頼んでおこうか?余計なお世話だ。
そうと決まればまだ乾君そのへんにいるはずだからお願いしてこようか?ちょっと待て待て。
あっいたいた!あそこ!えっどこ?冗談よ。
(桜田由里子)今までありがとうございました。
(浅輪直樹)ごちそうさまでした。
(石川倫子)は〜い。
あっ置いといてねあとで洗っとくから。
あっいいよいいよ。
俺こういうの嫌いじゃないし。
何よ。
いやいいなぁと思って倫子ちゃんの真剣な顔。
最近はパティシエも増えたからね。
生き残るためには技が必要なのよ。
そっか。
よし出来た!ねえねえどう?おお〜いいじゃんいいじゃん!本当に?本当に?天才天才!わあやった!頑張ろう!
(携帯電話)はいもしもし浅輪で〜す!すいません!靴カバーお願いします!ありがとうございます!
(青柳靖)「浅輪で〜す」って電話出たろお前。
(村瀬健吾)被害者は桜田雅和さん50歳。
世界最大金融グループUSホールディングス日本支社のマネージングディレクターです。
(村瀬)このマンションの一室を仕事場として借りてたみたいですね。
これ刺殺ですか?
(小宮山志保)うん。
多分車に乗ろうとしたところを後ろから。
でも凶器はまだ見つかってない。
(矢沢英明)何してるんですか?
(青柳靖)こっそりなんか明かり持ってきて。
ライト!シーッ!
(青柳)ちょっとこの下見て。
ほらあれ。
届くかな?ちょっと待って…。
取れる?届かない…。
届く?届く?届かない。
いや届かない。
(青柳)届く?
(矢沢)届かない!何やってんだあの2人。
放っときましょう。
係長仕事場見てきます。
行きましょう。
(村瀬)いやいや放っときすぎだろ…。
(加納倫太郎)あっ待った!鑑識さん!鑑識さん!鑑識さん!カメラ!
(カメラのシャッター音)なんですかね?なんなんだろう?でも仕事場らしくない仕事場ね。
マネージングディレクターって…どういう仕事?簡単に言えばあれだよ…銀行員だよ。
銀行員だと思った。
(村瀬)はぁ…。
しかし銀行員にもこういった仕事場っていうのは必要なのかね?ふ〜ん。
「隠れ家の温泉」。
フッ…。
小宮山君も主任になってろくに休みも取れてないしたまにはこういう温泉とか行って…。
あれ?えっ?指紋が拭き取られてる?はい照合出来そうなものがないんですよね。
主人です。
間違いありません。
被害者桜田雅和さんの家族は奥さんの由里子さんそれとロンドンに留学中の息子さんが1人。
あと奥さんは…。
(青柳)ニューヨークの大学中退して玉の輿ね。
いいねえ。
で?青柳さんたちは何を見つけたの?はい。
車の下にあったセカンドバッグから通帳が。
昨日200万引き出されてます。
200万?そんな金どこにもなかったぞ。
犯人が持ち去ったって事ですかね?それはどうかな…。
あとは?えっと…。
いや…。
青柳さ〜ん?
(青柳)あ〜。
青柳さん!あとはないから!はいありがとう。
離婚届?
(矢沢)うん。
これ奥さんの名前しか書いてないじゃないですか。
あれ?これ日付昨日ですね。
こんな大事なもんをあんたって人は!
(くしゃみ)奥さんには私と村瀬さんが会うから青柳さんたちは会社関係をお願いします。
(くしゃみ)係長たちは解剖結果お願いします。
(加納・浅輪)はい。
(くしゃみ)
(早瀬川真澄)死因は鋭利な刃物で刺された事による出血性ショック死です。
刺創が深さ13センチ。
遺体の硬直具合と直腸温度から見て死亡推定時刻は昨夜22時から23時の間です。
右の手のひらのあの…。
あれなんですかね?ピンクの塗料ですか?これダイイングメッセージの可能性ってあります?それはないと思う。
ご遺体は右腕の方が筋肉が多かったから。
つまり右利き。
右利きだったら左手に書くんじゃない?なるほど。
(日下次郎)独立して新しい会社を立ち上げるって言ってました。
新しい会社?へえ〜どういう会社ですかね?それが詳しい事は知らないんですよ。
でもすごいやり手でシンガポール支社長になる話も断ったぐらいですからすごい会社立ち上げるんじゃないかって噂でしたよ。
そこまで仕事がよく出来るとなると周りに敵が多かったんじゃないですか?普通そう思うでしょ?あれ?違うんですか?誰にでも好かれる人でしたからね。
上からも下からも。
女性からも?ええ女性にも…。
とても優しい人でした。
誕生日にサプライズパーティー開いてくれたりクリスマスにはフレンチのフルコースごちそうしてくれたり…。
まるで自分がお姫様にでもなったような気分にさせてくれる。
ではなぜ離婚届を?ご主人のバッグの中にありました。
離婚届渡してらっしゃいますよね?ある日突然全てがなくなったんです。
誕生日もクリスマスも結婚記念日も。
昨日も主人の誕生日だったんですけどね…。
新しい人が出来たんです。
5年ほど前から。
その人物に心当たりはあるんですか?詮索しても自分が傷つくだけですから。
当日の桜田雅和さんの足取りなんですがえー9時に出社。
その足で会社を退職。
退職!?早期退職。
え〜…。
12時過ぎには社員に見送られて会社を出ています。
で奥さんの話によると帰宅したのが12時半頃。
(桜田雅和)会社でもらった。
やっとひと区切りついた。
第二の人生の始まりだ。
よかったですね。
ああ。
私も今日から第二の人生を送らせてもらいます。
えっ?今までありがとうございました。
その後桜田さんは車で出かけたそうよ。
それが13時。
(矢沢)まさに熟年離婚のパターンですね。
その後奥さんは?
(志保)ずっと家にいたって言ってる。
(村瀬)まあ普通に考えれば旦那はそのあと2人が見つけた貯金通帳の200万あれ持って愛人に会いに行ったと考えるのが妥当だろうな。
愛人?奥さんの話だと旦那には5年ほど前から特定の愛人がいたらしいんだよ。
その話桜田さんの部下の話と一致しますね。
5年前から頻繁にアリバイ作りを頼まれてたそうです。
クリスマスでしょバレンタイン誕生日…。
あっそうだ!父の日とか母の日とかまで一緒にいた事にしてくれって。
父の日母の日って…相当気合入ってるじゃないっすか。
(村瀬)そっちは愛人の身元割れたのか?
(青柳)いえまだです。
なので我々は引き続き仕事関係友人関係を当たる事にします。
なっ行こう。
しゃ…しゃ…写真…。
(くしゃみ)行こう。
あれ?あれれ?
(くしゃみ)ヘヘヘ…怪しいっすね〜。
まあいつもの事だよ放っとけ。
でも…なんか気にならない?いやだっていつもああだろあの2人は。
違うわよ奥さん。
奥さん?遺体確認の時に喪服で来たでしょ?まだ確認の段階なのに喪服で来るなんて変じゃない?だよな…。
それにご主人に対面した時の態度がなんていうか…。
まあ通常の反応だと泣く怒る黙るですよね。
そのどれでもなかったの。
冷静っていうかまるでひとごとみたいで…。
もしかしてご主人が亡くなってた事を知ってたんじゃないかしら。
(村瀬)えっ!?それ奥さんが犯人って事になっちゃうんじゃないですか?
(志保)あぁ…そうなる?そうなるでしょ?出来た!なんですか?何が出来たんですか?被害者の右手に残ってたんですよ。
なんの模様だと思います?え〜?
(村瀬)なんだ?あっ!ちょっと…。
じゃあ僕行ってきますね。
いや一緒に行くよ。
ちょちょちょ…!いいですいいですって!僕すぐ戻ってきますから。
ねっ?係長はここで車見ててください。
じゃあいってきま〜す。
そう?おおっ!
(倫子)わあ!ビックリした!どこ行くの?駅前のあの…薬局。
トイレットペーパー切れちゃったから。
あ〜そんな事よりこの間さケーキに描く文字の練習してたじゃない。
本見ながら。
あ〜カリグラフィー?カリグラフィー?うん。
あっちょっと待って。
これ。
ちょっと見せて。
カリグラフィーっていうのは簡単に言うと西洋の習字みたいなもの。
ほらこういうなんか誕生日とかバレンタインとかお祝いのカードによく使われてるの。
カード?ん?ごめん。
これちょっと借りるわ。
うん。
うわあちょちょちょっと…!
(倫子)あ〜何!?どどど…どこ行くんだよ〜!だから薬局行くって。
いや…今は行かない方がいいって。
どうしてよ?いやどうしてってその…。
あっそうそう。
あそこの薬局は12時からタイムセールだから…。
ほらまだ11時20分じゃん。
お待たせしました。
あ〜疲れた…。
どうしたの?すごいよ汗。
あ〜そんな事より被害者の手のひらの文字これじゃないっすかね?ほら。
被害者はこの文字が描かれたカードか何かを握り締めてたんじゃないですかね?あら?由里子さんと同じ学校…。
(園枝路代)カッパープレート体のLですね。
カッパープレート体のL?ええ。
よかったら…。
イタリック体ゴシック体アンシェル体。
カリグラフィーには色んな字体があるんですがこのカッパープレート体だけが専用のペン先を使って描くんです他の書体はペン先を替える事で文字の太さを変えるんですがこの書体だけは筆圧の変化によって太さを変えるんです。
ちょっと拝見してよろしいですか?あっどうぞ。
どう思います?えっ?ああ…「IwanttoeatFish」。
これ猫の気持ちなんですね。
ええ。
一枚の絵が一つの物語をつむいでるでしょ?あ〜はあはあはあはあ。
カリグラフィーは言葉と色彩の融合芸術ですから。
(堀江美奈)すいません今お客様が…。
(青柳)大丈夫です。
僕らもお客さんなんで。
あれ?青柳さんだ。
(青柳)あれ?あっどうも。
あ…どうも。
何?園枝路代さんですよね?はい。
桜田雅和さんの事でちょっとお話をお伺いしたいんですが。
桜田君が何か?はい。
一昨日何者かに殺害されました。
管理人も言ってただろ。
被害者の仕事場行くにはこのエレベーター使うよりもこっちの非常階段使って出入りした方が便利だって。
ましてや人目気にする犯人が…。
邪魔!
(村瀬)わざわざ監視カメラに映るようなルートをとるとは思えないんだけどね。
でもチェックはしておくべきだと思うけど。
いや言いたい事はわかる。
俺は何も君の…。
(志保)邪魔!君の主任としての方針に従えないって言ってるわけじゃないんだよ。
ただもっと時間を有効に使う…。
(志保)あっ!えっ何?あっ!桜田さんの部下が撮った写真です。
あなた桜田さんとお付き合いなさってました?いいえ。
桜田君とは単なる友人です。
へえ〜。
その割には随分仲よさそうですけどね。
この日は偶然会ったんです。
15年ぶりぐらいだったんで昔の話で盛り上がって。
15年前ってあなたニューヨークにいらっしゃいましたよね?はい。
桜田君もニューヨークに赴任していて彼とはそこで知り合いましたから。
そうすると奥さんの由里子さんもご存じなんですか?そういえば由里子さんも同じニューヨーク大学の…。
ええもちろん知ってます。
あの当時芸術学部には日本人は私たち2人しかいませんでしたから。
(美奈)先生ソウビ出版との打ち合わせのお時間です。
という事ですのですみません。
あの…最後にもう1つだけよろしいですか?一昨日の夜どこで何してました?一昨日の夜桜田君と会ってました。
六本木のシアンというバーで。
突然電話があって会ってほしいって。
でも夜の9時には別れました。
でそのあとは?それから帰って自宅にずっといました。
一人なのでそれを証明してくれる人はいませんけど。
六本木のシアンですね。
調べさせてもらいます。
どうも。
行こう。
あっすいません。
ちょっといいですか?その時何かお渡しになりませんでした?何かって?例えばカリグラフィーのカードとか。
渡してません。
そうですか。
失礼します。
(ため息)
(志保)マンションの防犯カメラに映ってました。
由里子さんあなた一昨日の夜10時半ご主人の仕事部屋に行ったんですね。
(村瀬)「どうして嘘をついたんですか?」「疑われたくなかったんです」もしかしてご主人が亡くなっていた事を知っていたんじゃないですか?私ずっと気になってたんです。
あなたが喪服でいらした事を。
警察から連絡があってあなたがここに来るまで1時間。
喪服をわざわざ出してる余裕があったのかなって。
私が殺したって言うんですか?本当の事を知りたいだけです。
確かに仕事場へ行きました。
(チャイム)
(由里子の声)でも誰も出てきませんでした。
ふと車で行った事を思い出して…。
(村瀬)その人は誰ですか?あなたの知ってる人ですか?
(村瀬)なんで警察に連絡しなかったんですか?自分でもなぜなのかよくわかりません。
多分迷っていたんだと思います。
彼女に似てたから…。
彼女?彼女って誰ですか?彼女とは高校時代からずっと一緒でした。
好きな本も好きな絵もやりたい事も全部一緒。
当然のように一緒にニューヨークへ行きました。
でも関係を絶ちました。
私が彼女の恋人を好きになってしまったから。
それはご主人の事ですか?はい。
夢を選ぶか恋を選ぶか悩んでいた彼女の相談に乗りながら私は主人の心の隙間に入っていったんです。
でも17年経って今度は奪い返されました。
彼女とは一体誰なんですか?園枝路代さんです。
(由里子)「主人が路代と会っていると確信したのは…」2年ほど前です。
ふと思い立ってパソコンで彼女の名前を検索してみたんです。
そしたら…。
(ドアの開閉音)おかえりなさい。
まだ起きてたのか。
遅くなるって言ったろ。
眠れなくて…。
あなたこそ体大丈夫ですか?クリスマスだっていうのに残業ばっかりで。
昨日も…残業だったんですよね?ああ仕方ないんだよ。
部下の日下知ってるだろ?あいつが決算ミスしてさ。
路代がアメリカから帰国したのが5年前。
考えてみたらちょうどその頃から主人の様子がおかしくなったんです。
5年間私は嘘をつき続けられてきたんです。
由里子さんはあの辺りで被害者に覆いかぶさるようにしてる路代さんらしき人物を見たって言ってるの。
あぁ…。
でそのあとあっちの非常階段の方に走って逃げた。
そう。
(村瀬)ちょ…ちょっと早くしてもらっていいかな…。
結構きついんだよこの体勢。
ああじゃあお願い。
えっとこんな感じ?そうそんな感じ。
そのままね!そのままよ!ちょうど22時半。
逃げて。
(村瀬)どうだった?いやあのライトが逆光になってさよくわかんなかった。
いやいくら逆光っていっても友達だったら普通間違えないだろ。
(真澄)ねえ…。
ん?ちょっと来て。
えっ?これ見て。
何?これ。
失礼します。
すいませんちょっといいですか?何か?「RestinPeace」安らかに眠れ…。
せめてもの供養にと思って。
お付き合いされてたんですよね17年前ニューヨークで。
由里子さんが話してくれましたよ。
彼女が何を話したか知りませんけど遠い昔の事ですから。
カッパープレート体って書体難しいですね。
いくら練習してもうまくならない。
初心者には最も難しい書体ですから。
でもコツがあるんです。
コツ?教えて頂けます?なんて描きましょう?そうですね…。
「Love」これ…同じですね。
うん。
この塗料の商品名がaquarelle。
アニリン染料をベースとした透明の水性カラーインク。
水性インクだからこうギュッと握った時に汗かなんかでこうスタンプみたいについたって事ですかね。
でもどうしてこれが植え込みの中に?だから犯人が慌てて持ち去ろうとしたんだけど落としちゃって気がつかないまま逃げたんだよ。
アクアレールって意外に出回ってるインクですよね。
うん。
同じアクアレールでも成分が微妙に違っててこれは18年ぐらい前にアメリカで限定発売されたもので日本では売られてないそうよ。
という事は犯人は18年前にニューヨークでカリグラフィーをやってた人物って事じゃねえのか?それって…。
あの先生だ。
行くぞ。
ああちょっと…ちょっとこれ見てください。
なんだなんだ?カリグラフィーの先生が書いてくれたんです。
(青柳)ん?
(志保)筆跡違うように思うけど…。
うん違うな…。
筆跡違いますよね。
いや…。
(矢沢)ちょちょちょ…!本当に行くんですか?筆跡違ってたじゃないですか。
何言ってんだよ。
相手はプロだよ。
筆跡ぐらいちょちょって変えられるんだよ。
もう…!
(美奈)先生は大学の講義でお昼過ぎにならないと戻ってこないんですけど…。
ええだから来たんですけど。
先生のデザイン帳かなんかあります?古いものでも構いませんので。
ちょっと待っててください。
おい…。
(矢沢)あなたのスケッチブックの文字のインクの成分と桜田さんが握っていたと思われるカードのインクの成分が一致しました。
桜田君が握っていたカード?このカードです。
(青柳)犯人は証拠隠滅のためにこのカードを被害者の手から持ち去ろうとしたんじゃないかと我々は見ています。
(矢沢)事件当夜あなた桜田さんにこのカードを渡しましたね?でもこれを残すと2人の関係がバレてしまいますからね。
「ただわからないのはこの持ち去ったはずのカードが…」
(青柳)現場付近の植え込みのところにあったんですよ。
なぜなんですかね?落としちゃったんですか?現場であなたを見たという目撃証言まで出てるんですよ。
(志保)由里子さんが路代さんを見たって本当かな?嘘ついてるっていうのか?いや…なんかすごく大事な事を隠してる気がするの。
ほらあの日自宅のキッチンにあったケーキ作りの道具。
あの日はご主人の誕生日。
離婚届渡したのにケーキ作ってたなんておかしくない?浅輪君。
はい。
ちょっと。
はいはい。
これ何?え?みんなさ「LoveYou」なんだけどここだけ…。
ああこれね「UnAngePasse」って読むんです。
これフランス語なんですけど会話が途切れた時とかに使う「天使が通った」っていう意味なんですよ。
ほう〜。
あっそういえば有名なグループいましたね。
アンナンジュパッセアンナンジュパッセアンナンジュパッセ…これだ。
浅輪君…。
はい。
ちょっと付き合ってくれる?ああ…わかりました。
これあなたのスケッチブックの写真です。
これ見てください。
ここのカーブのところとかこの癖っぽいところとかこれ同じですよね?これ同じ人が描いたんです。
このカードあなたが描いたんですよね?私じゃありません。
(2人)ええっ!?えっじゃあ誰が描いたっていうんですか?これを描いたのは…。
(由里子)すみません今手が離せないんです。
お引っ越しなさるんですか?家を処分して息子の住むロンドンにでも行こうかと思ってるんです。
それにしては随分急ですよね。
何もかも早く忘れて一からやり直したいんです。
(志保)これあなたが描いたものだったんですね。
そんな事もありましたね。
社長が彼女の字体に惚れ込んじゃいましてね。
ボーカルのカオリもイメージにぴったりだって事で頼んだんですけど…。
いやぁあれはちょっと後味が悪かったですね。
何があったんですか?「あの日私は最後の賭けに出たんです」主人が私か路代どちらを選ぶのか試したんです。
今までありがとうございました。
(由里子)結局主人はどっちを選んだんでしょう?ご主人は最初からあなたを選んでますよ。
え…?
(桜田)由里子からもらった。
どういう意味かよくわかんないんだ…。
どっちが由里子の本心か…。
そんなの決まってるじゃない。
路代さんは17年ぶりに桜田さんに会ったそうです。
17年ぶり?それまでは個人的に会った事はなかったそうです。
ソウビ出版のクリスマスパーティーで会ったのは本当に偶然だったそうです。
じゃあ私が見た人は誰だったっていうんですか?私はあなたが嘘をついてるんだとずっと思ってました。
でももしかしたら他の誰かを路代さんだと思い込んでしまったんじゃないかって思ったんです。
(由里子)他の誰かを?あの夜の事よく思い出してもらえませんか?あの夜の事はもう…。
あの日はご主人の誕生日でしたよね。
由里子さん本当はケーキを作って待ってたんじゃないんですか?「LoveYou」のカードと離婚届を渡したあなたはご主人が「LoveYou」のカードを持って帰ってきてくれると信じて待ってたんじゃないんですか?でもご主人は帰ってこなかった。
だからあなたは…。
思い出したくないんです!由里子さん…。
ご主人の右手にはこのカードの跡が残ってたんです。
それなんでだかわかります?とても大切なものだから最後に強く握り締めていたんじゃないかと私は思うんです。
(志保)本当の事を話してもらえませんか?本当の事を話してもらえませんか?ご主人のために。
あの夜私は主人が帰ってきてくれるのを信じて待ってました。
(由里子の声)だけど主人はいつまで経っても帰ってこなかった…。
(由里子の声)路代を選んだんだ。
そう思いました。
私は自分が失ったものを数えていました。
(由里子の声)カリグラフィーアーティストになる夢を持ってニューヨークへ行った。
でもダメだった。
デザイン事務所でもう一度その夢をつかみかけた。
でもダメだった。
親友仕事若さプライド…何もかも失った。
(由里子の声)たった一つ残された結婚生活それさえ彼女に奪われた。
最後の最後に勝ったのは彼女だったんだ。
そう思った時…。
(由里子の声)主人を殺して自分も死にたい。
そう思いました。
(由里子の声)でも誰もいなかったんです。
あったのは赤いバッグだけ。
赤いバッグ?路代がニューヨーク時代に買った革のバッグです。
それを見たからあなたは駐車場にいた女性を路代さんだと思い込んでしまったんですね。
赤いバッグ…。
ん?いやどっかで見た事が…。
なんの話?写真!写真ですよ!失礼。
ひとつお聞きしたいんですがあなた15年前デザイン事務所で働いてましたよね?はい。
あなたこのグループのロゴデザイン頼まれましたよね?はい。
うちの事務所に発注がありました。
でも…。
でも?息子が急病で入院して結局完成出来ませんでした。
(青柳)こんにちは。
こんにちは。
捜査の協力ありがとうございました。
お役に立てましたか?おかげさまで先生の無実が証明されました。
よかったです。
ついでにあなたの事もわかりました。
どういう意味ですか?あなただったんですね。
桜田さんの仕事場に出入りしてた愛人というのは。
何言ってるんですか?この赤いバッグあなたのですよね?先生からもらった。
(青柳)その赤いバッグ今どこにあります?私は桜田さんの愛人なんかじゃありません。
私あなたの事色々調べさせてもらいました。
15年前由里子さんが働いてたデザイン事務所の社長堀江高志さん。
堀江高志さん…あなたのお父さんですよね。
あなたはこのスケッチブック先生が描いたものではないと知りながらわざと我々に渡した。
由里子さんに罪を被せるために。
この仕事は借金を抱えていた父の会社にとってとても大切な起死回生になるはずの仕事だったんです。
大至急で頼むよ。
(堀江高志)はい!ありがとうございます!美奈!これでお父さんやり直せるぞ!美奈になんでも買ってやるからな。
(美奈の声)あんな笑顔の父久しぶりに見たから私も嬉しくて…。
でもダメになった。
あの女が納期を守らなかったから先方は怒って契約を破棄したんです。
その日から父は笑わなくなりました。
(美奈の声)会社は倒産して父の口数はどんどん少なくなってってそして…。
5年前父の遺品を整理していたら偶然自殺の原因があの女だという事を知ったんです。
(美奈の声)許せないって思いました。
だからあの女に会いに行ったんです。
「でもそこにいたのは…」由里子さんではなくて桜田さんだった。
あの人うちの妻にはこんな事実受け止める力ないからって言って…。
俺が代わりに償う。
出来るだけの事はするつもりだ。
だから…頼む言わないでくれ。
あなたが一体何をしてくれるんですか?君の気が済む事だったらなんでも…。
そう…なんでもしてくれるんですね?だからクリスマスバレンタインデー結婚記念日ありとあらゆる記念日に呼び出したんですね。
だってあの女は私のたった一人の親を奪ったんですよ。
今度は私があの女の大切な人を奪って何が悪いの?当然でしょ!最初はあなたと同じように由里子さんに寂しい思いをさせればいい。
そう思った。
だが桜田さん全て引き受けてくれた。
桜田さんはいつ呼び出しても嫌な顔せずに付き合ってくれた。
自分が父親代わりになるからって…。
人を恨むより人を愛した方が幸せになるからって…。
だからもっと自分を大切にしなさいって…。
まるで…本当の父親みたいに…。
そして君の気持ちが一線を越えてしまった…。
たった一つの幸せな時間だったんです。
(美奈の声)それなのに…。
ん?父親として最後に君にしてあげられる事だ。
(桜田)妻からもらったんだ。
もうこれ以上君の父親代わりにはなれない。
奥さんに言うよ。
君の好きにしたらいい。
(刺す音)ああ…!ああっ…!本当に幸せな…幸せな時間だったんです…。
(泣き声)
(美奈の泣き声)
(由里子)17年前私はあなたの恋人を取った。
それどころか2人の関係まで疑って…。
今さら許してもらえるとは思ってないわ。
高校時代から全然変わってない。
思い込みが激しくて独り善がりで…。
知ってた?私がどれだけあなたの才能に嫉妬してたか…。
あなたが桜田君に夢中になって私心の中でどこかホッとしてた。
カリグラフィーを続けるためにはスカラシップをもらうための賞がどうしても必要だったから。
あの時私は男を捨てて夢を選んだの。
あなたは夢を捨てて男を選んだ。
それだけの事じゃないの。
そういえば桜田君こんな事言ってたわ。
第二の人生は由里子に捧げたい。
第二の人生…?雅和さん独立するって言われてましたよね?新しい会社は不動産関係の管理事務所だったそうです。
前の会社よりずっと時間の取れる仕事だったそうです。
(志保)それからご主人のパソコンの中にこんなものがありました。
「2013年冬露天風呂から雪の見える秘湯めぐり」「2014年春世界遺産をめぐるクルーズ船」これご主人があなたと一緒にやろうと思ってた事じゃないんでしょうか?「2014年夏北海道美味しいもの食べ歩き」「2014年秋ヨーロッパ本場のワインとチーズめぐり」全部ずっと私がやりたいって言ってた事ばかりです…。
桜田君本当に由里子の事を愛してたんだね。
路代…私どうしたらいいの?甘えるのもいい加減にしなさい!そんなの自分で考えなさい。
(由里子)そんなの自分で考えなさい…。
昔からいつも路代に言われてました。
その都度悩んで乗り越えてきたけど今回ばかりは自信ないです。
由里子さん。
忘れ物。
あなたの生きてきた証し。
(倫子)何?これ。
私の誕生日まだまだ先だよ。
あっ…ああそうだよね。
うん。
ああいやいや俺もそうだと思ったんだよ。
えー…ああビックリした。
なんで係長こんなの描いたんだろうね?えっあの人が描いたの?えっそうだよ。
あっ…。
あっもしかして…。
ん?今日ね死んだお母さんの誕生日なの。
え〜?でもまさかね…。
フフッ…。
2014/05/02(金) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
警視庁捜査一課9係[再][字]
「死の紋様」
詳細情報
◇番組内容
規格外の捜査官7人で織りなす最強捜査チーム9係、ふたたび始動!先の読めない展開と、重厚かつ濃密な人間ドラマにさらなる磨きをかけた刑事・群像劇シリーズ第8弾!
◇出演者
渡瀬恒彦、井ノ原快彦、羽田美智子、吹越満、田口浩正、津田寛治、原沙知絵 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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