中国国営メディアが宗教的過激派とした2人は、同国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで起きた爆発事件の犯人と見られる。この攻撃は同自治区の「分裂主義者」の組織がより高度になっていることをうかがわせている。 4月30日に起きた事件ではこの2人ともう1人が死亡し、79人がけがをした。駅はメーデー連休を前に旅行者などで混み合っていた。また、爆発は、習近平国家主席が4日間にわたる同自治区の視察の終わりにウルムチ市内のモスクを訪問した数時間後に起きた。
このタイミングと場所―同地には以前から厳しい警備が敷かれていた―からは、これまでのウイグル族の「新疆分裂主義者」が起こしたといわれる事件とは異なる高い能力と野心がうかがえる。
中国現代国際関係研究所(CICIR)のテロ専門家Li Wei氏は「こうした攻撃の実行の難しさは、彼らがよく組織され、長期計画を立てられることを意味している」とし、「その目的は習氏の経済開発政策を混乱させることだ」と話した。
警察は1日、駅周辺の店の人たちらから話しを聞き、一方でアサルトライフルと盾で武装した治安部隊が周辺を巡回していた。作業員は爆発によるがれきなどを取り除き、駅の周りには多くのウイグル人たちが集まっていた。
新疆ウイグル自治区政府のニュースサイトや他の国営メディアが警察情報として伝えたところでは、攻撃は過激な宗教活動に参加していた2人によって行われた。2人は爆発物を起爆させた時に死亡した。国営新華社通信によると、1人はウルムチの南西にあるアクス地区出身のSedirdin Sawut容疑者(39)。同通信は、2人は刃物で人々に切りつけたとしている。2人が自爆したのかどうか、近くにいた3人目の人物がどのように死亡したのかははっきりしていない。
この事件は、習氏が権力を握ってからの1年半近くの間に、新疆ウイグル自治区の外でも見られる暴力の拡大の一部だ。この暴力は、急速な経済成長と厳格な取り締まりのコンビネーションという、この地域に対する政策アプローチの有効性に疑問を呈している。
国営メディアは習氏の新疆訪問―トップの座に就いて初めての訪問―に関して、軍隊の基地を訪れてその厳しい態度を示す一方で、ウイグル族との民族的結束を訴えるなど、硬軟両方の側面を伝えようとしていた。
事件が起きた南駅では1日、ウルムチと自治区内の別の駅を結ぶ新路線の開業式が行われた。同自治区の鉄道網を拡充し、これを中央アジアとつなぐことは、中国政府の開発戦略の一環だ。しかし、ウイグル族の活動家たちは、これは移住してくる漢民族と政府を利するだけだとしている。政府は自治区内で石油、天然ガスなどの天然資源を開発し、宗教には制限を設けている。
ミシガン大学のテロ専門家フィリップ・ポッター氏は、同自治区では以前から警備が非常に厳しかったことから、今回の事件は当局の顔に泥を塗ることになったと指摘した。同氏は「象徴的価値のあることができるなら、それは潜在的能力を示すものだ」と述べた。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者は駅周辺の人たちに尋ねてみたが、刃物での襲撃を目撃した人はいなかった。ある店主は、30日午後7時と7時15分の2回、爆発音を聞き、外をのぞいてみると、爆発が起きたあたりで少なくとも3人が倒れていたのが見えたと話した。店主は、3人は死んでいたのか重症だったのだろうとしている。
今年3月には中国南西部の鉄道の駅で、30人以上が死亡する刃物による大量殺傷事件が起きたが、これも新疆ウイグルの「分裂主義者」の犯行とされた。また、昨年10月の北京天安門近くでの自動車炎上事件も同様に「分裂主義者」が犯人とされている。この事件では車に乗っていた容疑者3人と旅行者2人が死亡した。
これまでウイグル族が行ったとされた自治区内の警察や政府庁舎の襲撃事件などでは、少人数のグループが刃物や簡単な爆発物を使ったものが多かった。今回の容疑者の出身地であるアクス地区では今年2月、警察が8人を殺害した。国営メディアによると8人はテロリストで、このほか3人は現場で自爆した。
治安専門家の多くは、ここ数ヵ月間での戦術の変化を受けて、ウイグル族の「分裂主義者」たちは外国のイスラム武装勢力から学んでいるのではないかとの懸念を強めている。中国政府は以前から、「分裂主義者」はこうした勢力とつながりがあると非難している。
米国のシンクタンク、ジャーマン・マーシャル・ファンドのアジア・プログラムのフェロー、アンドルー・スモール氏は「繰り返しのパターンだ」と指摘。「必ずしも中央から指示されているわけではないだろう」としながらも、彼らが「個別に訓練を受けた」ことをうかがわせる「似たような攻撃の種類」であるようだと述べた。
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