憲法記念日の3日、憲法を語る催しが各地であった。焦点は「集団的自衛権」。戦争放棄や戦力の不保持を定めた憲法9条のもと、自国が攻められていなくても、密接な関係がある国への攻撃に反撃する行為は許されるのか。護憲、改憲両派で議論が白熱した。

 東京都千代田区での護憲派集会には3700人(主催者発表)が参加。ジャーナリストの津田大介さんは、安倍政権が憲法改正でなく、憲法解釈を変えて、集団的自衛権の行使容認を目指すのは「無理を通せば道理が引っ込むという姿勢だ」と批判。学習院大の青井未帆教授は「一内閣の考えで解釈変更できるものではない。若者が棺(ひつぎ)で帰国するのを受け止められるか。国民の覚悟もなく進む政治はおかしい」と語った。

 新宿区での「新しい憲法をつくる国民大会」には350人(同)が参加。自民党の平沢勝栄衆院議員は中国の存在感が増す東アジア情勢に触れ、「限定的な解釈で集団的自衛権を認めてもいい」。だが平成国際大の高乗正臣教授は「安全保障に必要と考えるなら、9条改正を堂々と持ち出し、国民に問うべきではないか」と疑問を投げかけた。

 千代田区であった民間憲法臨調の憲法フォーラムで自民党の船田元(はじめ)・憲法改正推進本部長は「9条改正には時間がかかる。危機的状況を考えると解釈拡大で認めざるを得ない」。改正は「何回かに分けて行わざるを得ない」とした上で、「姑息(こそく)かも知れないが、理解が得やすい環境権などを書き加えることを1発目の国民投票とし、改正に慣れてもらった上で9条を問うのが現実的」と述べた。

 同区内でのシンポジウムでは、ルポライター鎌田慧(さとし)さんが「学校で何度も憲法を学び、理念が体に染みつき、自信やプライドにつながった」。貧困問題に取り組む作家雨宮処凛(かりん)さんは「多くの若者が非正規で働き、9条など考える余裕がない。若者の権利を回復しないと憲法を話す土台にすら立てない」と訴えた。