思想信条による勤務先からの処分をどう考えるか 在特会副会長が「懲戒処分」と告白

 先月、在特会(在日特権を許さない市民の会)副会長の八木康洋氏が同会サイト上にこんな報告をしました。
<先週、会社のお偉いさんから呼び出され、懲戒処分を受けることになりました>
在特会とは、在日韓国・朝鮮人のみが持つ在日特権をなくすことを求めている団体です。「思想・信条の自由」や「表現の自由」は憲法でも認められている権利ですが、労働の現場ではどう考えればいいのでしょうか。

ヘイトスピーチめぐり京都地裁は「違法」判決

 在特会は2007年に設立されました。在日韓国・朝鮮人のみが持つ在日特権をなくし、普通の外国人と同じ待遇とすることを求め、街頭でのデモや集会などを行っています。

 この会が注目されるようになったのは「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」に原因があります。「殺せ」「ゴキブリ」「犯罪者」といったような中傷・差別発言を繰り返し、批判が上がったのです。昨年10月には、京都地裁から約1226万円の賠償と街宣活動の禁止を命じられました。判決はこうした差別的な街宣活動を「人種差別にあたり違法」というものでした。

 今回、勤務先企業から懲戒処分を受けた副会長の八木氏ですが、勤務先が日立化成であることは以前から公表していました。そのため、八木氏が勤務する日立化成は、人種差別に基づく発言をやめるように警告していたといいます。
<過去に二度、警告を受けたにもかかわらず1月のデモ行進で先導車を運転し、2月22日の竹島奪還デモ行進で先導車を運転しながら人種差別に基づくコールに対して「そうだ」等と賛同する発言をしたからだとのことです。過去に受けた警告の内容は、人種差別に基づく発言をやめるようにとの事でした>

 司法の場では、行き過ぎた差別的な行為を「違法」と判断し、また企業側もそれは問題だとしたわけです。

言論や思想での懲戒は「あってはならない」

「言論や思想で企業が社員を懲戒処分にするということはあってはならないことです。また、企業の業務とは関係のない私生活での行動は、原則は自由です。ただ、私生活での懲戒処分の例がないとはいえません。その典型例が痴漢などの犯罪行為です」

 こう説明するのは弁護士の佐々木亮氏です。佐々木氏はブラック企業被害対策弁護団の代表をつとめるなど、労働事件などで主に労働者側の弁護をしています。
「たとえば、痴漢が事実なら、会社のイメージを損なった、信用に傷をつけたということで懲戒処分となるケースはあります。もちろん、すぐに懲戒解雇ということではなく、最初は戒告・けん責で、それでも繰り返されるともっと重い処罰を受けるのが普通です。この点はその行為の態様によります」