39歳由伸、執念の代打2点V打「やっと今年のスタート切れた」
◆巨人4─2ヤクルト(1日・東京ドーム)
巨人は、ベテランのバットが試合を決めた。同点で迎えた6回1死二、三塁で、代打・高橋由が、カーペンターの150キロ超の速球を左前に打ち返し、勝ち越しの2点タイムリーだ。先発・杉内は6回を2失点と我慢の投球で2勝目を挙げ、その後を西村―山口―マシソンが1イニングずつをピシャリ。理想としていた継投が今季初めて決まって、2カードぶりに勝ち越し、貯金を今季最多タイの6とした。
執念ではじき返した。同点の6回、1死二、三塁。高橋由が一振りで試合を決めた。詰まりながらも打球が遊撃手・荒木の頭上を越える。決勝の2点適時打だ。大歓声の中、力強く拳を握った。「うれしいですね」。クールな男が見せたガッツポーズ。自然と感情があふれ出た。
出番は先発・杉内の代打だった。カーペンターに150キロ前後の速球と高速スライダーで追い込まれ、フルカウントとなった。「バットに当たれば何とかなると思った」。151キロの直球を左前に運んだ。「ここで打たないとスギ(杉内)に勝ちがつかない」。代走・坂本を送られ、満面の笑みでベンチに戻った。
今季、アンダーソンの加入、橋本の奮闘などもあって、スタメン出場は1試合だけ。代打での起用が多い。この試合前まで16度、代打で使われたが、12打数1安打。「グラウンドにいるのと、ベンチにいるのとで同じ気持ちになるのは、なかなか難しい。でも、今はこれが自分の役割だから」。長年1試合、4打席で勝負してきたベテラン。新たな役割は想像以上に過酷だった。
先月27日の広島戦(マツダ)は、0―0の9回1死三塁でロペスの代打として前田の前に投ゴロ。ベンチ裏では大きなため息をついて悔しがった。長年、重圧のかかる場面で代走として盗塁を決めてきた鈴木に「こういう仕事はお前みたいな強い精神力のヤツじゃなきゃできないな」と漏らした。「準備はどれだけやっても、これでいいというのはない」。不安との闘いでもあったが、この日のV打で、心が晴れた。
先月3日で39歳になった。体調管理には細心の注意を払っている。ヤンキース・イチローを参考に「毎日、同じことを繰り返す」ことを徹底する。試合前は体幹強化のメニューをこなし、フリー打撃中はチームで一番長く守備練習に時間を割く。左翼の守備位置で30分以上走り回り、体のキレを養うのが日課だ。
「今日も自分の練習のルーチンを変えず、ウエートトレから始まり、いい準備をしている。これをきっかけにさらにここ一番という時に、由伸あり、という状況になってほしい」。原監督は切り札として高い期待を寄せた。
自身の役割は理解している。その上で「いつでも行けるように準備はしている」と、スタメン出場への思いも衰えない。今季初のお立ち台。「僕もやっと今年のスタートが切れたと思います」と、最高の笑顔を見せた。(片岡 優帆)