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経済
【主張】配偶者控除見直し 女性活用は多角的視点で
政府が「女性の活用」に向け、夫の所得税などを軽減する配偶者控除の見直しに入った。だが、この控除を廃止・圧縮すれば女性の活用が進む、とみるのは早計ではないだろうか。
現状では働きたくても働けない女性が少なくない。まずは保育所の待機児童の解消や長時間労働を是正し、女性が働きやすい環境を整備することが求められる。女性活用は多角的な視点で取り組む必要がある。
安倍晋三首相は成長戦略の改定に向け「女性の就労拡大を抑制する税・社会保障制度の見直し」を指示した。労働人口が減る中で、女性が活躍する場を広げ、経済の活性化につなげる狙いがある。これを受けて政府税制調査会が配偶者控除の見直し論議を始めた。
年収103万円以下の妻は、本人に所得税はかからず、その夫の課税所得も年38万円差し引く配偶者控除が認められている。パートなどで働く多くの主婦は、この「103万円の壁」を超えないように就業時間を調整している。
昭和36年に導入された配偶者控除は、家庭における専業主婦の「内助の功」を評価する意味合いがあった。時代の変化で専業主婦世帯が減少し、今では夫婦共働き世帯が大きく上回っている。働く女性らの不公平感は強く、見直しを求める声も上がっていた。
しかし、1400万人が適用を受ける配偶者控除の廃止は、大きな増税となる。年収500万円世帯では7万円程度の負担増が見込まれる。消費税率も4月の8%に続き、来年10月に10%に引き上げられる予定だ。家計に対する相次ぐ重い負担には配慮が必要だ。
自民党は一昨年の衆院選、昨年の参院選の際の政策集で配偶者控除の維持を掲げた。伝統的な家族観を守り、地域社会の担い手でもある専業主婦の役割を尊重するという立場からも、控除の見直しへの根強い慎重論はある。
女性の社会進出を積極的に後押しするのは当然だ。ただ、パートで働く主婦のいる世帯などへの税制優遇を廃止し、長時間働く女性を増やすのでは、本来の意味の女性活用にはつながるまい。
子育てや親の介護などで外に出て働けない女性への支援が急務だ。育児休業補償の拡大も課題となる。勤務地や勤務時間を限定した正社員など、就業形態の多様化も重要である。
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