2014-04-30

1分じゃ到底分からない2ch分裂騒動とその他

マリ

4/1にひろゆき2ch.netが「違法な乗っ取り」だと声明

ここはもう飽きるくらい情報が出ていて、特に目新しいこともないので省略。

なぜ2ch.netデータドメインレースクィーンが奪えたのか

03年2chログデータ東京プラス国内にあるひろゆき会社)を通じて販売されていた。
09年東京プラスは、シンガポールパケットモンスター社に2chの諸権利譲渡したと発表した。
122ch関係者への家宅捜索が相次いだためか、2ch.netドメイン登録者パケットモンスターからレースクィーン社に変更した。
レースクィーン社の運営者は、レンタルサーバーサービスを行っているNTテクノロジー社長であるジムであった。
13年国税局パケットモンスター社の収益とされていた金額をひろゆきの個人所得認定、約1億円の申告漏れを指摘された。

まとめると、

この3点が乗っ取りを成立させたと思われる。

※これはひろゆき側の言い分であり、ジム側の言い分では2chを存続させるための収益を出せないため前責任者(=ひろゆき)を解雇したという表現になっている。NTテクノロジー社の経営は芳しくないという点では、ひろゆきジム見解を同一としている。

以上を踏まえると、4/1のひろゆき声明意味理解できる。

ただしドメイン所有権レジストラWHOISデータベース登録者、というのが基本的原則(逆に言えばレジストラに対して正確な所有権者で申請しなければならない)であり、過去にはJPドメインにおいて「紛争が発生した際に、法的にドメイン所有権者を明らかにできない」という理由で、ドメイン名代行(匿名化)サービスが停止されたこともあった。

そのため、「ドメインの乗っ取り」というひろゆきの言い分はややおかし

もっともそれは絶対的ルールではなく、商標権等の理由でドメイン紛争自体は頻繁に起きるため、ドメイン名紛争処理が存在している。

詳細は斜め読みしかしていないが、中立なパネリスト裁定を下させるというもので2ヶ月強程度で解決するとされている。

ひろゆき4/1声明の不可解な点

1.広告代理店刑事および民事訴訟をチラつかせたこと。

13年の国税局の調査の時点では、2ch.net広告代理店収入パケットモンスターを通じてひろゆきが得ていたとされている。これは「ドメインによって利益を得ているのが誰か」という点を明確にする点で、ドメイン紛争処理をひろゆき側に有利にする材料ひとつのはずである

しかし4/1文書では広告代理店が、「現在2ch」と取引を続けるならば法的な対応も辞さないという脅迫スレスレ声明を出している。

14年4月の時点ではその資金の流れが変わり、NTテクノロジーもしくはその国内代理店であるゼロ広告収益を得ていたということだろうか?あるいはもともといずれかの企業からパケットモンスターへ送金が行われていたということなのか?

2.2ch.netボランティアに対してまで刑事および民事訴訟をチラつかせたこと。

2chボランティアシステムは異様に複雑で全貌を掴みきれていないので、以下の内容の的を外しているかもしれない。

仮にレースクィーン社による乗っ取りだったとしても、2chの複雑な運営体制について無償ボランティア事情を知りえるとは思えず、運営に携わり続けたという理由で、ジム共犯として民事・刑事罰が下されるという可能性は極めて低いのではなかろうか。なによりあれを読んだ第三者の心象は(ひろゆきが民事の賠償金を踏み倒し続けていたこともあり)最悪であり、逆効果だったとしか思えない。

しかし実際には一定ボランティアsc移住した。この謎は内部告発とされる発言から一定の推論が出ている。2chボランティアは実はボランティアではなかった。

いずれも明確な証拠は出てきておらず、推論の域を出ないが、ひろゆきが「ボランティア」と指した対象がこれらの利害関係のある人物を指すのであれば、納得できる。

ホットリンク社と2chビッグデータ

ホットリンク社は現在2chビッグデータをどこからか仕入れ、サービスを行っている企業である

主にインサイダー疑惑として盛り上がり、そちらについては既に枯れていると思うので、ここでは別の視点で見る。
03年東京プラス株式会社ガーラ2chログデータの商用利用独占契約を締結した
13年ホットリンク株式会社ガーラの子会社ガーラバズを吸収合併した。このとき未来検索ブラジル」との間で2chログデータの商用利用独占契約を締結した
13年末ホットリンクマザーズ上場
14年2ch分裂騒動が起きる

ここにも、不可解な点がいくつかある。

1.2chログデータの商用利用独占契約主体と時期

プレスリリース有価証券報告書との間にある、ガーラバズ社吸収合併の6ヶ月のズレは何を意味しているのか?

2chログデータ仕入先が東京プラスから変更されているのは、パケットモンスター社へ譲渡したと見せかけていたことから分かるのだが、未来検索ブラジル社を代理店とした意図は?

もうこの時期にはパケットモンスターが実質ひろゆき会社であると判明していたため、未来検索ブラジルを通さなければならなかった意味は見えてこない。

2.2chデータ収集トラブル発生と回復の流れ

日付はいずれも2014年のもの
02/19ジム2chの「サーバーを確保した」こと、2chの諸権利レースクィーン帰属すると声明を出す。
03/06ジムブラジルクロール遮断ホットリンクへの2chビッグデータ提供が停止する。
03/10ホットリンク2chデータ取得に障害が発生していることを公示
03/20ホットリンク2chデータ取得障害が解消されたことを公示
04/01ひろゆき2ch.sc運営を予告。

2chデータ取得障害が解消されたのが3/20であるという点が第一の疑問。この時期まだ2ch.scは公開されていないため、ホットリンクはどこから2ちゃんねるサイト」の書き込みデータを取得していたのだろうか?

自然に考えればブラジルからであり、ブラジル2ch.netの書き込みデータを取得するクローラを3/20までに開発し、取得したデータを納品していたことになる。

だが、マザーズ上場企業が取る行動として、権利が不明瞭な(違法転載された)クロールデータを購入し、サービスを展開することがとても真っ当だとは思えないのだが…。

また、ひろゆきは「Jimがホットリンクに連日のように営業を掛け、2chデータを購入するよう求めたが、権利である証明を出せないことで引き下がった」としているが、果たして真実なのか。堂々とトップページ権利であることを掲げている企業が、違法無断転載データを購入している企業に対してあっさり引き下がったという点が不可解である

加えて言えば、3/20の時点でブラジルによるクロールデータ転売は再開されていたので、2ch.scを公開する意味はなかった。これは本当にひろゆき意図なのだろうか。「2ちゃんねるサイトからデータを取得していると株主に説明したいホットリンク側の要請で生まれたものという考え方もできる。

2ch権利は誰のもの

ドメインデータについて、切り分けて考える必要ある。

ドメイン

現在のところレジストラが所有者と認めているのはレースクィーン社のため、法的にも所有権があるとみなされる。

ひろゆきドメイン名紛争処理などの手段を用いて取り返すと考えられる。

データ

利用者サービス利用時に次の規約同意する必要がある。
~02/192chへの書き込みの権利は全て「2ちゃんねる」へ帰属する。
02/202chへの書き込みの権利は全て「レースクィーン社」へ帰属する。

著作者人格権放棄および移譲の項目もあるが、実際にこの項が行使されたことはないと思われる(法的にも有効とは思えない)。実際に、「電車男」や「ブラック企業~」など書籍化など大ヒットした書き込みについて、書き込み者を特定して印税の配分を行っている。

ここでの不可解な点は、まず現体制以前の「2ちゃんねる」とは何を指すのか。流出したひろゆきメールボックスによれば、印税の分配は書き込み者とひろゆきで行うとする出版社からメールがあったことから実質的には「2ちゃんねる」=ひろゆきと考えるのが妥当と思われる。現在レースクィーン社が2ちゃんねる権利者を名乗り、データを「保全」している状態だが、過去の書き込みも遡及して、レースクィーンのものになるのだろうか?

また、現在の書き込みはユーザー意思の元、「レースクィーン社」へ譲渡されている。ならば、

という点が疑問である

仮に2ch.net権利ひろゆきのもとへ返還されたとして、2/20からその日までの間、ユーザーレースクィーン社と契約を結び、書き込み内容の権利譲渡していたことに変わりはないはずなのだが、レースクィーン社の行為が何らかの「不法行為」と認定されれば、現状未来検索ブラジル社が行っているクローリング行為(明確な著作権侵害不法行為)は正当化されるのだろうか?

結論

嫌儲的な思想は好まないのだが、カネにまみれていなかったころのネットはもはや帰ってこないし、あの頃に還ることはできないことに一抹の切なさを感じる。

トラックバック - http://anond.hatelabo.jp/20140430002508