中国は、沖縄県尖閣諸島を武力で奪取する軍事作戦計画を策定したようだ。
ヘーゲル米国防長官が今月上旬に訪中して、常万全中国国防相と会談した後の記者会見で、常国防相は質問に答えて、尖閣問題について次のように述べた。
「党と人民の要請を受けて、中国軍は直ちに集結し、(現地に)到着するや直ちに戦い、いかなる戦闘にも勝利する」
中国共産党の命令があれば、明確に「戦い、勝つ」と宣言した発言だった。数年前、日本では尖閣諸島が中国の「核心的利益」かどうかが注目された。核心的利益であれば、中国は武力を行使するとみられる――という論理だった。しかし、今度は中国国防相が米国防長官の目の前で、武力行使を明言した。中国側は明らかに態度を先鋭化させている。尖閣諸島問題は新たな段階に入った、とも言える。
今度の発言について、中国専門家に尋ねたが、尖閣諸島での武力行使の意図をこれほど明確に表明したことはないといわれる。日本のメディアの中には、「武力行使を示唆した」との報道もあったが、ペンタゴンが発表した記者会見の一問一答(英文)によると、「示唆」ではなく「明言」だった。
これに対して、ヘーゲル長官は常国防相の発言をたしなめることなく、ただ日米安保条約に従い「条約上の責務を果たす」とだけ述べた。
このあと、常国防相は言い過ぎたと思ったのか、「中国側から騒ぎを扇動することはない……中国に対して挑発的なのは日本であり、中国は最大限自制している」と付け加えた。そして「中国が日本に対して武力行使すると結論付けるのは間違いだ」と弁明した。
実は、中国は尖閣有事に備えた作戦訓練を実施している、と明言した米軍情報将校がいる。ハワイの米太平洋艦隊情報作戦副部長、ジェームズ・ファネル海軍大佐だ。
ファネル大佐は今年2月13日サンディエゴで開かれた「ウエスト2014」と題する会議で講演、東シナ海での日本との「短期の素早い」戦争を遂行できるよう訓練をしている、と明らかにした。
それによると、中国人民解放軍の陸海空各軍の大量の部隊が参加した2013年の演習で尖閣諸島奪取の訓練を行った。それを分析した結果「東シナ海で日本の部隊を駆逐し、尖閣諸島、さらに琉球諸島南部の占領とみられる結果をもたらす、短期の素早い戦争の遂行を可能とする新たな任務を人民解放軍は与えられた、との結論を出した」というのだ。
この発言に対して米国防総省スポークスマンは「個人の見解」として論評を拒否、事実の正否にも言及しなかった。
常国防相とファネル大佐の発言を合わせて考えれば、中国が尖閣諸島を奪取する作戦計画を立案したのは確実、といえる。日本政府は、そもそも尖閣諸島の領有権問題はない、との立場で、米政府は「話し合い解決」を求めている。いずれにせよ戦争計画を推進する中国に対して、何らかの形で発言をしておく必要があるのではないか。突然有事が起きてからでは遅いかもしれない。
執筆者:春名幹男
1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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