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help RSS 読書日記−「義経になった男」

<<   作成日時 : 2011/07/05 21:58   >>

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 今回採り上げるのは平谷美樹さんの「義経になった男」(ハルキ文庫全4巻)である。
 この小説は2008年10月から2010年9月まで河北新報に連載されており、これをまとめて今年6月に文庫化されたというわけである。

 タイトルにあるとおり、義経を扱った小説であるが、主人公はあくまでも義経の影(武者)となった俘囚(蝦夷)出身の「沙棗(旧名:シレトコロ)であり、彼の視点で物語は綴られていく
 義経と言えば、「判官贔屓」という言葉があるように、歴史上の悲劇のヒーローというイメージが強いが、この小説における義経は、武略には優れているものの非常に繊細な神経の持ち主として、むしろ頼朝との対比において、いじめにあった可愛そうな人物として描かれている。
 
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 それでは、恒例の出版社の宣伝文句からいきたい。

第1巻−三人の義経
嘉応二年(一一七〇年)。朝廷が行った強制移住で近江国に生まれ育った蝦夷のシレトコロは、まだ見ぬ本当の故郷――奥羽――を想っていた。十三歳の春のこと、三条の橘司信高と名乗る男があらわれ、シレトコロは奥羽に連れて行かれる・・・・・・。それは、後の源義経の影武者とするためだった。一方、鞍馬山の牛若は、「あなた様は、源氏のお血筋。平家を打倒し、天下に名をはせるお人」という言葉によって剣術の稽古を続けていた。そして〈遮那王〉と名乗ることとなった十六歳の牛若は、奥州平泉に向かう決意をする。壮大なるスケールで、新しい義経を描ききった、歴史小説の金字塔!

(第2巻−壇ノ浦)
寿永三年(一一八四年)九月。義経が検非違使五位尉に叙せられて、京の治安は落ち着き初めていたかに見えた。だが激怒する頼朝は、義経を京に飼い殺しし、雑事ばかりを与えていた。元歴二年(一一八五年)、頼朝は平家の本拠である屋島を攻めるために、義経を追捕使として四国へ向かわせることになった。二人の影武者、沙棗と小太郎とともに戦いに挑む義経。兄・頼朝を信じようとする義経と、頼朝は怨敵であると認識する沙棗。運命が、二人を中心に大きく動き始めていた・・・・・・。

(第3巻−義経北行)
頼朝に利用された挙句、切り捨てられた義経。走者(逃亡者)となり、ひたすら北へと逃げていた義経たちは、文治三年(一一八七年)の春に平泉に到着した。病にたおれ、抜け殻となって夜具に横たわる義経。頼朝の奥羽攻め寄せに覚悟して“その日”の準備を進める藤原秀衡。やがて正気をとり戻し、自分をとり巻く全ての状況を理解した義経は腹を切る。義経の想いを知り、義経の首を切り落とした沙棗は、自分は義経として生きることを決意するのだった。

(第4巻−奥州合戦)
義経の意志を守り、自らの耳を切り落とした沙棗。義経の死を確認できずに、奥州追討を進める頼朝。やがて文治五年(一一八九年)七月、頼朝は鎌倉から出陣した。一方、平泉藤原氏が滅びることが、陸奥国、出羽国両国の平和を引き延ばせると考える基治の決意を聞いた沙棗。己れもまた、義経として頼朝に追ってもらうために、北へ向かうことを決めた。激しい闘いの中、国衡が、泰衡が散っていく。沙棗が最後に見るものとは果たして・・・・・・?


 一言でいえば、かなりの力作である。
 作者の平谷さんについては、これまでSF作家と見ていたが、この歴史小説はなかなかの出来栄えである。
 
 もちろん、義経ものとしては、お約束の源平の戦いの場面があり、これはこれで結構面白いのだが、この小説の(構想上の)見どころはむしろその後の「義経北行(第3巻)」や「奥州合戦(第4巻)」にあると思う。

 すなわち、これまでの義経伝説においてよく語られていた、「義経は衣川で本当に死んだのか、生きて蝦夷に逃げたのではないか。あるいは大陸に渡りジンギスカンとなったのではないか」というような伝説を踏まえ、また、何故奥州藤原氏はいとも簡単に滅びたのか、またその後の鎌倉幕府の統治は藤原氏の治世と殆ど変らなかったのは何故か?」というような疑問にも応える内容となっている。

 もちろん、この小説はフィクションであり、この小説の内容が真実だと主張するつもりはないが、「ふむふむなるほどそのように解釈したのか、なかなかやるなあ!」などとうなづきつつ、この小説を楽しむことができた。

 読了後、作者の平谷さんについて少し調べてみたが、岩手県在住とのことである。
 この話を聞き、この小説が、前述のように東北からの視点で書かれたものであることに大いに納得した次第である。

 長くて、テーマが少し拡散気味という気がしないでもないが、あまり飽きることなく最後まで面白く読めた小説であり、お薦めしたい。
 



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時

藤原氏・源氏・平氏といろいろなキャラクターが出てくるのが面白いと思います。それぞれに個性があって
さまざまな経緯やバランスで成り立っていることは非常に大切なことだと思いました。
歴史に詳しくなりそうな小説です。
2011/07/07 17:32
コメント頂き、どうもありがとうございます。
この小説の内容が真実だとは思いませんが、当時このようなことがあったのかもしれないと思いながら読んでいくと楽しく読めるし、また歴史に関する理解も進みますね。そういう意味からもなかなかよい歴史小説だと私は考えます。
かじやん
2011/07/08 11:39

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