嘉王二年(1170年)。
朝廷が行った強制移住で近江国に生まれ育った蝦夷のシレトコロは、まだ見ぬ本当の故郷-奥州-を想っていた。
十三歳の春のこと、三条の橘司信高と名乗る男があらわれシレトコロは奥羽に連れて行かれる……。それは後の源義経の影武者とするためだった。
一方、鞍馬山の牛若は、「あなた様は、源氏のお血筋。平家を打倒し、天下に名をはせるお人」という言葉によって剣術の稽古を続けていた。
そして〈遮那王〉と名乗ることになった十六歳の牛若は、奥州平泉に向かう決意をする。
壮大なスケールで、新しい義経を描ききった、歴史小説の金字塔!
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おー…アマゾン…
嘉王ではなく嘉応。イージー誤植。笑。
新聞にでかでかと発売広告が出ていたのと、高橋克彦の推薦、個人的に歴史/時代小説でこれを超える影武者ものはないだろうと思っている「影武者徳川家康」以上の面白さ云々とあったのに惹かれて。
1冊目を読了してとりあえずの感想は、
…そうか?
宣伝効果による期待値が高すぎたのだろうか…。
源平合戦の英雄源義経の影武者、シレトコロ(のち沙棗)の話になる。
義経の影武者という発想は、今までありそうでなかった設定だろう。
影武者といえばどうしても戦国時代以降が思い浮かぶ。
それに義経という人物自体が影武者を付ける程の人物ではなかったことによると思われる。
シレトコロは当時蝦夷(えみし)と蔑まれた東北に出自を持つ少年である。
それが橘司に攫われ、義経の影武者として育てられ、
平泉にやってきた我儘で横暴の気がある義経に時に反感を感じながら、偶に垣間見える優しさや弱さといった人間性と、その魅力に惹かれていく。
この巻の中心になるのは、主に平泉。
平泉の興隆に至る迄の歴史の流れ、東北に住まう人々の位置付け、そして当時の平泉の位置付け、これらは小説ならではの浮き上がらせ方で、情景が目に浮かぶようであった。
ただ、歴史的な話を描くのにある程度の重複は仕方ないが、高橋克彦の「炎立つ」と随分被っていると思うのは私だけだろうか。
今の段階で一番好感を持てるのは奥州藤原氏の人々。
100年に及ぶ栄華を経てある意味一番人間らしい、ゆとりある人々として描かれている。
4代泰衡は判官贔屓と平泉を滅亡させたという事で、一般的には芳しからざる人物として描かれる事が多いが、父秀衡曰く「頼りないがいい男」として描かれている。
ホッとした。
藤原の3兄弟も特に兄弟仲云々という話も今の段階ではなく、義経との関わりでどう変わっていくのかが気になる所である。
義経と言えば兄、源頼朝は外せない人物である。
この小説では随分envyというか、嫉妬深い人間として描かれているように思う。
実際の心の動きはこんなものだろうなあ…
利益や理論どうこうもあるが、感情だけはなかなか。
展開は結構早く、一気に屋島の戦いの直前まで。
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