2014-05-01
『たまこラブストーリー』 「もち蔵」という名前の意味と、山田監督が言う「映画」と、あんこちゃんがやたらエロいのは恋愛年齢が高いから
たまこラブストーリーを見てきました。
映画を見てない方はまず貼っつけてあるPVを見てみて下さい。「面白そう!」と思った方は、その「面白そう」がそのまま映画として詰まっています。たまこまーけっとを見ていなくても大丈夫。百聞は一見に如かずです。
そして映画のことを語る前に、この場をお借りして謝罪したいと思います。
以下は映画公開前に私がTwitterにてつぶやいた、たまこラブストーリーでのもち蔵に対する感想です。
たまこラブストーリーはPV見ると面白そうだけど、果たしてどうなるか。「幼なじみとの恋愛」というモデルケースでたまこが行き着ける頂点は…「秒速」はたまこ達がすでに高校生なのを考えると無理。「あの花」はもち蔵が死ねばワンチャンある。「凪あす」はもち蔵が植物人間になればワンチャンある。
— いけとも (@ike_tomo) 2014, 4月 23
「時かけ」はたまこが時間遡行能力を手にして好き勝手やったせいで、もち蔵が自転車で踏切に突っ込みまくればワンチャン。「シュタゲ」はもち蔵が幼女に駅のホームで突き落とされたり、SERNに拉致されてゲルもち蔵になればワンチャン。辛い運命乗り越えるんや;;;;;;;;
— いけとも (@ike_tomo) 2014, 4月 23
たまこでは「もち蔵」「モチマッヅィ(餅不味い)」といういかにもテキトーにその場のノリで名前を付けたみたいなキャラが出てくるが、これは監督にとってもどうでもいいキャラだったからである(個人的見解です)。もしキャラ間で統一を図るなら、たまこも「もち子」とか「もち美」にしたはずである
— いけとも (@ike_tomo) 2014, 4月 23
山田監督は女の子がワイワイ楽しくやることが好き(得意)。しかしそれをやると、けいおんの二番煎じと言われかねない。だから男を出したり変な鳥をだしたり異国人を出した。ただ、本心としてはやりたくなかった。それが、たまこまーけっとの不思議な感覚に繋がっているのである(個人的見解です)。
— いけとも (@ike_tomo) 2014, 4月 23
たまこラブストーリーが面白くなるかは山田監督がもち蔵に興味を持てるか、にかかっているのではないか。これがたまこを悩ませるだけの舞台装置というだけで終わるキャラクターになってしまったらひどく味気ない作品になってしまう気が。愛する2人で辛い運命乗り越えるんや;;;;したら良いんですよ
— いけとも (@ike_tomo) 2014, 4月 23
ごめんなさいもち蔵。キミが頑張ったおかげでスゴく映画面白かった。鑑賞前の予想に反して、もち蔵はカッコ良かったです。映画内でみどりちゃんも言ってましたが見直しました。
そして「もち蔵」という名前は作品内において重要な役割を持っていました。
「もち蔵」という名前の意味
まあ、テキトーな名前だなと(失礼)映画を見る前は思っておりました。テレビシリーズだけ見るともち蔵はあまりドラマに絡まず、居てもいなくても同じなんじゃないかと私は思っていました。しかし、映画でのとある過去のエピソードにより「もち蔵」の名前と存在は主人公のたまこにとって重要な意味を秘めていることがわかるのです。
たまこは「おもち」が好きな子です。ですが小さな頃は「おもち」が嫌いだったと言います。なぜかというと、お向かいのイジワルな男の子であるもち蔵くんがことあるごとに「しらたま〜(きたしらかわたまこ(北白川たまこ)」と自分の名前と「おもち」を掛けて馬鹿にしてくるからです。そんなこともあり「おもち」が嫌いになったたまこちゃんですが、ある時お母さんが亡くなってしまいます。お母さんの死を目の当たりにし落ち込むたまこちゃんを見て、もち蔵くんは「おもち」を差し出します。「これ食って元気だせよ」ということです。嫌いだった「おもち」ですが、これをキッカケにしてたまこは「おもち」が好きになったのでした。その「おもちが好き」という気持ちは「もち蔵が好き」という意味と同じであったのです。「もち蔵」という一見テキトーな名前は「おもち=もち蔵=好き」という気持ちを表したステキな名前だったのです。
「テキトーにその場のノリで名前を付けたみたいなキャラ」とか言って申し訳ありませんでした(変な鳥へのフォローはない)。
山田尚子監督が言う「映画」とは?
今回のたまこラブストーリー。インタビューなどから山田尚子監督は今回「映画を作りたい」という意図があったようです。
今回は「映画」ということをだいぶ意識しています。 TVシリーズでは難しく考えないで素直に楽しいものを描いているので、画面もそういった意識で特に「多幸感」を重要視していたんです。 ですが、今回は楽しいプラス甘切ない、キュンとくる。そういう感情を色味やレイアウトに入れ、無意識下に働きかける感じにしています。感情の色を沢山つけていきたかったんです。今回は素直に「映画」を作っているなと思いますね。素敵な気持ちで観ていただけるフィルムになっていると思います。
監督インタビュー|Special | 『たまこラブストーリー』公式サイト
── 今回の映画にあたって、監督とどんなやりとりがありましたか?
堀口 実写の空気感を大事にして欲しいというお話がありました。
── テレビシリーズとの違いは何でしょうか?
堀口 TVシリーズではアニメっぽさやマンガっぽい感じを分かりやすく出していたんですが映画では「生っぽさ」をより大事にしています。
(たまこラブストーリー パンフレット キャラクターデザイン 堀口悠紀子インタビューより)
監督はたまこラブストーリーを「映画」として作っていると言います。では「映画」とは何か?ということになります。
今回のたまこラブストーリーを見て気づくのは「ピントがぼけているカットが多い」ということでした。
PVから抜粋したカットです。このカットだけでなく、映画全体通してこのような画面が続きます。恐らくこれが「映画」であるということではないかと推測しました。
それと今回は望遠レンズを意識したレイアウトが多いです。ラブストーリーは望遠かな、と。
監督インタビュー|Special | 『たまこラブストーリー』公式サイト
・被写界震度が浅いという特徴もあるのでピントが合わない部分をボカしやすく、印象的な画面作りに向いていると言えます。
・望遠レンズの巧みな使い手として一番に思い浮かぶのは黒澤明。望遠レンズとスローモーションによるアクションシーンの演出技法を確立させたのはたしか黒澤だったはずです。スローモーションはサム・ペキンパーやジョン・ウーがよく使っています。望遠レンズを使用したアクションシーンで思い出すのはリドリー・スコットの『グラディエーター』。
演出・カメラ@石井コンテ - レンズ関連
アニメって基本的にパンフォーカスだけど、そこでわざとレンズの存在を意識させて、実写っぽくみせる。フォーカス送りなんかはその典型
— ukkah (@ukkah) 2010, 5月 25
色々と調べているうちに山田監督の言う「映画」というのは望遠レンズを使うことなのではということが分かりました。監督は望遠レンズを使うことで生まれる印象的な画面作りを全編通して行うことによって「映画」を作ろうとしたのです。そして、望遠レンズといえば黒澤明だそうです。黒澤明といえば映画に全く詳しくない僕でも知っている映画界の巨匠です。そんな方が巧みに使う演出技法なのですから「映画を作る」というのは「黒澤明である」ということなのかもしれません。
併映された「南の島のデラちゃん」のファーストカットが往年の松竹映画のパロディだが、
これは本編の「たまこラブストーリー」は往年の邦画のように作りたいという決心だろう。
そんな邦画的である事を表明する本作は、省略と抽象性を上げること、
つまりキャラクターの心情や動機を、事細かに言葉等で説明せず、
極めて淡々と物語を紡いでいた事で、往年の邦画的であろうとした作品だと感じた。
失われた何か 「たまこラブストーリー」の変化と恋を描く物語の傑作性について
ファーストカットは往年の松竹映画のパロディらしい(知らなかった)のですが、これも「黒澤明をやろう」という決意の現れなのかもしれません。
ボケ表現とパンフォーカスの効果
ボケ表現の写真が、主たる被写体に対しスポットライトのように注意を集中させる効果があるのに対して、パンフォーカスの写真は全体に注意を分散させ、主たる被写体とその周囲の環境との関係を明確にするという効果を持つ。その結果、余計なものまで写りすぎてしまうという欠点ももつ。(右上の写真では他のカメラマンが中景にはっきり写りこんでいるが、右下の写真では背景の観光客はぼかされて不鮮明となり邪魔な感じが少ない。)
ボケ表現は「柔らかい感じ」を、パンフォーカスは「硬い感じ」を表現するのに用いられることが多い。
ボケ表現は写真独自の表現、パンフォーカスは人間の視覚の世界に近い表現である。日本ではボケ表現が好まれる傾向が強いが、リアリズムを主張した土門拳、山岳写真の白川義員などボケをできるだけ排し、パンフォーカスを多用する写真家も多い。欧米では近年、ボケ表現が注目されてきているが、従来はパンフォーカスを理想とする考え方が強かった。
分野的にはパンフォーカスは風景写真によく用いられる。また、パンフォーカスのスナップ写真も存在する。これはピントを合わせる時間が節約でき、シャッターチャンスを逃さないという利点がある。
逆にあまりパンフォーカスが用いられない分野としては花の接写、女性のポートレート(やわらかい表現が求められる)などがある。また被写界深度が浅い超望遠レンズで速いシャッタースピードが要求されるスポーツ写真では、結果的に背景がボケたものが多く見られる。
パンフォーカス - Wikipedia
「印象的に」「柔らかく」「映画的に」「女の子の恋を」描こうとするのに望遠レンズを使う絵作りは最適だったのかもしれません。
あんこちゃんがやたらエロいのは恋愛年齢が高いから
そして気になったのがあんこちゃんのエロさ。あんこちゃんとはたまこの妹の小学6年生、北白川あんこちゃんのことですが
パンフレットに載っていた女豹のポーズを取るあんこちゃん。たまこの部屋にベットを伝ってやって来るシーンなのですが、ここがやたらエロい。他にも姉妹で銭湯に行くシーンで、脱衣所にて2人が着替えるのですが、あんこちゃん(小学6年生)が下着姿になって脇を晒すカットがあるのですが、ここがやたらエロい。
アニメというのは1から人間の手で創造するものですから、意図しないことは描けません。つまり、あんこちゃんがエロいのは意図あってのことと思いパンフレットのインタビューを読んだのですが、これに関しては脚本の吉田玲子さんがこう語っていました。
── 今回は女の子の可愛らしさをどのように描かれましたか?
吉田 キャラクターそれぞれの可愛らしさを重視しました。単純に年齢なりの、というよりはその人なりの恋愛年齢でしょうか。人には恋愛年齢がある、と思うんです。肉体的な年齢や精神年齢と同じく、恋愛に対しての意識と対応。そういう意味ではたまこは恋愛年齢が幼い子だなあと(笑)。だから幼い子ならではの可愛さを意識しました。自分ではどうしようもない、どうしていいかわからないといった部分を表現してみようと。ちなみにみどりは一見高そうだけど、とても不器用なのでやっぱり幼い(笑)。実年齢に反して高そうなのはあんこでしょうか。
(たまこラブストーリー パンフレット 脚本 吉田玲子インタビューより)
高校3年生・17歳であるたまこ達ですが、恋愛年齢が低いために映画の中でも全然エロくないんですね。前述のお風呂のシーンでも妹はやたらエロい割にたまこは色気の欠片もないし、みどりちゃんもケツをたまこに摘まれるシーンなんかもあるんですがこれも全然エロくない。これは「エロい=恋愛年齢が高いこと」を表している演出なのではないかと思ったのです。
堀口 あんこ、良いですね!(笑) 映画ではテレビシリーズから大きく成長したお姉さんなあんこがたくさん見られます。何故か今回のあんこを見て「ばっかじゃないの?」と呆れられてみたい……という衝動が湧きおこりました(笑)。かなり個人的に好みなんです。しかも、今回は中学生の制服を着るシーンがあるんですよ。セーラー服。あんこには絶対セーラー服が似合うと思っていたので大興奮です。色々と盛りだくさんなあんこですが、今回は二人を冷静に見つめています。たまこともち蔵に近づきすぎず、遠すぎず見ている大人びた彼女をぜひ見て欲しいです。
(たまこラブストーリー パンフレット キャラクターデザイン 堀口悠紀子インタビューより)
キャラデザの堀口さんもあんこちゃんの危うい色気に大興奮。「大人びたお姉さん」と語っています。
思い返すとあんこちゃんはテレビシリーズの時点で一足先にラブストーリーを経験していたんですよね。このエピソードはたまこまーけっと第4話の「小さな恋、咲いちゃった」ですが、言わば『たまこラブストーリー/Zero』という話でした(第9話「歌っちゃうんだ、恋の歌」も含めてね)。
そう考えると、このカットのもち蔵が妙な色気を発している理由もわかります。もち蔵はたまこに告白したことで恋愛年齢が上がったため、やたらエロいのです。
むすび
映画ラスト。たまこが告白したらそこでスパっとエンディングに入って、ああこういう潔さいいなあ…と思いつつも、2人の後日談をちょっとは見たい…という気持ちもあって。
そんなことを考えながら映画のパンフレットをめくっていたら、最後のページがこんな感じで。こういう映画ならではの形で小粋なフォローをしてくれて嬉しかった。
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