バンコクで日本食を提供する居酒屋グループ「田舎っぺ」が揺れている。同グループのカラオケスナック「ひまわり娘」の店長で、同じく食材仕入会社「ロック・インターナショナル」の部長を務める福井厚志(38)が、東北地方太平洋沖地震の被災者への支援を目的に実施した募金イベント等で集められ、同グループの寿司店「さざえ」の金庫内に保管されていた義捐金を、個人的な目的のために使用したとの情報が、福井本人が友人・知人に対して送付されたメールがネット上に流出したことにより発覚したのである。福井本人がメール本文に記載した内容によると、義捐金の使い込み金額は、35万円となっている。

同グループが行った東北地方太平洋沖地震にかかる募金チャリティーイベントは、今年5月にタイの首都バンコクの日本人街スクムビット地区にある高級デパート「エンポリアム」で、また、7月にはタイ北部最大の都市チェンマイで行われた第一回チェンマイ国際フードフェスティバルで実施された。バンコクのイベントには、日本貿易振興機構(JETRO)、在タイ日本国大使館、日本政府観光局(JNTO)などが後援し、チェンマイのイベント開催は、在チェンマイ日本国総領事館からの開催要請があったと伝えられている。いずれのイベントも、日本から直輸入された本マグロを会場で解体し、会場を訪れた客らに対して販売することによって得られた収益金を、震災被災者への義捐金とするものだった。また、オリジナルTシャツも作成され、同イベントなどで販売され、その収益金も義捐金とされる予定だった。なお、バンコクおよびチェンマイの両イベントには、義捐金を着服した福井本人も参加している。
さて、今回、義捐金着服事件として本件が広く知れ渡るきっかけとなったのが、福井本人が友人あるいは知人に対して送付したという以下のメールの流出だった。

会社で現金紛失のトラブルに巻き込まれました!
内訳は会社の公金と、5月から7月にかけてのイベントで集めた義援金、合わせて14万Bt.(35万円)です。

僕は事務所に自分しかいないということで、着服したことを認めましたが、12月16日(金)までに返済できなければ解雇の上、警察に告発すると通告されています。

自分は今の会社(田舎っぺグループ)に入社して1年半、減給処分の繰り返しやヤクザの来襲などでまったく貯金ができませんでした。カオサン時代からの古い友達が何人か、支援を申し出てくれていますが、35万円には遠く及ばない金額しか集まっていません。

そこで皆さんに支援をお願いしたいのです。周りの方でカンパを集めていただいて、12月14日(水)までに、バンコクに持ってきていただくことはできますか? 残された期間は3週間しかありません。
自分の仕事を守るためといえばそれまでですが、なにとぞご理解とご協力をお願い申し上げます。

まずは電話をください。詳細はそこでお話しします。



では、この福井本人が送付したメール本文を基本としながら、この騒動にかかる疑問点などについて、ひとつひとつ確認していきたいと思う。

1.そもそも、福井厚志の使い込みがあったのか
メール本文を読んで気になるのが、「巻き込まれました!」や「事務所に自分しかいないということで、着服したことを認めましたが」などの記述である。これらの表現からは、福井本人が「本当は自分は義捐金の使い込みをやっていないものの、しぶしぶ認めた」と認識しているように感じられる。私は23日の段階で、直接本人と面会し、使途について確認したが、福井本人から明確な回答は得られなかった。一方、25日にユーチューブで公開された動画では、「みなさんの大事な気持ちである義捐金に、手をつけてしまった」と福井本人が語り、東北地方太平洋沖地震の被災者向け義捐金を、私用に着服した事実を認めている。ただし、動画においても、その使途については明らかにされていない。本人が義捐金を使い込んだと認めている以上、使い込みがあったとして、一体何に使用されたのかその使途について、明確にされるべきであると考える。

2.使い込んだ金は、義捐金だったのか
25日に「義捐金に手をつけた」と福井本人が謝罪する動画が公開された翌日26日、在タイ日本人を中心とした活発な情報交換が行われる匿名掲示板「タイちゃんねる」に、福井本人が動画の謝罪内容とは全く異なる内容の文章を掲載した。この書き込みは、福井のあだ名として世間に広く認識されている「ふくちゃん」名義によるもので、別人による「なりすまし」を防ぐために用いられる匿名掲示板の機能を使用して、書き込みが行われている。その内容は、以下の通りである。

皆様には大変ご心配をおかけいたしました。

私こと福井が出来心で会社のマグロ買付用として手元に置いていた現金の一部に手を付けたのは間違いございません。
しかし皆様からお預かりしている義援金にはまったく手はついておらず、
7月15日にチェンマイで開催したマグロ解体ショーの後、現地で同時に行ったTシャツ販売のメドが付いたので12月中に然るべき所に寄付する段取りは変わっておりません。

手を付けた部分の現金については、今後の給与天引きにて返済する旨、会社との間で合意ができました。

こんな私ではございますが、今後とも応援のほどよろしくお願い申し上げます。



友人・知人宛に送付された福井本人のメール本文、および、25日に公開された謝罪動画から一変、福井が使い込んだ現金は「義捐金」ではなく、「マグロ買付用の現金」であるとの内容である。現金には、その使用目的や名義の記載などあるはずもなく、「義捐金」なのか「会社のカネ」なのかは当事者らにしか分かりえない事実なのだが、上記の書き込みと、これ以前の福井本人から発せられたメッセージとの内容の不一致については、十分な説明が行われるべきであると考える。


3.どうして義捐金が社内に保管されていたのか
最初に記述したとおり、田舎っぺグループが実施した募金イベントは、今年の5月と7月である。騒動が発覚した先週時点で、既に4ヶ月以上にも渡って、東北地方太平洋沖地震の被災者向け義捐金が、同グループの社内に保管されていたことになる。タイが外国であるが故に、日本国内と比較して、義捐金の送付に時間を要する点があるのは事実である。しかし、いくらなんでも4ヶ月もの月日を要するとは考えにくい。福井厚志による使い込みが「義捐金」であったのか、あるいは「マグロ買付用」だったのかは別として、どうして会社の金庫に、長期間にわたって義捐金が保管されていたのかについて、理路整然とした説明があることを期待する。


また、上記3点のような本質的な問題に加えて、派生的なトピックも浮上している。

1.福井厚志のブログが(期限付き)無期限停止に
福井は、田舎っペグループにおける店長および部長の仕事以外にも、個人的にブログ「Traveler's Supportasia」を運営しているのだが、今回の義捐金着服問題の発覚後の25日、同ブログにて「【お知らせ】当ブログは無期限更新停止とします」とのタイトルで、以下のような文章を掲載している。

諸般の事情により、誠に恐れ入りますがTraveler's Supportasiaは本日をもって無期限更新停止とさせていただくことになりました。2005年12月の立ち上げ以来6年間、皆様には大変お世話になりました。

なお再開は早くても2015年1月以降の予定です。その前に復旧する場合は改めてお知らせさせていただきます。またブログの過去記事については削除せず公開を継続します。



ブログ内での記述は以上の通りで、義捐金着服問題の影響で「無期限更新停止」の判断が行われたのかは不明である。ただし、この発表のタイミングから同問題によって、更新停止となったことは間違いなさそうだ。では、どうして「再開は早くても2015年1月以降」と、妙な期限が設定されているのだろうか。更新停止となる3年間という期限は、どのように設定されたものなのだろうか。


2.タイちゃんねるは三流BBS?
福井が使い込んだ現金が、「義捐金」ではなく「マグロ買付用の現金」であったとの内容で書き込まれた「ふくちゃん」名義の書き込みを、上で引用した。この書き込みは「19時2分」のものなのだが、それから2時間ほど経った「21時1分」、匿名で以下のような書き込みがあった。

>>940
そんなこと書いてるお前が寅さんには一度も行ったことがないんだろ?

田舎っぺやさざえの真の常連客はタイちゃんのような三流BBSなんか見ていない。
今日もFちゃんのことなんかどこ吹く風で両店ともに満員盛況だって聞いてるぞ。
>>939 のように思ってる人が絶対多数なんだよ。



タイちゃんねるなどの匿名掲示板では、名義である「名前」欄のほかに、「ID」というものが自動挿入される機能がある。この「ID」とは、同じ回線を使用して書き込まれたコメントを特定するもので、例えばAという男性が、自宅の回線を使用して掲示板に複数回の書き込みを行った場合には、Aさんが「名前」欄に異なる名前を入力した場合でも、「ID」欄には同じ番号が表示される仕組みとなっている。

そして、「ふくちゃん」名義の19時2分の書き込みと、匿名の21時1分の書き込みのIDが同じであったことから、福井本人と同じ回線を使用する何者かが「タイちゃんのような三流BBS」などと、今回の騒動に批判的なコメントが寄せられている「タイちゃんねる」を侮蔑する書き込みを行ったことが明らかになった。この書き込みが、福井本人のものであるのか、または関係者であるのかは不明だが、騒動に対する批判が集中する中で、同グループの問題に対する姿勢をあらわすものであるとして、注目が集まっている。


3.田舎っぺ関係者が、火消しのため嘘の事実の流布を依頼?
今回の義捐金着服騒動において、福井本人から発せられたメールや動画、書き込みと合わせて、貴重な情報源となっているのが、「@tomosan007」さんのツイッターである。騒動の発覚以降、福井本人に対して厳しいコメントを寄せている同氏が26日に記載した内容は、特に注目すべきものである。

たった今、田舎側から架空の事を書いて火消をしてくれと電話が入ったが、速攻断った

嘘の内容とは「義捐金には一切手を付けていない。付けたのは会社の金。義捐金は速やかに寄付する。」嘘だから書けませんと、お断りいたしましたでございまする。今回の件は杉森氏にも監督不行き届きとイベントの主催者責任として公式の場での説明任務がある。



この「@tomosan007」さんのコメントを加えれば、当初は「義捐金」としていた「使い込み」が、「マグロの買い付け用」であったと一変した理由が、明確になる。「使い込み」そのものも告発されれば立派な犯罪であるが、使い込んだカネが「義捐金」か「会社のカネ」かでは、道徳的な意味合いが大きく異なる。こちらも、同グループの問題に対する姿勢をあらわす事実として、軽視できないコメントであるように思われる。


以上が、先週半ばに発生した福井厚志による義捐金着服事件にかかる騒動の要点である。使い込まれたカネが義捐金である(可能性が高い)こと、その義捐金の募金イベントに日本貿易振興機構や、在タイ日本国大使館、日本政府観光局(JNTO)、在チェンマイ日本国総領事館などの公的機関が参加していたことなど、単なる民間企業の内部で起こった着服事件の枠を超えた問題であることは間違いなさそうだ。

田舎っぺグループからの公式な謝罪、あるいは事実と相反する内容に対する訂正など、十分な説明が行われることを期待する。なお、情報筋によると本日29日、在タイ日本国大使館が同グループ関係者を呼び出し、募金イベントに後援した日本貿易振興機構の職員らの立会いのもと、今回の騒動に関する説明を求める予定となっている。



・・・・って、数日間、全くネットを見ていなかったので、ことの経緯について良く分かっていません。また、改めて同問題に関する情報を掲載したいと思います。コメント欄にて、コメントをいただいた皆様、今後ともよろしくお願いいたします。


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【チラ裏日誌 vol.33】義捐金詐欺疑惑の渦中の人物に直撃インタビュー、全て「ノーコメント」