強制起訴の柔道教室元指導者に有罪判決4月30日 15時03分
6年前、長野県松本市で行われた柔道教室で、小学生の男の子に投げ技をかけ、重い障害が残るけがを負わせたとして、業務上過失傷害の罪で強制的に起訴された元指導者に、長野地方裁判所は禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
検察審査会の議決によって強制的に起訴された事件は8件ありますが、検察が「嫌疑不十分」を理由に不起訴にした事件で有罪が言い渡されるのは初めてです。
平成20年5月、松本市で行われた柔道教室で、当時、小学6年生だった澤田武蔵さん(17)に投げ技をかけて重い障害が残るけがを負わせたとして、元指導者の小島武鎮被告(41)が、検察の捜査で不起訴になったあと、検察審査会の議決によって、業務上過失傷害の罪で強制的に起訴されました。
裁判で、検察官役の指定弁護士は「力加減をすれば事故は防げた」などとして、禁錮1年6か月を求刑したのに対し、小島元指導者は「頭を打たないように投げており事故は予見できなかった」などとして、無罪を主張していました。
判決で、長野地方裁判所の伊東顕裁判長は「相手の技量や体格を考慮しながら力加減をして技をかけるべき注意義務を怠り、受け身の習得も十分でない発育途上の小学生を畳に投げつけた過失によって、重い傷害を負わせた」と指摘しました。
そのうえで「技量や体格が未熟な者が強い力で畳に打ちつけられれば頭を打たなくても体に何らかの障害が起きることは十分に予見できる」などとして禁錮1年、執行猶予3年を言い渡しました。
これまでに検察審査会の議決で強制的に起訴された事件は8件ありますが、有罪判決は2件目で、検察が「嫌疑不十分」を理由に不起訴にした事件で有罪が言い渡されたのは初めてです。
「裁判所の認定は画期的」
検察官役の指定弁護士の徳竹初男弁護士と青木寛文弁護士が長野市で会見を開きました。
この中で、徳竹弁護士は、「検察が嫌疑不十分として起訴しなかった事件を裁判所が明確に有罪と認定したのは画期的だ。強制起訴制度の趣旨が初めて実現した意義は大きい」と述べました。
そのうえで、「柔道指導者の注意義務について厳しい判断をして刑事責任を認めたことは社会的にも意義がある。柔道事故は先例があまりなく、被告が否認しているうえに時効が迫っている状況で立証の準備をすることは相当な苦労があったが、その努力が報われて目的を達成できたことは満足している」と述べました。
「指導法を見直すきっかけに」
澤田武蔵さんの両親が長野市で会見を開き、父親の博紀さんは、「有罪判決が出ても息子が元に戻ることはないので、悲しいということばしか出てこないが、スポーツの指導者にはきょうの判決を指導方法を見直すきっかけにしてほしい」と話しました。
また、母親の佳子さんは、「長い時間がかかったが、判決を聞いて、これまでやってきた意味があったと感じた。今後は柔道教室で息子のような被害が出ないよう指導方法の見直しを訴える活動を続けていきたい」と話していました。
「重く受け止めている」
小島元指導者は、「事故の結果と裁判を重く受け止めています。澤田武蔵君が少しでも回復することを祈っています。控訴するかどうかは弁護人と相談して検討します」と弁護士を通じてコメントを出しました。
「当時の判断は適正と認識」
長野地方検察庁の山本幸博次席検事は「判決についてコメントする立場にないが、不起訴にした当時の判断は適正だったと認識している」と話しています。
これまでの強制起訴の事件
検察審査会の議決で強制的に起訴された事件は、今回の裁判を含めて8件ありますが、これまでの裁判では、無罪や実質的な無罪判決が相次いでいました。
今回の判決は有罪が言い渡されたケースとしては2件目で、検察が「嫌疑不十分」を理由に不起訴にした事件で有罪が言い渡されたのは初めてです。
強制起訴の制度は、5年前の平成21年5月に始まり、検察が不起訴にした事件で、一般の人で構成する検察審査会が2度「起訴すべき」と議決すると強制的に起訴されることになりました。
これまでに8つの事件で強制起訴が行われ、このうちの7件で1審や2審の判決が出ていますが、有罪が言い渡されたのは30日の判決を含めて2件で、ほかの5件では、無罪や実質的な無罪判決が言い渡されています。
JR福知山線の脱線事故を巡ってJR西日本の歴代の3社長が業務上過失致死傷の罪に問われた事件では、1審の裁判で、いずれも無罪が言い渡されました。
また、未公開株の取り引きを巡って詐欺の罪に問われた沖縄県南城市の会社社長には、1審と2審で無罪が言い渡され、最高裁で確定しています。
さらに、生活の党の小沢一郎代表が、政治資金規正法違反の罪に問われた事件でも、1審と2審で無罪が言い渡され、その後、確定しています。
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