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2013-04-07 ここがおかしい『ダークナイト ライジング』映画レビュー(ネタバレ)

■ストーリー『人々の尊敬を集めた地方検事ハービー・デントの罪を一身に被り、ゴッサム・シティから姿を消したダークナイト(=バットマン)。それから8年、ゴードン市警本部長は真実を心におさめ、街の平和のために尽力していた。そんな中、鋼のような肉体をまとった巨漢のテロリスト“ベイン”の登場で一変してしまう。街は次々と破壊され、無法地帯と化していく。人々の心が恐怖と絶望に支配され、ついにブルース・ウェインは自らの封印を解き、再びケープとマスクを身にまとうのだったが…。バットマン/ブルース・ウェイン役のクリスチャン・ベイルはじめ、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンのレギュラー陣が再登場。さらに、最強の敵ベイン役のトム・ハーディのほか、アン・ハサウェイやマリオン・コティヤール、ジョセフ・ゴードン=レヴィットらが新たに出演。アメリカン・コミックを原作としながらも、正義と悪を巡る根源的なテーマにも迫るリアルかつ重厚な世界観で世界中に衝撃を与えたアクション映画の金字塔「ダークナイト」の続編にしてクリストファー・ノーラン監督版“バットマン”三部作の掉尾を飾るシリーズ完結編!』
史上空前の大ヒットをぶちかました『ダークナイト』の続編であり、トリロジーの最後を飾る『ダークナイト ライジング』。クリストファー・ノーラン監督は前作で”ジョーカー”という強烈なキャラクターを登場させ、世界中の観客に衝撃を与えました。そして、ジョーカーとデントとバットマンを廻る複雑な物語は、観る者の善悪に対する価値観を揺さぶり、正義やヒーローの正当性を問いかけるという、アメコミ映画の概念そのものを根底から覆す重厚な人間ドラマへと昇華したのです。
そんな大傑作の続編となれば、皆が期待するのは当然と言えるでしょう。しかし、結果は意外と賛否両論。「面白い!」と絶賛する人もいれば、「映画秘宝」が毎年開催している”その年最もトホホでサイテーだった映画”を選ぶ「2012年度HIHOはくさいアワード」では堂々のワースト1位を獲得するなど、色々と物議を醸しました。結構評価が別れる作品なんですよね〜。
元々、原作のアメコミ自体が荒唐無稽な物語であり、リアルとは程遠い存在でした。なので、ティム・バートンが作ったマイケル・キートン版『バットマン』の時は、「ヒーローとはそもそも荒唐無稽なものである」と開き直り、闇に映える「ゴッサムシティの幻想性」を深化させ、作品全体を悪夢的なダーク・ファンタジーとして描き切ったのです。
それに対してクリストファー・ノーランは、「ヒーローの現実性」に焦点を当てました。ファンタジー的な側面を強調したティム・バートンとは対照的に、「もし現実にヒーローがいたらどうなるか?」という真逆の方向からアプローチをかけ、『バットマン ビギンズ』では文字通りブルース・ウェインの生い立ちを詳細に描いて見せたのです。主人公はあくまでも普通の人間であり、肉体と精神の改造プロセスを経てヒーローになる。スーツや武器などのガジェットも主人公が自ら加工する様子を克明に見せることで、揺ぎ無いリアリティを獲得したのですよ。
そして、続編の『ダークナイト』ではそのリアリティを更に強化。誇張した照明やわざとらしいスモークなどは排除され、画面は現代犯罪映画と何ら変わらないシャープなルックで統一されました。また、ヒーロー映画ではお約束の”まぬけな警察”も、確固たる存在を主張しています。それらに加えて宿敵ジョーカーの圧倒的な存在感!この時点で、『バットマン』はある意味”リアル・ヒーロー映画の頂点”を極めていたと言っても過言ではないでしょう。
しかし、『ダークナイト ライジング』では進化しすぎたリアル路線が逆に自らの首を絞める結果となってしまいました。つまり、今まで「まあヒーロー映画だから仕方ないか」と見逃されていた部分が、「あれ?何かおかしくね?」と目立つようになっちゃったんです。いくら『仮面ライダー』をリアルに描いても限界があるように、『バットマン』もその”壁”にぶち当たってしまったんですね。
僕の個人的な感想としては、まず「時間の長さ」がネックかなと。エピソードを詰め込めるだけ詰め込んだ結果、削る部分がなくなったという事情はともかく、アメコミ映画で2時間40分は冗長すぎます。主人公が”奈落の穴”に落ちてからの展開は特にダルくて、もう少しテンポ良く描けないものかと辟易しました。しかし、それ以上に問題なのが「脚本に穴が多すぎる」という点でしょう。もう、色んな場面が気になって気になって(^_^;)
というわけで激しく今更感が漂いますが(笑)、レンタル開始からずいぶん時間も経ってるし、ネタバレ全開でレビューしてみようかなと(まだ観てない人はご注意ください)。以下、『ダークナイト ライジング』における「常識的に考えると色々おかしい突っ込みどころ」を列挙してみましたよ。
映画冒頭で、「博士は死亡した」と思わせるために偽装するシーンがあるが、死体にチョロっと血を入れたぐらいでごまかせると思っているのだろうか?指紋やその他の身体的特徴ですぐにバレるだろうに。そもそも死体に輸血なんて出来るの?心臓が動かなければ血液は体内を循環できず、すぐに凝固してしまうと思うんだが。
●ベインのマスク
ベインは顔にでかいマスクを付けていて、ここから痛み止めの薬を投与しているという設定である。これはつまり、最大の弱点を常にさらけ出しているということだ。……って有り得ねえええ!初登場の時点で「まさか…いやいや、いくらなんでもそんなヤツおらんやろw」と即座に自分の考えを否定したものの、バットマンに顔面を殴られ「うおおお!」ともがき苦しむ姿を目の当たりにした瞬間、”マジだった”と分かり絶句する。おそらく、「ヒーロー映画史上最も分かりやすい弱点を持った悪人」ではなかろうか。常にウィークポイントをさらけ出してるなんて正気じゃない。もう完全にコントだよwww
●「デント法」ってなに?
本作は、『ダークナイト』から8年が経過したゴッサムシティが舞台で、「その間平和を維持し続けている」という設定だ。しかし、平和の源となった「デント法」については一切の説明が無く、単に「わるいやつをつかまえるほうりつ」という”フワっとした概念”しか示されていない。これでリアリティを獲得するのはさすがに無理があると思うぞ。
●バットマン、正体バレすぎ
普通、ヒーロー映画でヒーローの正体がバレるっていうのは、結構一大事のはずなんだけど、本作ではかなりの頻度でバットマンの正体がバレている。ベインの場合は”裏の世界”から情報を得ていたとしても、新米警官のブレイクはどうして知ることができたのか?1作目から登場しているゴードンでさえ、ラスト間際になってようやく気付いたのに(つーか、もっと早く気付けよゴードンw)。
キャット・ウーマンが必死に探している「クリーン・スレート」とは、過去の犯罪履歴を綺麗さっぱり末梢できる特殊なプログラムなんだとか。当初は「単なるデマで存在しない」と言われていたが、「偶然ブルース・ウェインが持ってました」ということが判明してずっこける。おまけに、何かの伏線かと思ったら中盤以降は劇中で全く触れられてないし。意味無くね?
●ブレイクの勘が良すぎる件
バットマンの正体を見抜く洞察力と関係があるのかもしれないが、ブレイクはやたらと勘がいい。ゴードンがベインの手下に捕まって下水道へ連れ去られた際も、素早く先回りしてゴードンを助けている。いったいなぜ、あのタイミングであの場所へゴードンが流されてくることを予想できたのか?
●トンネルを抜けたら夜だった!
証券取引所を襲撃したベインたちがバイクで逃走するシーンに至っては、もはや「突っ込む」というレベルを通り越して呆れ果てるしかない。なんと、外を走っている時は昼間だったのに、トンネルのような場所を通過したら夜になっているのだ。その直前の場面では「インストールまであと8分」という会話があり、トンネルを出たら「あと90秒」になっていた経緯から考えると、わずか6分30秒で日が暮れたことになる。ゴッサムシティの日照時間ってどんだけ短いんだよ!
・確かに「あと8分」って言ってる
・この時、外はまだ明るい
・なぜか突然真っ暗に!
・どうしてなんだあああ〜!
ベインがバットマンの背骨を折るエピソードは原作にも出てくるんだけど、原作では治癒能力を持った超能力者が怪我を治している。ところが、映画では牢屋に入っている怪しげなおっさんがブルース・ウェインの背中を殴って治しているのだ。そんな治療で大丈夫なのか?
●実は意外と刑務所が快適だったりして
”奈落”と呼ばれるほど劣悪な刑務所に送り込まれたブルース・ウェインだが、自由に所内をウロウロできるし、テレビも見放題だし、希望すれば「脱獄チャンス」にも参加できるし、「あれ?そんなに居心地悪くないんじゃね?」と気付いてしまった観客多数。話が違うよベインさん!
●ロープを登ればいいじゃない
奈落の底に落とされたブルース・ウェインは、脱出するために垂直の壁をよじ登ろうとして何度も失敗してしまう。しかし、良く見ると落ちても大丈夫なように体にロープを巻いているではないか。そしてそのロープは上からぶら下がっていて……ん?ロープを登れば脱出できるんじゃないの?
●どこから入った?
完全に封鎖されて出ることも入ることもできないゴッサムシティに、あっさり帰還したブルース・ウェイン。どうやって入ったんだ?そもそも”地球の果てにある”と言われていた刑務所から、ずいぶん簡単に戻って来れたな?ヒッチハイクか?神出鬼没にも程がある。
●ベインはなぜ5カ月も警官を殺さなかったのか
地下に閉じ込めて5カ月放置ってのも凄い話だが(水や食料はどうなってた?)、その後脱出して逆襲される展開はマヌケすぎる。そもそも、5カ月もこんな状態だったら絶対アメリカ政府が介入してるだろ。
●ベインがザコキャラに成り下がる
最強の悪役としてバットマンの前に立ちはだかり、散々暴れ回っていたベインだが、クライマックスで真のラスボス(ミランダ)が正体を明かした途端、いきなり下っ端に成り下がってしまう。「主人公を苦しめてきた悪人を、最後に主人公がやっつける」という娯楽映画のお約束すら果たすことなく、あっさりキャットウーマンに殺されるベインの存在っていったいなんだったのだろう?
●意外と丈夫なゴードンさん
核爆弾を積んだトラックに乗り込んだゴードンは、なんとか爆破を阻止しようと奮闘する。その間、バットマンやキャットウーマンの激しい攻撃に晒され、運転席のミランダやその仲間は全員死亡。しかし、そんな状況の中でもゴードンだけはめちゃくちゃ元気なのだ。序盤で銃弾を食らって入院してたのに、その後は病院を襲撃した傭兵をあっさり返り討ちにするなど、ジョン・マクレーンもビックリの不死身ぶりを見せ付ける。もう、ゴードンとキャットウーマンさえいればゴッサムシティは安泰なのでは?
原発推進派の人ですらドン引きしそうな驚愕プロジェクトを堂々と実行する主人公。ブルース・ウェイン、お前が一番危ないよ!
というわけで、世界観のリアリティを高め過ぎたことで逆に内容の不自然さが露呈する結果となってしまった『ダークナイト ライジング』。『アベンジャーズ』や『スパイダーマン』ではスルーできたような事柄でも、本作では気になって見過ごすことが出来ず、「なんでやねん!」と突っ込まざるを得ませんでした、トホホ。ここまで現実性を突き詰めると、もはや世界観そのものがヒーローの存在を拒絶しちゃうんだろうなあ。
ただ、作品自体は嫌いじゃないです。世の中が平和になりヒーローも必要なくなったゴッサムシティで、半ば隠居生活を送っていたブルース・ウェインが、またしても現れた凶悪犯に対してボロボロの体を鍛え上げ、再びヒーローとして立ち上がるまでのプロセスが実に素晴らしい。
そして最後は”ヒーローとしての適性を持った若き後継者”に全てを託し、自分は表舞台からの引退を決意します。「ヒーローはどこにでもいる」という言葉を残して…。つまり、これは”ヒーローの世代交代”であり、”正義を継承する物語”なんですね。過去のアメコミ映画で、ここまでヒーローの存在意義を追求し、善悪の定義を問い掛けた作品があったでしょうか?クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、アン・ハサウェイ、トム・ハーディ、マリオン・コティヤール、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、モーガン・フリーマン、 マシュー・モディーン、キリアン・マーフィー、リーアム・ニーソン等、ハリウッドの一流スターがズラリと並ぶ様も圧巻すぎる!クリストファー・ノーラン監督の『バットマン』シリーズはやはり凄い映画でしたよ(色んな意味で)。
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どーやってこんな調べたんだろーと思ってたらコメントとかも最後まで見ちゃってました
こーゆーブログであまり感じたことなかったのですがとてもおもしろかったです!
で、この人はダークナイトライジングをどー思ったんだろうと思って探してみてここにきました
僕はけっこうぶっとんだ映画好きで、すぐ思いつくのでいうとタランティーノとかロバートロドリゲスとか狙ってぶっとばすのから、ランボー3みたいな天然なのか天才すぎるのかわからない系のぶっとぶのが好きなんですがおすすめとかあったら教えてください!
ちなみにプロメテウスはいろんな疑問は感じつつも、ラス前の特攻に、おーまさかの男気映画!っと興奮しましたw
なんかSFってだけでわりとむちゃくちゃを許しちゃうタチみたいです
ダークナイトライジングはダークナイトがちょー好きだったので絶対超えられないとこにノーランはどー立ち向かうのかと思ったら予想を遥かに上回る下回りっぷりでさすがにちょっと怒りすら感じました 汗
とくにゴードンの告白の手紙でのデントの扱い酷すぎだろ!あいつだってジョーカーに狂わされるまではがんばってたじゃん!恋人まで殺されたんだからそこまでいうなよ!ってのと、最後の海で爆破はワンピースのアラバスタ編か!ってのでノーラン少年ジャンプレベルはさすがに、、、ってのを感じたのを覚えてます
あ、あとアルフレッドまさかの突然助けに登場したりしないパターンにびっくりしました
とにかくアンハサウェイがセクシーでバイクに乗るのとかあたしは関係ないみたいなこと言って殺したりとかでそれにお金を出したと納得させました
その後ランボー3に出会い、あ、ダークナイトライジングももっと時間が経てばそーとーはちゃめちゃで実はダークナイト以上に予測不能でおもしれーみたいになるのかなって思いだし、数年後見てみようかなって思ってます
なんか長々すみませんm(__)m
ブログおもしろかったのでつい
また見に来ます!
コメントどうもです。
ここまで細かく感想を書いてくれる人はなかなかいないので、こちらも励みになります。ありがとうございました!(^_^)
>天然なのか天才すぎるのかわからない系のぶっとぶのが好きなんですが
>おすすめとかあったら教えてください!
僕もタランティーノやロドリゲスの作品は好きですよ〜。ぶっ飛んだ系なら(別の監督ですが)『アドレナリン』なんかどうでしょうか?ジェイソン・ステイサムのアクション映画ですけど、毒を打たれてアドレナリンを出し続けないと死ぬ主人公、という無茶な設定が面白かったです。続編はもっとムチャクチャな映画になってますけど(笑)
>ダークナイトライジングはダークナイトがちょー好きだったので
『ダークナイト』は僕も大好きだったので期待してたんですが、ちょっと期待しすぎましたね(^_^;)
>あとアルフレッドまさかの突然助けに登場したりしないパターンにびっくりしました
絶対、途中で出てくるだろうと思ってましたね(笑)。ただラストは意外と明るい終わり方だったので、その辺は良かったかなと。
>なんか長々すみませんm(__)m
こちらこそ、長い記事を読んでいただきありがとうございました。またいつでもお越しください(^_^)
表面的に見てそういう感想を抱くのは仕方ないと思いますけどね。
ダークナイト・ライジングは明らかに神話や戯曲をモチーフにした英雄の物語ですし、今までの2作のようなクライム・アクションモノでもない、ノーランが考える"ヒーローとは何か"を描いた作品です。
ジョーカーの出した問に答え、バットマンはヒーローではなく象徴になる。
失敗しても立ち上がり成長して行けばいい、そして、ヒーローは特別なものじゃなくて誰だってなれるものと示したこの映画は、娯楽映画でありながら、非常にメッセージ性の強いものになり、まさに映画史に残る三部作の最終作として相応しいものになっていると思います。
コメントどうもです。
>今作はリアリズムを捨て、リアリティを最低限にして、
>フィションだからこそ描けるものを描いた映画です
果たしてそうでしょうか?確かに前作『ダークナイト』に比べればリアリティのレベルは下がっていますが、「リアリズムを追求する」というノーラン監督自身のスタンスや方向性は変わっていないと思います。
では、なぜリアリティが下がったように見えるのかと言えば、上の記事に書いたように「脚本に穴がありすぎる」からですよ。つまり、監督としては今まで通りリアリティを高めようとしたものの、多数の突っ込み所のせいで結果的に「最低限のリアリティしか確保できなかった」というのが正解なんじゃないでしょうか。それぐらい本作のシナリオは酷過ぎるということです。
したがって
>映画史に残る三部作の最終作として相応しいものになっていると思います
この意見には全く同意できません。確かに、映画自体は(突っ込み所が多い割には)結構楽しめました。しかし、”映画史に残る”などということは絶対に有り得ないし、そもそもそんな映画が「はくさいアワード」でワースト1位を獲るわけないでしょ(笑)。
-バットマン、正体バレすぎ
下水からゴードンを救出したときに話を聞いたのでは?ゴードンは大怪我をしていましたが、昏倒していたわけではないので話をできる状態であったと考えます。
-役に立たない「クリーン・スレート」
クリーン・スレートは犯罪に使える武器であるということでブルースが盗み出し、秘匿していたはずです。映画ではその辺が描かれていなかったかもしれませんが。
-ブレイクの勘が良すぎる件
あの場所に流されてくるのを知っていたのは、下水で働いていたというホームレスの子供の死体があそこに流れ着いたことを覚えていたからではないでしょうか。
-ロープを登ればいいじゃない
あのロープは縦穴の3分の2程度の位置から垂れ下がっているように見えます。そこからのジャンプが最大の難所のように描写されているように思います。
-ベインはなぜ5カ月も警官を殺さなかったのか
なぜ殺さなかったのか、という理由は分かりかねますが、水や食料の受け渡しをしているようなシーンは普通にありましたが・・・。
長々と失礼いたしました。
コメントどうもです。
>下水からゴードンを救出したときに話を聞いたのでは?
ゴードンからバットマンの正体に関する情報を聞き出すことはできません。この時点ではゴードンはバットマンが誰なのかを知らなかったはずなので、ブレイクが得られる情報はほとんど無いと思います。
>クリーン・スレートは犯罪に使える武器であるということで
劇中では、クリーン・スレートは「犯罪者の履歴を抹消できるソフト」と説明されていました。しかし、実際にはそれを使用する描写がありません。おそらくキャットウーマンが自分の犯罪歴を消すために使ったと思われますが、その部分を描かないのはやはり不十分だと感じました。
>ホームレスの子供の死体があそこに流れ着いたことを覚えていたから
たしかに、ブレイクがあの場所へ向かったのは、この話を聞いていたからでしょう。しかし、ゴードンは死体で流れてきたのではなく、自力で脱出したのです。ということは他の経路から逃げ出す可能性もあったはずで、「必ず下水溝から流れてくる」とは限りません。おまけにベインはゴードンをすぐに殺そうとしていたわけではないので、「ブレイクが駆け付けたらゴードンがすぐ流れてきた」というのはタイミングが良すぎるのですよ。
>あのロープは縦穴の3分の2程度の位置から垂れ下がっているように見えます。
映像で再度確認しました。確かに、ロープは出口から垂れ下がっているのではなく、途中の足場みたいなところから出ていて、「そこから出口まではジャンプしなければ登れない」という設定のようですね。ただ足場から出口までの距離がそれほど離れていないので、ロッククライミングの要領で登れば脱出できそうな気もしますが…。
>水や食料の受け渡しをしているようなシーンは普通にありましたが
ゴッサムシティの全警察官に5ヶ月間配布する水と食料って大変な分量だと思いますが、そこまでして生かしておかねばならない理由を劇中で明らかにしないのは、やはり「脚本がおかしい」と批判されても仕方がないと思います。まあ、「ベインが実は意外とイイ奴だった」という解釈も有り得るかもしれませんが。