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国民に元本保証のないリスクのある金融商品を買わせるには、年金不安や将来不安を煽りまくり、「預金だけしかしてないなんてあり得ない、投資をしなければダメだ」と焦らせることが手っ取り早い。
こうしてろくに金融・投資知識のない国民が金融機関に勧められるまま、その場限りの流行り商品、金融機関にとって手数料が高く取れる商品に投資してしまい、だいたい大損して終わるということが繰り返されている。だからこそ金融機関は手を変え品を変え、新たな商品を販売する。
こうした金融機関の甘言に警告を投げかける記事が日経電子版であった。「株高の常套句「持たざるリスク」は大きなお世話」と題する記事だ。
記事の内容はというと、株価が上がり始めると金融機関が、「いま買っておかないと、『持たざるリスク』を負うことになりますよ」と何か金融商品を買わせようとするが、乗り遅れまいと焦って買うと、高値づかみする可能性が高く、ましてや個人投資家は『持たざるリスク』などないから気にする必要はないというもの。実に的確なアドバイスが書かれていた。
それにしても金融機関のスポンサーが多い日経新聞が、よくこんな記事を載せたなと感心するのと同時に、よくこんなストレートな記事を書ける人がいるなと感心していたところ、筆者は、なんと元野村證券出身の方で、退職後、独立し、投資リテラシーの向上に務めている大江英樹さんという方だった。
大江さんがなぜか私のブログを読んで気に入ってくれていて、フェイスブックで知り合ったのを契機に、大江さんに取材し、「金融機関の甘言に騙されない方法」を聞いてみることにした。
1:金融機関の甘言を見破る2つの方法大江さんは投資における絶対の真理が2つあるという。1つは先のことは誰にもわからない。もう1つは、世の中にうまい話はない。という2点だ。
「金融機関のセールストークで上記2つのどちらかに引っかかるような話なら、その商品は買わない方がいい」とアドバイスする。例えば「この先、この商品は上がる」「必ず儲かる」といった、セールストークがあったら危険信号だ。
そんなことは当たり前だと思うのだが、でも意外と騙されてしまう人も多いという。
「いつもは冷静に考えられる人でも、『今回の商品だけは今までと違って儲かるかも』『私だけに特別な話を持ってきてくれたのかも』と思ってしまうのです。でも普通に考えれば、儲け話をあなただけにわざわざお知らせすることはない。本当に儲けられるのならその担当者ががっぽり投資していなければおかしな話。『儲かるならあなたは投資しているのですか?』と聞いてみたらいい」と指摘する。
大江さんいわく「金融知識がなくても上記のような常識的感覚があれば、金融機関に騙されることはなくなるでしょう」と話す。
そういえば秒速1億円稼ぐと豪語していた与沢翼氏が、香港に行って月利5~10%の海外FXに投資し、秒速で元本の90%を失ったと、信じがたい騙されっぷりに驚いたのだが、そんなに儲かる話など常識的に考えてあるわけないし、本当にそんなに儲かるのであれば、わざわざ日本のブタに教える必要はない。常識的感覚を持っていればこうしたトンデモ投資話に騙されることはなくなるだろう。
2:不安不安っていくら必要なのか計算したことある?今の日本人が簡単に金融機関に騙されて、焦って投資をして失敗してしまうのは、年金不安、将来不安があるからだ。退職間近の世代だけでなく、かなり若い世代でも、「年金はもらえないから投資をしなくては」と思ってしまう。
こうした国民の不安心理につけこみ、老後に夫婦でゆとりある生活をするには1カ月36万円必要で、老後は1億1856万円確保しなければならないという、明らかに過大な統計データを使って国民を脅しまくり、ハイリスクな商品に投資をさせようとしているのが現状だ。
「私は退職しましたが、夫婦二人の生活は月20万円もあれば十分。時々旅行もしたり、外食もしたりしますが、住宅ローンが終わっているので、そのぐらいの支出です。1カ月36万円という数字はかなり贅沢な生活の試算ではないか」と疑問を呈する。
持ち家で住宅ローンがない場合は月36万円は明らかに過大な数字だ。賃貸で家賃がかかるなら多少お金はかかるだろうが、それでも月36万円という数字は多すぎではないか。
「老後が不安というけれど、じゃあいくらあったら不安じゃないのか、ちゃんと試算をしてみればいいんです。月いくらぐらいあれば生活できるのか。もらえないといってもさすがに年金が0円ということは考えにくい。退職金だって0円ということはさすがにない。もらえそうなお金をきちんと計算した上で、老後の生活費に必要な額を算出し、老後に備えるために、このぐらいの金額があればいいと、どのくらい不安なのかを明らかにすれば、やみくもに投資をしなくても、どのぐらいの資金で運用すればいいのかがわかるはず」
不安を漠然としたままにするから、天井知らずの法外な老後生活費試算をうのみにし、必要のない投資までして、高い運用利回りを目指して、結果的には大損してしまう。きちんと自分で計算すれば不安は軽減されるだろう。
3:投資経験のない50~60代はカモ大江さんは投資自体を否定しているわけではない。うまく活用すれば投資は有用な手段になる。しかし気を付けなければならないのは、投資経験のない50~60代が金融機関の甘言にのせられ、退職金やまとまった資金をいきなり投資に突っ込んでしまうことだと指摘する。
「投資をするならある程度、少額で慣れてからやった方がよいです。投資経験もないのに、いきなり多額の資金を投資したら、失敗する可能性は高くなってしまいます。若いうちから少額で投資に慣れておけば、いきなりリタイア世代で投資デビューし、金融機関の言うままになってしまうことはなくなるのではないでしょうか。若いうちに投資経験がないのなら、年をとってからでも、まずは少ない金額で投資してみて、練習することが大事です」とアドバイスする。
4:投資をしなくても幸せな人はいっぱいいる投資は有用な手段ではあるが、国や金融機関が煽るように、「貯蓄から投資へ」という大号令を鵜呑みにして、すべての人が投資をする必要はないと大江さんは指摘する。
「投資をしなくても死にはしません。投資しなくても幸せに暮らしている人はいっぱいいます。投資をしなければならないといった義務感や焦りは禁物」と警告する。
また若い人には若いうちから投資に慣れておくに越したことはない、とはいうものの「若ければ投資なんかよりおもしろいことはいっぱいあります。投資なんかよりおもしろいことにお金を使った方がいい場合もあるので、投資をしていないと乗り遅れたなんて気にしなくてもいい」と指摘する。
5:投資家が賢くならなければ、業界は変わらない投資はうまく活用すれば有用な手段になる。しかし残念なことに日本の投資業界の実態は健全ではない。上記のように、金融機関が不安を煽って投資を勧め、新商品や手数料の高い商品ばかり買わせて、自分たちが儲かって、投資家が儲からないという状況が続いている。
とはいえ「金融機関が悪いと批判したところで、投資家が賢くならなければ、金融機関は営利を目的とした民間企業であるがゆえに、賢くない投資家が求める商品を売らざるを得ない」と話す。
「例えば、投資信託の毎月分配型は投資効率が悪く、場合によっては元本から分配金を取り崩しているので、まるで悪の商品のように言う人がいます。でも実際に、毎月分配金を欲しがる投資家がいるからこそ、金融機関は投資効率が悪くても投資家のニーズに合わせて売れる商品を提供する。投資家が賢くなれば、金融機関は変な商品は売らなくなるでしょう。金融機関が悪いと批判することより、投資家教育に力を入れて、投資家が賢くなれば、自然と業界は健全になります」
そこで大江さんは、野村證券を退職した後、独立起業。50~60代で投資デビューし、運用を失敗しかねないリタイア世代などを対象に、投資リテラシー向上のためのセミナーや執筆活動などを行っている。
そういえば、私がサラ金に入社した時に、先輩からこう教えられた。「無知は罪。知らなかったでは済まされない。知識のある人が儲かり、知識のない人が損をするのは社会では当然のこと。騙されたのではなく、知らなかったことが悪い」
金融機関が悪いとか、金融機関に「騙された」なんていう前に、ちゃんと自分で知識を学び、体験で学習してから投資をすべきだ。知識や経験がないなら、言われるがままに投資をしてはいけないと思う。
国民に投資リテラシーがないと、金融機関は自分たちが儲けるために、いくらでもあの手この手を使ってくるだろう。国民が賢くならない限り、この国はよくならない。
・大江さんの日経電子版連載http://www.nikkei.com/money/features/68.aspx
・大江さんの会社ホームページhttp://www.officelibertas.co.jp/
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