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県立高教諭入学式欠席がわざわざ『問題』的に扱われることについて

◆担任、息子の入学式へ…高校教諭勤務先を欠席、教育長が異例の注意
http://www.saitama-np.co.jp/news/2014/04/12/01.html

この問題、皆さん、知ってますよね?

けっこう報じられまして、先週の月曜日のニュースなんですけど…いや~言いたいこと、ある人沢山いるでしょうが、基本的には人それぞれの価値観ですし、どれがあっててどれが間違ってる…ってのはないのだと思います。

なので、あくまで僕の体験と、僕の価値観はこうだって話をします。これはもちろん、人に押し付けるものでもありません。

まず、概要だけおさらいを…。

埼玉県の県立高校の先生が「子どもの入学式に出席したい」ってことを理由に勤務校の入学式を欠席したわけですね。これに対し県の教育長が14日の定例会見で「入学式は重要な学校行事。基本的に教諭は入学式に出席すべき。生徒や保護者を不安にさせてしまった。不安にならないようなフォローをし、(今後は)信頼関係を築いていくことが大事だ」と発言。これを埼玉新聞が報じて、「先生なのに入学式を休むなんてー!」「親なんだし、休暇届を受理されている以上、普通だろ!」と賛否両論が飛び交ったんです。補足しておくと、50代の女性教諭は、新入生向けに入学式に出席できないことを詫びるメッセージを作成。当日は副担任が事情を説明したとのこと。なお、休暇届は適切に提出され、受理されてます。

この一件について、県の議員さんたちが怒ってFacebookで学校名をばらしたり、ネット上では様々な意見が飛び交うなど、先週1週間、そこそこおもしろ展開をしておりました。

で、これについて僕の意見を述べる前に、僕の一番尊敬する3人の話をしようと思います。

僕、一番尊敬している人はと尋ねられると毎回言っているのが「両親」です。

うちの父と母は僕がこういうのも手前味噌な話なんですけど、本当に素晴らしい両親です。特に、僕たち子供たちに対する愛情や接し方、人間として深い部分を尊敬しています。

僕の育った長谷川家は必ずしも裕福な家庭ではなかったです。と言うか、普通よりも所得はむしろ低い方だったのではないかと思います。

父は普通のサラリーマンですし、大きな会社の、素晴らしい肩書を持ってる人物ではありません。母も世間的にはごく普通の専業主婦なのです。でも、僕はこの両親を世界一の両親だと確信できてます。

うちの両親は精一杯「家族」を大切にする両親でした。珍しいことに父も母も同じく、家族を大切にする人物でした。

父は普段は質素に生活をしていましたが、夏休みや冬休みには家族で何度も旅行に連れて行ってくれました。もちろん貧乏旅行です。夏は海にキャンプ。銛(もり)をもって素潜りをし、その日の夕食は自分たちで取ってきました。海辺で魚をさばき、その内臓や食べない部分は磯のカニやイソギンジャクにあげていました。


母は情に厚い人で、どれだけ喧嘩をしていても、毎朝、家を出るときは必ず姿が見えなくなるまで手を振って見送ってくれていました。

そんな両親の血を受け継いでいるので、僕も家族が大好きです。子供たちをとても大切に思っています。

そんな僕がフジテレビのアナウンサーになって、高視聴率番組「とくダネ!」のプレゼンターになって、いくつかのコーナーを持つようになりました。

そんな中、妻が妊娠をしました。

僕は新しく出会う家族とは、もちろん最初に会いたかったですし、妻の傍にも居たかったので出産には立ち合いを望みました。

でも、問題がありました。僕のコーナーです。

そもそも取材も僕がしてますし、僕に取材を受けた人は僕を信頼して話をしてくれたのです。急な陣痛に妻が襲われた時、僕は自分のコーナーをどうすべきか迷いました。

テレビカメラの前には1000万人以上の視聴者の皆さまがテレビを見守っています。もちろん、僕のコーナーを楽しみにしてくださっている人も大勢いたでしょう。その方々のためにも僕はテレビに出なければいけないはずです。でなければ、キー局のアナウンサーは務まりません。

「親の死に目に会えると思うな」と、入社の日に先輩から言われたことを思い出します。あきらめるしかない…。立ち合い出産をあきらめようか…とした時、携帯電話が鳴りました。相手は同番組を担当している10歳以上先輩のKアナウンサーでした。

「立ち会うべきだ。コーナーは俺が変わるから」

実はKさん、テレビとは少し実態は違います。いや、態度や喋りは、ほぼあのままなんですが、芯と言いますか…人間として…そうは見えないでしょうが、とても男らしい部分を持ってる人なのです。

古巣の先輩をヨイショしても、僕には何も出ないのでヨイショとは違います。その日、僕はKさんに代行をお願いし、出産に立ち会うことが出来ました。その後、僕は3人の子宝に恵まれるのですが、毎回、Kさんが代行をしてくれました。ビバ!Kアナ!

で、その後、話を聞いたのです。

Kさん、実は昔、生放送の司会者であった時代、奥さんの出産のために、番組を思い切り休んでいるのだそうです。

相当なバッシングがあったんだそうです。フジテレビの内外から。

生放送の番組に司会者として出ているにもかかわらず、妻の出産のためにお休みだと?
なんと言う責任感の無さだ!
テレビに出るってことを分かってないんじゃないのか!

かなり大きな問題になるほど、当時の時代はKさんの取った行動は批判の対象となりました。そして、Kさんは自分の取った行動を…

批判を受けて当然の行動だ、と認めていました。

批判は当然。批判は正しい。でも、僕には妻の傍にいる義務がある!と、貫いたのだそうです。その後、誰も批判できないように、誰よりも早く会社に行き、懸命に誠意を見せたのだそうです。僕はこのKアナの行動を…

本当にカッコいいと思っています。

いや、話に聞くだけじゃあっさりしたもんでしょ?でもね、あの時代、本当にあの行動が出来ますかって話。きついですよ。多分。本当にやっちゃうと。

うちの父もそうです。僕の父、先日70歳になったのですよね?あの時代に、「まず子供です!家族です!」って会社に対し言いきるのって、けっこう勇気のいった行動なはずです。なかなか出来ません。特に日本は「右へならえ!」の文化だし。よほど、人間としての芯が強くなければ、あの行動はとれない。

僕はその後、ニューヨークで2年半ほど、生活をするのですが、この話をアメリカ人にすると、「日本独自の文化だとは思うけれど、家族を大切にすると言って批判されるのは欧米ではありえない事ですね」と笑われます。今、時代がようやく世界に追い付いてきたのか、今回の埼玉県の話でも、埼玉県教育局には多数の意見が寄せられているのですが、批判は37%。それに対し、休んだ教師に対する応援、賛同のメッセージは52%に上るのだそうです。

もちろん、今回のケースでも批判は当然のことだと思います。おっしゃることもごもっとも。でも、僕はそれでも信じます。この先生、多分、いい人だ。強い人だ。そして、家族を大事にする人だ。きっと、子供と同じように生徒のことも大切にする人でしょう。

なので、この話、僕は「この先生、好きだな~」が感想です。

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