミュージック）
制作著作：ＴＳＰ
制作：東海テレビ
ご案内
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード（ステレオ）
サンプリングレート : 48kHz

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