安土桃山時代を代表する絵師海北友松(かいほう・ゆうしょう、1533〜1615年)の屏風(びょうぶ)絵が倉敷市内の寺院で見つかり、同市立美術館(同市中央)で初公開されている。傷みは進んでいるものの、軽妙な筆遣いで描かれた人物画など円熟期の画境を伝える優品という。
屏風は左右一対(六曲一双)で、水墨で人物や花鳥が描かれている。同美術館が昨夏、由加山蓮台寺(同市児島由加)に伝来しているのを確認。友松に詳しい河合正朝千葉市美術館長(慶応大名誉教授)に鑑定を依頼し、画風や署名などから1610年以降制作の真筆と判明した。
同寺によると、いつどのような経緯で収蔵されたのかなど来歴は不明という。
友松は、岡山市出身の禅僧栄西が開いた京都・建仁寺の超大作「雲龍図」(国重要文化財)など鋭い筆勢の作品で知られる。これに対し、蓮台寺の屏風絵は風をはらみ袋のように膨らんだ人物画「袋人物」が目を引く。少ない筆数で衣服の柔らかい質感や穏やかな表情を描いている。
色があせるなど所々に傷みがあるが、河合館長は「人物画などの筆致や墨の使い方に特徴が出ている。創作に磨きがかかり、スタイルが確立された晩年の画風がよく表れている」と評価している。
屏風絵は開催中の「池田遙邨と倉敷ゆかりの日本画」展で、6月22日まで展示されている。