バンコクの居酒屋「田舎っぺ」に絡む義捐金詐取疑惑、続けます。

5月末にバンコクのエンポリアムで行われたマグロ解体ショーは、日本食材への信頼回復と、収益金の全額を義捐金として寄付することを目的として、ジェトロ・バンコク事務所の後援、在タイ日本国大使館の協力で行われた。日本から養殖の本マグロを輸入し、エンポリアム内で解体を行い、即売するイベントによって、少しは「日本食材への信頼回復」という目的が果たされたのかもしれないが、残念ながらイベントによる収益はゼロ、その結果、義捐金もゼロだった。

収益がゼロであった理由として、主催者である田舎っぺグループのオーナー杉森氏は「(イベント会場である)エンポリアムのスタッフが、赤身と中トロの値付けを間違えたため、収益がゼロだった」と説明している。杉森氏が、この理由を話したのは一度や二度ではない。5月のイベント開催以降、半年以上に渡って、友人・知人・客・その他、様々な場面で、「エンポリアムのスタッフのミスにより・・・」という説明を繰り返している。もちろん、11月29日に大使館を訪れた際にも、同様の説明を行っている。

キャプローグでは今回、ミスを犯したと杉森氏が指摘するエンポリアムに対して、メールによって質問状を送付し、カスタマーサービスの佐野氏を通じて回答を得た。なお、本件の回答にあたっては、佐野氏が調査を担当し、私からの質問状が英訳・タイ語訳をされた上で、サングアンサック氏(エンポリアム・グルメマーケット現責任者)からの回答をいただいている。編集を最低限にとどめ、エンポリアムからの回答を公開する。
Q. イベント企画が進められた経緯は?(回答:サングアンサック氏)
初めに企画を相談されたのは杉森氏です。「放射能汚染による日本食の輸出入が困難になることを防ぐため、エンポリアム敷地内でまぐろ解体イベントを行い、タイの消費者に無料で安全なまぐろを提供して風評被害を抑えたい」というご相談でした。当初は歌や演目などの出し物を企画していると話されていましたが、ジェトロ及び大使館の協力についての言及はありませんでした。

しかしエンポリアム館内では鮮魚を扱う食品イベントを行う場所が確保出来なかった為、開催は難しいと電話にて回答させて頂きました。その時に杉森氏から新たにジェトロ及び大使館の協力が得られる可能性を告げられます。

当社は再度イベント開催場所を検討し、グルメマーケットにて当時タスマニア産輸入魚販売ブースを設置していた食品卸業者タマチャート・シーフード様より場所と什器を無料でご提供頂き、一日だけこのまぐろ解体イベントを開催する運びとなりました。


Q. イベント当日までの杉森氏とのコンタクト回数は?(回答:佐野氏)
開催当日までに杉森氏とお会いしたのは最初にご相談を受けた時と、開催場所が決定して主催者側より当社へのイベント詳細プレゼンテーションを行った時のみで、その他連絡手段は電話のみとなります。


Q. 「エンポリアムのスタッフによるミス」はあったのか?(回答:佐野氏)
当社にて、ご指摘されたまぐろ販売ミスは発生しておりません。

主催者側から説明や報告もございません。杉森氏が説明するように当社従業員による間違いが起こったのであれば直ちに連絡を受けるべきですが、私(佐野氏)やサングアンサックをはじめ当社従業員には全く知らされておりません。


Q. 「エンポリアムのスタッフによるミス」があった可能性はあるのか?
まぐろを解体したのは主催者側の職人であり、また値段の管理は主催者側の関係者タイ人が行っていたと記憶しております。また、職人の指示により解体場所のすぐ側で値段をつけておりますので、例え万が一にミスがあった場合でも指示を出した人物の責任だと思います。何も知らない他社従業員に、日本人でさえ一般的には見分けが難しいまぐろの赤身と中トロ部位の値段をつける仕事を任すことは通常考えにくいことです(当社はその様なお手伝いを提供した報告さえ受けておりません)。結果としてこの話には責任転嫁の印象があり、問題の処理方法としてタイ人がミスしたというのはあまりに無責任に思えます。


Q. 「エンポリアムのスタッフのミス」につき、杉森氏とのやりとりはあったのか?
イベント直後に、杉森氏に連絡を差し上げて「問題はありませんでしたか」と尋ねたところ「大丈夫です。この度は有難うございました」というやりとりがありました。また、その後の経過確認について杉森氏の経営する飲食店に電話を差し上げたところ、「杉森氏が帰国中のため分からない」という回答を得ました。数ヵ月後、同飲食店前で杉森氏に偶然お会いした時にもその後の経過を伺ったところ「チェンマイのイベント後に寄付いたします」と申しておりました。この時点で当社の間違いの可能性については言及がありませんでした。

7日にお客様より、エンポリアムによる間違いが指摘されているというご意見を頂き、主催者の杉森氏に電話確認をしたのが最後の会話です。「エンポリアムの間違いだと思うが、それを証明はできないので、主催者側がすべて責任を取ります」という内容でしたが、証明ができないのにエンポリアムの間違いというのは間違っているとお伝えして訂正をお願いしました。


Q. 大使館に対しても、「エンポリアムのミス」と報告されたのか?
(7日に)杉森氏に事実確認をしたところ、「(エンポリアムのミスで赤字となったと)大使館担当者様に口頭で説明した記憶はあるが、その可能性について述べたのみで、御社にご迷惑を掛けるつもりではなかった」と仰っておりました。


Q. 先月29日以降、大使館との意見交換などはあったか?
当問題について主催者側および在タイ日本国大使館担当者様との意見交換は行われておりません。


Q. 本件について、どのように感じられるか?(回答:サングアンサック氏)
非常に残念なことです。イベント開催の時期はタイ国内で日本の震災復興を支援したいという機運が高まり各地でチャリティーが行われておりました。3月末の当社によるチャリティーイベント直後に杉森氏から「御社のイベントをみて、是非エンポリアムで開催したい」との強い要望を受け、特例としてまぐろイベント開催の運びとなりました。しかしながら、結果として支援者様や当社のお客様にご心配をお掛けすることになった事を深くお詫び致します。今後当社に持ち込まれるイベントに関しましては、主催者・イベント内容等に十分な注意を払い対応させて頂きます。


Q. 最後にひと言、どうぞ。 (回答:サングアンサック氏)
当グルメマーケットではご指摘されたまぐろ提供価格の間違いについて、これまで主催者及び従業員から問題についての報告はなく、当従業員による提供食材の間違え等は確認されておりません。お客様には、エンポリアムのミスはございませんとお伝え下さい。


----------------以上、エンポリアムからの回答です------------------------------------------------------

マグロ解体ショーのイベントの開催に際して、杉森氏は「日本食材全般に対する風評被害を防ぐ」との高い志を掲げましたが、自ら率先して「(イベントに無償協力してくれた)エンポリアムに対する風評被害を発生させている」現状については、どのように考えているのだろうか?

また、ジェトロおよび大使館は、一切の調査もせず、杉森氏の言い分を信じたという事実も、エンポリアムからの回答で裏付けられた。エンポリアムの会場で演説を行ったジェトロ・バンコク事務所の山田宗範氏をはじめ、この企画に関与した政府系機関の関係者らは、この問題を、どのように考えているのだろうか?

(つづく)

ご参考までに、会場で演説する山田氏の動画(1分58秒あたりから)をどうぞ。


追記
エンポリアム佐野氏から、twitterにて、メッセージをいただきました。

<<前回

【義捐金詐取疑惑】あまりに杜撰!タイにある日本国大使館およびジェトロの実態

次回>>
【義捐金詐取疑惑】プレスリリースにも”嘘”を記載!関係者・支援者の全てを裏切った田舎っぺグループ