中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 静岡 > 4月16日の記事一覧 > 記事

ここから本文

【静岡】

猫94匹残し転居 浜松の県営団地で

県営団地の部屋から引き取られた猫たち=湖西市利木の「アニマル・フォスター・ペアレンツ」の保護舎で

写真

 浜松市東区の県営住宅団地で、二階の住人が三月中旬、九十四匹もの猫を部屋に残したまま引っ越した。劣悪な飼育状況に置かれていたとみられる猫たちは同市保健所が預かった直後に二匹が死に、残る九十二匹は県内外の動物愛護四団体に引き取られた。飼い主の住人は、多数の動物を抱え込む「アニマルホーダー」とも考えられ、専門家は心のケアなどが必要と指摘する。

 この団地はペット飼育禁止で、近隣から悪臭などの苦情が出ていた。対応した県公営住宅課は「何度も指導したが聞き入れてもらえなかった。ぎりぎりまで話し合った結果、住人が自主的に出て行くことになり、引っ越す日は知らせてきたが、今は連絡が取れない状態」と説明する。

 県は詳細を明らかにしていないが、愛護団体などの関係者の話では、住人は中高年の夫婦という。約三十匹を受け入れた県西部の動物愛護団体「アニマル・フォスター・ペアレンツ」によると、猫は部屋で繁殖したとみられ、大部分は黒毛。ほとんどの猫は餌や水を満足に与えられなかったと想像され、衰弱しおびえていた。

 このため、県が同市保健所に引き取りを要請したところ、この情報が短文投稿サイトのツイッターで広がり、各愛護団体から保健所に猫の引き取りの申し出があった。団地の部屋に直接、猫を受け取りに行ったアニマル・フォスター・ペアレンツ代表の杉浦茂子さん(66)=浜松市北区細江町=は「部屋はふん尿にまみれ、床には何も敷かれていなかった。猫たちが哀れだった」と憤る。

 「なぜそんなになるまでほうっておくのか。なぜそんな不衛生な部屋に住めるのかと、普通は異様に映るが、どうしても手放せない人たちがいる」。猫を一時預かった市動物愛護教育センター所長で獣医の山本直規さん(51)は近年、アニマルホーダーと呼ばれるようになった飼い主のケースではないかと分析。行政がカウンセリングをするなど、何らかの対策を取るべきだと強調する。

 愛護団体に引き取られた猫たちは、餌のほかに病気の治療やワクチン接種などに費用が掛かり、支援を訴えている。問い合わせはアニマル・フォスター・ペアレンツ=電070(5330)9385、070(6412)0249=へ。

(飯田時生)

 <アニマルホーダー> 犬や猫などを何匹も飼い始め、不妊手術などをせずに増やし続ける過剰多数飼育者。山本直規・浜松市動物愛護教育センター所長によると、米国などでは早くから社会問題化し、ペット飼育を禁止・制限するなどの裁判例もある。動物に依存する病理の一つとも考えられ、日本でも心のケアなど関係各方面からの対応が求められている。

 

この記事を印刷する

PR情報



おすすめサイト

ads by adingo




中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ