【東田剛】これで国益を守れる?

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FROM 東田剛

平和な日本には「まずはTPP交渉に参加してみて、有利なルールを作ればいい」と言う勇ましい人がたくさんいます。

しかし、孫子曰く「勝兵はまず勝ちて、しかる後に戦い、敗兵はまず戦い、しかる後に勝を求む。」

「まずは交渉に参加してから」などというのは、敗兵のやり方だということです。

さて、先日の総理訪米時の日米共同声明を見ると、日本に交渉力などなないことは、悲しいほど明らかです。

まず、いきなり「全ての物品が交渉の対象」となっています。これは野田前総理ですら、一応は拒否した条件ですが、それを安倍総理は正式に認めてしまいました。

次に、確かに、日本にはセンシティブな農産品があることが確認されてはいますが、その引き替えに米国にもセンシティブな工業製品(おそらく自動車)があることを認めさせられています。
ただでさえメリットに乏しいTPPですが、さらに米国のわずかな工業関税すらも撤廃されない可能性も出て、メリットがさらになくなりました。

それどころか、事前協議で「自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処」することが確認されています。
米国の自動車業界は、日本に対する要求は通し、関税は下げないという満額回答を勝ち得たわけです。

また、「両政府は,最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」とありますが、要は、結果は交渉力次第だという当たり前の話に過ぎません。
こんなこと、総理がわざわざ訪米して大統領に確認するような話でしょうか。

しかし、日本は、米国よりはるかに多くの保護すべき品目や分野をかかえている中で、どうやって交渉を有利に進めるのでしょうか。
自動車関税で米国に譲歩すれば、代わりにコメくらいは守れるかもしれません。では他のたくさんの品目や分野は、何を取引材料にして守るのでしょうか?

しかも、米国の狙いは、関税よりむしろ「非関税障壁」の撤廃にあります。自民党の「6条件」にも明らかなように「聖域」を確認すべきは、医療や保険などの非関税障壁なのです。
しかし、その点は何ら共同声明に明記されませんでした。

それどころか、逆に、自動車や保険に加え、「その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている」とあります。
TPP交渉に参加したいなら、事前協議の段階で、米国の非関税障壁に関する要求を飲めということです。武装解除してからTPP交渉に参加せよということです。

しかも、オバマ大統領はTPP交渉の年内妥結を宣言していますが、交渉の会合はあと三回くらいしかありません。

安倍総理は、再三「国益を守る」と述べていますが、こんな状態で、TPP交渉に参加して、どうやって国益を守ることができるのでしょうか。

その方法は、論理的には、一つしかありません。

それは「国益」とは何かを、新自由主義者・構造改革論者に決めてもらうことです。そのための場として、すでに経済財政諮問会議や産業競争力会議が設けられています。

さて、これを読んで絶望的な気分になったTPP反対論者のあなた。それくらいで気が滅入るようなら、はじめから日本の政治や経済に関心をもってはいけなかったのですよ。
世の中のことが分かるということは、厳しくつらいことなのです。

PS
それでも世の中のことを分かりたいドMの方は、『日本防衛論』がお薦めですが、どうなっても知りませんよ。
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【東田剛】これで国益を守れる?” への9件のコメント

  1. 本当に。気持ちが折れそうだ。米国にやられた。また負けたのではないか。そうでないことを願う。

  2. 思ったよりも展開が早いとは思いますがだいたい予想通りの事態です。それでもこうやって現実に突きつけられると気が滅入るものですね。どちらかというとSなもんでどこまで耐えきれますやら。。。

  3. 次回の保守政治研究会で、中野先生がメインとなって先生方へレクチャーをしてくださいますよう僭越ながら期待しております。
    正直申し上げて、まだまだ参加されている先生方の人数が少ないと思います。

  4. 反対ならば、外交安保の観点からの対案・戦略を示せ より:

    自分が交渉することを思い浮かべて最初に条件並べて交渉するかといえば交渉しない。相手の出方を見ながら手持ちのカードを出したり引いたりチラつかせたりしながら条件を勝ち取るのが交渉の常識。
    交渉に強い人間はこれができる。

    極めて自虐的で世界を鳥瞰できていない、外交安保の基本、国家戦略についての理解が足りない典型的な内向き保守の論調。
    TPPの情報を新聞赤旗からそのまま引用しているところがますダメでしょ。
    どこの国の、どういう立場の人間か、どういう思想を持っている人間か、どういう意図で言っているのか、情報を取る時は必ずここをチェックする必要がある。左翼の連中がどういう情報の使い方をしているのか知っててそのまま引用する人間に真実は見えない。政治的発言というのもを分析できなければ同様。
    情報というのはそのままでは使い物にはならない。
    今、米中が覇権戦争をしている。自由貿易協定はその一環である。
    アジア太平洋地域のルールが民主主義のルールになるのか、中国の都合で決められていくのか、TPPはこのやりとりの過程にあるということをまずは理解するべき。
    木ばかり見ていないで森を見よ。

  5. 私はあきらめませんよ!安部政権は支持しますが、TPPには絶対反対です。反対派国会議員の名簿をみてア行の片っ端から意見送りまくってます。藤井先生は国土強靭化担当でTPPどころではない。中野さんはNEDOに縛り付けられて動けない。ひとりひとり、自分で動かなきゃどうにもならない。
    あきらめないでー

  6. 2/28の国会では、民主議員からの質問で、本交渉において聖域のどこを守るか
    という話も出てきました。

    「平成の開国」とは何だったのかと・・・
    民主議員がTPP事前交渉の中身をバラしはじめていますが、あんたら説明したことあったのかと・・・

  7. 外交力と軍事力は比例関係にあるという常識があれば、
    米国と交渉して有利な条件を勝ち取ればOK、
    などと安易に口にできないと思うんだけど。
    TPP推進派は平和ボケなのかな。

  8. ロいた-のコラムニストAnatole Kaletsky氏が三月二日 終結しつつある“緊縮の時代”と冠した論文を掲載しています。  また昨年十二月十二日には 日本の金融政策改革は世界をリ-ド出来るか とだいして好意的一文を掲載しています。是非御いちどこを。

  9. 世の中の事が分るということは確かにつらいことですね。産経新聞の調査によるとTPPに賛成している人が63.8%を超えています。同新聞の夕刊コラムには、「決められない政治が先送りしてきた懸案を『いつやるか?』。『今でしょ!』と世論が背中を押している」と書かれています。新聞があおり、それに世間が迎合し、安倍総理もTPP交渉への参加を嬉々として表明しました。もう、この流れを誰も止めることができないのかと、かなり絶望的な気持ちになります。世間ではアベノミクスで株価が上がり浮かれた情報で華やいだ雰囲気になって来ています。しかし、この後に待ち構えている日本の運命をいったいどれほどの人が真剣に考えているのでしょうか?私にできることは、東田さんやその他のごく少数の良心的な意見を、周囲の人に伝えることしかできません。それでも、伝えることをやめた時点で、私自身が愚かな大衆の一人となって、子供たちの運命を不幸にさせる加害者となるのだと思います。私自身、安倍総理のTPPへの態度に若干不安を抱きつつも、反対派の議員があれだけいるのだから安倍総理を止めてくれるだろう、TPP以外では一番国益を考えた政治家なのだからと、嬉々として安倍総理を支持していました。実は、すでに愚かな大衆となって、TPP交渉への参加に加担していたのかもしれません。

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