バンコクの居酒屋「田舎っぺ」に絡む義捐金詐取疑惑、続けます。

さて、今回は「義捐金」そのものに注目して、「いったい何の義捐金なのか?」、「どうして長期間に渡って金庫に保管されていたのか?」などの点について、現在把握している内容をまとめてみる。

田舎っぺが主催した東北地方太平洋沖地震の被災者向け義捐金チャリティーイベントは、5月にバンコク、7月にチェンマイで行われている。イベントの中心は、日本から直輸入されたマグロを解体し、その場で販売することによって、日本産の食材の安全性を訴えると共に、収益金を全額、義捐金として寄付するというもの。このイベントには、在タイ日本国大使館、ジェトロなどが後援を行っていた。ここまでは、キャプローグの過去記事でも書いた。

しかし、田舎っぺグループに絡む義捐金詐取疑惑の全容を把握するにあたり、マグロの解体ショーだけを見ても、十分ではない。というのも、このバンコクとチェンマイで行われた2箇所のチャリティーイベントの会場では、解体されたマグロだけではなく、チャリティーTシャツも販売され、こちらも義捐金の対象となっていたからだ。
また、問題を分かりにくくしているのは、在タイ日本国大使館およびジェトロの対応である。これら日本国政府機関は、田舎っぺのチャリティーイベントへの後援に際し、マグロの解体ショーの部分にだけ後援を行った。つまり、同じ主催者(田舎っぺ)が、同じ会場で行った2つのチャリティーイベントのうち、一方には後援し、一方は無関与という状態になっている。これを表にすると、以下のようになる。

バンコクチェンマイ
マグロ後援:大使館およびジェトロ後援:大使館およびジェトロ
Tシャツ後援:なし後援:なし


後援の有無が生んだ問題
わざわざ、マグロだ、Tシャツだと細かく説明しているのには訳がある。実は、チェンマイで開催されたチャリティーイベントにおける「マグロの販売収益による義捐金」は、既に大使館を通じて、寄付されている。これは、以前に田舎っぺオーナーの杉森氏から、私自身が領収書を見せられ、その内容を確認している。金額は、3万バーツ程度だったと記憶している。

なぜ、チェンマイのチャリティーイベントにおける「マグロの販売収益による義捐金」のみが、既に寄付されているのかというと、大使館およびジェトロが後援したからである。

では何故、バンコクの「マグロの販売収益による義捐金」が寄付されていないのか?という当然の疑問が沸いてくるのだが、これについて田舎っぺサイドでは「マグロの販売収益」がゼロ(むしろ赤字)であったためと説明している。マグロ解体イベントによる収益がゼロであったため、バンコクのイベントでは、大使館を通じた寄付が行われなかったということだ。

ちなみに、どうして収益金がゼロだったのか?という疑問について、杉森氏は「(イベント会場となった)エンポリアムのスタッフが、マグロの赤身と中トロを間違うというミスがあり、値段が入れ違いになってしまっため、結果として、収益がゼロだった」と説明している。

これらの情報を、上記の表に加えると、以下のようになる。


バンコクチェンマイ
マグロ後援:大使館およびジェトロ
義捐金:ゼロ(エンポリアムのミス)
後援:大使館およびジェトロ
義捐金:約3万バーツ(寄付済み)
Tシャツ後援:なし後援:なし


田舎っぺの金庫に保管された義捐金
上の表を見ていただければ分かるとおり、最終的に問題となってくるのは、大使館もジェトロも後援しなかったチャリティーTシャツの収益からの義捐金である。この義捐金が、長らく田舎っぺグループの寿司屋「さざえ」に保管され、福井氏による使い込みへと繋がり、今回の騒動が発生する原因となった。

では何故、長期間に渡って義捐金が金庫に保管されていたのか?これについて杉森氏は「Tシャツの販売を一部委託したため、その枚数と収益を把握するのに時間がかかったため」と説明している。実際、Tシャツの販売について、一部をチェンマイの知人(?)に販売委託していたことは事実のようである。

ということで、最終的な表は、以下のようになる。


バンコクチェンマイ
マグロ後援:大使館およびジェトロ
義捐金:ゼロ(エンポリアムのミス)
後援:大使館およびジェトロ
義捐金:約3万バーツ(寄付済み)
Tシャツ後援:なし
義捐金:発生、金庫保管(着服)
後援:なし
義捐金:発生、金庫保管(着服)

これが、田舎っぺグループの震災被災者チャリティーイベントの「義捐金」に関する全容である。



これを読んで受ける印象は、人それぞれだと思うが、私個人の率直な感想を述べると「説明さえすれば、ある程度の多数の人々に受け入れられる問題」であるように思う。しかし、田舎っペグループのオーナーである杉森氏は「ノーコメント」を貫いている。どうして、「ノーコメント」になったのか?その理由については、今後、別の記事で改めて記述するが、まず第一に「使い込まれた現金が、義捐金ではなく、会社のマグロ買い付け用資金である」との妙な隠蔽工作を行ったこと、また第二に「大使館(およびジェトロ)サイドから口止めされた」という2つの理由が挙げられる。

タイ関連最大の日本語匿名掲示板「タイちゃんねる」では、今回の連載について、私自身の田舎っぺグループへの「私怨」であるとの指摘があるが、実際のところ、事件発覚直後には杉森氏に対して「正直に対応すれば、問題は収束する」とアドバイスをしているし、福井氏の使い込みについても「コラムを書いてもらうことによって、返済の一助になれば」との提案を行っており、恥ずかしながら、どちらかというと田舎っぺグループの側に立った解決策を模索していた。また、杉森氏の依頼で「さざえ」を訪れた際にも、「正直に対応すべき」と改めて、本人に伝えている。

今回の一連の騒動について、私個人の「怒り」が生じる点としては、義捐金に手をつけたと私に語った福井氏が、杉森氏が発案したのであろう「義捐金から会社のカネへのすり替え」に乗っかり、福井氏本人が「僕が使ったのは義捐金じゃなくて、あくまでマグロ買い付け用の資金」と話したこと。また、一連の「義捐金から会社のカネへのすり替え」工作そのものに対する「怒り」である。

多くの人々の善意によって集まった義捐金は、福井氏の垢を落とす資金となり・・・・、その後の田舎っぺグループによる資金繰りと、大使館およびジェトロの中途半端な対応により、手垢まみれの義捐金となってしまった。お金には「用途」などは書かれておらず、同じ金額であれば、どこから用立てられたものでも同じではないか?と思うひともいるだろう。しかし、私としては、嘘や隠蔽工作にまみれた義捐金が、当初の義捐金とは全く違うもののように感じられ、それについて疑惑を解明したいという思いしかない。


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