ソニーは1日、2013年度の業績見通しが、これまでの予想よりも悪化するとの修正を発表した。前回、2月の発表では、同年度の最終的な収支、純損益は、1100億円の赤字になるとの予想だった。今回、それがさらに悪化し、1300億円の赤字とされた。本業でのもうけを示す営業利益は、800億円から、260億円に下方修正された。ソニーは現在、事業改革のただなかにいる
【3度目の正直?の下方修正】
2013年度の業績見通しが下方修正されるのは、実はこれで3度目だ。昨年5月、純利益500億円、営業利益2300億円という最初の見通しが発表された。これが10月には、純利益300億円、営業利益1700億円に修正された。今年2月には、純利益ではなく1100億円の純損失となり、営業利益は800億円に修正された。2月の発表で見通しが大きく悪化したのは、ソニーがこのタイミングで、PC事業の売却、テレビ事業の子会社化、およびこれらを通じた約5,000名の人員削減を打ち出した影響があった。これにより、構造改革費用が、500億円から700億円に膨らんだ。また、電池事業において、今後、投資額が十分に回収できる見込みがないため、321億円の長期性資産の減損を計上したことも大きかった。
【今回の下方修正の原因は何?】
今回の下方修正の主な原因として、ソニーが挙げているのは、・PC事業の売却に関連する追加費用の発生…300億円
・海外でのディスク製造事業での減損…250億円
の2つである。
「VAIO」の今年の春モデルを最後として、ソニーはPC事業から撤退することが、2月に発表された。その影響で、VAIOの売り上げが当初の計画に届かず、部品の余剰在庫を多く抱えることとなった。これらの評価減と、仕入先への発注済部品の補償を、2013年度会計に計上するという。また、PC事業売却に伴う構造改革費用で2014年度にまわす予定だったものを、一部前倒しで計上するという。これらは、2月の発表の延長線上にある修正と言える。
ディスク製造事業では、ネットでのストリーミングやダウンロード販売が増加したために、CDやDVDメディアの需要が、おもにヨーロッパで、想定以上に減少しているという。このため、この先、投資額が回収できる十分な見通しが立たず、減損処理を行うこととなった。また、営業権の減損も計上した。営業権は「のれん」とも呼ばれる無形の財産で、いざ事業を売買するとなった際には、これが付加価値となる。
【平井社長の手腕に今後も期待している派
海外各メディアは、今回のニュースを、ソニーが現在進めている事業改革と絡めて報じている。そして、それが順調に進行していると見るか、否かで、見解はさまざまだ。フィナンシャル・タイムズ紙は、今回が3度目の下方修正であることを踏まえて、構造改革の陣頭に立つ平井一夫社長にとっては、またもやつまずきだ、と報じる。1年前、2012年度の純利益は430億円で、5年ぶりに連結純損益で黒字化したと発表された。そのときのムードの反転でもある、としている。
また、今回、ディスク製造事業であったように、この先も営業権の減損が起こりうるのではないかとの疑念が生じていると、ドイツ証券のアナリスト中根康夫氏は同紙に語っている。
それでも、平井社長は、構造改革の取り組みを加速させる意欲を表明しているのであるから、出資者からの反発に直面することはなさそうだ、と同氏は語っている。市場は、社長の手腕に引き続き期待している、ということだろう。
【ソニーの事業再編はまだまだ手ぬるい派】
対して、ブルームバーグは、平井社長の改革はまだまだ手ぬるい、とするアナリスト2人のコメントを紹介している。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「テレビ事業の売却を表明しないかぎり、市場はソニーが本気だとは決して思わないだろう」と語っている。ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真CEOも、同様に、テレビ事業の売却を訴え、「業績の悪い事業を整理しなければ、ソニーは同じ過ちを繰り返すことになる」と語っている。ロイターの報道によると、テレビ事業は過去10年連続して赤字で、その累計額は78億ドルにも上るという。
【市場の反応は株価で明らかに】
今回の修正は、1日、東証での株取引が終了した後で発表された。ソニー株は、今年年頭と比較した場合、約1%しか株価が下がっていない。ロイターは、日経平均株価が今年に入ってから11%ダウンしていることを、対照として挙げている。明けて2日のソニー株の値動きは、今回の修正と、ソニーの事業再編への道筋について、そしてソニーの今後について、投資家がどう受け止めたかを示すものとなるだろう。なお、2013年度の確定した業績実績、それから2014年度の業績見通しについては、14日に公表される。
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