金曜プレステージ・山村美紗サスペンス羽田空港殺人事件〜黒の滑走路4〜 2014.05.02

(衿子)お夜食です。
ここ置いときますね。
(尾崎)待って。
こっち。
(衿子)はい。
(衿子)じゃあ私はこれで。
(尾崎)待ちなさい。
(尾崎)君私に隠し事があるよね?
(尾崎)隠してることがあるだろう!?
(衿子)うわっ。

(衿子)うわっ。
ああっ!・
(蹴る音)
(衿子)うっ。
(尾崎)私から逃げられると思ったら大間違いだ!ハハハ。
(尾崎)うわー!
(衿子)あっ!?
(尾崎)うわー!
(衿子)うっ。
やめて!ああ!
(殴る音)・
(尾崎)うわー!ああ。
(貴代美)じゃあそういうことでお願いします。
(貴代美)小田です。
(衿子)先生。
どうしよう?
(貴代美)衿子さん。
何があったの?・
(衿子)私主人を殺しちゃった。
衿子さん。
落ち着いて。
今どこにいるの?病院に。
(貴代美)病院ってご主人の?もしもし?栄太。
(由香)先生?
(華絵)ご苦労さまです。
(蓮見)お疲れさまです。
(陽子)及川さん。
状況は?
(華絵)殺されたのは病院長の尾崎孝雄さん。
頭を灰皿で殴られています。
(蓮見)死後硬直は始まっていませんし死斑もまだ薄いですから死後約1時間です。
(華絵)殴ったのは院長の奥さんらしいよ。
(陽子)奥さん!?
(華絵)第一発見者がそう言ってた。
小田貴代美よ。
(冷泉)小田貴代美って最近よくテレビに出てる?そう。
あの女弁護士。
衿子さん。
小田です。
私があなたを守るから心配しないで。
だからすぐに電話を下さい。
すみません。
羽田空港署の今井といいます。
(冷泉)冷泉です。
(貴代美)弁護士の小田貴代美です。
少しお話聞かせてください。
あなたが第一発見者だと聞いたんですが。
(貴代美)はい。
ここ1カ月尾崎衿子さんからDVの相談を受けていました。
DV?
(貴代美)衿子さんご主人から日常的に暴力を振るわれていたんです。
今日も殴られそれで身を守ろうとしてとっさに。
衿子さん泣きながら私にそう電話をしてきました。
でも途中で電話が切れてしまって。
それで。
(貴代美)《うわっ!?》《ああ。
えっ?ああ》
(冷泉)早く見つけた方がよさそうですね?
(貴代美)衿子さんまさか。
とにかく家に行ってみよう。
(冷泉)ええ。
(貴代美)私も行きます。
(冷泉)どうぞ。
(警察官)ご苦労さまです。
ご苦労さま。
(冷泉)ご苦労さまです。
(警察官)玄関のドアは鍵が掛かっていなかったので。
呼び掛けましたが応答はありません。
鍵が掛かってない?おかしいね。
(冷泉)ええ。
冷泉。
(冷泉)はい。

(翠)今井さん。
高橋さん。
どうしたの?
(翠)署で事件のことを聞いたら居ても立ってもいられなくなって。
(翠)ああ。
私うちの課の女性相談窓口で尾崎衿子さんと何回か会ってるんです。
DV相談ね。
はい。
まさかこんなことになるなんて。
ハァー。
あなたは?衿子さんの担当弁護士です。
(翠)あなたが。
(冷泉)主任。
来てください。
どうした?
(冷泉)尾崎衿子は死ぬつもりなんかありませんよ。
うわっ。
(冷泉)金を持ってどこかへ逃げたんです。
うわー。
凶器の灰皿。
(冷泉)はい。
凶器の灰皿。
ほい。
家族の写真。
家族の写真。
ほい。
あっ。
お疲れさまです。
これは大変ご無沙汰いたしております。
捜査1課の宗像班長。
相変わらず検挙率は高いけどクレーム率もお高いそうで。
暴走暴言乱暴横暴。
暴のオンパレードだとか。
このままいっそマル暴に飛んでっちゃった方がよろしいんじゃないっすか?
(宗像)ああ。
久しぶりに会ったら挨拶それか。
相変わらずだなお前な。
大変失礼いたしました。
お前よまず俺に報告だろ。
こうやって夜中にわざわざ本庁から駆け付けてんだからよ。
はいはい。
ご苦労さまです。
被疑者尾崎衿子29歳。
逃走中でまだ身柄は確保できてません。
事件は午後9時半と聞いてる。
もう4時間たってんぞ?分かってます。
何コーヒー飲んでんだよ?お前。
分かってんなら関係者たたき起こして逃走先探れよ。
このバカ。
おい。
逃走先の目星は付いています。
(木島)どこですか?
(冷泉)福岡です。
衿子は5歳になる息子を福岡の親戚に預けています。
その息子に会いに行ったと考えられます。
息子は衿子の連れ子で旦那の尾崎院長に懐かないから3カ月前から福岡に。
だったらさっさと福岡に。
羽田発の最終便はすでに出発済み。
どんなに急いでも福岡に入れるのは明日の午前中。
だから福岡県警に先回りしてもらって私はあしたの朝一で福岡に入ります。
だとしてもだ。
電車やバスの各主要駅を探るよう各警察署に連絡だろう。
このバカ。
もうしました。
あのさ。
バカバカ言わないでくれる?バカにバカって言われるとものすごい腹立つ。
そのバカにまたバカって言われるともっと腹立つんだよ。
バカに言われたかない…。

(翠)あのう。
あっ。
あの。
今井さんの代わりに私が福岡に行かせてもらえませんか?高橋さんが?お願いします!・
(園児たち)・「ぞうさんぞうさん」・「おはながながいのね」おい。
拳銃は念のためだ。
むやみに触るな。
(翠)あっ。
すみません。
何か今井から聞いたんだけどさ。
あんた生活安全課から刑事課に異動したいんだって?
(翠)あっ。
父が刑事でした。
へえー。
(翠)口うるさくてずいぶん反抗しました。
学生のとき万年巡査部長のくせに偉そうなこと言わないでって言ったらひっぱたかれて。
ハハハ。
(翠)それで当て付けで警察官になったんです。
私はお父さんより上の警部になってみせるって。
ふーん。
でも今井さんを見てそんなことどうでもよくなりました。
今井陽子を?今井さんはいつも被害者やその家族のために一生懸命で正義感と優しさにあふれた人です。
父もそうだったんでしょうね。
だから私今井さんや父のような刑事になりたいんです。
そっか。
それ聞いたらきっとお父さん喜ぶよ。
(木島)あっ。
来ました。
尾崎衿子です。
了解。
行くぞ。
はい。
栄太。

(翠)尾崎さん。
(翠)尾崎さん!尾崎衿子。
8時20分。
尾崎孝雄殺害容疑で逮捕だ。
(衿子)栄太!栄太!
(捜査員)じゃあ行くぞ。
(星野)よろしく。

(星野)はい。
星野だ。
宗像です。
尾崎衿子の移送についてなんですけども。
本日午後3時半羽田着のスター航空STJ246便を手配しました。
そのまま羽田空港署で本格的な取り調べを行います。
(星野)尾崎衿子は黙秘しているそうですが。
はい。
弁護士に接見してから話すと。
早急に片付けてください。
その事件に時間を割いている暇はありません。
承知しました。
よろしく。
チッ。
ご苦労さまぐらい言えねえのかよ?ったくよ。
(山下)尾崎院長は南羽田地域の防犯会長も務め人々から尊敬される人物でした。
(山下)ですから奥さんがDV相談にいらっしゃったときは驚きました。
(江波)山下。
(山下)あっはい。
(江波)対応に問題はなかったんだろうな?あっ。
もちろんです。
対応したのは部下の高橋ですが不手際は何一つありません。
(江波)ならいい。
今井。
はい。
(江波)君は山下や冷泉と一緒に空港からの尾崎衿子の移送に同行し取り調べに立ち会ってくれ。
はい。
緊張しろ!緊張!
(一同)はい!
(冷泉)到着ですね。
送検まであと43時間。
そしたらあのブルともおさらばね。
清々するわ。
(冷泉)ブル?忘れたの?あいつのことよ。
宗像勇吾。
(冷泉)ああ。
ブルドッグに似てるからブル。
ハハハ。
ブルドッグに失礼だけどね。

(山下)ご苦労さまです。
ご苦労さまです。
(山下)間もなく到着します。
はい。
ご苦労さまです。
お疲れ。
(山下)こちらへ。
(貴代美)衿子さん。
(衿子)先生!?気をしっかりね。
私が必ず正当防衛で無罪にしますから。
接見は署で手続きを取ってから。
すいません。
大丈夫よ。
すいません。

(風間)ぶっ殺してやる!邪魔だ。
(客室乗務員)あっ!
(客室乗務員)キャー!
(風間)おい!うん!
(客室乗務員)ああー!ああー!
(風間)ぶっ殺してやる!来るな!おら!やめろ!
(風間)ぶっ殺してやる!高橋。
マル被避難。
はい。
(山下)高橋。
あっちだ。

(風間)うわー!
(女性)うわー!皆さん。
警察です。
落ち着いてください。
警察です。
(悲鳴)落ち着いて。

(風間)おい!やるのか!?こら!
(風間)ああー!マル被が逃げました!
(山下)高橋。
大丈夫か?
(翠)はい。
(山下)行くぞ。
すいません。
お願いします。
(警備員)はい。
(風間)邪魔だ!こら!
(風間)どけよ!どけったら。
よっしゃ。
(風間)ああー!やめろよ。
ああ。
(風間)うわー。
ああー!ああー!やめろ。
こら。
みんなどいて。
ほら。
(風間)どけどけどけ。
どけ。
いいかげんにしろお前。
(風間)ああー!
(風間)チキショー。
おら。
チキショー。
ああ。
ああー!おりゃ。
(風間)ああ!冷泉。
逮捕時間だ。
(冷泉)ああ。
えー。
15時48分。
こら。
この野郎。
お前。
散々焦らせやがってお前。
くたくただ。
この野郎。
高橋さん!?高橋さん!しっかりして。
高橋さん。
さ…。
3。
高橋さん?高橋さん?高橋さん。
高橋!死ぬな!死ぬな!高橋!高橋!どうした?高橋翠が拳銃で撃たれた。
拳銃で?ホシは高橋翠の拳銃と手錠の鍵を持って逃走。
おい。
尾崎衿子が逃走したってことか?おい!もしもし?くそ。
緊急配備だ。
あっ。
はい。
すいません。
警察です。
すいません。
警察です。
(笛の音)
(警察官)警戒検問中になります。
免許証を確認できますか?
(山下)今井さん。
ああ。
刑事課の今井警部補です。
高橋巡査の最期は今井警部補が。
こちら高橋巡査のご両親です。
今井と申します。
翠さんのこと誠に申し訳ありませんでした。
(高橋)いや。
謝るのはこっちの方です。
翠のやつアホんだらや。
犯人を取り逃がした上に拳銃を奪われるやなんて。
警察官の自覚が足らんかったんや。
(敏江)あんた。
すんません。
この人今はタチカワで親戚がやっている警備会社で働かせてもろうてますけど。
前は大阪府警で刑事やってたんです。
そうだったんですか。
頼んます。
奪われた拳銃で犠牲者が出んよう早う犯人を捕まえてください。
翠もそれを一番願うとるはずです。
お願いします。
(敏江)お願いします。
分かりました。
どうぞもうお上げになってください。
(敏江)あんた。
すみません。
もう一度お顔を見せていただけますか?
(恵子)はい。
高橋さん。
陽子。
ありがとうございました。
(蓮見)司法解剖は明日の朝8時半からです。
尾崎衿子はまだ見つからないんですって?捜査員の数増やすらしいけど。
陽子。
一つ気になることがあるの。
(風間)仕事が見つかんなくてむしゃくしゃしてたんだよ。
(木島)では鬱憤晴らしのために刃物を振り回したということですか?
(風間)ああ。
誰も殺すつもりなんかなかった。
お前あのときこう叫んでたよな?ぶっ殺してやる。
(風間)《ぶっ殺してやる!》あのときどこ見てた?
(風間)覚えてないな。
お前尾崎衿子を殺そうとしたんじゃねえのか?
(風間)尾崎衿子?誰だよ?それ。
この女だよ。
知らねえな。

(ノック)はいよ。
チッ。
何だよ。
いいとこだったのにお前。
指紋が検出されない?高橋さんが射殺された現場で尾崎衿子の指紋がないなんておかしい。
衿子の逃走を手伝った人間がいる。
つまりその人物が高橋翠を殺し拳銃と手錠の鍵奪ったっていうのか?それからもう一つ。
高橋さん息を引き取る前に私に何か言おうとしたの。
《さ…。
3》あれは何を伝えたかったんだろうか?・
(ドアの開く音)
(衿子)栄太は?栄太はどこ?
(江波)気を付け。
礼。
休め。
捜査会議始める。
(星野)その前に移送中の尾崎衿子を逃走させ拳銃を奪われた上に女性警察官が殺害された。
そして逃走から16時間17分32秒たった今でも衿子の身柄は確保されていない。
宗像さん。
これはいったいどういうことですか?すいません。
(華絵)ねえ?星野管理官何か殺気立ってない?ブルとは犬猿の仲だかんね。
(星野)刑事部長。
そもそもなぜ刑事課ではなく生活安全課の女性警察官が衿子の逮捕や移送に同行していた?それは私が宗像班長に頼みました。
高橋巡査は尾崎衿子からDVの相談を受けてました。
ですから面識のない私が行く…。
私が許可を出しました。
責任は私にあります。
(山下)でしたら私にも責任があります。
生活安全課の山下です。
部下の高橋が逮捕に向かうことを許可しました。
山下課長は最初は反対してました。
ですから…。
かばい合いはやめろ。
(星野)ハァー。
宗像さん。
はい。
拳銃まで携行させていたとはあきれて物も言えませんね。
念のためと思いました。
とにかく全責任は私にあります。
事件解決後にいかなる処分も受ける覚悟です。
(星野)もし奪われた拳銃で犠牲者が出るようでしたらあなたの処罰どころの問題ではなくなりますよ。
ただ今をもって班長の職を解きます。
あなたは羽田空港署の今井主任と組んで捜査に当たるように。
嘘でしょ。
(星野)さっさと移動。
はい。
勘違いしないでよ。
お宅のことかばったわけじゃないから。
俺だってそうだよ。
(華絵)司法解剖の結果高橋巡査の死因は腹部を撃たれたことによる失血死。
犯人は至近距離から1発発砲したもようです。
従って拳銃にはあと4発銃弾が残っています。
以上。
所轄。
何かあるか?はい。
(星野)何だ?
(冷泉)はあ。
えー。
発砲の件についてですが。
隣の化粧室にいた女性が銃声を聞いています。
時間は午後3時45分。

(銃声)
(冷泉)その約5分後。
今井主任が高橋巡査を発見しました。
《高橋さん!》
(冷泉)以上です。
(星野)ハァー。
現場の授乳室は到着ロビーの1階下だそうだが防犯カメラの解析はどうなってる?はい。
(星野)木島君。
(木島)はい。
空港内には500近くのカメラが設置されていてまだ解析中です。
というのも先に起きた無差別殺傷未遂事件のせいで人が入り乱れて個人の判別が困難だからです。
(江波)その未遂事件と逃走事件との関連性は?現時点では何も。
本人も否定しております。
名前は風間武史26歳。
無職。
犯罪歴はなく。
以上です。
なぜ尾崎衿子は見つからない?あの。
管理官。
尾崎衿子には協力者がいてその人物の手引きで逃走したと思われんですよ。
その協力者の目星は付いてるのか?いや。
そこまではまだですけど。
だったらすぐにその人物を突き止めろ。
はい。
宗像さん。
あなたのせいで一人の女性警察官の貴い命が失われました。
そのことを片時も忘れずに捜査に当たるように。
はい。
(星野)よし。
尾崎衿子は必ず福岡にいる息子に接触するはずです。
羽田近辺の捜索とともに空港鉄道バスフェリーなどそれらの主要駅とターミナルを徹底的に捜索してください。
(一同)はい。
(星野)以上。
解散。
やだかんね。
羽田署に飛ばされてきたりなんかしたら。
星野管理官にあんだけ嫌われたら捜査1課追い出されんのはもう決定だね。
冗談じゃねえよお前。
出てくのはあいつの方だよ。
それになたとえ飛ばされたとしてもこの羽田署だけはごめんだね。
どうせ飛ばされんだったらもっとずっと遠くのへき地に飛ばされた方がよっぽどましだよ。
ああ。
いいんじゃん。
飛ばされちゃいな。
羽田越えて東京湾越えて伊豆諸島越えて赤道越えて地球の真裏まで飛ばされちゃいな。
それで二度と私にそのブル顔見せないでね。
何だ?そのブル顔って。
お前前も言ってたよな?ブルドッグだろ?どこが似てんだよ?お前。
具体的に言ってみろ。
どの部分だよ?どこ似てんだ?お前。
言ってみろよ。
ほら。
(貴代美)逃走を手引きした?はい。
心当たりありませんか?親しい友人とか。
(貴代美)特には。
昨日あなた空港にいらっしゃったじゃないっすか。
あの騒ぎのときどうしました?
(貴代美)驚いて。
みんなが一斉に逃げ出したので私も一緒に。
それから?
(貴代美)自分の車で羽田空港署へ行きました。
そこで衿子さんが逃走したことを知って。
私を疑ってるんですか?一応確認させていただいてるだけです。
私は弁護士です。
尾崎衿子のDV相談を受けることになったのはどういった経緯からですか?私は2年前まで穴守病院の顧問弁護士をしていました。
そのとき衿子さんは先代の院長秘書をしていてそれで顔見知りだったんです。
その後院長が急死し息子の尾崎孝雄さんが後を継がれました。
尾崎さんは自分の友人に顧問弁護士を頼みたいからと私との契約を打ち切ったんです。
じゃあ彼女とは?それきりで。
その後人づてに尾崎さんと再婚したと聞きました。
それが1カ月前突然衿子さんがうちの事務所へ。
(衿子)《見てください》《ひどい》
(衿子)《先生。
助けてください》《このままじゃ私いつか殺される》
(貴代美)《大丈夫よ。
私が力になるから》《先生》
(貴代美)インテリで社会的地位がある男性にDVは多いんです。
尾崎さんは悪質でした。
人目につく顔は殴らず夫婦仲はいいように装っていましたから。
彼女は離婚を望んでたんですか?そうです。
男がいた様子は?ありません。
もうよろしいですか?この後約束がありますので。
ああ。
じゃあ最後一つだけ。
彼女はお金も自由に使えなかったんですか?ええ。
生活費はもらっていましたがお金は尾崎さんが全て管理していたようです。
お忙しいとこ。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
おい。
福岡で衿子を取り調べたとき衿子の所持金は5万もなかったよ。
金庫壊したにしちゃ少ないね。
ちょっと金庫に幾らあったか調べさせるわ。
ああ。
もう冷泉と木島に調べさせてる。
木島に?お前木島俺の部下だぞ。
何でお前が指示出してんだよ?いいでしょ。
お宅もう班長じゃないんだから。
チッ。
お前な仮にも女だったらなもう少し人の気持ち考えて発言しろ。
めんどくさいやつだね。
はいはいはい。
チッ。
ったく。
はい。
今井。
ああ。
木島。
ご苦労さん。
ちょっと貸せ。
おい。
木島。
お前。
何?何?お前今井陽子に連絡してんだよ?お前。
俺だろ?連絡すんだったらお前。
大変申し訳ありませんが今井主任に代わっていただけますでしょうか?代われだ?この野郎。
お前誰に向かって…。
何か分かった?
(木島)はい。
衿子が親しくしていたママ友から話が聞けました。
尾崎は金庫に父親からの遺産を隠していたようです。
それも1億もの大金を。
1億!?・
(物音)・
(作業員)誰かいるのか?・
(作業員)あっ。
あっ!?うわー!ああ。
(華絵)拳銃で頭を撃ち抜いています。
その拳銃。
(華絵)高橋巡査のものです。
(蓮見)拳銃番号で確認されました。
自殺じゃないでしょうか?・
(星野)宗像さん。
ほっとしたでしょ?奪われた拳銃で一般市民に犠牲者が出なくて。
まあもっともこれであなたの責任問題がなくなるわけじゃありませんがね。
ホントに自殺だろうか?息子残したまんま自殺なんかすると思う?硝煙反応調べてくれ。
(蓮見)はい。
(恵子)あっ。
それと高橋翠さんの搬送代羽田空港署宛てに請求してもよろしいんでしょうか?
(華絵)ええ。
殉職扱いですから。
(恵子)そうですか。
お父さまが警察葬をご辞退なさるっておっしゃってたものですから。
責任を感じていらっしゃるみたい。
娘が拳銃を奪われたせいで迷惑を掛けたって。
(恵子)おつらいですよね。
いくら一般市民に犠牲者が出なかったからって。
いや。
その銃で犯人が自殺するなんて。
ええ。
(蓮見)科捜研から鑑定結果が出ました。
(江波)この鑑定書は星野管理官に見せる。
まだ捜査資料として配布するな。
(華絵)しかし江波課長。
これは事件を根底から考え直す重要な証拠になる可能性が…。
(江波)いいから私の指示に従え!はい。
(江波)尾崎衿子の死亡推定時刻はおととい夜11時から深夜1時。
死因は左側頭部を拳銃で撃ったことによる頭蓋内損傷。
拳銃を握っていた左手からは硝煙反応が出ている。
争った形跡はなく現場の状況から自殺と断定された。
現場は羽田空港から約5km先。
西羽田の倉庫。
衿子は逃げ切れないと判断し自殺に至ったものと推察される。
あっあのう。
すいません。
ちょっとよろしいですか?
(星野)何ですか?あのう。
自殺と断定するにはまだ早いんじゃないでしょうか?
(星野)他殺だとでも?はい。
根拠は何です?尾崎衿子を気絶させて拳銃を握らせ引き金を引けば自殺を偽装できます。
それに衿子が一人で逃げとおせたと思えません。
逃走を手引きした人物がいる。
そうあなたは言ってましたがそれが誰か突き止めたんですか?いや。
それはまだです。
ですが尾崎家の金庫の中に隠し遺産1億円が入っていたことが分かったんです。
その金の行方がまだ分かっていません。
管理官。
この一連の事件に1億の金が絡んでると思われます。
金庫に1億あったというのは確かな情報ですか?衿子の友人から得た証言です。
(星野)その友人は自分の目で1億の現金を見たんですか?いや。
自分の目ではそれは見てないですが。
(江波)山下。
(山下)はい。
(江波)高橋巡査は衿子からその件について何か聞いていたのか?
(山下)いえ。
聞いていなかったと思います。
相談記録に記述が残ってません。
(星野)裏付けもなしに信じるとは。
いや。
裏付けは今行ってる最中です。
金庫の中の金と本件とは関係がない。
いや。
しかしそう決め付けるには…。
(星野)鑑識結果は自殺と断定された。
被疑者死亡で本件は終結する。
いや。
しかし管理官。
(星野)黙れ!ったく。
あの野郎。
事件早く終わらせようってのが見え見えじゃねえか。
そりゃそうでしょう。
世間は警察の大失態って大騒ぎしてんだからさ。
被疑者自殺で幕を下ろすなんていうのは上にしたら不幸中の幸いなんじゃないの?真相を闇に葬ってか。
ったく。
あの星野の野郎。
顔も腹ん中も真っ黒じゃねえかよ。

(星野)何が真っ黒なんです?いや。
管理官。
奇麗にゴルフ焼けされてるなって。
地黒です。
フッ。
そうっすよね。
んなゴルフなんかやってる時間ないっすもんね。
(星野)宗像さん。
はい。
処罰が決まるまで自宅待機を命じます。
えっ?
(星野)移送中の被疑者に拳銃を奪われた上に逃走させ世間を恐怖と混乱に陥れた責任は重大です。
それなりの処罰を覚悟しておいてください。
木島君。
あなたもです。
(木島)えっ!?ちょっ。
ちょっと待ってくれよ。
木島は俺の指示で動いただけですよ。
1課長が決めたことです。
では。
(木島)最近娘さんからメールありますか?大きなお世話だよ。
地黒野郎。
仕方ありませんよ。
私は班長の行動は正しかったと思っています。
刃物を振り回す男をそのままにしておくわけにはいきませんでしたから。
(従業員)いらっしゃいませ。
あっ横ちゃん。
焼酎ロック。
(従業員)はい。
(冷泉)僕も。
(従業員)はい。
大歓迎。
何しに来たんだよ?夕飯。
もつ鍋にオレンジジュース。
お子ちゃまかい。
お前なんかに励まされたくないね。
所轄のお前に何が分かるんだよ?悪かったね所轄で。
それでいいの?言いたいことも言わずくすぶって処罰の決定が出るまで待ってる。
ホントにそれでいいの?私は悔しい。
高橋さんの死が警察の体面のためにうやむやになるなんて。
高橋さんの無念さ。
ご両親の無念さを思うと…。
(高橋)《お願いします》何が被疑者死亡で本件終結よ。
私は捜査を続ける。
高橋翠が言ってたよ。
お前みたいな刑事になりたいって。
木島。
(木島)はい。
俺は捜査続行するぞ。
班長。
いいの?上にバレたら刑事でいられなくなるかもよ。
お前もな。
私は平気よ。
俺だって平気だよ。
真相を暴いて1課に居座ってやる。
班長。
私も手伝います。
お前駄目だよ。
お前まで道連れにするわけいかねえんだよ。
いいえ。
私がいなければ誰が班長の頭脳になるんです?その役目は私にしかできません。
何?お前偉そうに。
自分は主任の手足になります。
強靱な体力だけは自信があります。
これで決まりね。
(従業員)お待たせいたしました。
はい。
ありがとう。
(冷泉)じゃあ乾杯といきますか。
おう。
(一同)乾杯。
かんぱ…。
かんぱ…。

(チャイム)・
(華絵)はーい。
ちょっ…ちょっと。
えっ!?いや。
ちょっと。
ああ。
失礼します。
うわっ。
どうしたのよ?ああ。
オレンジジュースにお酒入れたらこのざまよ。
お酒なんかちっとしか入れてないのにさ。
だらしないな。
だからってどうしてうちに来るのよ?だってこいつんちどこだか知らないし冷泉と木島さっさかさっさかいなくなるし。
私んちには死んだって入れたくないわよ。
うちだって困るわよ。
華絵さま。
お願いします!うん。
もう。
お茶入りました。
ありがとう。
華絵。
ホントにごめん。
フフッ。
案外あなたたちベストコンビね。
やめてよベストコンビだなんて。
最悪よ。
最悪コンビ。
でも一緒に捜査続けることにしたんでしょ?高橋さんのためよ。
高橋さんを殺したホシは尾崎衿子を自殺に見せ掛けて殺した。
そんなこと絶対に許せない。
陽子。
うん?今日科捜研から鑑定書が上がってきたの。
そこには新事実が書かれていて。
でも江波課長が握りつぶそうとしているの。
えっ?上は何が何でも衿子が犯人で自殺したってことにしたいのよ。
その新事実って何?
(華絵)尾崎院長の死因は灰皿で頭部を殴られたことによる脳挫傷。
頭の傷は左側頭部と後頭部の2カ所あって致命傷になったのは後頭部だったの。
凶器の灰皿からは尾崎院長と衿子の指紋のみが検出された。
その灰皿に付着していた血痕に時間差があることが分かったの。
どういうこと?血液凝固の状態から1回目と2回目の殴打には約10分の間隔がある。
もしかして最初の一撃は衿子だけど10分後別の人間が灰皿で尾崎院長を殴り殺したとも考えられなくはない。
衿子が尾崎院長を殺したんじゃないってこと?かもしれない。
尾崎院長はこういう姿勢で倒れてたのよね。
(華絵)うん。
こういう姿勢なら…。
後頭部を殴れる。
それができたのは…。

(係員)先生のおかげで大盛況でした。
ありがとうございました。
私の話で少しでも勇気を持ってくれる女性が増えるといいんですけど。
(貴代美)私に聞きたいことって何でしょう?尾崎院長が殺害された夜のことです。
尾崎衿子の携帯の着信履歴からあなたが衿子から夫を殺したと聞いたのは夜9時20分と分かってます。
(衿子)《私主人を殺しちゃった》そしてあなたはすぐ穴守病院へ向かった。
110番通報したのは9時56分。
その間36分。
あなたの事務所から穴守病院までは車を飛ばせば10分。
通報が遅れた理由は?道が混んでいたんです。
なぜそんなことをお聞きになるんですか?尾崎院長を殺害したのは衿子さんではない可能性が出てきました。
衿子さんの自殺も偽装かもしれません。
でも衿子さんは自分が殺してしまったと。
その時点で尾崎院長は死んではいませんでした。
その10分後誰かに殺されたんです。
そして犯人は尾崎家へ行って金庫から1億の金を盗んだ。
まさか私を疑ってるんですか?何か事務所の経営状態よくないらしいですね?人員削減も計画してるとか?どうしてそれを?警察の情報収集力あなたもご存じでしょ?それからこんな情報もあります。
尾崎院長が殺される2日前。
尾崎院長とあなたがもめていたって。
(尾崎)《妻の件から手を引いてください》
(貴代美)《お断りします》
(尾崎)《私知ってるんですよ。
あなたの過去を》《バラされたくないでしょ?》《私を脅すつもりですか?》
(尾崎)《脅迫罪で訴えたければどうぞ》《だけどそんなことしたらどうなるかお分かりですよね!?》
(由香)《失礼します》
(尾崎)《ではご検討ください。
あっ。
ご苦労さまです》あなた尾崎院長に過去の何を脅されてたんですか?3日前の夜11時から深夜1時。
あなたどこにいました?
(貴代美)自宅に。
証明してくれる人は?
(貴代美)いません。
私は尾崎院長も衿子さんも殺してなんかいません。
だったら尾崎院長に脅されてた理由を話してください。
私には前科があります。
25年前傷害事件を起こし執行猶予付きの判決を受けました。
どんな事件ですか?近所の花屋の店員に付きまとわれ家に押し入られたんです。
(男性)《奥さん》
(貴代美)《はっ?》《えっ!?嫌!嫌!嫌!》
(男性)《あなたの好きなカスミソウ多めにしときました》
(貴代美)《嫌!やめて。
嫌!》
(男性)《赤いバラが僕で》
(貴代美)《ああー!》
(男性)《黄色いバラが奥さん》
(刺す音)
(男性)《ううっ!》
(貴代美)《ああ!嫌!ああー!》
(貴代美)一命は取り留めましたが大ケガを負わせました。
正当防衛は認められなかったんですか?ええ。
2回刺したことで過剰防衛と見なされました。
当時はストーカーという言葉さえ聞き慣れない時代で。
私は誰にも相談できませんでした。
だから付きまとわれたのは私にも責任があると。
いろんなものをなくしました。
仕事も家族も。
それで離婚後必死に勉強して弁護士になったんです。
自分のような目に遭ってる女性を助けたい。
そう思って。
前科があっても条件さえ満たせば弁護士になれます。
でもそれはとても厳しい道です。
だから私は前科があることを隠して必死に頑張りました。
そしてようやく自分の事務所を持つことができたんです。
それを尾崎院長に知られ世間にバラすと脅されたってのかよ?私は尾崎院長の脅しに応じませんでした。
たとえ私の過去が世間に知られても私は衿子さんを守りたかった。
助けたかった。
本当です。
今の話信じるか?信じたいところだけど。
貴代美なら尾崎院長が1億隠し持っていたことを衿子から聞いていてもおかしくない。
尾崎院長の第一発見者貴代美だ。
衿子が逃走したときも貴代美はその場にいた。
《気をしっかりね。
私が必ず正当防衛で無罪にしますから》いくら脅されたって。
人は見掛けによらない。
尾崎院長がいい例だよ。
もしもし?どうした?何?風間が?
(木島)空港で風間が起こした騒ぎ何か気になってたんです。
ホントに衿子の逃走事件と関係なかったのかなって。
それで押収した風間のパソコンを調べてみたんです。
そしたらこれが。
風間は闇サイトでこの仕事を引き受けたようです。
尾崎衿子の逃走は計画的犯行だった。
おい。
相手は誰だ?そこまでは分かりません。
おそらくネットカフェのパソコンでやりとりしていたんだろうと思います。
どこのネットカフェだか突き止められる?
(木島)私一人では無理です。
本庁のサイバー犯罪対策室の応援があれば可能ですがそれでも時間がかかります。
そんな悠長なこと言ってられっかよ。
よし。
ここは俺の出番だ。
風間吐かしてやるよ。
おい。
木島。
取り調べの手続き取るぞ。
(木島)はい。
ちょっと待って。
忘れたの?お宅ら自宅待機の身なんですけど。
冷泉。
行くよ。
(冷泉)はい。
よっしゃ。
ヤミ金にでも追われてたんじゃないの?でヤバい仕事に手出した。
(冷泉)いいかげん吐けよ!おら。
ずっと黙ってっと刑が重くなるよ。
これには2件の殺人事件が絡んでんだから。
まあ最低でも懲役20年。
下手すると無期懲役かもしれない。
(風間)尾崎衿子っていう女が福岡から着く。
ゲートに来たら大暴れしろって言われたんだよ!
(冷泉)じゃあ尾崎衿子を逃走させるためだと知ってたんだな?ああ!誰に指示されたの?知らねえよ!ネットでやりとりしてただけだから。
(冷泉)報酬の500万はどうやってもらった?空港のコインロッカーで。
(男の子)《おじさん。
これ》《あそこにいた女の人から》女?風間に500万渡したのは女だった。
その女って貴代美じゃねえのか?貴代美はまだ息のあった尾崎院長を殴り殺した。
そして尾崎院長の自宅へ行き金を盗み。
(貴代美)《穴守病院で院長が死んでます》再び病院へ戻って警察へ通報。
貴代美は貴代美の犯行を全て知っている衿子を自殺に見せ掛けて殺すつもりだった。
ところが衿子は姿を消し福岡で逮捕された。
そこで貴代美はネットを通じて知った風間に空港で騒ぎを起こさせ。
(貴代美)《逃げるわよ》その間に衿子を逃走させた。
だが高橋翠に見つかり。
貴代美は彼女を射殺。
(銃声)そしてその夜自殺に見せ掛けて衿子を殺害した。
(銃声)衿子の取り調べが始まればいずれ自分が尾崎院長を殺したことや1億盗んだことが明らかになる。
その前に何としてでも衿子の口を封じたかった。
何かふに落ちない。
何がだよ?だって小田貴代美はストーカー被害の苦い経験から弁護士になったのよ。
その貴代美がよ尾崎院長を殺して1億盗んでDV被害者の衿子に罪をかぶせて殺すと思う?自分の事務所や地位を守りたかったんだろうよ。
だったとしても解決できない問題が一つある。
緊急配備が敷かれ検問も厳重に行われていたここからホシはどうやって衿子を連れ出したのか?ここは密室だった。
空港という名の巨大な密室。
なのにホシはやすやすと衿子を脱出させた。
いったいどうやって?
(冷泉)ああ。
現場百回とはいいますが犯人の手掛かりは何もなさそうですね。
(木島)ええ。
私は今の時代刑事は足でなく頭で稼ぐのだと思っております。
まあ正直なところ宗像班長のような強靱な体力が私にはありませんから。
(冷泉)私は体力はあるんですが今井主任のような強靱な精神力がなくて。
お互い鉄人上司を持つと大変ですね。
まったくです。

(冷泉)あの。
失礼ですがあなたは?
(愛子)あっ。
ラベンダーの家というNPO法人の職員ですが。
(木島)ラベンダーの家?
(愛子)DV被害者をかくまうシェルターです。
(木島・冷泉)シェルター!?衿子の相談内容が漏れてた?冷泉と木島がその職員から聞いた話によると尾崎衿子をシェルターにかくまうっていう計画が尾崎院長にだだ漏れだったんだって。
貴代美が漏らしたんだろうよ?尾崎院長が小田貴代美を脅したのはあの事件の2日前。
でもこの話が漏れたのは1週間前。
小田貴代美じゃない。
他に知ってたやつは?高橋翠。
でも彼女じゃない。
尾崎院長に誰がリークしたんだろ?チッ。
そいつが誰かを探るより貴代美を徹底的に洗う方が先なんじゃねえか?私の捜査方針に文句ある?私の捜査方針?お前班長にでもなったつもりか?あんたまだ班長のつもり?チッ。
自宅待機の身でこんなとこいたらヤバいんじゃないの?自宅待機自宅待機ってうるせえんだよお前。
星野管理官に見つかっても知んないからね。
その名前出すなよ。
胸くそ悪いな。
(山下)うちから漏れるなんて絶対にありません。
相談内容の記録書類は裁判所に提出することもあります。
ですから厳重に管理してるんです。
そうですか。
あっ。
すいません。
尾崎衿子の書類見せてもらってもいいですか?
(山下)いいですよ。
(山下)ちょっとお待ちください。
(山下)あっ。
これです。
尾崎衿子は3回相談に来てるんですね?はい。
全て高橋君が対応しました。
衿子は弁護士にも相談してんだよ。
ええ。
DVの法律的な対処を求めるには弁護士の助けが必要です。
この訴出人渡辺恵子ってあるんですけど。
これは?渡辺社長です。
誰だ?それ。
あっ。
うちの署にも出入りしている葬儀屋さんで。
渡辺メモリアル葬儀社の社長です。
ああ。
穴守病院にも出入りしてます。
おい。
この女が尾崎院長に漏らしていたっていうのはねえのかよ?渡辺メモリアル葬儀社。
あっ。
どうした?ありがとうございました。
何だよ!?悪い。
(山下)おっおっ。
どうしたんだよ?
(江波)おい。
(山下)はい。
(江波)あいつら何しに来たんだ?
(山下)尾崎衿子の相談記録を見せてほしいと。
ああ。
蓮見君。
渡辺メモリアル葬儀社の遺体搬送車の車種とナンバー教えて。
(蓮見)渡辺メモリアル葬儀社ですか?うん。
(華絵)急に何なの?どういうことだか説明しろ。
遺体搬送車よ。
遺体搬送車?渡辺恵子は尾崎衿子を遺体搬送車に乗せて警察の検問を突破したのよ。
シートに包まれた遺体のふりをさせてね。
死亡診断書があれば警察はいちいちシート開けて遺体を調べたりしない。
おそらくね。
(華絵)蓮見君。
車種とナンバーすぐに調べて。
(蓮見)はい。
まずは空港の駐車場の防犯カメラに渡辺メモリアル葬儀社の車が映ってないかどうかチェックだよね。
木島に手伝わせる。
おう。
(華絵)ハァー。
信じられないわ。
渡辺さんが。
華絵渡辺恵子をよく知ってんの?
(華絵)そういうわけじゃないけど。
真面目な人よ。
仕事熱心で。
ご主人亡くして葬儀社引き継がれたの。
葬儀社の経営ってどうなってんのかな?今大手に押されて大変みたい。
だからって。
人の心はお金で変わる。
私たち散々そういうの見てきたじゃない。
(冷泉)やはり渡辺メモリアル葬儀社は穴守病院に古くから出入りしている葬儀社でした。
で渡辺恵子は病院に頻繁に訪れていて衿子とも親しかったようです。
じゃあ金庫に1億入ってたの知ってた可能性高いね。
(冷泉)ええ。
尾崎を殺して1億奪ったのは恵子かもしれませんよ。
(木島)あっ。
班長。
ここに。
渡辺恵子か?拡大しろ。
(木島)はい。
ああ。
渡辺恵子だ。
間違いない。
車も遺体搬送車だ。
(木島)じゃあやはり衿子を遺体に見せ掛けて。
あれ?《高橋。
マル被避難》《はい》
(山下)《高橋。
あっちだ》
(翠)《あっ。
はい》
(悲鳴)あれ渡辺恵子だった?よし。
渡辺恵子事情聴取だ。
あっ。
尾崎衿子さんとは親しかったんですか?
(恵子)ええ。
同じ福岡出身ですから。
じゃあDVの被害に遭っていたってこともご存じだった?
(恵子)ええ。
それで警察の方に相談してみたらってアドバイスしました。
これあなたですよね?ホントだ。
私です。
羽田空港には何しにいらっしゃったんですか?仕事です。
うちはご遺体の航空輸送も行ってますから。
航空会社さんに書類の手続きに。
どちらの航空会社ですか?
(恵子)スカイフェロー航空です。
あっ。
でもそのとき急用ができて事務所に寄らずに引き返しました。
あのですね。
この時間の6分前。
到着ロビーから尾崎衿子が逃走してるんです。
まさかだと思うんすけど。
あんたそれ手引きしてこの車で連れ出したってことないっすよね?えっ?私がですか?いや。
まさか。
でしたら車を調べさせていただいてよろしいですか?ご協力ありがとうございました。
どうも。
(恵子)どうも。
時間の無駄でしたね。
妙に落ち着いてるのが気になるな。
うん。
(蓮見)尾崎衿子の指紋はどれも合致しません。
(冷泉)拭き取ったんじゃないっすか?
(華絵)かもしれない。
(木島)でしたら採取した毛髪のDNA鑑定と繊維の鑑定を。
江波課長の許可がなければ科捜研に回せない。
チッ。
くそ。
ちょっと一服してくる。
禁煙したんじゃなかったっけ?吸わずにいられるかよ。

(星野)宗像さん。
ここで何してるんですか?あっいや。
(星野)あなたは自宅待機のはずですよ。
管理官。
尾崎衿子は自殺ではなく他殺です。
それについて新事実が分かりました。
(星野)尾崎衿子は自殺です。
新事実などあるはずがありません。
いや。
それがあるんですよ。
やはり尾崎衿子…。
黙れ。
同じこと二度言わせるな。
尾崎衿子は自殺です。
(江波)今井。
勝手な捜査は許さん!しかし課長。
すいません。
嫌がる今井を私が無理やり捜査に協力させました。
(星野)あなた方も宗像さんに捜査協力を強いられたんですか?そうです。
すいません。
(星野)ハァー。
この件については上に報告します。
宗像さん。
あなたと木島は当面羽田空港署への出入りを禁止します。
(星野)ハァー。
くそ。
一人でカッコつけちゃって。
別にカッコつけたわけじゃねえよ。
お前まで自宅待機になったら捜査を続けらんねえだろ?うん?渡辺恵子が衿子を殺した証拠何としてでもつかまねえとな。
まだやるつもり?当たり前だろ。
お宅のことちょっと見直した。
ちょっと?ほんのちょっと。
初めて褒めたじゃん。
フフッ。
(木島)ですが証拠をつかむといっても。
(冷泉)高橋巡査を殺したのも渡辺恵子だとしたら現場の授乳室から何か証拠が出ないですかね?指紋や毛髪が出たとしても殺したという証拠にはなりません。
あっ。
そっか。
高橋さんはいったい何を私に伝えたかったんだろうか?《さ…。
3》冷泉。
はい。
渡辺メモリアル葬儀社の遺体搬送車が業務用の駐車場出てったのは何時?ああ。
ちょっ。
えー。
15時48分です。
女性客が銃声を聞いたのが15時45分。
その5分後に私が高橋さんを発見した。
それがどうしたんだよ?高橋さんが撃たれてから渡辺恵子が出ていくまで3分。
そんなに早く行けるもんだろうか?空港の地図出せ。
(冷泉)はい。
私が高橋さんを発見した1階の授乳室がここ。
で地下2階の業務用駐車場の出入り口がここ。
結構な距離あるけどね。
全力で走って車を出入り口付近に止めてあったとしても。
これ3分で行けるか微妙だな。
(木島)そうですね。
検証しよう。
検証?DV?
(貴代美)ご主人から日常的に暴力を振るわれていたんです。
(翠・陽子)3。
高橋!ここは密室だった。
空港という名の巨大な密室。
いったい何を私に伝えたかったんだろうか?何で俺が走んなきゃなんねえんだよ?恵子も衿子も女だぞお前。
普通に考えたら女のお前が走って当然だろうがよ。
あ痛たたた。
もう四十肩足にきちゃって痛くてさ。
ったく。
わざとらしい。
ちょっと運動した方がメタボ解消になっていいじゃんよ。
俺はメタボなんかじゃないんだよ。
触ってみろ。
ほら。
あっ。
嫌。
何すんの?ほら。
ほら。
どこにあんだよ?触りたかない!ああもう。
いいじゃん。
今走っときゃ何かの役に立つんだからさ。
(冷泉)主任。
聞こえますか?何の役に立つんだよ?
(冷泉)冷泉です。
はいはーい。
聞こえてるよ。
(冷泉)スタンバイOKです。
(木島)木島です。
B地点スタンバイOKです。
了解。
検証開始。
位置について。
5秒前。
4・3・2。
用意スタート。
よっしゃ!ああっ!あっ。
来ました。
お疲れさまでした。
お疲れさまじゃねえんだよ。
早く乗れ。
ほら。
早く。
(木島)ああ。
早くしろお前。
入れ。
ほら。
早く早く早く。
(木島)入ります。
くそ。
よしよしよし。
よしよしよし。
はい。
乗った。
くそ。
今井陽子の野郎覚えてろよ。
よし。
行くぞ。
(木島)運搬車両出ます。
しゃべってんじゃねえ死体がよ。
(木島)はい。
主任!来ました!到着です。
ああ。
4分32秒。
(冷泉)よし。
はいはいはい。
(木島)あっ。
検証終了します。
全力で走っても3分じゃ絶対無理だこれ。
(冷泉)自分がもう1回走ります。
自分なら3分切ってみせます。
(木島)そんなことする価値はありません。
渡辺恵子が宗像班長より早く走ることは不可能です。
(冷泉)じゃあどうやって?高橋翠さんを射殺したのは尾崎衿子でも渡辺恵子でもない。
(木島)では誰が高橋巡査を?恵子を操ってる人物がいるってことか?
(恵子)うん。
大丈夫。
もちろんあなたのことは絶対に警察に言わないから。
うん。
ううん。
後悔なんかしてない。
だって尾崎院長殺されて当然の人間じゃない。
衿子さんのことは気の毒だったけど。
うん。
また警察が来たらすぐに連絡する。
うん。
(木島)走った後は水分補給です。
ああ。
小田貴代美が黒幕だと思ってる?彼女は尾崎衿子を助けたかった守りたかったって言ってた。
あれは本心だと思うけど。
俺もそう思ってたよ。
だがよもし貴代美が衿子より守りたいものがあったとしたら?守りたいもの。
あのとき貴代美はこう言った。
《25年前傷害事件を起こし執行猶予付きの判決を受けました》《いろんなものをなくしました。
仕事も家族も》家族。
ああ。
小田です。
警視庁の宗像です。
少し時間をもらえませんか?あっ。
あのう。
立て込んでますので。
あなたの娘さんのことで。
娘さん詩織さんとおっしゃるんですね。
詩織に会ったんですか?いいえ。
25年前のストーカー事件を調べて知りました。
当時あなたには詩織さんという3歳になる娘がいた。
その後娘さんとは?一度も会っていません。
離婚したとき親権は別れた夫に渡し二度と会わないと約束をしましたから。
私にも別れた娘がいます。
七海といって。
別れた妻は私に七海を会わせようとしない。
でも私は1日でも七海を思わない日はない。
だからあなたの気持ち分かります。
これ私の推測です。
あなた尾崎院長に前科があることを世間にバラすと脅されたんじゃなくて今28歳になってる娘さんやその周囲にバラすと脅されたんじゃないんですか?詩織もうすぐ結婚するんです。
尾崎院長はそれを知っていて。

(尾崎)《結婚が破談になってもいいんですか?》
(貴代美)《娘を巻き込むのはやめて》・
(尾崎)《だったら衿子から手を引いてください》私はいつも離れたところから見てるだけで詩織は私のことは何も知りません。
だからすぐに尾崎院長の脅しをはねのけることができなくて。
後悔しています。
もしあのとき脅迫罪で訴えていれば衿子さんはあんなことにはならなかった。
それであなたどうしました?翌日衿子さんの弁護は続けると尾崎院長に電話をしました。
その晩です。
尾崎院長が殺されたのは。
恵子を操ってるのは貴代美じゃねえな。
貴代美の話信じんの?ああ。
根拠は?親の勘だ。
親は大事な娘のために道を踏み外したりしねえ。
たとえ離れていても娘の手本でいたいって思うもんだ。
(高橋)翠のやつ天国で喜んでるやろか?お父ちゃんよりか上の警部補になったでぇって。
フッ。
何ぼ二階級特進しても死んでもうたら元も子もない。
翠さんを撃ったのは尾崎衿子ではありません。
(高橋)えっ?私は今そのホシを追ってます。
そやけど捜査は終了したんと違いまんのか?内密に動いています。
翠さん亡くなる直前に私に何かを伝えようとしたんです。
それが人の名前なのかそれとも他のことなのか。
《さ…。
3》ハァー。
まるで暗号のようで私にはさっぱり。
暗号。
隠語やないやろか?隠語?はい。
昔わしが警察隠語を使うのが面白いっちゅうてようまねしとりました。
そういえば大阪府警と警視庁では警察隠語が少し違うというのを聞いたことがあります。
大阪府警で3が付く隠語ありますか?あります。
それは?つまりあれは3。
翠さんが私に残したダイイングメッセージだったのよ。
なるほど。
そういうことだったのか。
うん。
うん。
ほら。
早く。
行って。
早く。
ああ。
管理官。
(星野)何しに来たんです?管理官に大事な話があります。
手短に。
尾崎衿子の事件捜査を再開してください。
(星野)あなたも懲りない人ですね。
この期に及んでまだそんなことを。
真相が明らかになりつつあります。
事件は終結しています。
真相など存在しません。
このことが世間に公になったら警察の権威は間違いなく失墜しますよ。
どういう意味です?高橋翠の父親が真相を知りました。
父親は事件の全貌を明らかにしないのなら警察が体面を保つために真相を闇に葬りDV被害者である尾崎衿子を犯人に仕立て上げたとマスコミに公表すると言ってます。
高橋翠の父親は大阪府警の元刑事だと聞いてます。
そんなことをするはずがない。
刑事である前に父親ですよ。
その前に捜査を再開し真相を公にしてください。
あなた私に命令するんですか?頼んでるんです!断る。
バカ野郎!これがあんたと上層部が恐れてる事態を唯一回避できる方法なんだよ!宗像!何だよ!文句あんのかよ!貴様!言ってみろよ!文句あんなら言ってみろよ!ほら!で山下さん。
(山下)はい。
空港で尾崎衿子が逃げたとき渡辺恵子が高橋さんを追い掛けてったの見ました?
(山下)いいえ。
今井さん。
尾崎院長に衿子の相談内容を漏らしてたのは渡辺さんだったんですか?そうです。
でも渡辺恵子を操っている人間がいるんです。
その人間が高橋さんを殺したんです。
ハァー。
それが誰なのか突き止めないと。
(冷泉)主任。
渡辺恵子を自白に追い込みましょうよ。
(山下)いや。
自白に追い込んだとしても上が握りつぶすんじゃないですか?そうはさせません。
星野管理官は明日にも捜査の再開を許可するはずです。
星野管理官が?どういうことですか?実は…。
(江波)おい。
お前らここで何してんだ?何にも。
ねえ?
(冷泉)はい。
じゃあ山下さん。
またね。
(冷泉)失礼します。
冷泉。
空港の巡回行こう。
(冷泉)はい。
いってきます。
(冷泉)失礼します。
山下。
(山下)あっはい。
今井はまだ尾崎衿子の事件を調べてんのか?調べてるんだな?
(山下)そのようです。
でも星野管理官が捜査を再開するだろうと。
星野管理官が?
(山下)はい。

(物音)
(恵子)誰?あっ!?やめろ!お前。
その女も口封じすんの?やめろ!お前。
その女も口封じすんの?今井さん。
あなた僕を?そう。
はめたの。
あなたが高橋翠さんを殺したのね?お前高橋翠に尾崎院長を殺して1億奪ったこと気付かれたんだろ?それで口を封じるために高橋翠を。
違う!これ何だか分かる?高橋さんが亡くなる間際に残したダイイングメッセージ。
300ってことだよ。
300は大阪府警の隠語で警察官。
私を撃ったホシは警察官。
高橋さんはそう言いたかったのよ。
尾崎院長は南羽田地域の防犯会長で元防犯係のお前とは顔なじみ。
尾崎衿子は生活安全課にDV相談に来ていた。
そして生活安全課の高橋翠はお前の部下だ。
つまりお前は全員と接点があったんだよ。
違うか?そしてその人ともね。
調べたのよ。
あなたが羽田署に来てからよ。
渡辺メモリアル葬儀社の遺体搬送の回数が多くなったのは。
あんた山下に金を渡してたんだろ?山下に頼まれて尾崎衿子の逃走を手伝ったんでしょ?正直に話さないとこいつに罪なすり付けられるぞ。
(山下)うわー!
(恵子)逃げて!逃げて!放せ!何考えてんだ?お前。
何で!?殺されかけたのよ。
こっちは走り慣れてんだよ!おら!上等だ。
この野郎。
殺人未遂の現行犯で逮捕だ。
(山下)痛え!?放せ!体力ついたな俺。
まだまだいけるわ。
よし行こうか。
愛してるんです。
あんな優しい人いませんよ。
一人で頑張ってるからって仕事を回してくれて。
(恵子)愛してた。
(山下)半月前突然尾崎院長に呼び出されました。
(尾崎)《山下さん》
(山下)《はい》
(尾崎)《衿子がお宅の署に相談に行ってることはご存じですよね?》
(山下)《あっはい》
(尾崎)《どうぞ》
(山下)《ああ》
(尾崎)《内容を教えてください》
(山下)《いや。
それはできません》《守秘義務があります》
(尾崎)《もちろんタダとは言いませんよ》《100万入ってまーす》
(山下)僕は投資に失敗して2,000万の借金がありました。
それでつい。
でもそのせいで。
(尾崎)《衿子のやつ裁判所に保護命令の申し立てをするつもりだ》《それを何とか止めてくれ》
(山下)《いや。
そう言われましても》
(尾崎)《このまんまじゃ困るんだよ》《私が妻に暴力を振るっていたことが世間に知られれば院長職どころかこの病院まで失ってしまうかもしれない》
(山下)《しかし…》
(尾崎)《君はお金を受け取ったじゃないか!》
(山下)《だったらこうしたらどうでしょう?》《裁判所に申し立てをするのは弁護士です》《その奥さんの担当弁護士を脅して阻止すれば》《どうやって脅すんだ?どうやって脅すんだ?》《どうやって脅すんだ!》
(山下)小田貴代美について詳しく調べるうちに戸籍から離婚歴があることが分かり試しに名前を犯歴データに打ち込んでみると驚いたことにヒットして。
尾崎院長は小田貴代美が過去に起こした傷害事件をネタに脅しをかけた。
しかし小田貴代美はそれには応じずその怒りの矛先は僕に。
(翠)《少々お待ちください》
(署員)《お願いします》
(山下)《はい》
(翠)《山下課長》
(山下)《はい》
(翠)《尾崎さんからお電話です》
(山下)《もしもし》・
(尾崎)《なぜ携帯に出ない?》《仕事が立て込んでおりまして》・
(尾崎)《そんな言い訳するな》・
(尾崎)《今日の夜9時半に院長室へ来い。
必ずだぞ》《今日の夜はちょっと》・
(通話の切れる音)《もしもし?もしもし?》・
(不通音)
(山下)《あっ。
来月の防犯訓練についてだった》《あっ。
そうですか》
(山下)その晩。

(ノック)・
(山下)《失礼します》《尾崎さん?》《尾崎さん!しっかりしてください!》《尾崎さん!》
(山下)このまま死んでくれればもう脅されなくて済む。
(山下)《うおー!》
(山下)尾崎が自宅に金を隠し持ってることは知っていた。
以前地域の会合で防犯対策について聞かれた。
金庫はどこに置くのがいいのかって。
何て答えたんだよ?見つけにくい場所よりクロゼットや押し入れの中の方がいいって。
それで家に?ええ。
欲が出たんです。
借金を返して楽になりたいと。
耐火金庫は火災には強いが裏面が頑強でないことがある。
だから…。
でもまさか1億も入ってるとは。
その金で借金を返済したってわけか。
楽になんかなんなかったでしょうよ。
あなたはそれからさらに罪を重ねた。
それも自分の部下を手に掛けた。
高橋君が福岡へ向かう前…。
(翠)《山下課長ですよね?》《尾崎衿子の相談内容を尾崎院長に流していたの》《昨日の夜尾崎院長と会う約束をしていたんじゃないですか?》
(山下)《何のこと?》《衿子の身柄を確保し羽田署に戻ったら何もかもはっきりさせます》
(山下)そのとき思った。
高橋翠を殺すしかない。
チャンスは羽田空港でのわずかな時間。
翠を殺しその罪を衿子にかぶせる。
だが一人では無理だ。
(山下)《殺しちゃった。
尾崎院長を》
(恵子)《えっ…》
(山下)《恵子頼む。
僕を助けてくれ》《もう僕には恵子しかいないんだ》《頼む。
僕を助けてくれ。
お願いだ》
(恵子)《山下さん》《分かったわ》いちずな女心を利用しようとしたのね。
恵子とはもう5年になります。
腐れ縁だったとでも言いたいわけ?恵子を使ってネットの闇サイトで風間を雇い空港で騒ぎを起こさせたってわけか。
(風間)《ぶっ殺してやる!》
(山下)恵子は打ち合わせどおり…。
(恵子)《衿子さん。
私》《栄太君が会いたいって東京に来てるの》《ちょっとこっち来て》
(衿子)《えっ!?》
(翠)《マル被が逃げました!》
(山下)《行くぞ》
(山下)《この中だ》
(翠)《はい》
(翠)《キャッ!?うっ!?》
(銃声)
(翠)《うっ!?》
(山下)その夜。
(衿子)《栄太は?栄太はどこ?》
(衿子)《あなた羽田空港署の?》
(山下)《んっ!》
(衿子)《うっ!?》・
(銃声)あんたそれでも警察官?警察官っていうのは人々を守ることが仕事でしょうよ。
それなのに。
守ってきましたよ。
真面目に身を粉にして何年も。
だけど犯罪なんか減りはしない。
ますます増える一方だ。
世の中は暴力にあふれてる。
それで嫌気が差して投資に手を出した。
願わくばひともうけして早期退職。
ふざけんじゃないわよ。
人の命を何だと思ってんのよ!あんたみたいな警察官がいるから私たちの信用は失われていく。
上はそれ以上信用を失わないように隠蔽工作する。
人々を守ってきたなんて軽々しく言うんじゃないわよ。
守るっていうのはね自分の命を引き換えにしてもその人のことを助けたいって思うそれほど重い言葉なのよ。
あんたには警察官を名乗る資格がない。
管理官。
管理官がこの事件を隠蔽するのに手腕を発揮するのではなく警察が失った信用を取り戻すことに発揮すると私は信じてますから。
(貴代美)警察の謝罪会見テレビで見ました。
もう大変な騒ぎです。
マスコミにはたたかれるわ署は怒りの電話が鳴りっ放しで。
あっ。
色々失礼なことをお伺いしたことおわびします。
あの。
尾崎衿子さんの息子さんどうなりました?別れたご主人が引き取られました。
ああ。
そうですか。
あなたに伝言があります。
娘さんに母親だと名乗り出てください。
あなたが多くの女性たちを救おうとしている姿を娘さんはきっと誇りに思うはずです。
って私の相棒がそう伝えてくれって。
相棒?ブルドッグみたいな顔した。
ああ。
フフッ。
あの男の刑事さん。
刑事さんにお伝えください。
娘に会います。
会って結婚おめでとうと伝えますと。
はい。
自分で言やぁいいじゃん。
女と犬は苦手なんだよ。
犬?ハハハ。
まあよかったじゃん。
一応1課に戻ることができて。
まあな。
だけど星野の野郎も安泰なのがちょっと気に食わねえけどな。
じゃあ私たちもこれでコンビ解散っていうことで。
ちょっと待てお前。
あの例のブル顔ってやつだけどよ。
実際俺ブルドッグのどの部分がどう似てるか具体的に言ってみろよ。
具体的。
っていうより全部?お疲れ。
全部?それ褒めてんだよな?お前。
おい。
2014/05/02(金) 21:00〜22:52
関西テレビ1
金曜プレステージ・山村美紗サスペンス羽田空港殺人事件〜黒の滑走路4〜[字][多]

世間でも評判の病院長が殺された!容疑者は…刑事殺しも!?奪われた拳銃と共に羽田空港から逃亡した理由は何だったのか?隠された悲しい謎に空港署刑事が挑む!

詳細情報
番組内容
穴守病院の院長の尾崎孝雄(菊池均也)が殺害された。容疑者は妻の尾崎衿子(井村空美)。第一発見者は衿子から夫のDV相談を受けていた弁護士の小田貴代美(高橋ひとみ)だった。
羽田空港署の今井陽子(浅野ゆう子)が尾崎の自宅に向かうと、同じく衿子から相談を受けていたという生活安全課の高橋翠(瀬戸早妃)刑事もやってくる。捜査本部が設置され、警視庁から捜査一課の宗像勇吾(遠藤憲一)がやってきて、また二人は
番組内容2
コンビを組まされることに。行方不明の衿子が九州にいる息子に会いに行くだろうと予測し、宗像らは九州に向かう。予想通り現れた衿子は確保され、羽田空港に移送される。空港で無事身柄を引き渡されるかと思いきや、ナイフを振り回す男が突然現れ現場は騒然。その混乱の中、衿子は逃走、高橋刑事は何者かに撃たれ、拳銃と手錠も現場からなくなっていた。
捜査本部は衿子の行方を捜すが、捜査一課の管理官・星野貴之(宍戸開)は、
番組内容3
衿子を取り逃がしたあげく、高橋刑事が命を落とし、さらに拳銃も盗まれたことに、宗像への怒りをあらわにする。その後、衿子が自らの手に拳銃を握った状態で、頭から血を流して死亡しているのが見つかった。捜査一課は自殺と断定するが、陽子は息子を残して自殺するはずがない、と疑問を持つ。以前から何かと宗像に目をつけていた星野は、班長の宗像に一連の責任を取って、その処罰が決まるまで自宅待機を命じる。
出演者
今井陽子: 浅野ゆう子 
宗像勇吾: 遠藤憲一 

及川華絵: 山村紅葉 
星野貴之: 宍戸開 

冷泉春樹: 音尾琢真
木島拓次: 中村靖日 
蓮見秀一: 山口竜央 

小田貴代美: 高橋ひとみ 
渡辺恵子: 筒井真理子 
山下純一: 小林健 
高橋翠: 瀬戸早妃 
尾崎衿子: 井村空美 
尾崎孝雄: 菊池均也 

ほか
スタッフ
【原作】
山村美紗「大阪国際空港殺人事件」講談社文庫刊 

【脚本】
福島治子 

【プロデューサー】
森川真行 
石塚清和 

【監督・演出】
伊藤寿浩 

【音楽】
吉川清之 

【制作】
フジテレビ 
FINE

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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