ウクライナ:露軍、国境から「撤収」 追加制裁で軟化か
毎日新聞 2014年04月29日 22時00分(最終更新 04月29日 23時46分)
【モスクワ田中洋之】ロシアのショイグ国防相は28日、ヘーゲル米国防長官と電話で協議し、ウクライナとの国境地帯でロシア軍が24日から実施していた軍事演習を中止し、撤収させたことを明らかにした。米国と欧州連合(EU)が28日に対露追加制裁を発表したのを受け、ロシア側が態度を一部軟化させた可能性がある。
約4万人とされる国境付近のロシア軍のうち、「演習中止」で撤収する部隊の規模は不明だ。北大西洋条約機構(NATO)当局者は「ロシア軍撤収を示唆する情報はない」と述べた。また、ウクライナ東部の親露派武装集団が武装解除するかも不透明で、ロシア軍撤収が緊張緩和につながるかは予断を許さない情勢だ。
米政府は追加制裁で、国営石油大手ロスネフチのセチン社長らプーチン大統領側近や企業を対象にした。EUが29日に公表した追加制裁には、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長や、軍参謀本部情報総局(GRU)のセルグン長官が入った。
リャプコフ露外務次官は29日、ニュースサイト「ガゼータ・ルー」に、「制裁が我々にもたらす影響の深刻さは明らかだ」と語った。また、ウクライナ暫定政権が5月25日に予定する大統領選について正当性を認める可能性を示唆した。ロシアは、大統領選を落としどころに事態収拾を検討している模様だ。
緊張緩和のため、米露、EU、ウクライナ暫定政権の4者は17日、「ジュネーブ合意」を結んだが、ウクライナ東部では親露派住民が庁舎の占拠を続け、暫定政権が実力排除のための「対テロ作戦」を展開。これに対抗してロシア軍が国境付近で演習を続け、緊張が高まっていた。
ショイグ国防相は「演習中止」の理由について、「暫定政権が武器のない住民に対して軍を使用しないと表明したため」と説明し、「ウクライナに軍事侵攻する意図はない」と改めて表明した。また、情勢沈静化に向け、ジュネーブ合意を軸に関係国と妥協を探るべきだと述べた。