「全身編集長」〜文豪から学ぶオトコの生き方〜 2014.05.03

(てりぃ)え〜それではここで編集長の島地勝彦より皆様に熱いご御礼のひと言を。
(島地勝彦)え〜私の優秀な部下たちに口を酸っぱくして言ってる事があるんですよ。
俺たちは雑誌作ってんじゃない。
文化作ってんだ。
(拍手と歓声)こうなるんですよ。
結局はみんな亡くなるのよ。
島地という存在は並み居る作家を手なずけたんじゃないかっていうぐらいのね。
彼らの血を吸って変なドラキュラが葉巻吸ってるって感じの何か生き方してるんだな。
相性ってあるのよ本当に。
魅力があるからねみんなふっとうっとりしてね気が付いたらねなんかもう籠絡されてるの。
女たらしかどうか知らないけどね。
女たらしと人たらしは全然違う。
人たらしの方が高級。
間違いない。
でもまあ最低ですよ私は。
外面ばかりの人生かもしれないね。
ほんと。
いやあもう傑作でした。
先生の生原稿は100万部の神様として毎日手を合わせてるんです。
ママ全然足りないよ。
銀座中のドン・ペリ集めちゃって。
(小春)はい。
右手に「平凡パンチ」左手に「朝日ジャーナル」なんてとっくの昔の事ですから。
今なんてたって両手に「週刊プレイボーイ」の時代ですからね。
(笑い声)
(てりぃ)え〜それでは100万部達成を記念しまして乾杯!
(一同)乾杯!
(拍手)フフ…。
(波の音)
(てりぃ)島地さんむちゃしてますよ。
うるさいよ。
アポ取ったんですか?黙ってついてこい。
でも相手はノーベル文学賞候補ですよ。
だからどうしたよ?編集マンはじか当たりがモットーだよ。
天皇陛下以外だったら誰にだって会えるんだよ。
(開高健)お引き取り願いますわ。
集英社の島地君。
言葉は悪いが「パルプ雑誌」や。
僕の経歴にケチがつく。
先生それはあんまりじゃ…。
さすがは先生!朝からウオッカとは。
本物の酒好きはウイスキーなどの芳醇さに飽きてウオッカのストレートに到達すると言いますからね。
一度この飲み方を始めるとなもうどんな名酒であっても物足りん。
僕はこれを「知る悲しみ」と呼んどるんや。
(時計の時報)どぎもを抜かれました。
座右の銘にさせて頂きます。
大げさやな君は。
(飲み込む音)やるか?お供します。
(笑い声)
(開高)最高やないかセニョール!嘘か誠か定かではないけど何とも見事なもんやろ。
生きづらい現実をユーモアのオブラートに包んで人生を楽しむ。
ジョークの神髄とはやせ我慢なんや。
紳士的だな〜。
ジョークこそ紳士の条件なり。
(グラスを合わせる音)そういう先生のお言葉を私は「週プレ」を通して世の中に伝えたいんですよ。
またその話かいな。
是非「人生相談」を。
できんもんはできん。
ノーベル賞の選考では作家の履歴も見るらしいんや。
純文学の連中からは品行方正に活動してくれと口を酸っぱくして言われてるんや。
先生!そんなに純文学とやらが偉いんですか?そんなノーベル賞が欲しいんですか?だったら集英社で買って差し上げますよ!口を慎みたまえよ島地君。
私は「週プレ」を100万部の雑誌にしようと思ってます。
つまり先生の声は100万人の若者たちに届くんです。
100万人の未来とそのちっちゃなメダルとどっちが大切なんですか!そうですよ!僕らは単に雑誌を作ってるんじゃないんです!文化を作ってるんです!う〜ん…。
先生!いや深入りはやめとこう。
君と僕とでは気が合いすぎる。
悲しいかな。
会うのは今日限りにさせてんか。
先生!大好きなんですってば先生!うわ!な何をするんや島地君。
落ち着きたまえ。
(接吻する音)う…む…!うわぁ〜。
先生の…文化的精子で私を…いや日本の若者たちを妊娠させて下さい。
平に平に…。
100万人の…若者たちを…先生の…。
(いびき)とんでもないやっちゃなぁ…。
今日はみんなにこれからの「週プレ」の編集方針を聞いてもらいたいと思う。
今までの「週プレ」は世の若者たちを興奮させる事に重きを置いてきた。
そのためにいやらしい雑誌三流雑誌バカな雑誌の汚名をさんざんに浴びてきた。
俺もその方針を変えるつもりはない。
(舌打ち)でもな俺が考えている「週プレ」はそれだけじゃ終わらない。
男が本当に興奮する瞬間って何だと思うよ?
(マッチをする音)てりぃ。
はい!はいはい。
(スイッチを押す音)
(テープ音声・開高)「ええ質問やねぇ。
フランスのことわざに『卵を割らないでオムレツを作る事はできない』という言葉があってな。
これは人類が始まって以来の普遍の法則や」。
開高…健ですか?来週号の巻頭は開高文豪の「人生相談」でいく。
(佐藤)引き受けるわけないじゃないですか。
もう3回分は録音してあんだよ!
(テープ音声・開高)「恐らく人類というものが地上にある限り戦争はなくならんよ」。
今の日本を代表する文豪が戦争を語り…。
(テープ音声・開高)「男が熱中できるのは危険と遊びの2つだけでな中でも女は最も危険な遊びなんや」。
男たちの本音を語る…。
興奮すっだろうが。
体じゅうの血がよ。
これからの「週プレ」は男たちの人生丸ごと面倒見んだよ。
いいか?俺たちは雑誌作ってんじゃねんだ。
あれ?文化作ってんだよ!・よろしくお願いします。
はいすいません失礼します。
トモジお前が担当だ。
「読者コーナー」なんて新人の仕事じゃ…。
読者を見下すんじゃねえよトモジ。
右も左もねえノンポリの時代だ。
上から目線の雑誌なんて受けねんだよ。
これからは読者にいかに近づけるかが勝負だ。
せっかく読者ページやるんだからめっちゃくちゃな事やってやろうと思って。
私の文章は俺がさつきあってる女の子に手紙書いたりとかさそういう私信で始まっててさ。
…みたいな事をやる事がつまり読者とシンクロするっていうかさ。
文化作ってるっていうのは何かっていうと社会とコミットしてるというか要するに社会に対する受信力も必要だし発信力も必要だし。
活字なんか載せたら写真が台なしっすよ!
(福田)どうやったら客の目に留まるかを考えろってんだ中城。
まあまあ福田。
若いもんがこんだけ雑誌の事考えてくれてんだ。
こいつを信用してみようじゃない。
「面白いね〜」から始まって細かい事言わないんでだから女性のヌード撮るにも胸の大きいやつ巨乳!明確なポリシーみたいなのがあったから乱暴楽しい狂気も全て全部許すと。

(福田)先週号は意外に20代前半の購買率が伸びて…。
福田データで語るから読者の顔が見えないんだよ。
俺が思い描いてる読者ってのはさ北関東のちょっととっぽい不良たちよ。
そいつらのアニキ分になってやれるような雑誌にしたい。
「プレイボーイ」がやっぱり泥臭いんですよね。
何となく。
で「パンチ」がファッショナブルつまり外からつまりかっこよさをそうやるんだったら「週刊プレイボーイ」は中身中身で勝負という。
つまり男の生きざまなり男はどうやって生きるんだ。
親の言う事全部聞いて先生の言う事全部聞いてそういう真面目なやつだけじゃ人間として面白くねえだろうと。
ただし本当の不良じゃないから。
こんな世界があるぞとこういうのは気を付けろとか。
そういう事も教えるのが俺たちの役目だったの。
アニキだったの。
不良っぽい。
え〜それでは100万部達成を記念いたしまして乾杯!
(一同)乾杯!
(グラスを合わせる音)
(拍手)
(開高)「週プレ」がもうかってるようやな。
先生の連載のおかげで安心してバカをやらせて頂いてます。
言うなれば開高文豪の「人生相談」は我々の「床の間」です。
小気味ええなあ。
君のおべっかは。
でもう1年半や。
そろそろ連載ええやろ。
何をおっしゃいますか先生。
まだまだ…。
バックペインがひどうてな。
パンパン。
厚い板や。
なら水泳ですよ。
うちの若いのにジム探させます。
僕がお墓に持って行きたいのは…「週プレ」やのうて純文学なんや。
もうヨレヨレの開高を純文学の畑に帰したってくれや。
私は先生の声を100万人の若者に届けると約束しました。
今まだやっとその入り口にたどりついたばかりです。
ここでやめたら私先生に嘘ついた事になりますもん。
作家をより作家らしく見せるために必要な道化師みたいな事を島地はやり続けたんだと思うんだよ。
実は作家は自信ありげに物を書いているけれども私に言わせると99%の作家は不安でしょうがないと。
それを島地はきちんと手を打って大向こうから「開高〜!」って叫ぶんだな。
そういうふうに聞こえるわけだ。
褒めてる言葉が。
それで安堵してまた次のところへ進めていくっていう。
だからもしかしたら形よく島地は言ってるかも分からないけれど作家の血を全部吸ったドラキュラかも分からないってとこはあると思うよ。
才能と才能がぶつかり合うというのはすごいでしょ。
それを見るのが編集者ですよ。
しかもじかに見てるんだから編集者冥利ってそこじゃないかな。

(今東光)「知らねえよ俺も。
はり倒すぞ」。
「それも行った事ねえから分かるかい」。
「え〜それはね何かしら人間というものはどんなどん底にいてもね助けられるし助かるものなんだよね。
クヨクヨする事によってかえって体を悪くする。
俺なんかがんで駄目だって言われたのがな『がん俺佃煮にして食っちゃう』ってがんセンターで言ったらその途端に俺はこんなに丈夫になったんだから。
がんの方が恐れ入るんでまあお母さんに親孝行するためにもお前は決して殺されないから。
死にやしねえから心配せずに体をよくして…」。
島地君よ…。
はい和尚。
君一生に一度でいいからロマネとかロマネ何とかっていうやつを飲んでみてえって言った事があったな。
ええロマネ・コンティですね。
そのあまりの希少さゆえに「飲むより語られる方が多いワイン」とまで言われてます。
私ももう既にその話で酔った気分になってます。
飲んじまえよおごってやるから。
いえいえそんな…遠慮しときます。
かまやしねえよ。
あぶく銭が入ったんだよ。
こんな銭はなパッと人のために使わねえとな罰が当たるんだよ。
いやでも結構です。
あの…せん越ですが少しは今後のために…。
バカ野郎!
(テーブルをたたく音)えぇっ?そんな金は俺は一文もねえんだよ。
子孫に美田を残すやつはなロクなもんじゃねえんだ。
みんなバカの大バカ野郎だよ。
ハッハハいいか…。
ヘイ!
(飲み込む音)今なら私…。
和尚のために死ねますね。
バカ野郎かわいい事言いやがって。
コンチクショウめハッハッハ!お前もちったぁなえこひいきされる術を学んだようだな。
ハッハッハッハッハッハ!ヘイ!
(今)釣りは要らねえよ。
釣りは要らねえってんだよ。
ああっ?
(ため息)
(今のため息)今先生どうぞ。
ああ…。
この店でな一番高えやつここへ出しな。
お珍しい!下戸の今先生が。
ガタガタ言わないで早く持ってらっしゃいよ。
一番って言ったらドン・ペリとかロマネ・コンティ!ロマネ…俺はロマネ何とかってのが大嫌えなんだよ!何かありましたの?お二人。
あったもあった大ありだよ。
この島地の野郎がこの俺様を見事に一杯食わしやがったんだ。
ハッハハハハハハハハ!こんな愉快な事はねえじゃねえか。
(笑い声)今日のロマネ・コンティの味墓場まで持っていかせて頂きます。
調子のんじゃねえよこの野郎!
(笑い声)今日俺の財布をお前空っぽにしてもいいからな。
いやいやいやいや。
(笑い声)「人生は冥土までの暇潰し」ってな。
ハハハ!今日は俺にね島地は最高の暇潰しを味わわせてくれたんだからそのお祝いだ。
今日は暇潰し誕生日。
おめでとう〜!やれやれやれ!みんなやってくれ。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
和尚今日はごちそうさまでした。
それより島ちゃんよちょっと金貸してくんねえかなぁ。
へ?チッ皆まで言わせんじゃねえよ。
ちょっと小春とよ…。
ああ…あっはい。
ここだろうが!ここだよ。
ほら。
何よりも尊いものは友情だよ。
ハッハッハ。
あんがとよ。
小春〜!
(ドアベル)今先生と気が合って私とつきあいができるのはコセコセしてないものね。
なんか高いもの身に着けてるけどそんなにお金持ちじゃないしね。
だからそれでいいんじゃないかしら。
無駄遣いする人間っていうのはやっぱりね魅力がありますよ。
だってみんな無駄遣いしないじゃないの。
ケチケチして日本は。
もう芸術なんてね無駄遣いしなきゃねものにならないですよ。
貧乏くさいと。
だからね気が合うんだと思うの。
(取材者)なるほど。
島地さんもそれが分かってるからね。
(取材者)どれぐらいのペースで来るんですか?3か月に1回かな。
何かいい事あると来るし。
切ない時も来るし。
先生にいつもこう葉巻を吸わせに来ます。
先生また参りました。
3か月に1回先生の所へ来てお話しするのが私は何よりも…勇気をもらってます。
また先生参りますね。
亡くなって病院からご自宅に帰った時いの一番に私は行ったんです。
そうしたら…。
お布団に寝ててその顔を見たらここへ…じっと見たらここへ大きい涙があふれてきて。
今先生亡くなった今先生が。
これがタラタラタラタラと流れてる。
私がもう少しね利口だったらそれをヒュッと飲んだと思う。
飲む暇もなくタラッと下に落ちてった。
あれ飲んでたらね私はもう少し立派な人間になってるんじゃないかと今反省してます。

(トモジ)これでいきたいと思います。
面白い!天才だねトモジは。
ほれ直したよ。
(トモジ)はぁ。
福田巻頭トモジでいこう。
またですか!?5週続けてですよ。
福田さん。
俺やれますよ。
若いのに心得てんなぁトモジは。
「退屈は人生最大の罪」ってな。
果ては社長か会長か?よし次てりぃ!はい!はいはい。
「週刊プレイボーイ」ならぬ「週刊プレイガール」。
女子大生が男たちを丸裸に。
(トモジのせき)面白い!こういうバカな事考えさせたら天才だねてりぃは。
(トモジのせき)
(佐藤)トモジそれ入れ過ぎじゃない?あっ…ハハ入れ過ぎちゃった。
辛い辛い。

(由紀子)まだ起きてるの?ねえ…それそろそろ外さない?嫌よだってそっくりなんだもん。
まあそうなんだけどさ。

(クラクション)
(由紀子)何してんの?ん…?何にも。
(波の音)
(息を吐く音)最近なぁ探してる本が見つからんのや。
そんなの早く言って下さいよ。
すぐに探させますから。
昔はなぁ…昔は書店に入った瞬間にお目当ての本はすぐに見つかったもんや。
「私です」「僕です」「俺です!」言うて本の方から僕の事を呼んできよった。
だからてっきり本ちゅうのは読むもんやのうて見るもんやと思うとった。
(てりぃ)さすがです先生もはや仙人の域です…。
(開高)今や本屋は僕にとってディスコの狂騒みたいなもんでな。
悲しきオッサン開高は…こそこそ逃げ出すまでよ。
このあと大事な会議が控えてまして。
(グラスを置く音)君も案外サラリーマンなんやな。
(開高)「サランパンになってしまうわけよ。
そうこれほどの作家がやねなぜ『週刊プレイボーイ』の人生問題に身を託さなきゃいけないのか」。
(聞き手)「『なぜ』じゃないですよそれは。
読者が求めてるんだから」。
(堀越)現場が活気に満ちるのは結構。
でもね〜ほどほどというのを知らなくちゃ。
(佐古田)社内だけじゃねえ。
こないだ他社のお偉方にね開高先生の連載をやめさせろってすごまれちまったよ。
名誉な事だと思ってます。
死んだ母親がよく言ってました。
嫉妬するよりされる人間になれって。
(ドアの開閉音)
(若林)こっぴどくやられちゃいましたね。
「週プレ」は今や社会現象になりつつあるんです。
適度に礼儀正しくそれでいて業績アップ。
そんな都合のいいやり方してちゃ新しい文化なんて生まれやしませんよ。
面白いよね開高先生の「人生相談」。
私の息子もあの連載が大好きでね是非先生の連載は続けていかなければなりません。
今やあれは「週プレ」の…いや集英社の宝なんですから。
100万部の維持よろしく頼みますよ〜。
手洗えよ。
(時計の秒針音)フハハハハハ…いや〜参った。
ひと言もない。
脱帽した。
何も聞かんでくれ。
武士の情けや。
惻隠の情や。
何やセニョールいつもの景気のいい島地節は出てこんのかいな?以前先生は…。
先生は私の事をサラリーマンだとおっしゃいました。
そうやったかいな。
そうなんです。
私はサラリーマンなんです。
編集長という責任のある立場で食わせなくちゃいけない部下もいれば会社のやっかみもある。
100万部も維持しなくちゃいけない。
だから…。
「週プレ」で「人生相談」やるとはこんなセコい事やったとはなぁ。
がっかりや島地君。
今和尚も今の君の言葉…聞きたくなかったやろなぁ。
これはもらっとくで。
(時計の時報)それはつまり…。
君の思うがままや。
連載は続ける。

(クラクション)
(クラクション)
(いびき)やっぱりね開高さんは真剣に純文学の世界に戻りたいと思ったんじゃないの。
で仕事をね私とやるとまあかまけちゃうんだよ。
面白いからそっちの方が。
純文学なんてもう書くモードに入れない。
それが一つでしょ。
でも遊びではしょっちゅう会いたいのよお互いに。
いやぁ懐かしいですね。
へぇ〜。
あちらの方…。
あっ懐かしい。
これはマティーニ。
いただきます。
じゃあ献杯かな開高先生に。
うん。
(小澤)個室が多かったです。
やはり声が大きかったせいで。
いつも個室を。
(取材者)声が大きかったんですか?はい。
ものすごい大きい。
だから2人でガーガーねでっかい声でジョーク言い合ってたんだ。

(福田)政治ネタ…ですか?
(佐藤)畑違いじゃないですか。
それより僕の企画を聞いて下さいよ。
「温泉街ナンパ地図ここで待ち伏せだ」。
(笑い声)いやこれでいきたいんだ。
(てりぃ)どうしたんすか?いつもと言ってる事逆っすよ。
(島地のまねで)「日本中の若者を欲情させろ!」。
(笑い声)いつまでも開高先生頼みでどうすんだよ!担当は…トモジできるな?ええ…。
(せき)他が取り上げそうな記事書いてどうすんだよ。
逆の見方を突きつけて読者をあっと驚かすのが「週プレ」なんだよ。
トモジ。
はい。
お前がやれ。
できるな?はい。
そいつはさすがに危険すぎますよ編集長。
言いたい事言うのが「週プレ」なんだよ。
「今日の異端は明日の正統」ってな。
トモジお前が担当だ。
はい。
(せき)・
(お茶をすする音)は〜。
(福田)いずれにしましてもまずは内容証明を弊社の法務部までお送り下さい。
弁護士と相談の上…。
(トモジ)そんなの必要ないっすよ。
だってこいつら因縁つけたがってるだけ…。
(寺脇)お前さぁ。
(都築)シーッ!そちら様が体張って記事書いてるって事はよ〜く分かりました。
尊敬に値します。
少しはこいつらも学んでほしいぐらいですよ。
(ゴルフバッグを開ける音)
(都築)まあでもね俺たちの事を記事にするんだったらもっと体張ってもらわなきゃならないんですよ。
(ため息)ま今回は俺たちの世界への入場料として右腕一本で手打ちといきますか。
(日本刀を力強く置く音)ちょっとお借りしますね。
ほぉ…。
すばらしい。
お見受けするに備前派の一品かと。
私ども物書きの世界では右手は商売道具なんです。
どうしてもとおっしゃるのなら私の手を持って帰って下さい。
ただし私も物書きの端くれ。
左手で…ご勘弁頂きたい。

(窓を開けようとする音)ん…。
(戸が開く音)
(由紀子)開かないわよ。
(電気のスイッチを入れる音)
(由紀子)鍵つけといたんだから。
毎晩毎晩ベランダから身を乗り出されてごらんなさいよ。
危なっかしくてこっちが眠れないじゃない!えっ?俺がか?
(椅子を引く音)
(由紀子)やっぱ気付いてない…。
病院行こうよ。
あなた最近ちょっと働き過ぎよ。
何言ってんの。
大げさなんだよ。
私最近のあなた見るの怖いの。
まあなんにしてもあれだな。
しばらく休むか?行きますよ明日から早速。
企画が頭の中から湧いて出てくるんです。
居ても立ってもいられないっすよ。
島地さんいつか言ったじゃないですか。
ん?何を?「雑誌じゃなくて文化を作れ」って。
そうだったけな。
俺あれ好きだったんすよね。
なんかこう…全身に鳥肌が立ったっていうか。
どうだここ?すごい病院だろ。
俺の人脈フル活用させて用意させた日本最高峰の病院だ。
どうりで看護婦が美人なわけですよね。
(笑い声)あなたは人を狂わせる天才ですよ。
堅物の福田さんも皮肉屋の佐藤も…。
開高健だってそうでしょ。
みんなあなたにだまされて気持ちよくなってこき使われて…。
で結局俺みたく体壊しちゃうやつまでも出てきちゃって。
でもみんな…楽しんだと思います。
明日お前の扁桃腺切ってもらうように手術の予約しといたから。
へ?お前の高熱の原因は扁桃腺だって聞いたからさそんな面倒くさいもの切っちゃえよ。
上司の命令だ。
そんな…。
揺りかごから墓場までこの島地にお任せあれだ。
企画書は全部通しとくぞ。
鬼島地…。
フッ。
(ドアベル)あっあらお珍しい方。
早すぎたかな?全然。
ロマネ・コンティある?もちろん。
でも最近はすっかりウイスキーだって聞いてたけど。
ちょっと赤の研究してて。
そろそろ帰ろうかな。
1杯しか飲んでないじゃない。
あとは和尚の分。
あっ今先生の。
あっフフフフ。
覚えてる?フフ。
もちろん。
「島地の野郎がこの俺に一杯食わしやがったんだ!」。
アッハハハハハ!アハハ。
あ…。
あの時のあなたたち見てるとほんと羨ましかった。
だって50も年が離れてるのに真剣に遊んでんだもん。
「人生は冥土までの暇潰し。
だったら」…。
(2人)「極上の暇潰しをしようじゃないか」。
(笑い声)あなたはそれをシバレンさんや今さんとの「人生相談」を通して日本中にばらまいてたんだと思うの。
そして今も開高さんと一緒にね。
開高文豪がね「人生相談」を引き受けた一番の大きな理由はね…。
抱きついて接吻でしょ。
ここらじゃ有名な話よ。
俺と和尚の「人生相談」を読んだからなんだ。
回想
(開高)待たせたな。
むちゃくちゃ楽しく読ませてもらったで島地君。
でもほんまに一番楽しんだんは君やろ。
バレましたか?よっしゃ。
引き受けたる。
君と遊んだる。
ありがとうございます!
(接吻する音)
(笑い声)
(開高)2度目やな。
(女性)こんにちは。
(開高)こんにちは。
コロッケ10個下さいな。
(店員)はいいらっしゃいませ。
あっプール帰りですか?
(開高)「健全なペンは健全な肉体に宿る」いうてなはや2,000mは優に泳げるようになったで。
ああそうですか。
はいありがとうございます。
ほなまた。
はいありがとうございます。
(開高)おおええ竿持っとるやないか。
力ずくであげるのやで。
上からビッ!そうそうそうそうそう!頑張れ!
(開高)恥ずかしいとこ見られてもうたな。
何をおっしゃるんですか。
「肉屋と文豪」。
バルザックの「人間喜劇」に出てきそうな名場面でしたよ。
ハッハハハハ!相変わらずうまい事言うな君は。
ユーモアの中にペーソスを感じる。
「プールで一泳ぎした文豪は今日も一日分の再生を得たと安心してホクホクのコロッケを買って家路につく。
家ではもう長年口をきかなくなった妻がさっさと夕げを済ませ茶の間でテレビを見ている。
でも文豪は気にしない。
塩素のにおいのついた手でコロッケを一つまみ。
確かにうまい。
そして文豪は今日こそはと思い立ちモンブランの万年筆で原稿用紙に向かう。
しかし今日もやはり文豪のペン先には天使も悪魔も宿らない」。
一本出来そうやな!
(風と波の音)なんやセニョール。
唐突に。
長い間本当にありがとうございました。
連載終わりにしましょう。
これ以上先生と一緒にいると親友を失う気がして怖いんです。
案外おセンチなんやな。
島地編集長にクビにされてもうたわ!あ〜ハッハハハハ!アハハハハハハ!よっしゃ。
ほなさいなら。
あっいらっしゃい。
どうぞ。
どうぞ。
これはシングルモルトが冷蔵庫全部入ってて。
ワインクーラーも全部。
一本指なの。
この中指だけ使ってやってんだよ。
みんなをご機嫌にさせるんですよバーというのは。
それが重要な事なのよ。
ここはもう島地さんの文化なんですよ。
それでいいと思ってるんですね。
物買うとか買わないとかは結果であってここに来て頂けるあるいは話題になって人が人を呼んでくれるようなスペースになればいいと思ってます。
これパスポートに挟んでるの。
この絵の原形こいつ。
パリに。
だから必ず私と一緒に旅行してると。
ね。
(取材者)現役の時は一緒に旅行行った事は?ないないない。
どこも行った事ない。
忙しかったからな。
まああの家庭人としては最低ですよ私は。
家庭人としては。
外面ばかりの人生かもしれないねほんと。
いやぁこいつもったいねえなって思ったね。
こんな若くて死ぬの。
だからこの娘の分も生きてやろうと思ったのよ。
娘の分も欲張って生きようと。
1分でもこの…エンジョイしようと思ったね。
退屈は絶対したくない。
まあ退屈する事ないけどね。

(三橋)「『長男のお前だけに言う。
結婚しようと思う。
相手はリハビリ担当のお嬢さんだ』。
車椅子生活の父がそう言ってます」と。
「驚いて言葉も出ませんでした。
島地さんどう対処すべきでしょうか」という質問です。
だからそれはすばらしいロマンチックな愚か者だよ男は。
(三橋)その事だけ見たら…。
すばらしい。
Dialogue:0,0:58:24.07,0:58:262014/05/03(土) 17:00〜18:00
NHK総合1・神戸
「全身編集長」〜文豪から学ぶオトコの生き方〜[字]

かつて『週刊プレイボーイ』を100万部突破の怪物雑誌に育てた、元編集長の島地勝彦・72歳。開高健など文豪たちとの濃密な交流をドラマ化、バブル前夜の熱き時代を描く

詳細情報
番組内容
かつて『週刊プレイボーイ』を100万部突破の人気雑誌に育てた、元編集長の島地勝彦・72歳。グラビアなどで男の欲望を刺激する一方、開高健をはじめとする一流の文豪を口説いて『人生相談』を連載。「純文学とグラビア」という相反するものを同居させて旋風を巻き起こした。しかし膨れ上がった怪物雑誌は島地たちを波乱の渦に巻き込んでゆく…。島地と文豪たちの濃密な交流を中心にドラマ化、バブル前夜の熱き時代を描く。
出演者
【出演】島地勝彦,新井浩文,ダンカン,毒蝮三太夫,堀内敬子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドラマ – 国内ドラマ

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