（神戸尊）ねぇ…。
こんなとこで寝てたらさ風邪ひく…。
あっ…ああ！
（米沢守）付近一帯を捜索しましたがバッグの類や携帯電話免許証財布の類は一切見つかってません。
（芹沢慶二）じゃあまるっきり身元不明って事ですか。
（三浦信輔）被害者の似顔絵を作らせてこの辺りの店やホテルしらみつぶしに当たるしかなさそうだな。
（米沢）死因は後頭部打撲による脳挫傷です。
こちらから血痕と毛髪が見つかってます。
（伊丹憲一）まあ状況から見て間違いなく殺しだろうな。
それにしても第一発見者がよりにもよって…。
尊だとはなぁ…。
えっ…？よかったらもうちょっと近くでご覧になったらいかがです？特命係の神戸警部補殿。
いやいやもう十分見ましたから。
だったら教えてもらえますか。
はい？どうしてこんな朝っぱらからこんな場所に？あいや…それはその…。
武士の情けで聞かないでおきますよ。
行こうか。
だったら最初から聞くなよ。
（角田六郎）女の部屋から朝帰りのついでに死体発見ってか？そんなんじゃないですよ。
まあちょっと朝のジョギングっていうか。
（角田）まああの辺はホテトルなんかも多いからね。
おおかたホテトル嬢と客の揉め事かさもなきゃ痴漢じゃねえの？うーん…。
（杉下右京）まだ気分がすぐれませんか？いや…なんかこの辺りに引っかかってるんですよねぇ。
やっぱり二日酔いだよ。
違いますよ。
ん？女のにおい？しません。
いや死体を発見した時なんかこう妙な違和感を感じたんですよね。
おや神戸君。
はい。
何かが引っかかるという事はそこには必ず大事なサインがあるという事なんですよ。
サイン…？サイン？
（米沢）年齢は２５歳から３０歳。
血中からはアルコールや薬物などは一切検出されていません。
やはり後頭部の傷が致命傷で死亡推定時刻は午前０時から１時の間ですね。
繁華街とはいえ裏通りのエアポケットのような場所ですからねぇ。
目撃者を探すのも難しいかもしれませんね。
指紋もＤＮＡも前歴者とはヒットしませんでした。
発見時の遺体の写真見せてもらえますか。
おや大丈夫なんですか？…はい。
じゃあ。
どうぞ。
あっわかった。
おや違和感の正体がわかりましたか？胸元のカットが大きいのにネックレスをしていません。
ピアスやアクセサリーをまったくしてないのがコーディネート的に不自然です。
さらに被害者は紫色のヒョウ柄のワンピースを着ている。
それにしてはリップグロスの色がおとなしい。
しかもアイシャドーを塗っているのにアイラインやマスカラはつけていない。
なるほど…。
女性に疎い私たちには到底気づきえないポイントですなぁ。
その「私たち」には僕も含まれていますか？えっ…？こりゃ失礼しました。
いえいえ構いませんよ。
でもなんでだろ？この女性に見覚えありませんか？
（日高千広）よく似たお客様はいらっしゃいますが。
じゃあ名前とかわかります？勘弁していただけませんか。
うちは会員制のシングルズバーなんです。
顧客情報を簡単にお教えするわけにはいきません。
ご協力願えませんかねぇ。
実はこの女性亡くなってるんです。
…亡くなった？もし事件性があればいろいろとお話を伺わなきゃならないんですがねぇ。
うちは出会いの場所を提供してるだけです。
会員制なら名前くらいわかりますよね？…わかりました。
（三浦）おい。
はい。
シングルズバーってなんだ？だから独身の男女が集まって好みの相手を探して一緒に飲んだり時にはそのまま…。
そんなのありかよ…。
こちらの方ですが…。
はいすいません。
（芹沢）中路絵利子…。
昭和５７年…２８歳ですね。
東京都杉並区杉並…。
ずいぶん地味だな…。
（芹沢）免許証の写真も地味でしたもんね。
（伊丹）おい！これ見ろ。
（芹沢）あっ…。
こっちはずいぶん派手だな。
（芹沢）あっ！写真ありますよ。
あこんな…。
被害者は表と裏２つの顔を持っていたようですねぇ。
（伊丹）ちょっともう…！チッ…何しに来たんですか？第一発見者ですから何かお役に立てないかと思いまして。
（米沢）おやあれ？被害者の名刺を見つけました。
こら！ん…？
（三浦）警察庁？
（芹沢）しかも長官官房付き総務課…。
今から警察庁へ行ってきます。
（中園照生）伊丹待て！とりあえず警察庁側には文書の形で回答を求めて必要に応じて聴取出来るよう要請する。
これは殺しなんですよ。
被害者の上司や同僚から直接事情を聞くなって言うんですか？
（内村完爾）お前はまだ事の意味がわかってないようだな。
意味？被害者は夜の街で男をあさってたそうじゃないか。
民間企業ならともかく警察庁の職員となるとマスコミも放っておいてはくれんだろう。
確かにスキャンダルですね…。
警察組織の威信のためにも事件の情報が外部に漏れるような事があってはならん。
ここは警察庁側の対応を待て。
確かに被害者の夜の顔が明らかになる事は警察庁にとっても避けたい事態でしょうねぇ。
ひょっとして門前払い食らったりして。
念のために電話を一本入れておきましょう。
（電話）
（高野友彦）はい官房長の執務室ですが。
警視庁特命係の杉下と申します。
小野田官房長はいらっしゃいますか？
（高野）「あいにくですが官房長は所用で席を外しております」失礼ですがそちらは？「長官官房の高野と申します」お聞き及びと思いますが中路絵利子さんが亡くなった件について職場の方からお話を伺いたいと思いまして。
「総務課のほうも現在取り込んでる最中で後日こちらから都合のいい日時を連絡させていただきます」恐れ入ります。
では連絡をお待ちしております。
やっぱり門前払いですか。
致し方ありません。
官房長でなくても警察庁の人間ならば警視庁の人間には自由に出入りされたくはないでしょうからね。
あのちょっと聞いていいですか？小野田官房長と杉下警部はいつ頃からのお付き合いなんでしょう？さあ昔の事ですからね。
忘れました。
そうなんだ…。
（米沢）被害者の部屋にあったブランド品と領収書やカードの明細書です。
亡くなった中路絵利子さんはかなり几帳面な方だったようですね。
シングルズバーで男をあさる夜の顔とは真逆ですね。
そのアンバランスさに妙に心が引かれますが…。
あっ…それはさておき両者をつき合わせた結果ほとんどすべての品は被害者本人が購入したものだという事が判明しました。
プレゼントをしてくれるような男性はいなかったのでしょうかねぇ。
いやいやいや…。
これは誰かからプレゼントされたものですね。
おやどうしてそう思うんですか？めったにないプレゼントだからこそこうして包装紙まで大切に取ってある。
なるほど。
じゃあ指紋を調べてみましょう。
お願いします。
（金子文郎）特命係？
（高野）ええ。
（高野）総務課の女性職員の件を調べてるようです。
（金子）小野田からよく聞かされたものだ。
杉下右京が動く時通常の捜査では出てこない何かがあぶり出されるって。
ああこれは面白いな。
いい機会だ。
手を貸してやってみたまえ。
（高野）よろしいのですか？仮に都合の悪いものが出てきたとしてもその時は握りつぶせばいいだけの話だ。
昼間は警察庁のお堅いＯＬが夜は毎晩男をあさる魔性の女に変わるか…。
確かに大したスキャンダルだな。
ネックレスの贈り主がわかりました。
指紋が出ましたか。
はい。
しかも認証システムにあったようです。
警視庁警務部…。
警務部訟務課っつったらお前かなりのエリートだよ。
この藤崎って奴これ確か去年結婚して…。
（大木長十郎）何すか…！ああもう！その時の媒酌人が…。
田丸警視総監が仲人ですか…。
こっちも負けず劣らずのスキャンダルだな。
総監お気に入りのエリートが警察庁の職員と不倫しちゃマズイだろう。
中路絵利子さんご存じですね？
（藤崎俊孝）さあ知りませんが。
あなたがこのネックレスをプレゼントしたお相手のはずなんですけど。
包装紙からあなたの指紋が見つかっています。
高価な品物ですからねぇ販売店を探せばあなたが買われた事もすぐにわかると思いますよ。
彼女が亡くなったのも当然知ってますよね？ああ…確かにそれは私が贈ったものです。
ですがずいぶん昔の結婚前の話です。
つまり以前にお付き合いされていた？警察庁の同期に紹介されて何度か食事をしたり…。
でも短い付き合いですぐに別れて。
ここ何年も会っていません。
ちなみに昨夜午前０時から１時の間どちらにいらっしゃいましたか？どちらも何も昨日は１１時には家に帰ってそのあとはずっと妻と一緒でした。
私は彼女が亡くなった事とは無関係です。
すいませんが仕事がありますので。
嘘ですね。
はい？実はこのネックレス去年の暮れに発売された新作なんです。
なるほど。
被害者の化粧の件といい君の女性に関する豊富な知識は今度の事件にかなり役立ちますねぇ。
それ褒めてるんですよね？あ…もちろんですよ。
（携帯電話の振動音）失礼。
（携帯電話の振動音）杉下ですが。
お忙しいところ失礼いたします。
長官官房の高野です。
よく僕の番号をご存じですね。
官房長から聞きました。
今よろしいでしょうか？どうぞ。
「中路絵利子の件ですが総務課の手が空きました」「これからこちらに来れますか？」わかりました。
すぐに伺います。
ん…何か？被害者の上司の方を紹介してくださるそうです。
何やら風向きが変わってきましたねぇ。
警視庁特命係の杉下と申します。
同じく神戸です。
（住吉実史）総務課長の住吉です。
早速ですが亡くなった中路絵利子さんのデスクはどちらでしょう？どうぞこちらへ。
ずいぶんきれいに片づけてますね。
ちなみに彼女の具体的なお仕事の内容は？仕事といってもほとんど雑務でして会議場所のセッティングやオフィス備品の購入書類の配送事務とかです。
彼女はただの事務職ですし正直地味な裏方仕事ばかりでしたから。
引き出し拝見してよろしいですか。
はいどうぞ。
ちなみに職場で親しくされていた方は？
（住吉）あどちらかというと１人でいる事のほうが多かったみたいです。
なるほど。
では私生活について何か相談を受けた事は？
（住吉）いえ自分の事はめったに話しませんでした。
亡くなられた日ですが彼女がここを出られたのは何時頃だったかおわかりでしょうか？たぶん１０時半くらいだったと思いますが。
（男性職員）課長３番にお電話です。
あっちょっと失礼します。
ああ…。
やっぱりもう１つの顔は職場じゃ隠しておいたようですね。
（チャイム）
（藤崎真由子）はい？藤崎さんの奥様ですね？はい。
警視庁の杉下と申します。
同じく神戸です。
ぶしつけな質問で恐縮ですが昨夜の事を少々お伺いしてもよろしいでしょうか。
なんでしょう？ご主人は何時頃帰宅されましたか？え…はい。
１１時頃でした。
１１時で間違いありませんか？その時間奥様は起きていらした？はい。
起きてテレビを観ていました。
現場の警察官は聞き込みの時こんなものを持ってるんです。
昨日のテレビ欄です。
なんの番組でした？えっと…あの…。
（ドアの開く音）
（藤崎）何をしてるんです！おやお早いお帰りですね。
あっ先ほどの話を奥様にも念を押すために戻られたのでしょうか？だったらご心配なく。
奥様はちゃんと期待に応えてくれてますよ。
なんの事でしょう？自宅まで押しかけてきて…。
どうかお引き取り願えませんか。
はっきり言って迷惑です！事件の夜藤崎俊孝が１１時に帰宅していなかったのは間違いないでしょう。
そのようですねぇ。
藤崎は中路絵利子さんと不倫をしていた。
とすれば殺害の動機があってもおかしくない。
でも本当に浮気してたんですかね？はい？藤崎のようなエリートにとっては結婚すら出世の道具です。
警視総監に仲人してもらった結婚が破綻すれば出世の道は当然なくなる。
それがわかっていて浮気なんかしますかね？なるほど。
君らしい着眼点ですねぇ。
ん…？どういう意味でしょう？警視庁から推薦で警察庁の警備局に採用になったいわばエリート街道の真ん中を歩いた事のある君だからこその意見という意味で別に他意はありませんよ。
フフ…それが今は人材の墓場特命係ですけどねぇ。
ご不満ですか？
（電話）
（電話）はい特命係。
警察庁から防犯カメラの映像が届いたんですが少々気になる点が…。
（米沢）しかしさすがは警察庁ですな。
防犯カメラもかなりの数です。
で気になる点とは？あこちらです。
昨日の帰宅時の映像です。
殺害された時の着衣を持っていませんねぇ。
メークもナチュラルメークです。
ええ確かに。
亡くなった時とまるで違いますねぇ。
こちらプリントアウトをお願いします。
わかりました。
時刻は１０時２７分。
警察庁から犯行現場まで３０分もかかりません。
犯行時刻の０時までにどこかで夜の顔に変身したとすれば…。
コインロッカーか隠れ家的な部屋にでも用意しておいたんでしょうか。
その可能性は否定出来ません。
ですが僕は…。
こちらのほうが気になりますねぇ。
（携帯電話の振動音）失礼。
（携帯電話の振動音）はい杉下ですが。
警察庁長官直々の呼び出しですか。
厄介な事にならなければいいのですが。
ん…厄介って？君も警察庁にいたのなら少しは耳にしているでしょう。
現在の警察庁と警視庁の対立構造を…。
金子長官の警察庁と田丸警視総監の警視庁側との対立ですか。
お二人は若い頃からのライバル同士で事あるごとに対立していたそうです。
田丸警視総監以下警視庁幹部は自分たちこそ日本の首都東京を守っている最高の捜査機関であるというプライドのもと警視庁の独自性を確立しようと警察庁に反目する動きを強め…。
かたや金子長官たち警察庁キャリアは警視庁でさえも地方の県警本部と同等に過ぎないと見下し事あるごとに自分のたちの管理下に置こうとしている。
まさか杉下さん今回の事件の背景に警視庁と警察庁との対立があるとでも？背景にあるのかあるいは今度の事件をどちらかが利用しようとしているのか。
それはまだ僕にもわかりかねますが。
いずれにしてもきなくさい食事になりそうですね。
ごゆっくりどうぞ。
杉下君に神戸君だったかな…。
はい！さあさあ…。
杉下です。
神戸です。
まあ…。
いやぁ君たちの事は小野田からよーく聞いてるよ。
彼にはね永田町にお使いを頼んでね。
同席出来なくて残念がってた。
ハハハ…。
まあまあ一杯いこう。
申し訳ありませんがお話の内容いかんでは公務になるおそれがありますので。
おや…話の内容がわかってるようだね。
このような微妙な時期での警察庁長官直々のお呼び出しとなれば当然事件に関する事ではないかと。
ならば単刀直入に聞こう。
うちの女子職員を殺害したのは警視庁の人間かね？それを今調べている最中です。
すべては今後の捜査次第ですが必ずしも長官がお望みの答えが出るとは限りません。
ハハハ…いや少々誤解があるようだな。
我々は警視庁と無理に事を構えようなどとは思ってないよ。
いい機会だから少し説明しとこう。
犯罪捜査における汚職や不祥事それに冤罪がどうして起こるかわかるかね？現場で実働する人間が己の力や権限を過信してるからだよ。
それを防ぐのは上級官庁である我々警察庁が徹底的に管理出来るようにシステムを変えなければならない。
例えるなら軍隊におけるシビリアン・コントロールのような仕組みを構築しようというのでしょうか。
おうおうおうおう…。
ああいい例えだね。
お言葉ですが今度の事件が警察庁と警視庁の政争の具となり事件解決の妨げになるような事は決してあってはなりません。
やはり聞いたとおりの男だ…。
出すぎた事を申し訳ありません。
ところでその事件解決のために１つお願いがあるのですが。
なんだね？被害者の上司である住吉総務課長が隠匿したものが手に入ると助かるのですが。
おう…。
高野に伝えておこう。
いやぁ君に会えてよかったよ。
いや一度話しをしたいと思ってたんだ。
何しろあの小野田公顕に牙をむいた男だからね。
なんの事ですか僕にはさっぱり。
（大河内春樹）こんな時間に今度はなんだ？気になる事があるとその日のうちに調べたくなるのが僕の悪い癖。
気になる事…？杉下さんと小野田官房長がかかわった人質事件。
僕が読んだ特命係の記録には残ってませんでした。
大河内さんなら何か知ってるんじゃないかなと思って。
残ってなくて当然だ。
特命係が出来る前の…いや特命係が出来るきっかけになった事件だからな。
きっかけ？２０年以上前に起きた外務省高官公邸での人質籠城事件といえば覚えてるだろう。
え…？
（大河内）外務省の大物大使の自宅が武装グループに襲われ大使とその側近が人質になった。
（銃声）
（悲鳴）当時公安部の参事官だった小野田官房長はＳＡＴの精鋭５人を集め非公式なチームを作った。
それが特命係の前身「緊急対策特命係」だ。
同時に捜査二課にいた杉下右京を作戦参謀として招き籠城事件の指揮を執らせた。
杉下右京は犯人グループと粘り強く交渉を重ね多くの人質を解放させた。
しかし小野田官房長は早期解決のために強行突入するように杉下右京に迫り…。
（小野田公顕）これは指揮官の命令だよ。
作戦参謀として出来ないと言ってる。
やれ！出来ません！
（大河内）結果小野田官房長は杉下右京を参謀から解任し…。
（銃声）
（大河内）強行突入は人質を含む７名の死者を出す最悪の結果を招いた。
作戦失敗の責任を取らされた杉下右京は人材の墓場と呼ばれる窓際部署に追いやられた。
それが今の特命係？おかげで納得がいきました。
杉下さんと小野田官房長の間に誰にも入る事の出来ない空気があるって事に…。
おはようございます。
おはようございます。
おはようございます。
なんですか？高野さんが朝一番で届けてくれたようです。
やはり事件のあと上司の住吉課長が彼女のデスクから持ち去っていたようです。
杉下さん。
やはりもう１つの顔用ですね。
でもどうしてオフィスに残ってたんだろう？神戸君…。
はい？ここ…。
７日２４時Ｆ…事件のあった時刻ですね。
この「ジェロシア」っていうのは新宿のホテルのラウンジです。
Ｆが藤崎を指してるんだとすれば…。
被害者は事件の夜藤崎さんと待ち合わせをしていた。
これ持ってもう一度藤崎に会いに行きましょう。
その前に１つだけ確かめたい事があります。
デスクの上にメモ用紙ひとつ残っていない。
最初から気になっていました。
なおかつあなたは彼女の仕事がさして重要な仕事ではなかったと必要以上に強調されていました。
仕事といってもほとんど雑務でして…。
本当にただの雑務だったらあそこまで強調する必要もなかったでしょう。
いえ彼女は実際本当に…。
これですね。
ええ。
それから…この段ボールが気になりました。
使用済みの書類や文書を専用の段ボール箱に入れ業者に渡せば箱を開けずにそのまま溶かして処分してくれる便利なサービスですよね。
彼女はこのサービスを利用して長官官房内の機密書類の処理を担当していた。
違いますか？その中には当然金子長官や小野田官房長が会議に列席された議事録や資料も含まれていたでしょう。
彼女なら梱包するふりをして機密書類を持ち出す事も可能だったわけだ。
場合によっては…あなたが機密漏洩を疑われる可能性もありますよ。
本来なら梱包に私も立ち会う決まりなのですが彼女の事を信頼して…。
あなたは中路絵利子さんが機密書類を持ち出している事に薄々気がついていました。
しかしそんな矢先中路絵利子さんが殺害されてしまった。
捜査が続けば機密書類の持ち出しが明らかになるかもしれない。
自らの管理責任に及ぶ事を恐れたあなたは彼女のデスク周りの品々をとっさに隠してしまった。
だからといってここまで露骨な真似をしたらかえって怪しまれると思いませんでした？それは…上層部にすでにバレてると思ったから…。
おや？なぜそう思われたのでしょう。
何週間か前探偵事務所の調査員だと名乗る男が私に接触してきたんです。
探偵事務所？中路君の事を聞かれました。
間違いない…絶対バレてるって。
そう思ったら居ても立ってもいられず…。
（住吉の嗚咽）
（藤崎）いい加減にしてくれませんか。
私は何もしていないと言ってるでしょう！今日お伺いしたのは殺人事件に関してではなく中路絵利子さんに強要した背任行為についてです。
あなたは田丸総監と敵対する警察庁長官や官房長の動きを探るため機密書類を入手出来る立場にあった中路絵利子さんに近づいた。
彼女も最初は遊びのつもりだったのかもしれませんがやがてあなたに言われるままに機密文書を持ち出すようになった。
何を根拠に言っているのか…！これは中路絵利子さんのデスクにあったカレンダーです。
事件の夜…そしてそれ以前にも何度も彼女はこのＦという人物と会う約束をしていました。
中路絵利子さんは事件の夜Ｆ…つまり藤崎さんあなたと会う約束をしていたんですね？恐らくこの封筒の中身が機密書類だった。
事件の夜何があったか教えてもらえますか？会えなかったんだ…。
待ち合わせ場所のラウンジで２時間以上待ったが絵利子は現れなかった。
（藤崎の声）２人の関係は誰にも知られるわけにはいかない。
だから携帯電話にかける事も出来ず…。
あの日に限って来ないなんておかしいとは思いました。
ひょっとしたら誰かにバレたのかも…そんな嫌な予感がして…。
行きつけのバーに行って夜中まで飲んでいました。
という事はあなたが自宅に着かれたのは？３時過ぎです。
妻はとっくに寝ていたみたいで顔も合わさずに私も自分のベッドでそのまま…。
なるほど。
それで納得がいきました。
なぜあなたが本当のアリバイを供述出来なかったのか。
つまりあなたは事件の夜被害者に会ってもいないし犯人でもない…。
本当です。
ラウンジの店員に確かめてもらってもいい。
バーのマスターにも。
最後にもう１つだけ。
探偵事務所を使って彼女の周辺を調べたりはしていませんよね？探偵事務所？なんの話ですか？いえ。
行きましょうか。
はい。
ありがとうございました。
探偵を雇ったのは藤崎ではなかった。
警察庁も機密文書の漏洩を調べるのに探偵は使わないでしょう。
警視庁とて同じ事でしょうねぇ。
お待たせしました。
被害者のカードの明細履歴です。
事件のあった夜１１時３２分に買い物をしてますね。
深夜営業のブティックです。
場所は新宿駅の近くです。
あのワンピースは当日の夜買ったものだった。
中路絵利子さんのポーチの化粧品と亡くなった時の化粧の成分は当然…。
一致しませんでした。
どうもありがとう。
神戸君行きましょう。
はい。
何をお捨てになったのでしょう？リップグロスにアイシャドー…まだ使えますよ。
それが何か？外で立ち話もなんです。
よろしければ中でお話を伺えますでしょうか。
（真由子）なんでしょうか？ちょっと失礼。
神戸君。
はい…！熱っ…！あ…。
機密書類と調査報告書です。
ご主人と中路絵利子さんの素行調査を探偵事務所に依頼したのはあなたですね？妻が夫の浮気を疑う事がそんなにいけない事でしょうか？いえ浮気を疑う事も探偵を雇う事も問題はありません。
問題はありませんがここには浮気相手の中路絵利子さんが警察庁勤務だった事も書いてあります。
事件の夜あなたは中路絵利子さんを待ち伏せしたんですね？待ち合わせまでの時間つぶしでしょうか。
中路絵利子さんが深夜営業のブティックでワンピースを買うのもあなたは目撃していた。
（真由子）彼にはもう会わないで！お願い！お願いだからもうこんな事やめて！藤崎とはもう会わないで！
（中路絵利子）なんにも知らないくせに！
（真由子）あんたの本性なんかわかってんだから！
（絵利子）あんたに何がわかるっていうのよ！
（ぶつかる音）
（荒い息遣い）ちょっと…！ねえ！あっ…！？あ…！そのまま放置すればすぐに身元がわかり夫である藤崎さんそして自分に嫌疑がかかるのは時間の問題。
とっさにそう考えたあなたは彼女のいわばもう１つの顔を利用する事を思いついた。
見ず知らずの男を誘いその男に殺されたように偽装するためには派手な化粧が必要でした。
本当はこういうメークにしたかったんですよね？ところがあの夜彼女はもう１人の自分用のメーク道具をオフィスに置いたままでした。
仕方なくあなたは自分の化粧品を使い彼女に目いっぱい派手な化粧を施したあと…。
彼女の持ち物を奪いその場を立ち去った。
僕たちが最初にご主人のアリバイを尋ねた時…。
なんの番組でした？えっと…。
答えが不確かだったのはあなた自身がその時刻犯行現場にいたからなんですね。

（ため息）あの時から私の事を？最初に遺体を発見した時です。
あなたが普段使ってる化粧品では彼女の顔をここまで派手には出来ない。
それが僕の感じた違和感の正体です。
死体に使った化粧品など捨てるしかありませんからねぇ。
この化粧品を鑑定に出せば亡くなった中路絵利子さんに使った物である事がすぐにわかると思いますよ。
ところでご主人が中路絵利子さんに接触していた件ですが浮気というよりは彼女を利用して機密文書を入手するためだったのではありませんかねぇ。
いいえあれは浮気…。
ううん…それよりもっとひどい事よ。
最初は思ったの。
許せないって。
あんな淫乱な女が彼の相手だなんて。
でもあの人に会ってる時のあの女…。
あんな女が素顔で会ってるなんて…！浮気ならまだしも…！許せなかったの…。
あの〜もうよろしいですか？警部殿。
お願いします。
中路絵利子殺害容疑で本庁までご同行願います。
さあ。
（伊丹）さあ。
（三浦）行きましょう。
（真由子の泣き声）彼女が中路絵利子に化粧をしたのは偽装するためだけではなかったようですね。
自分の夫を本気で愛したその顔のまま死ぬ事は決して許せなかった…そういう事でしょうかねぇ。
（金子）はい。
（高野）藤崎の妻が逮捕されました。
そいつは残念だなぁ。
犯人が藤崎という男なら当然うちの女子職員を利用して機密文書を持ち出した事も明らかになっただろうに。
それを警視庁に…？使えるカードをみすみす川に流してしまったような気分だ。
まあもっともいい教訓だったかもしれないな。
教訓と申しますと？いや向こうが先に仕掛けてきた以上こっちも手をこまねいている時じゃない。
それがわかっただけでも十分な収穫だ。
小野田部屋へ呼んでくれ。
もうそろそろ戻ってるだろう。
はい。
（ため息）藤崎真由子過失致死で送検されたそうです。
そうですか。
結局単なる浮気の逆恨みで決着みたいですよ。
警視庁としても機密文書の件に関しては当然触れたくなかったでしょうからね。
まあその論理でいえば警察庁も同じですよね。
機密漏洩が明らかになれば中路絵利子の夜の顔以上のスキャンダルですから。
必要以上に波風を立てて事を荒立てたくない。
で一件落着か。

（田丸）長官には…お悔やみを申し上げたほうがよろしいでしょうか。
お悔やみ？未来ある若い女性職員が亡くなられたと聞いております。
ああ…それならこちらからもお悔やみをお返ししなくちゃなりませんな。
総監ご自身が仲人を務めたほどの優秀な男が将来を棒に振ったそうじゃありませんか。
たとえどのような深い理念や理想を掲げていても無縁な人間から見れば所詮警察官僚同士のコップの中の嵐にしか過ぎません。
コップにしてはかなり大きめのコップですけどね。
ええ。
だからこそその嵐がコップからあふれ出て無辜の人間を巻き込むような事にならなければいいのですがねぇ。
（芹沢）事件も解決したし待ちに待った在庁祝いですね。
ケッ何がめでてえんだよ。
結局特命係のおこぼれで解決したようなもんじゃねえかよ。
先輩頼みますから今日ぐらいはいい酒飲みましょうよ！よっしゃあ…。
三浦さんなんかずいぶん気合入ってますね。
おう！せっかくの在庁祝いだからな。
神戸君。
はい。
君今夜何か予定でも？いや特には。
たまきさんからいいハモが入ったと連絡がありました。
ハモですか…。
行きますかちょっと…はい。
そうですか。
（携帯電話の振動音）はい神戸です。
（大河内）今から少し付き合えないか。
え！？いやちょっと今夜は…。
断るのか？ハハ…いや…わかりました。
あの…大河内さんから稽古に誘われちゃいました。
でも少しって言ってたんで先に行っててください。
構いませんよ。
まだ時間も早いですから。
紅茶でも飲んで待っているとします。
では…。
え！？届きましたか？志ん生のメモリアルＣＤ。
取りに行きます。
取りに行きますはい。
あっ…しまった。
財布財布…。
う〜ん…ない。
下ろさなきゃ…！
（陣川公平）「もう一度確認しようその振り込み」よし出来た！2014/05/03(土) 16:00〜16:55
ＡＢＣテレビ１
相棒　ｓｅａｓｏｎ９[再][解][字]

「予兆」

詳細情報
◇番組内容
ついに真の相棒となった右京（水谷豊）と尊（及川光博）が挑む難事件！見所満載の『相棒 ｓｅａｓｏｎ９』！見逃せない！！
◇出演者
水谷豊、及川光博、宇津井健、品川徹、岸部一徳、神保悟志、志村東吾、吉田羊　ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字（字幕）
福祉 – 音声解説

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