技術者の想いと願いHD映像をもっと自由に
Qosmio開発責任者 的場 司
現在、AVの世界はハイ・デフィニション(HD)が主流になっています。そしてHD映像を扱うようになって、課題が浮かび上がってきました。動画サイズを圧縮する際の変換処理や検索性を向上するためのインデックス作成に非常に時間がかかってしまうのです。ヘビーなAV系の作業はCPUへの負荷が高く、全体のパフォーマンスにも影響を与えることがあり、不便を感じることがありました。そこで考えたのが、映像系の処理を専門に担当するプロセッサ「Cell broadband Engine™」(セル ブロードバンド エンジン)※」を搭載することです。我々は、映像分野において汎用のプロセッサには無いCell broadband Engine™のスピードにほれ込み、Qosmioに搭載したい!と強く感じ、早々に開発をスタートしました。
今回開発したCell broadband Engine™は、膨大な演算を超高速に計算できる高性能なマイクロプロセッサです。得意分野では普通のPCが搭載しているCPUよりも圧倒的に高速なCell broadband Engine™の技術を使い、HD映像を自由自在に扱えるようにしたいと考えました。しかし、ノートPCであるQosmioには、消費電力や発熱量の問題から、Cell broadband Engine™をそのまま搭載することはできません。そこで、Cell broadband Engine™技術を使ったプロセッサTOSHIBA Quad Core HD Processor「SpursEngine™(スパーズエンジン)」を開発したのです。
※Cell Broadband Engine™
IBM、SONYグループ、東芝が共同で開発した高性能プロセッサ。マルチコア・アーキテクチャを採用し、超高速データ転送能力により、大容量メディアアプリケーションを扱うデジタルメディア機器等での応用が可能です。Cell Broadband Engineは、株式会社ソニー・コンピュータエンタテイメントの商標です。
お客様はもちろん技術者の期待にも応える水準を目指しました
Qosmio開発責任者 的場 司
SpursEngine™を開発する際に、こだわったのは、やはり性能です。当然のように聞こえるかもしれませんが、ノートPCである限り消費電力や熱の制限があります。プロセッサは、消費電力や発熱を抑えると、処理性能が落ちてしまいます。しかし、HD映像の変換処理やインデックスの作成を、録画と同時にリアルタイムで行える性能は譲れません。その両立にはとことんこだわりました。映像編集に関して、これまでの待ち時間からユーザーを解放したかったのです。
また、弊社にはたくさんの技術者、研究者がいます。彼ら、彼女らの成果である先進技術を、商品化することで期待に応えたいという目標もありました。AVコンテンツを作っている最先端の技術は非常に進んでおりますが、現在のPCが持つ性能ではすべてを実現することができません。SpursEngine™なら、技術者、研究者の力を存分に発揮し、最先端の技術を注入できる!と考えました。さらに、SpursEngine™というプラットフォームの上で、いろいろな技術が育ってほしいという願いもありました。
2005年にSpursEngine™技術の検討をはじめ、2006年には試作設計を開始しました。Cell broadband Engine™の消費電力は50W以上もありますが、Qosmioに搭載するためには10W台に抑えなければなりません。2007年春に完成した試作機では、その課題はクリアしたものの性能に満足できず、再びチャレンジを開始しました。苦難を乗り越えようとする技術者の熱意と努力のおかげで、消費電力を5分の1に抑えつつも、PCが必要とする映像処理に関してはCell broadband Engine™を超える性能を達成できたと感じています。
東芝の技術力が結集して今までにないモノができました
PCの開発において、プロセッサをアーキテクチャの段階から作るのは初めてのことです。時間も限られていました。しかし、弊社は世界初のノートPCを発売してから、さまざまな「世界初」にチャレンジしてきました。その歴史とDNAにかけて、デジタルAVへの問題解決は、自分たちがやるしかない、と考えたのです。東芝には、PCやAV、半導体に関わる多くの技術者と研究者がいます。彼らが同じプロジェクトに集結し、お互いに連携することで、かつてない技術と製品を作り出すことができたと思います。
SpursEngine™には、弊社オリジナルの技術が詰まっています。このアーキテクチャに他から持ってきた技術は入っていません。80年代から研究が進められている映像認識技術や、90年代から進化した高画質化技術、そして21世紀に開発が始まったCell broadband Engine™の技術など、多岐にわたる努力の集大成なのです。
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可能性は無限大今までできなかったことが実現する
Qosmio開発責任者 的場 司
SpursEngine™は、ソフトウェアと組み合わせることによって、どんな処理でも行うことができるという意味で、可能性は無限大です。今回発表したQosmioには、録画番組から登場人物の顔を取り出してインデックス化する「顔deナビ」やユーザーの手の動きでパソコンを操作する「ハンドジェスチャーリモコン(G50のみ)」など、今までにない機能が搭載されています。また、従来のDVDや過去に撮影・録画したスタンダード・デフィニッション(SD)形式のビデオをより美しいHD解像度に高画素化する超解像変換機能、「高画素化変換(アップコンバート)」も今までにない当社オリジナルの機能です。従来のPCではあきらめざるをえなかったことも、SpursEngine™を利用することで実現するのです。
開発者向けのリファレンスキットを用意しましたので、多くのソフトウェアベンダーからSpursEngine™対応のソフトウェアが登場することも期待しています。そうすれば、ユーザがさらに便利にパソコンを活用できるようになると思うのです。
まだ誰も見たことがない世界が、SpursEngine™の扉の向こうに広がっているのです。