集団的自衛権:他国に自衛隊派遣せず…政府方針
毎日新聞 2014年05月03日 07時30分
政府は、集団的自衛権の行使を「放置すれば日本が武力攻撃を受ける」事態に限定し、自衛隊を他国の領土、領海、領空には原則として派遣しない方針を固めた。限定的な行使容認にとどめることで、慎重論が根強い公明党との妥協点を探る。政府と与党の協議は今月中旬から本格化するが、既に自民党内は限定容認論でほぼ一本化しており、安倍晋三首相は夏ごろに解釈変更を閣議決定する構えだ。3日に施行67年を迎える現行憲法の「平和主義」は、かつてない転換点に立っている。
◇政府・与党、本格協議へ
首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は今月中旬、集団的自衛権の行使容認▽集団安全保障への参加拡大▽国連平和維持活動(PKO)での武器使用権限拡大−−などを柱とする報告書を提出する。政府はこれを踏まえて、安全保障の法整備に関する政府方針原案を作成し、与党との協議を経て方針を閣議決定する運びだ。
政府の検討によると、新たな憲法解釈は、集団的自衛権行使を最高裁が1959年の砂川事件判決で示した「自国の存立を全うするために必要な自衛のための措置」に限定。放置すれば日本が武力攻撃を受けると判断した場合のみ認める。敵を殺傷する目的で自衛隊を他国に派遣する「海外派兵」は憲法上認められる「必要最小限度の武力の行使」を超えるとし、これまで同様に禁止する。
解釈変更後、政府は集団的自衛権行使に必要な法改正に着手するが、新たに可能になる自衛隊活動は「強制的な船舶検査」(臨検)など一部にとどめる方向だ。
ただ、弾道ミサイルなど軍事技術の発達や国際テロ増加によって、何を「放置すれば日本が攻撃される」事態と判断するかは難しい。日本から離れた場所で発生した戦争でも、「放置すれば攻撃される」と判断すれば参戦は可能になり、裁量幅が広がれば「限定容認」が有名無実化する恐れもある。
公明党は苦境に立たされている。山口那津男代表は2日、東京都内で演説し、「(行使を)禁止する政府の考え方は一貫してきた。安倍政権も踏襲している。慎重に議論し、国民の理解を求める道筋が重要だ」と訴えた。ただ「国際社会の状況変化にどう対応すべきかを議論したい」と首相へ配慮もみせた。同党の斉藤鉄夫幹事長代行は同日、TBSのCS放送番組で、意見対立が連立離脱につながる可能性を「あり得ない」とした。【竹島一登、高本耕太】