May 2, 2014
ウイルス感染により、この1年で米国内のブタが700万頭も死亡している。このため豚肉の価格は記録的水準に上昇し、さらには食肉全体の価格も押し上げている。昨年5月に米国で初めて発生した豚流行性下痢(PED)により、多くの養豚場に深刻な被害が出ている。しかし、人に感染する可能性は非常に低いようだ。
豚流行性下痢(PED)ウイルスは、最近まで話題になることはほとんどなかった。しかし全米豚肉生産者協議会(NPPC)の推計によれば、すでに米国内のブタのうち10%が死亡している。米国農務省(USDA)などによる他の推計では損失の見積もりはそれよりも低く、5~7%の範囲となっている。
医療専門家によれば、このウイルスが人間にとって直接的な脅威となる可能性は極めて低いという。しかし米国の至る所で、養豚家は感染して死んでゆく子ブタ数千頭の処理を強いられており、NPPC会長のハワード・ヒル(Howard Hill)氏は「痛ましい」打撃だと表現している・・・
豚流行性下痢(PED)ウイルスは、最近まで話題になることはほとんどなかった。しかし全米豚肉生産者協議会(NPPC)の推計によれば、すでに米国内のブタのうち10%が死亡している。米国農務省(USDA)などによる他の推計では損失の見積もりはそれよりも低く、5~7%の範囲となっている。
医療専門家によれば、このウイルスが人間にとって直接的な脅威となる可能性は極めて低いという。しかし米国の至る所で、養豚家は感染して死んでゆく子ブタ数千頭の処理を強いられており、NPPC会長のハワード・ヒル(Howard Hill)氏は「痛ましい」打撃だと表現している。
通常、大人のブタはウイルスに感染しても数日で回復し、母ブタはこの病気に耐性ができる。メスのブタは一度耐性ができれば、それ以後生まれる子ブタに病気をうつすことはない。しかし、この過程は3週間から1カ月かかることがあるため、その間に生まれた子ブタは死んでしまう。
◆人に伝播する可能性は低い
人畜共通ウイルス(種を超えて感染する病原体)の専門家2人によれば、この病気が人間にも感染する可能性は完全には否定できないものの、その見込みは極めて低いという。
ウィスコンシン大学マディソン校の公衆衛生学教授クリストファー・オルセン(Christopher Olsen)氏と、カンザス州立大学獣医学特別教授ユルゲン・リヒト(Juergen Richt)氏は、PEDウイルスはコロナウイルス科の一種で、この科には重症急性呼吸器症候群を引き起こすSARSコロナウイルスなど、動物宿主から人間に感染したことのあるウイルスが含まれると話す。
しかし、PEDウイルスは1971年にイングランドで初めて発生して以来、種の壁を超えたことはない。リヒト氏は、「この疾患は40年以上前に確認され、ヨーロッパ、アジア、そして最近では米国のブタに広がっているが、これまでのところ流行時期に養豚場で働いていた人間が感染したという証拠はない」と話す。
オルセン氏は、「PEDが人間にとって脅威となる証拠はなく、人間の感染例もない」と述べている。
この病気がどのような経路で米国に入ったのか、専門家はまだ解明できていない。一部の研究者の間では、タンパク質を補うためにブタの餌に添加される乾燥血液がウイルスに汚染されていたのではないかと疑われている。
外来の動物疾患を国内に入れないことを目的とした、米国国土安全保障省管轄の研究機関を率いているリヒト氏は、「非常に疑問なのは、この生物学的因子が、米国のあらゆる輸入規制にも関わらずどのように国内に入り込んだのかという点だ」と首をかしげる。「より危険な疾患から国内のブタを守るため、ウイルスが米国に入り込んだ経路を詳しく解明する必要がある」。リヒト氏はさらなる脅威の可能性として、口蹄疫や、かつて存在しUSDAは米国ではすでに根絶したとしている豚コレラを例に挙げて注意を促している。
Photograph by Richard Hamilton Smith / Corbis