――それは、プロが作った商品が市場をキープできる保証がなくなるということでもあると思うんですが……。
岩田 プロの人たちがこれからも全員プロとして生き残れるかどうかはわからないと思いますよ。それは、ゲームに限らず、クリエイティブに関わるどんな世界でも、インターネットがもの凄い勢いで変えていることではないですかね。プロとして今後も価値を認め続けられるものもあるでしょうし、プロでも支持を得られずに集団を維持するには経済的に成り立たなくなる人たちだって出てくるでしょうし。
それは任天堂も同じです。今後もプロとして必要とされ続けるチームの割合を、高めるための努力をし続ける必要があると思っています。全てのチームが必ず生き残ることが保障されていると考えるのは思い上がりでしょう。でも、全部がUGCの波に飲み込まれてしまうとも思っていません。任天堂だからこそできることは、必ずあると思っています。
業績不振だからこそ
いまは任天堂の腕の見せどころ
――任天堂の不調が伝えられるようになってから、社長退陣論や新ビジネスの提案、スマホビジネス参入などの記事やブログをよく見るようになりました。それらからは任天堂に対する溢れんばかりの愛情しか感じず、つくづく「好きの反対は無関心。キライも好きの一部」という仮説は正しいのだろうと思います。
きっと世間の皆さんは、任天堂の理想像をお持ちなのでしょうね。一言で言うと、任天堂には「誰も思いつかないことをスマートにやってのけるまじめで天才的なヒーロー」という存在でいてほしいのかもしれません。
私は15年近く任天堂の状況を端で見てきましたが、世間が思うほど任天堂はスマートでもないと思います。一部の成功体験が声高に伝えられる一方で、陰でもがいているし、過去にはさまざまな失敗も重ねている。今は世間が求める「スマートな成功」を得るための助走期間なのかもしれませんね。