137億年の物語【ペストが招いた欧州の危機】 2014.05.03

今日の物語は14世紀頃。
主人公は暗黒の時代と呼ばれる中世ヨーロッパを生きた人々です。
ある伝染病が大流行しました。
人口の実に3分の1が命を落としたと言われています。
歴史を変えるほどの恐怖の病に人々は…。
当時はまだ細菌やウイルスなど知りませんから魔術的な治療が施されたんです。
得体の知れない伝染病に大パニック。
ペストは眼差しの殺人とも言われていました。
目が合ったら…見た即死。
500年以上にわたり原因不明だったペスト。
しかし今から100年前。
命をかけた伝染病との戦いとは?緊張が続くウクライナ南部クリミア半島。
国境付近に軍隊を派遣しました。
アメリカやEU諸国とのにらみ合いが続いています。
欧米諸国がロシアの動きを一斉に非難してるんでしょ。
きなくさいことになってきたわね。
それにしても…。
この辺りはもめ事が起きやすいんですか?うん…。
これは博士特製よしでは世界地図から歴史的によくもめるところを見てみよう。
例えば朝鮮半島。
確かに…ねぇここもそうじゃない?アジアとヨーロッパをつなぐボスポラス海峡。
うんボスポラス海峡は黒海と地中海を結ぶ海上交通の要衝ですからね。
戦いの舞台になりやすい。
中東のスエズ運河もよくもめ事が起きてますよね。
でもクリミア半島はなんで大事なのかしら?黒海に突き出してるこの形が怪しいわよね。
ロシアがここにこだわるのは凍らない港不凍港を手に入れたいからですよ。
一年中船が使える港を目指してどんどん南下してきたのね。
ねぇなんかねなんかね…。
クリミア半島といえば1853年に始まったクリミア戦争ですよね。
オスマン帝国が支配するこの地域を巡ってロシアとヨーロッパ勢が激しい戦いを繰り広げた戦争よね。
ナイチンゲールはクリミアの天使と呼ばれました。
それもそうですがね。
博士はねクリミアといえば14世紀のあの戦争を思い出す。
あの戦争?人類史上初めて生物兵器が使われたといわれている戦いです。
興味深いわ。
使われたのは何?炭疽菌?それとも天然痘。
これです。
ネズミ?いえペストです。
感染すると皮膚が黒くなることから黒死病とも呼ばれていました。
チューチューチュー。
やだやだ。
ペストはネズミに寄生するノミを介して感染するんですよね。
でもこのペストがどう使われたの?モンゴル軍がクリミアを侵略した際に使われました。
モンゴル軍は包囲された城にペストで死んだ兵士の死体を投石機で…投げ込んだんですよ。
うわぁ…。
もう考えるだけで恐ろしいわ。
まさにこの頃です。
ペストがヨーロッパで猛威をふるったのは。
人口の実に3分の1が命を落としたといわれています。
そんなにですか?中世ヨーロッパに訪れた最大の危機といっても過言ではありません。
よし今日は恐怖の伝染病ペストの物語をひも解こう!中世はヨーロッパ人にとって苦難の時代でした。
中東からやってきたイスラム勢力。
モンゴルからの蒙古民族に多くの土地を奪われ没落しました。
大きな原因の1つが伝染病ペストの大流行です。
ロバート・デ・ニーロ主演の映画『フランケンシュタイン』。
時代は少し異なりますがヨーロッパでの伝染病の恐怖が描かれています。
ウイルスや細菌などが発見されていない時代。
原因不明の病が流行ると街角に無数の死体が横たわりました。
かかったら最後ただ死を待つだけ。
これまで人類の前にさまざまな伝染病が現れました。
その中でも中世ヨーロッパのペストによる被害は歴史を変えるほど甚大だったのです。
恐怖の伝染病ペストに人類はどう立ち向かったのか?ここにある細菌学者が登場します。
北里研究所は今伝染病研究の権威。
ペストとはどんな病気なのか話を聞きました。
原因はリンパ節が膨れ上がります。
そして血液を通して肝臓や心臓肺など全身に広がり…。
みんな黒くなって死にますので黒死病というふうに中世時代は呼ばれておりました。
ペストは中世ヨーロッパだけでなく…。
最近では19世紀末から20世紀にかけて香港で猛威を振るいました。
ペストはわずか100年ほど前まで死を待つだけの恐ろしい病気だったのです。
14世紀ヨーロッパ全土で大流行したペスト。
どこからやってきたのか?まぁ諸説ありますが中国という説が有力です。
1330年代初頭に中国の湖北省で発生したと言われています。
じゃあ中国人がヨーロッパに菌を?いいえ。
ヨーロッパに持ち込んだのはジャン!シルクロードを行き来したモンゴルの商人だったと言われています。
荷物にまぎれてネズミやノミが運ばれたのか商人が感染していたのか定かではありませんがね。
フランスのマルセイユやイタリアのシチリア島など当初は交易の盛んな都市で流行しました。
そしてヨーロッパ全土に広がっていった…。
ちなみにペストの感染源はこのクマネズミ。
今では使いませんがやまいだれにネズミと書いてペストと読みます。
何なのそのドヤ顔。
たまに出るんですよこのマニアック情報が…。
なんかムカつく。
当時は原因がわからずわけのわからないデマがつきまとった。
例えば…。
これですね。
何これ?医者です。
医者は患者と目が合わないようにこういったマスクをしていました。
はぁ?患者の目から発した霊気によって感染すると信じられていたのです。
目が合ったら…見た即死。
ペストは眼差しの殺人とも言われていました。
そしてこの手に持った棒で香水などを患者に振りかけていたそうなんです。
バカバカしい。
えぇ…。
ですがねペスト菌が見つかっていない当時は正体不明の病と恐れられていたんですよ。
ドイツではこんなものが流行しました。
なに?それ。
手にしてるのはムチ。
ドイツではムチ打ち苦行が流行ったんです。
ペストは自らの罪に対して神様が与えた試練。
人々は自らの体を痛めつけてペストにおかされないようにしたんです。
ここまでくると悪用する人たちも現れそうね。
さすが大家さん鋭い!実はユダヤ人の迫害が起こりました。
たまたまユダヤ人に感染者が少なかったために「あいつらが井戸に毒を投げ入れたんだ」…というデマが流れてしまったんです。
ユダヤ人たちは火あぶりの刑に処せられました。
とはいえなんか手だてがあったでしょうに…。
大家さんまたまた鋭い!えっ?唯一効果をあげたものがありました。
それは…。
検疫です。
イタリアのアドリア海に面した港町ベネツィアではペストの侵入を防ぐために海上検疫が行われていました。
これが世界初の検疫です。
船は接岸させず海上にとどめ検査しました。
ちなみに検疫は英語でクアランティン。
これはイタリア語で40日を意味します。
ペストの潜伏期間は40日間と考えられていたのでここに40日間停泊待機させていたことに由来しているんです。
またドヤ顔。
ペスト黒死病は感染したら5日と命がもたなかった。
全世界でおよそ8,500万人が犠牲になったといわれる。
ヨーロッパだけでも相当な数なんでしょ?ヨーロッパの総人口のおよそ3分の12,500万人から3,000万人がペストによって亡くなったといわれています。
港町や人口の多い都市部では死亡率50%を超えたところもあるそうです。
ヨーロッパの人々は皆パニック状態に陥ったんだ。
ペストの恐怖を体験したイギリスへ。
ヨーロッパの人口を半減させたともいわれているペスト。
イギリスでも猛威を振るいました。
さあその当時の様子を見に行きましょう。
こちらです。
古代から現代までロンドンの歴史を今に伝えるロンドン博物館。
ここにここですか。
そうです。
17世紀のペストにまつわる展示です。
当時は得体の知れない病気。
削って水に溶かして飲めばペストにかからないと信じられていました。
石を削って…。
当時ペストはニオイでうつると考えられていたためこのくちばし部分に大量のハーブを詰め込んでいました。
このお医者さんはちゃんとペストを診ることができたんですか。
更にこんなものが…。
この絵見てください。
ペストの患者の傷口にニワトリをあてがっています。
350年前までこんな治療が当たり前に行われていたのです。
そして扉のバツ印がペスト患者の目印でした。
当時は隔離することで感染がおさまるのを待つしかなかったのです。
多くの犠牲者を出したペスト。
しかしこの伝染病は中世ヨーロッパに意外な副産物をもたらしました。
ペストはヨーロッパの歴史を大きく変えました。
病気が歴史を変えたの?そのとおり。
ペストは副産物としてさまざまな変化をもたらしました。
例えば農民の数が激減したことで彼らの地位が向上したんです。
これまで奴隷のような扱いを受けていた農民たちも賃金の上昇など自分たちの権利を主張するようになりました。
労働者の権利ってものが生まれたのね。
うんそしてもうひとつ戦争の仕方も変わりました。
ん?はい。
これは?中世ヨーロッパの兵士といえばこの弓を武器に使う弓兵隊でした。
この長い弓を使いこなすには訓練の時間と強靭な体力がいる。
そこで弓に代わり使われるようになったのが…。
はい!あっ大砲というわけね。
そう。
中国で発明された究極の兵器火薬を使った大砲です。
この大砲のおかげで戦争の歴史も大きく変わったんですよね。
偶然とはいえ史上最悪の病原菌も最強の兵器も中国からもたらされたのね。
先月熊本県の養鶏場で鳥インフルエンザが発生。
合計11万2000羽を殺処分し消毒などの対策が行われました。
調査の結果韓国からの渡り鳥によって感染した可能性があることがわかっています。
人間への感染が確認されている鳥インフルエンザ。
研究が進められていますが治療法は十分に解明されていないのが現状です。
鳥インフルエンザ。
ペストコレラマラリアなどこれまで多くの科学者たちが立ち向かいなんとか抑え込んできた。
しかし今の時代でも感染症が広がる恐れはあるのだよ。
恐ろしい話だけど私たちは医学の進歩に期待するしかないのかしらね。
伝染病と人類の戦い。
細菌学の父と呼ばれる人物です。
北里は第1回ノーベル賞の有力候補にあがるほどでした。
そこには壮絶なドラマがありました。
ブボニックプレイグってなんだということで調べたら…。
北里は明治政府から依頼を受け調査にのり出します。
北里が当時扱った資料を見せてもらいました。
いろんな書籍を集め…。
勉強するわけです。
ヨーロッパから取り寄せたペストに関する書籍。
この絵はご覧になったことがあるかと思うんですけどもこのような本を読んで勉強して…。
歴史書からかつての被害状況を把握。
北里たちはペストの現場香港へと向かいました。
そこで見たのはおびただしい死体の山。
北里たちは患者の体を調べペスト菌を発見しました。
原因不明だった死の病に治療の道が開けた瞬間でした。
しかし…。
実はこのチームのうち伝染病撲滅のかげには命を犠牲にした人たちがいたのです。
伝染病と戦い続けた北里。
彼は若い研究者たちにこう語っていました。
《ペスト菌は日本にも明治時代に上陸し2,400人の命を奪った。
しかし昭和に入ってからは北里たちの地道な努力のおかげでペスト患者を1人も出さなかった。
東京ではペストの原因となるネズミを役所が1匹5銭で買い上げたそうだ》そば1杯2銭もしなかった時代だ。
競って追い掛け回す姿が想像できるな。
このあとは次回の見どころを紹介。
万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチに迫ります。
2014/05/03(土) 18:00〜18:30
テレビ大阪1
137億年の物語【ペストが招いた欧州の危機】[字]

今回の主人公は「ペストに襲われた欧州人」。宇宙が始まってから現在までの歴史を描きます。池上彰の監修で、寺脇博士と相棒の相内助手がドラマ仕立てで解説。

詳細情報
番組内容
14世紀のヨーロッパで起こった悲劇がペストでした。ペストにかかると皮膚が黒くなることから黒死病ともいわれます。ペストによって、ヨーロッパ人口の3分の1にあたる3000万人が死亡したとの報告もあります。ペストという恐ろしい病気は社会の仕組みや戦争のあり方を変えるなど、世界を大きく変えました。
この番組は…
話題のベストセラー本「137億年の物語」を映像化。「137億年前に宇宙が始まってから今日までの全歴史」という壮大なテーマを紐解く。
寺脇康文が扮するちょっと変わり者の寺脇博士が模型やイラストなどを駆使して、わかりやすく歴史を解説。世界史が大好きな大家の宮崎美子、世界中の歴史現場を取材する助手の相内優香。ドラマ仕立ての不思議な歴史報道番組。
出演者
【博士役】
寺脇康文
【研究室の大家役】
宮崎美子
【寺脇博士の相棒・助手役】
相内優香(テレビ東京アナウンサー)
【著者】
クリストファー・ロイド
監修
池上彰
ホームページ

http://www.tv-tokyo.co.jp/137/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ニュース/報道 – 解説
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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