60年前に東京の明治神宮外苑であったメーデーの集会を、米国の写真家ロバート・キャパが取材していた。その時にキャパを写した写真が、神奈川県鎌倉市の個人宅に残されていた。日本で取材中のキャパを写した写真は珍しく、軽装でカメラを手にしている。

 撮影されたのは1954年5月1日。映画の撮影監督を長く務め、2012年に77歳で死去した奥村祐治さんが撮った。妻の三重子さん(67)によると、祐治さんは当時、東京写真短大の学生。会場に居合わせた、あこがれのキャパに「アー・ユー・キャパ?」と尋ね、本人の了承を得て撮影したという。

 当時、皇居での取材中にキャパに会った日本写真家協会の田沼武能会長は「トレードマークのくわえたばこが懐かしい。人々の表情を興味深そうに写していた」と話す。

 キャパは約20日間にわたり日本国内で取材したが、この日が滞在最終日だった。約3週間後、次の滞在先の仏領インドシナ(現在のベトナム)で地雷に触れ、命を落とした。祐治さんは「この写真が日本で写された最後の1枚かもしれない」と大切にしていたという。

 三重子さんは東京・恵比寿の都写真美術館で開催中の写真展「101年目のロバート・キャパ」(朝日新聞社主催)の鑑賞をきっかけに、写真の公表を決めたという。写真展は11日まで。(鬼室黎)