憲法:自治体尻込み イベントの後援見直し相次ぐ

毎日新聞 2014年05月03日 21時14分(最終更新 05月03日 22時15分)

後援などについての白井市の内部規定。右は改正前、左が改正後
後援などについての白井市の内部規定。右は改正前、左が改正後

 憲法問題をテーマに掲げる市民や団体のイベントに対し、自治体が「中立性の確保」を理由に、これまで続けてきた後援を見直したり、施設を使わせる際に内容に注文を付けたりするケースが増えている。ここ数年の傾向で、改憲論議が熱を帯びていくのに反比例するかのように、自治体が「憲法」に尻込みする姿が浮かぶ。

 ◇内規変え批判かわす

 千葉県白井市は、イベントを共催、後援する際の判断基準となる内部規定を4月1日に改定した。後援などを認めない対象を、従来「政治的目的を有するもの」などとしてきたが、「政治的色彩を有するもの」と改めた。「目的」を「色彩」に置き換えただけだが、「表現をあいまいにして、後援しない範囲を拡大させた」と懸念する声も上がる。

 市によると「政治的色彩」を判断する観点は、(1)政治的に賛否が分かれている特定の政策(2)特定の政治上の主義(3)特定の候補、政党、政治的団体−−の三つ。いずれかについて支持、不支持を主張する可能性があれば後援せず、いったん決めた後援も取り消す。

 改定の背景には、市民や市議からの批判がある。市は今年2月、護憲団体「しろい・九条の会」が開いた講演会「平和憲法と日本の将来」を後援。保守系の古沢由紀子市議から議会質問で「政治性を持った講演を後援している」と批判された。昨年も、複数の市民から同様の指摘を受けたという。

 市の後援を批判した古沢市議は「憲法のような世論が二分されている問題で、市が一方の肩を持つのはおかしい」と話す。一方、しろい・九条の会の伊藤利弘共同代表(76)は「憲法を守るべき公務員が講演会を支援するのは当然で、改定は残念」と話している。

 市の笠井喜久雄総務課長は、取材に「後援申請で判断しづらいケースが増えている。申請の目的が政治的でなくとも、潜在的に政治的な内容があり、より基準を厳しくした。市議会での質問も影響した」と説明する。

 「政治的色彩」という言葉は3年前に後援要件を定めた東京都墨田区も使っており、白井市は同区などの規定を参考にしたという。

 神戸市では護憲団体などによる「神戸憲法集会」が3日開かれたが、これまで受けてきた市と市教委の後援は今年断られた。理由は「昨今の社会情勢を鑑み、改憲、護憲の政治的主張があり、憲法集会そのものが政治的中立性を損なう可能性がある」。

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