「日興・新経済成長国エクイティ・ファンド(愛称:EG5)」 三井住友アセットマネジメント
メキシコ、インドネシア、トルコ、タイ、フィリピン 4つのキーワードで絞り込み
本格的なファンド・オブ・ファンズ
外部委託運用グループ シニアファンドマネージャー 海野利勝氏に聞く
海野利勝氏
三井住友アセットマネジメントは3月26日、「日興・新経済成長国エクイティ・ファンド(愛称:EG5)」を設定した。同ファンドは新興国株式ファンドで、同社が選定した新経済成長国を投資対象国とするが、投資するのは当該国の個別株ではなく、当該国の株式を組み込んだ代表的なファンド。複数のファンドに投資するファンド・オブ・ファンズで、この形態自体は珍しくはないが、それぞれの国に分散して、ぞれぞれのファンドマネージャーに分散するという意味では新しく、本格的なファンド・オブ・ファンズといえる。同ファンドの特徴や仕組み、魅力などについて、同社外部委託運用グループシニアファンドマネージャーの海野利勝氏に聞いた。
■設定の背景
これまで新興国や新興国株式といえば、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が注目を浴びてきたが、このところBRICsに対する過度な期待が薄まっている。一方でBRICsの次に経済成長を期待できる新興国を模索する動きが強まっている。当ファンドはこのニーズをとらえて立ち上げたファンドだ。以前のBRICsのような経済成長や株価上昇が期待できる国々を取っていく。そのキーワードとして注目しているのは、経済成長率、人口ボーナス(注:15-64歳の生産年齢人口が、それ以外の従属人口の2倍以上ある状態を指す)、地理的優位性、民主化度の4つで、この4つを兼ね備えた国に投資を行う。新興国の中でも安定、成長が取れる優れた国を選ぶのが基本コンセプトだ。
■選定のプロセス
新興国というカテゴリーの中で、BRICsと台湾を除いたMSCIエマージング構成国16カ国とMSCIフロンティア構成国25カ国、合計41カ国を対象とし、この中から4つのキーワードを活用して絞り込んだ結果、メキシコ、インドネシア、トルコ、タイ、フィリピンの5カ国を新経済成長国候補として選び出した。国別基本配分比率案ではメキシコが32.6%、インドネシアが25.0%、トルコが21.9%、タイが10.5%、フィリピンが10.0%。基本配分はGDP(国内総生産)の大きさをベースに決める。ただし、1カ国に偏り過ぎたり、小さ過ぎたりすると分散投資にマイナスに働くため、下限10%、上限40%を設定し、基本ウエートのところでフロアーをつけた上で比率を決める。メキシコはアメリカのマーケットに近い、トルコはアジアとヨーロッパの中間点でEU(欧州連合)に近い、インドネシア、タイ、フィリピンはASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)の域内にあり、日本、中国のマーケットに近いという、それぞれ地理的なメリットがある。なお、運用開始後はポートフォリオの国別配分を定期的に調整していく。投資対象国を選定し、国の配分比率を決めた上で、それぞれの国・地域で運用に優れている運用会社のファンドを選んで投資する。こうしたプロセスでは、日興グローバルラップからの助言をもとに同社が決定する。
ファンドの選定に当たっては定量的な部分と定性的な部分から選ぶ。まずパフォーマンスが良いこと。そのパフォーマンスがしっかりした運用者と運用体制・運用プロセスに裏打ちされているかを判断するために、定性的なデューディリジェンス(注:投資対象の実体やリスクを適正に把握するために事前に行う多面的な調査)、運用会社とのインタビューを行って、大丈夫かの判断を行う。運用会社とはビデオによるカンファレンス開催や、運用拠点がシンガポール、香港などにあるため、同社と日興グローバルラップの担当者が実際に運用担当者を訪問し、話をしている。投資するファンドについては各国原則1ファンドを選定している。ファンドは既存ファンドが中心だが、新設ファンドも含まれる。
■投資ファンド
メキシコは、HSBCバンク・ブラジル・エス・エイ-バンコ・マルチプロが運用する「メキシコ・エクイティ」。こちらは新設ファンドとなるが、HSBCはラテンアメリカ株式運用の実績やノウハウには定評がある。インドネシアは、JPモルガン・アセット・マネジメント(シンガポール)リミテッドが運用する「インドネシア・エクイティ・ファンド」。JPモルガンはアジア株運用に強みを持ち、拠点数や運用体制が優れており、当ファンドはアセアン・運用チームが担当している。トルコは、BNPパリバインベストメント・パートナーズが運用する「BNPパリバ・トルコ株式(適格機関投資家専用)」。BNPパリバが現地の金融機関と合弁で設立した運用子会社のTEBアセットマネジメント(本社はイスタンブール)が実質的な運用を担当し、金融株が多いトルコ株式の運用では、金融機関系とあって一日の長がある。タイは、RCMアジア・パシフィック・リミテッドが運用する「アリアンツ・タイランド・エクイティ」。RCMは過去の運用パフォーマンスが優れ、運用チームはリサーチ力に定評があり、人材も豊富だ。実際に話をしてみて、しっかりした印象が残るチームだ。フィリピンは、イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッドが運用する「フィリピン・エクイティ・ファンド」。イーストスプリングは過去のパフォーマンスが優れていることと、運用体制が充実していることが評価されている。こちらも担当のファンドマネージャーと話をしたが、考え方がしっかりしていて、安心できる。いずれにしても、投資対象は新しい経済成長国であり、国自体が成長を取れる国とみており、その中でもアクティブ運用で光っている運用会社の良いファンドを選定したと考えている。
■なぜファンド・オブ・ファンズに
当ファンドの運用対象を、個別株ではなくファンド・オブ・ファンズにしたのは、それぞれの地域に強い運用会社に自主的に運用を任せ、現地の運用に強い運用のリターンを取りたいとの意向がある。彼らの得意とする運用を効果的に当ファンドに反映させるためには彼らのポートフォリオに直接投資するのがベストとの判断がある。運用手法にそれぞれ個性があることで、マネージャー分散という意味でも分散が効くのではないか。バリュー投資に強い運用会社だけだとグロースの流れに向いた時にうまくいかないし、またその逆もある。それぞれの運用会社がそれぞれの強みで超過収益を確保し、パフォーマンスを上げようとしているので、戦略の分散にもなる。また、分散された中でも成長国投資のいいところを取っているだけに、分散と厳選がうまくバランスが取れていると考えている。
■通貨を含め丸ごと成長を取る
為替ヘッジはしない。通貨も含めてそれぞれの国の成長を丸ごと取るにはヘッジしなくても良いと考えている。タイミング的にも超円高が進んできた時期でもあり、バスケットで円安が進めば、国内投資家から見ればメリットにもなる。
■アピールポイントは
まず、BRICsに続く長期的に成長余力のある新興国に投資することで、各国の成長を取りにいく。国が成長すれば、株式市場の成長も期待できる。また、5つの国に分散投資することで、地理的な分散ができる。アメリカ北米、欧州、アジアということで、それぞれの経済サイクルや地域的な要因の違いなどが緩和され、補完できるという分散効果が享受できる。中長期的かつ安定的に成長を取りにいくというコンセプトに当ファンドのアピールポイントがあると考えている。さらに、本格的なファンド・オブ・ファンズで、ファンドを厳選しているということで、その国の中でもさらにアルファが取れるところを目指す。優れたパフォーマンスの享受を期待できる。
掲載日時:2013/04/05 10:00
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