中国政府は28日、旧満州国の首都が置かれた東北部の吉林省長春に中国駐在の外国メディアを招き、第2次大戦の戦跡を案内する取材ツアーを実施した。今年1月の遼寧省、2月の南京市に続く3度目で、戦時中の旧日本軍の行為を国際世論に訴える狙いがあるとみられる。

 日本と韓国、パキスタンのメディア記者20人余りが2日間に渡って参加。初日は満州国時代の資料が残る吉林省檔案(とうあん)館と東北淪陥史陳列館を見学した。

 檔案館では、中国人研究者たちが、館内の保存資料を示しつつ「日本政府による従軍慰安婦の強制性」などを訴えた。穆占一・副館長は「日本政府が歴史を否定しており、この時期に研究を加速させて歴史の真相を明らかにする必要があった」と説明。研究の客観性を担保できる可能性がある日中合同研究については「今後も実施する予定はない」と述べた。

 ツアーは29日、黒竜江省ハルビンに場所を移し、1月に開館した朝鮮独立運動家・安重根の記念館などを回る。(長春=石田耕一郎)