日本の話芸 落語「禁酒番屋」 2014.05.03

治療についてお伝えしていきます。
明日も是非ご覧下さい。
それでは明日もどうぞよろしくお願い致します。
(一同)ありがとうございました。

(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(鈴々舎馬風)酒と噺家てぇとすぐ頭に浮かんでくるのが昭和の名人古今亭志ん生ですね。
いや〜実に強かった。
その飲みっぷりも格好いいんでね日本酒専門。
お猪口でチビチビやらねえんだ。
コップ酒で冷やでもってねキュ〜ッとやる。
物は食べない。
「お腹がいっぱいになるってぇとせっかくの酒の味が変わっちゃう」ってんでちょいと塩つまんじゃコップ酒でキュ〜ッ。
これ実に格好いいんだ。
周りのお客が「ご覧なさいよ志ん生さん江戸っ子ですね。
あれが本当の酒飲みですよ」なんてんで。
我々これ見てて「よし俺たちも二ツ目になったらああいう飲み方しよう」。
真似した連中ほとんど死んでる。
(笑い)物を食べねえで酒だけやるからもう肝臓傷めちゃってみんな体壊しちゃう。
あの名人も患ったあとはもう情けないんですよ。
看病疲れか後から倒れたおかみさんが先逝っちゃってさぁいよいよお別れなんですが志ん生はテレビを見てて動かねえ。
お弟子さんが「師匠。
そろそろお願いします」。
「いいよ〜お前たちに任すよ〜」。
誰が行っても駄目なんで伜の志ん朝が「父ちゃん。
母ちゃんとの別れだからせめて花の一つぐらいやってくれよ」。
急かれて初めて志ん生が重たいみこし上げてお弟子さんにおんぶされ左の手に菊の花持って肩越しに前へ乗り出してポ〜ッと放るてぇとうまい具合にそのお花がおかみさんの顔をかすむようにピタリと収まった。
志ん生がたったひと言「かあちゃ〜ん。
後からすぐ行くよ」。
60年苦労をかけた道楽者の志ん生なめくじ長屋から共に苦労したおかみさんに優しい言葉をかけたのはこれが最初でお終いだそうで。
この話を聞いた時「いいな〜いや夫婦ってのはお終いはこうなくちゃいけねえ。
私も結構女房にゃ苦労かけたしよし俺も嬶との別れにはこの科白を使わせてもらおうか」と思って一日も早くその日の来るのを…。
(笑い)家のは丈夫なんだよ。
下手すりゃ俺が先逝っちゃうもんね〜。
だからある程度物を食べながら飲むこれが一番体にいいんですな。
それでいて私の師匠でした五代目柳家小さん丈夫でしたよ。
物をムシャムシャ食べながら飲んでましたから。
まあ〜内臓の丈夫なこと。
でしばらく経ったら人間国宝だって。
周りもね「師匠。
おめでとうおめでとう」って言うけど「ええ?こらぁな長生きしたおかげだよええ?年さえ取りゃな誰でももらえんでぇ」。
本人はそう驚かねえ。
ところがご贔屓のお客様方がもう「めでてえめでてえ」毎晩寄席に迎えに来る。
お父っつぁんも人がいいから毎晩つきあった。
でも年にはかなわないですね〜。
あ〜忘れもしない昼席が終わって夜は三越の落語会時間があるから近場でマッサージかかってたらそのままいびきかいて寝ちゃってんだ。
ああ。
マッサージ終わってもまだ寝てる。
だから周りの者が気を遣う。
「師匠お疲れだからしばらくお休みなさい。
そのまま動かさないで」なんてんで。
夕方若え者が起こしに行ったらいくら揺すったって起きねえ。
もういびきもでっけえいびきでね。
と隣のベッドに東大の医者が明け番でマッサージかかってて「あっ私が診てあげましょう」。
ヒョイッと見た。
「あっもしかするとこれは脳梗塞ですよ」。
「さぁ大変だ」。
で知ってる病院電話したら「いつでもどうぞ」てぇから救急車呼んで小さんを乗せて「まぁ1秒でも早いほうがいいだろう」。
高速道路を上がろうとしたら寝てる小さんがガバッと起きて「脳梗塞?」。
(笑い)これじゃ三平と同じになっちゃう。
(笑い)まぁ三平っていえばね今伜が頑張ってますがあのお父さん初代三平さんも賑やかな方でしたな飲んでも飲まなくても同じでねああ実にあの方がヒョッと姿を見せただけでオーラがあるしねまた後輩の面倒見がよかった。
私がまだ二ツ目柳家かえるの頃随分ご馳走になりましたよ。
普通先輩が後輩誘う時にゃちょっと格好つけるんで。
「おう。
お前今日は空いてるか?」。
「はい暇です」。
「ちょっとおつなたれが居るんだぃ。
たまには俺に一杯つきあうか?」。
「お供します」。
先輩と後輩こんなもんだけど三平さん先輩でしたけどそう高飛車に出ねえ。
いつも柱の陰から顔を半分出して…。
「グワハハハグワ〜」ってから「兄さん。
何ですか?」。
「クワ〜ッククククククックキキッ」。
(笑い)何だか訳分かんねえ。
いい所行きました。
銀座専門でしたよ。
1軒目はね「クラブ順子」。
あのころ結構ねママがテレビに出てました。
田村順子というのがママでね亡くなった日活の和田浩治という俳優がお父っつぁん旦那だったけどねあんまりキャパは広くねえけど器量のいい子揃えてましたから昭和42〜43年ごろ座っただけで4〜5万取られちゃう。
いい店よ。
2軒目はお馴染み山口洋子がママだった「クラブ姫」とかね。
3軒目は「真理」だとか結構いい所行くのよ。
1軒目の「順子」は時間が早え。
お客がパラパラッといないってぇと三平さん静かに飲んでる。
満員になると突然マイク持って立ち上がるの。
「エ〜ッ三平です」。
人気絶頂の頃だから「イヨ〜ッ三ちゃん大統領」ってぇと突然あの方は落語をやるんだけどそれがくだらねえ落語なの。
(笑い)「『おかあちゃん。
パンツ破けたよ』『あら?またかい?』。
ケ〜ッ」。
(笑い)「アンコール」てぇと「『おかあちゃん。
お空に子豚が飛んでる』『これが本当のヘリコブター』。
アア〜ッ」。
(笑い)もう一緒にいると恥ずかしい。
(笑い)自分が終わると私の顔見て…。
「かえるさんかえるさん。
あんたも何かやんなさい何かやんなさい」。
先輩がやってやらねえって訳いかねえや。
謎かけやるのよ。
「何かお題を頂戴」ってぇと「クラブ順子」てぇから「クラブ順子とかけて気に入った洋服と解きます。
そのこころは一度着たら
(来たら)何べんでも着たがり
(来たがり)ます」とやる。
「アンコール」てぇから「クラブ順子とかけて満塁ホームランは2本と解きます。
そのこころは8点
(発展)間違いなし」とやった。
ママ喜んで「まあ〜うれしいわ」。
これ見た三平…。
「ママ帰ります。
お勘定お勘定」。
「何言ってんですよ。
皆さん賑やかにやって頂いてお勘定なんか頂けません」。
「悪いや〜悪いや〜」。
表へ出ると…。
「かえるさん。
うまくいきました」って。
(笑い)偉い方でしたよ。
まぁお酒てぇなあねこういう陽気なお酒が一番いいようですな。
昔のお噺でございます。
ある藩の家中の者が酒の上で武術の事で口論となり「ならば真剣勝負でこい」。
「望むとこよ」。
お互いに腕自慢。
方々が腕が出来ておりましたが相手を斬り捨てまして血刀をぶら下げそのままお小屋へ戻りカ〜ッと寝ちまいます。
さぁ酔いが醒めてみるてぇと「これはえらい事をした。
大変な事だ申し訳ない」ってんでこのお侍も腹を切って死んでしまいました。
さぁこれを聞いた殿様はえらい怒った。
「酒というのはよろしくない人間を変えてしまう。
これから余の藩では一同酒を飲まん事にしよう。
禁酒を致せ。
余も飲まん」って事になった。
さぁ驚いたのは家中の酒飲み。
それ以上びっくりしたのが出入りの酒屋さんですな。
酒屋は一切出入り止めてぇ事になる。
さぁ端のうちは皆気を張っておりますから飲む者はおりませんがだんだん日柄が経つにつれて「少しぐらいならいいだろう」。
これがいけないんでそのうち赤い顔をして御門を通る者もいる。
中にはヘベレケになってお小屋へ戻る者も出て参ります。
「これはいかん。
こういう事が殿様の耳に入るてぇとえらいお小言。
何か良い方法は無いか?」。
重役会議を開きましてその結果御門の所へ番屋をこしらえまして持ち込まれる品々は全部そこで検査をされます。
誰言うとなく「禁酒番屋」と噂が立ちまして。
「これはどうも旦那様このところお見えがないもんですから心配してましておりましたがいや〜えらい事になりましたな〜。
いやお屋敷ではご禁酒だそうで。
旦那様またお好きでいらっしゃいますのでこのところとんとおやりでないんでございましょう?」。
「おお〜?いやいやいや。
飲んどる飲んどる。
いや屋敷で飲む訳にならんでなまぁ表で飲む訳だが赤い顔をして御門を通る訳にならん酔いの醒めるのを待って帰る始末。
いや何のために酒を飲むんだか分からんな。
ハハハハハ。
またその方の店もとんだとばっちりを食って気の毒だな」。
「えらい災難でございます。
いやお屋敷を当てにしております。
それが出入り止め。
もう大変な打撃で」。
「いや心配致すなええ?そのうちお許しが出て出入りが可能という事になる。
そうなくてはその方の店だけではない。
第一身どもが困るよハハハハハハハ。
あ〜ときに番頭。
本日も飲もうと思って小屋を出た。
すまんが1升注いでみてくれんか」。
「あの〜お土産で?」。
「いや。
ここで飲んで参る」。
「そりゃ困ります。
いや手前どもも商売でございます。
1合でも2合でもお売りしたいんでございますがいやここでお飲みになった事がお屋敷に知れますとあとでえらい…」。
「いや〜心配致すなああ?これからな2〜3回って飲み直すのだ。
ああ?いいから注げ1升枡で注げ。
隅のほうからキュ〜ッといこうではないか。
ああ?よいから注げ。
誰も通る訳ない注げ」。
1升枡へなみなみと注いだやつをキュ〜ッ。
「いや〜いつもながらお見事でございます。
息もつきません」。
「おお〜とんと夢中だ。
味も何も分からん。
もう一升注いでくれ」。
よほどお強いと見えて2升平らげて…。
「フウ〜ッお〜おかげをもって良い心持ちになったぞ。
ときに番頭久々に寝酒に用いたいと思うんでな拙者の小屋へ夕景までに1升届けてくれんか?」。
「とんでもございません。
いやここでお飲みになるだけでもおっかなびっくりでございます。
それをお届けする。
第一御門の所に番屋がございます。
あそこで調べた日にゃこれとても無理…」。
「いや無理は承知だ。
ああ。
その方と身どもの仲ではないか。
なんとか届ける方法もあるだろう?おお?な〜。
金銭に糸目はつけんぞ。
金はいくらでも出す。
のう番頭届けてくれ」。
「ごめん下さい。
それだけはどうぞご勘弁下さいまし。
あの御門所の番屋が」。
「番屋承知してるわな。
何とか頭を使え頭を。
おお?これほど言っても届けんと言うならば身どもにも考えがあるぞうん?これほど言っても届けんと言うならば拙者刀にかけても…」。
「ごめんなさい。
それだけはどうぞ…。
あっ近藤様旦那様。
ハア〜弱ったねどうもええ?」。
「番頭さん。
いい旦那じゃありませんか」。
「いやいや。
ご酒が入んなきゃ誠にいい旦那なんだがちょいと入ってるってぇとまるっきり人間変わっちまう。
すぐ乱暴になる。
これ届けないとなるてぇとあとで何をするか分からねえってんだから」。
「番頭さん。
心配する事ありませんよ届ける方法がありますよ」。
「ありますよってぇがお前も知ってるだろうあの御門の所へ番屋」。
「ええ。
ですからねこの酒屋の格好じゃ駄目ですよええ。
この先に藤玉堂って菓子屋があるんですええ。
あそこへ言って訳を話して半纏から何までそっくり借りてきますで最近カステラのお菓子が出てんですよ。
ええ?いや。
私まだ頂いた事はねえんですけどね一番大きな折を買ってきましてねで中のカステラを外してそのあと5合徳利を2本忍ばせますで蓋をして熨斗つきをかけて『カステラでございます』。
これで分かりっこありませんよ。
でお先さんも『金銭に糸目はつけない。
金はいくらでも出す』と仰るんですからそのカステラのお代も頂戴し残ったお菓子を皆さんで召し上がるなんてのはどうでしょう?」。
「ウ〜ンそううまいわけにいくかい?」。
「いいから番頭さん私に任せておくんなさい」。
その方がすっかり支度をしてやって参りまして。
「お願いでございます」。
「おう。
通れ。
その方いずれへ参る?」。
「あの〜近藤様のお小屋へ通ります」。
「何?近藤氏の小屋?おう。
何だ?その方は」。
「手前向こう横丁の菓子屋でございます。
カステラのご注文でございます」。
「何?カステラな〜。
ご同役。
妙な話もあるもんですな〜。
家中きっての酒豪近藤が飲むわけにならんで菓子を食するようになったかな?ええ?いや〜変われば変わるもの。
おお〜菓子屋だな?」。
「へい。
あの〜通ってもよろしゅうございますか?」。
「いや。
待て。
役目の手前手落ちがあってはならんでな一応調べる。
ここへ出せ」。
「へえ?」。
「これへ出せ」。
「へい。
あの〜これお使い物なもんで水引を解いてあと皺になっても困り…」。
「何?使い物?あ〜そうであろう。
近藤が食す訳ないと思った。
ええ?いや進物だそうだ。
改めずによいか?うん。
よしよいから持って参れ」。
「へい」。
「よいから持って参れ」。
「ありがとうございますヘヘヘ。
確かにこれはカステラでございます。
イヨッドッコイショット」。
「待て菓子屋」。
「いやあの〜近藤さ…」。
「いや。
近藤氏は分かっとる。
その方今折を持つ際妙な事を申したな『ドッコイショ』と申したな?カステラはさほどに重い物ではないぞ?」。
「いえ。
あの〜あれ私のドッコイショってこれ口癖なんでございますええ。
何かにつけてドッコイショで『さて一服しようかドッコイショ』『さぁ寝ようかドッコイショ』」。
「何を言ってる。
出せ。
出さんかこいつは。
うん?うん?ご同役。
油断も隙もならん。
まるで重みが違います。
控えとれ。
確かにカステラだな?うん?控えとれ。
一応役目の手前手落ちがあってはならん。
ああ?中身を調べるぞ。
水引は身どもが解く。
あとで勝手に結わえろ。
うん。
うん?何だ?この徳利は」。
「へえ。
あの〜ヘヘヘ徳利でございます」。
「いや。
徳利は分かっとる。
その方今カステラと申したな?徳利の中に入るカステラなんて物あるか?」。
「ええ。
それがその〜なんでございます。
あるんでございますええ。
これ手前どもの店で新しく出来ましたあの〜あっ水カステラと申します」。
「何?水カステラ?ご同役。
聞いた事ござらんな水カステラ。
よし確かに水カステラだな?よし一応中身を調べるぞ。
控えとれ」。
「控えとれ。
一応役目の手前手落ちがあってはならんでな。
控えとれ。
あっそうだ。
おい門番。
湯呑みは無いか?いや。
大きいほうがいい大きいほうが」。
(笑い)「控えとれ」。
「控えとれ」。
「うん?」。
「水カステラヘヘヘヘヘヘ」。
「ご同役。
如何です?水カステラをひとつ」。
「いや〜よくこれ気が付きましたな〜。
水カステラとは申しよる。
さぁアハハハこれ拙者も近頃全然やらないもんですからなアハハ。
イヨ〜ッあっいかんこれはどうも」。
「いや結構な水カステラで」。
「いやお気に召しましたか。
手前まだ味が一向分からぬ。
お空けになったらお貸しを願いたい。
控えとれ。
まだ調べがつかんぞ。
アハハハハ町人なんというのも愚かなものですな〜。
斯様な事で持ってくりゃ分からんと思うところが浅はかでござるなハハハハハ。
控えとれ。
まだ調べがつかんぞ。
控えとれ」。
「こら斯様なカステラがあるか。
あなこな偽り者め立ち帰れ」。
「ごめんなさい」。
「何だい?どうしたい?」。
「はい。
行ってきました」。
「行ったから帰ってきたんだろ?うまくいったのか?」。
「いえ。
初めはトントントンとうまく運んだんです。
途中で口を滑らしちまってねええ。
包みをひったくられちゃった」。
「まずいな。
重みが違う」。
「そうなんですよ。
で徳利を出しちゃいましてね」。
「アラアラッどうしたい?」。
「『これ何だ?』とこう聞くんですよ。
しょうがねえから水カステラって」。
「何だ?その水カステラってぇのは」。
「いや〜侍が2人でガブガブ喰らいましてね『斯様なカステラがあるか。
あなこな偽り者立ち帰れ』ってから『さいなら』」。
「何だよおい。
で偽り者か言われてあの1升飲まれちゃったのかい?そうだろ?だからうまいわけにいかねえんだよ」。
「番頭さ〜ん。
今度私が行きましょう」。
「およし。
無駄。
お前が行ってごらん2升飲まれちゃう」。
「冗談じゃねえやい。
私はね吉どんみてえにねあんな格好しねえんですよ。
ええ私は1升徳利裸のまんまそのまんま入ってみせますよ」。
「そんな事…」。
「どうしてならああいう格好するからばれちゃうんですよ。
いいから油徳利へ入れてくんです。
で『油でございます』。
分かりっこありません。
大船に乗ったつもりで」。
この方がすっかり支度を致しまして1升徳利に油を塗って油の栓をして油の紐で首っ玉結わえて…。
「お願いでございます」。
「おお〜通れ。
おお〜いずれへ参る?」。
「あの〜近藤様のお小屋へ通ります」。
「何?近藤氏の小屋?はあ〜。
何だ?その方は」。
「手前向こう横丁の油屋でございます。
油のご注文でございます」。
「うん?油?いや油屋だそうで。
おお。
何だ?その方の提げてる物は」。
「これはあの〜油徳利でございます」。
「あ〜油徳利か。
うん。
出してみろ」。
「えっ?」。
「出してみろ」。
「ですからこれ油で…」。
「油徳利は分かっとる。
最前水カステラの手前もある」。
(笑い)「出せ。
出さんのか?」。
「へい。
どうぞひとつお調べ下さい」。
「控えとれ。
役目の手前手落ちがあってはならんでなああ?一応中身を調べるぞ。
たとえこれが油だろうと水カステラであろうと役目の手前手落ちがあってはならん。
控えとれ。
控えとれ。
一応中身を調べる。
うん?うん。
控えとれ」。
「あ〜いかんなこれはニチャニチャしとる。
控えとれ」。
「うん?実にけしからん者ですな。
油と偽って持っておったとはどうも」。
「こら〜っ斯様な油があるか。
あなこな偽り者棒縛りに致してくれる」。
「ごめんなさ〜い」。
「何だよおい。
草履を履いたまま駆け上がる奴あるか。
うまくいったのか?」。
「それってぇとツ〜ッと偽り者」。
「何言ってんでぇ。
お前請け合ったじゃねえか。
大船に乗ったつもり…」。
「ヘヘヘ小舟でござんす」。
「何言ってんだい」。
「番頭さ〜ん。
今度私が行きましょう」。
「およし無駄だ。
『盗人に追い銭』ってこの事だよお前が行ってごらん3升飲まれちゃうんだよ」。
「冗談言っちゃいけねえやなええ?偽り者か言われて2升も飲まれちゃって。
私はね敵討ち敵討ちええ。
これで絶対返り討ちになりっこなしってんですからやらせて下さいな」。
「何?」。
「ですからね酒なんざ持ってかねえんですよ」。
「何?」。
「酒なんざ持ってかねえの」。
「酒持ってか…。
何を持ってくんだよ?」。
「ええ?」。
「何を持ってくんだよ?」。
「エヘヘヘヘ小便」。
「何?」。
(笑い)「だからいや小便を『小便』って持ってくんですからこれ嘘偽り無えんですからね。
悔しいから今度小便を飲まし…」。
「おいおいそんなばかな事およしなさい」。
若い者腹立ちまぎれ寄ってたかって1升徳利へ小便を仕込みますてぇとそれに栓をして紐で首っ玉結わえて…。
「お願いでございます」。
「ブワ〜ッ」。
(笑い)「ウ〜ッいずれへ参る?」。
「あの〜近藤様のお小屋へ通ります」。
「何?近藤氏の小屋?ご同役。
また参ったぞ〜。
性懲りもなく。
何だ?その方は」。
「手前向こう横丁の…向こう横丁…」。
「向こう横丁の何だ?」。
「向こう横丁のお稲荷さん」。
「何だ?」。
(笑い)「小便屋です」。
「何?」。
「小便屋です」。
「何?小便屋?ご同役。
聞いた事ござらんな小便屋。
何だ?その方のぶら下げてる物は」。
「あの〜小便のご注文で」。
「ばか」。
(笑い)「小便など注文して如何…?」。
「いや。
何だか分からねえんですがね松の肥やしにするとかで」。
「出せぃ」。
(笑い)「ありがとうございます」。
(笑い)「どうぞひとつごゆっくりお調べの程を」。
「余計な事を申すな。
実にけしからん者ですな。
小便と偽って持っ…。
控えとれ。
棒縛りだぞ貴様。
ああ?ああ。
一応役目の手前手落ちがあってはならぬ。
中身を調べるぞ。
うん?これがたとえ油だろうと水カステラであろうと小便であろうと役目の手前手落ちがあってはならぬ。
控えとれ。
一応調べる。
この偽り者。
貴様棒縛りだぞ貴様。
ああ?控えとれ控えとれ」。
「うん?ご同役。
どうやら今度は燗をして持ってきたようだ」。
(笑い)「いや冷やでよし燗でよし。
控えとれ〜。
この偽り者。
棒縛りだぞ貴様。
ああ?実にどうもとんでもないこんな油とか小便なんぞいろんな偽ってこんな結構…結構じゃねえ不埒な物を…」。
(笑い)「持参…。
控えとれ。
ご同役。
手前毎度お先で恐れ入ります。
控えとれ。
棒縛りだぞ貴様。
うん?実にどうもけしからんな。
控えとれ。
一応中身を調べるぞ。
うん?おっおお?だいぶ泡立ってるようですな」。
(笑い)「酒の性がよろしくないかな?それとも燗のつけ…。
こんな泡なぞフ〜ッフ〜ッ」。
(笑い)「ハハハハハ。
控えとれ〜。
偽り者。
棒縛りだぞ貴様。
うん?あれ?少し目にしみるような気が…」。
(笑い)「いや〜気のせいでござるかな?控えとれ〜。
この偽り者。
棒縛りだぞ貴様。
ウッ。
けしからん斯様な物…」。
「ですから最初から私小便だとお断り申したでは…」。
「ウ〜ン。
分かっておる。
あなこなウ〜ン正直者めが」。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2014/05/03(土) 04:30〜04:59
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「禁酒番屋」[解][字][再]

落語「禁酒番屋」▽鈴々舎馬風▽第655回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「禁酒番屋」▽鈴々舎馬風▽第655回東京落語会
出演者
【出演】鈴々舎馬風,古今亭半輔,瀧川鯉○,三遊亭遊松,小口けい,斎須祥子

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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