日本が世界に誇る浮世絵は、江戸時代の初期に始まり、歌麿、写楽、北斎、広重などのスター絵師の活躍や、強烈なインパクトを放つ国芳らの登場を経て、小林清親や橋口五葉などの近代の画家に引き継がれました。
本展は、「国際浮世絵学会」の創立50周年を記念して、浮世絵の名品を日本国内および世界各地から一堂に集めるものです。誰もが一度は目にしたことのある代表的な作品約440点により、浮世絵の全史をご覧いただきます。まさに浮世絵の“教科書”、“国際選抜”となる展覧会です。
会場では、江戸時代初期の風俗図屏風を筆頭に、菱川師宣の初期浮世絵から、歌麿・写楽が登場した「黄金期」、北斎・広重・国芳が活躍した「展開期」、そして文明開化に沸く明治時代の新聞錦絵、橋口五葉が描いたモダンな女性まで、時代を追ってご紹介します。版画だけでなく、肉筆画も多数展示するとともに、大首絵、役者絵、相撲絵、上方絵などの浮世絵が持つ多彩なジャンルも網羅します。
“世界で愛される日本の伝統美、浮世絵”
その全貌を、そして魅力を再認識していただく本展は、1月より全国3会場で開催します。
写楽や歌麿、北斎、広重など、教科書で見たことがある有名作品が集結。あなたの見たい浮世絵に、出会えます。 |
ロンドンの大英博物館、パリのギメ東洋美術館、ベルリン国立アジア美術館、アメリカのホノルル美術館とシカゴ美術館という海外美術館のほか、国内のコレクション約50ヶ所から、「国際選抜」の有名作品約440点が集まります。 ※各会場には約340点が展示されます(展示替あり)。 ※シカゴ美術館の作品は東京会場のみ、ギメ東洋美術館の作品は名古屋会場と山口会場のみの展示となります。 |
浮世絵の誕生期から昭和まで、浮世絵の多種多様なジャンルを紹介します。大首絵、役者絵、相撲絵、上方絵など、本展は浮世絵がまるごと分かる「教科書」です。 |
浮世絵は、近世初期風俗画を母胎として、それに続く寛文年間(1661~73)を中心に流行した一人立ち形式の寛文美人図を経て生まれる。本章は、浮世絵の誕生に至るまでに描かれた肉筆画により構成する。
近世初期風俗画の傑作で、遊里で遊ぶ男女の姿を画題とした当世風俗図。彦根藩井伊家伝来にちなみ「彦根屏風」と通称される。
「浮世絵」という語は、延宝9年(1681)刊行の俳諧書『それぞれ草』の句の中に見出せるのが早い例であり、およそ、その頃には一般化しつつあったと思われる。当世の、最新流行の風俗を描いた浮世絵は、肉筆画だけではなく、本や一枚物の版画の形でも刊行され始め、新興の浮世絵師は江戸で確かな地盤を築いて行く。版画は、富裕でない庶民でも手に入れることのできる身近な絵画であり、新興都市“江戸”が生んだ新たなエネルギーであった。本章では、菱川師宣・鳥居清倍・奥村政信などの作品を取り上げる。
浮世絵派を確立した師宣の立美人図の代表作で、振り返った姿を後から捉えた独得のポーズが新鮮。
Image: TNM Image Archives
Image: TNM Image Archives
©Staatliche Museen zu Berlin, Museum für Asiatische Kunst, photography Jürgen Liepe
明和・安永期(1764~81)は、錦絵と呼ばれる段階にまで達した木版多色摺技法の発達により、浮世絵版画が急速に表現の可能性を広げた時代だった。多いときには10色以上の色を重ねる事も可能になり、色彩豊かで華麗な錦絵の誕生は、それまでの素朴な浮世絵版画のイメージを一新し、人々の目を驚かせた。本章は、錦絵創始期の第一人者となった鈴木春信、安永期を代表する美人画家である礒田湖龍斎、役者絵界に新風を送った一筆斎文調、勝川春章などを紹介する。
錦絵創始期の第一人者が鈴木春信。それまでの素朴な技法が一変して、洗練された鮮やかな色彩の多色摺木版画=錦絵が誕生、以降の浮世絵界の盛行を促した。
Honolulu Museum of Art, Gift of James A. Michener, 1959 (14491)
Photo: Tim Siegert
Photography ©The Art Institute of Chicago
©RMN-Grand Palais (musée Guimet, Paris) / Droits réservés / distributed by AMF
18世紀の後期を中心とする一時代は、浮世絵の美が頂点を極めた時期である。この時代に制作された浮世絵は、江戸の長い風俗画の歴史の中でもひときわ光り輝き、優れた絵師が陸続と輩出され、錦絵版画全盛の、浮世絵の黄金期となった。この時期、美人画や役者絵は大型化し、さらに浮世絵の人気を高めた。美人画の中で枢要をなした鳥居清長、青楼の絵師と謳われた喜多川歌麿、短期間に印象的な役者絵を残した東洲斎写楽、浮世絵界を席巻する歌川派を主導した歌川豊国、その門人である歌川国政らを紹介する。
江戸兵衛が与作の下達一平を襲うところを描く。つり上った眉と目が凄みを表し、パッと開いた両手が、相手を驚かそうとする意志を強く表す。その指先の異様な形が印象的。
*山口会場:千葉市美術館所蔵の同作を展示
Image: TNM Image Archives
主役の定之進を演ずる歌舞伎界の大役者鰕蔵を描いたもの。写楽はあまり知られていない役者を得意として描くが、名人も本作のように威風堂々と描き切った。
Image: TNM Image Archives
Image: TNM Image Archives
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©The Trustees of the British Museum
19世紀に入ると、多くの浮世絵師が登場し、制作された錦絵の数も増えた。また、美人画、役者絵という二大分野に風景画などが加わり、さらに活況を呈する。色彩はさらに豊かになり、誇張、強調された構図も目立つようになるなど、浮世絵はさらなる進化の相を見せる。本章では、飾北斎が革新し、歌川広重がそれに続いた風景版画および花鳥版画、また豊かな発想による歌川国芳の新鮮な作品群を中心に紹介する。同時に、江戸とは異なった歴史と作風を持ち、京都と大阪で版行された上方絵についても概観する。
印象的な朝焼けの一瞬をとらえた劇的な作品。
©Staatliche Museen zu Berlin, Museum für Asiatische Kunst, photography Jürgen Liepe
モナリザとならんで、世界で最も有名な作品ともいわれる。北斎は時間や場所によって顔を変える富士の姿をシリーズで描き、浮世絵の風景画に新風を送り込んだ。
©RMN-Grand Palais (musée Guimet, Paris) / Richard Lambert / distributed by AMF
*名古屋会場:名古屋市博物館所蔵の同作を展示
*名古屋・山口会場:名古屋市博物館所蔵の同作を展示
幕末から明治維新にかけては、混乱の時代の中、浮世絵師は描くべき主題を模索しつつも迷走を続けた時期で、歌川国芳の門人である月岡芳年、西洋画を学んで独習したと伝えられる小林清親らが上げられる。また大正から昭和にかけては、版元渡辺庄三郎による新版画の試みが登場、橋口五葉や伊東深水、川瀬巴水などが活躍する。
新版画運動において最初に作品を打ち出した橋口五葉。新版画の絵師達は、彫師や摺師との分業による、江戸時代伝統の高度な木版画をよみがえらせた。
※山口会場の展示期間は未定です。決定次第ご案内致します。