西尾邦明
2014年5月3日05時37分
社員が発明した特許は会社のものなのか、個人のものなのか――。特許の権利がどちらに属するのかをめぐる議論が、政府内で本格化している。経済産業省は産業界の要望に沿って「会社のもの」に法改正したい考えだが、労働団体などが「発明者の意欲をそぐ」などと反発している。
■産業界は「会社のもの」と改正要望
いまの特許法では、社員が会社の設備を使って発明した場合も、特許は「社員のもの」とされている。
1899年に制定された最初の特許法は明確に定めなかったが、1909年の改正で社員の発明の特許は「会社のもの」とされた。だが、「大正デモクラシー」で社員の権利意識が強まり、21年の再改正で「社員のもの」に変わった。発明が次々と生まれ、産業全体の発展にもつながると考えられたからだ。2004年には、発明の対価の決め方に関する改正があったが、特許が「社員のもの」という規定は変わっていない。
安倍政権は昨年6月、成長戦略の一環として、特許を「会社のもの」にする検討を始めることにした。3月下旬から特許庁の「特許制度小委員会」で議論が始まり、来年の通常国会にも特許法改正案を出す考えだ。
背景には産業界の意向がある。「発明の対価を求める社員の訴訟が増えると経営体力がそがれ、競争力が弱まる」との主張だ。
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