土曜ドラマ ロング・グッドバイ(2)「女が階段を上る時」 2014.04.28

(森田)
その朝増沢磐二は気付いた。
どうやら鼻の骨が折れている。
痛みは強くない。
しかし確かに違和感がある。
医者に行ったものか。
様子を見たものか。
そもそもなぜ骨は折れたのか。
てんまつを説明する
私立探偵増沢磐二はある夜一人の酔っぱらいを救った。
原田保
(保)お気付きですか?あなたって人はねホント全くどうかしてますよ!
(磐二)しつこいな!何をそんなにひがんでるのか知らんが自分の見てる世界が全てだと思うな!
それ以来度々事務所を訪れる保とヴィクターズで交互に酒をおごり合うのが習慣となった
すいません。
(マスター)はい。
同じ物下さい。
(マスター)ギムレットですか?はい。
そんなにお好きなら本当はオーキッド社のライムジュースで作ってさしあげたいところなんですけれど。
(志津香)傘!
保の妻は女優の原田志津香
何してるのよ!?出てってよ!この恩知らず!誰があんたみたいな傷物拾ってやったと思ってんのよ!
やがて志津香は自宅の寝室で死体になった。
同じ夜
僕をあなたの車で…。
横浜港まで送ってほしい。
血まみれの原田保に頼まれて磐二は横浜港まで送った
あなたのような人間になりたかった。
え?なりたかったんだ。

(車のドアの閉まる音)
(エンジン音)
(走り去る音)
港から戻った磐二を待ち構えていたのはなじみの刑事だった
(権田)よう増沢。
腐れ探偵さんよ。
何なんすか?一体。
(岸田)とぼけてんじゃねえぞお前。
原田保って男の事だよ。
「てめえが犯人を逃がしたろう」と警察
(遠藤)原田保は銃を持っていた。
あくまで銃で脅されたためにそうせざるをえなかった。
「銃で脅された事にせよ」と弁護士。
ところが増沢磐二は
原田保は女を殺していない。
あいつはそんな事できる男ではない。
(殴る音)
そこで鼻が打たれた。
結局原田保は逃亡先の台湾で自殺
ピタリと蓋がされたんですこの事件に。
それほどの力を持つ何者かによってね。
(譲治)いいぞたぬき親父!
(平蔵)ありがとう。
私って人間はね常に正直でありたいと思っている。
ありがとう!いやありがとう!いや〜ありがとう!
事件は迷宮入りしたかのように見えている。
したかのように

増沢磐二事務所にも平穏な日常が戻っていた
一緒にいる女の事は分かってんですよ。
伊香保で温泉芸者してたおせいって女で24〜25だかしらね。
うちのとは組合の慰安旅行でできちまったらしいってとこまでは調べてあんの。
いや結構。
全く男ってのはちょっと小金ができるとすぐこれだからさ。
空襲で焼かれた工場だって一から立て直してやったのはこの私なんだよ。
あの人なんて干し柿みたいにしぼんじまってから金策だの何だの全部私が一人で走り回ったんだ。
そういうありがたい女房がいるってのにさ。
ただ釈放後間もなく不快な電話と不可解な客があった

不快な電話の方は釈放された翌朝の事
はい増沢磐二事務所。

(遠藤)はあ…寒いね。
釈放されたそうだね。
おめでとう。
弁護士の遠藤だった
・どうも。

(遠藤)しかし君の尽力むなしく原田保には実に残念な事をした。
今後君がこの件について関わりを持つ事はないだろう。
しかし万が一そのような事になった時は必ず私に知らせてくれたまえよ。
いいね?それも例の大富豪の意向ですか?・
(遠藤)大富豪?あなたを私の所によこした人物ですよ。
おおよその見当はついてるんですがね。
しかし敵もさる者それには答えず

(遠藤)いいかね?これ以上この件について余計な首を突っ込まないよう忠告しておこう。
ほかの誰でもない君自身のためにだ。
あくまでも居丈高に言い残した

(通話の切れる音)
一方不可解な客というのは
増沢磐二か?
この男ではなく
(正岡)どけ。
しみったれた事務所やなあ。
稼ぎ月なんぼや?まあよくて月2万ですが。
ふ〜ん。
月2万やったらろくに飯も食われへんやろ。
豆でも恵んだら。
我わしの事知っとんかい?
正岡虎一。
通称正虎。
戦後間もなく闇市を牛耳っていた。
現在は賭場とキャバレーを仕切る男である
まあそらわしの面ぐらい知っとかなこの世界で生きていかれへんわな。
我のような雑魚も雑魚ゴミでカスの切れ端の所にこの正虎がやって来るなんぞ。
まあ余興はその辺にして。
ああ?その話というのは何なんですか?何が嫌いかてわしは人にどたま下げるんが死ぬほど嫌いでな。
およそ人の恩たらいうもんを買うた事がない。
ところがけったくそ悪い事にたった一人一生返されへん借りを作ってもうた男がおる。
(正岡)独立第361国境守備隊。
ソ連との国境沿い。
回想わっ…。
(保)わあ〜!保〜!
(爆発音)
(正岡)ところが死体が見つからんかった。
どこぞへ逃げたかソ連に捕まりよったか。
(正岡)シマ張るようになって2年ほどした頃か。
アニキ!ホンマかボケ!はったりやったら承知せんぞ。
はい!どけどけおら〜!どけ!
(正岡)ボロッボロのガリッガリになって脚が片っぽいてもうとった。
くそったれ。
一生懸けてあん時の借り返したら。
(正岡)せやのにやせやのによりによって一番肝心な時に我のようなカスを当てにしよった。
むかっぱら立つ話やないか。
ええか貧乏人。
金輪際この件に首突っ込むなよ。
これ以上下手な事してみい。
我もここ自分で撃つはめになんど。
おうあんた。
暇なのか?何やと?そんなに原田保が大事ならこんなとこで豆まいてる場合じゃないだろ。
あんたも知ってのとおりなこの事件には裏がある。
あんたの敵は俺じゃないだろ。
なんぼもろた!?なんぼもろて保を警察に売ったか聞いとんじゃ!わしはな我のようなゲスが保を食いもんのネタにしくさるんが心底気に入らんのじゃ。
そんなに小銭が欲しいんやったらわしの靴でもなめさせたろけ?この腐れインチキ探偵が!
(殴る音)てめえこら!待て!けっちくさいパンチやのう。
猫でももうちょっとやりよんで。
奇妙な事に謎の弁護士と正虎は同じ事を要求していた
回想これ以上この件について余計な首を突っ込まないよう忠告しておこう。
金輪際この件に首突っ込むなよ。
つまりこの事件から手を引けと
ちょいと!聞いてんの?いや〜聞いてますよ。
ねえ〜大変ですよねそれね。
そいつは傑作だ。
そりゃその弁護士と正虎はこの事件には裏があるって事をご丁寧に教えに来てくれたようなもんじゃありませんか。
ああ。
正虎の言う事が本当ならば。
「独立第361国境守備隊」?戦中原田保はそこにいたらしい。
ほう。
あいつの言う事が本当なら旧姓の城崎保で記録が残ってるはずだ。
分かりました。
当たってみましょう。
(司会)それではよろしくお願いします。
(拍手と歓声)
そのころ殺された原田志津香の父親原田平蔵は街頭テレビの除幕式に出席
(平蔵)新しい全く新しい日本の幕開けなんです。
おかあさん覚えてる?私この間も言ったでしょう。
そうまず豊かさ。
そして笑い。
(笑い声)日本の男ってのは笑ってこなかったね。
ほらあの偉人の写真。
みんなぶす〜っとしてる。
誰も笑ってない。
それで日本は戦争に負けた。
私はそう思ってます。
アハハハハハハ…。
(歓声)
(テレビ)「続いて得意の頭突き。
空手打ちを連発」。
(歓声)先生そろそろお時間です。
この男の選挙活動は順調を極めている
はいよ。
はい。
困っちゃうんだよな。
こうやっていつも温めてるからさ早く売らねえとヒヨコになっちゃうんだよ。
お釣り。
どうも。
・はい増沢磐二事務所。
増沢磐二事務所に一本の電話が入った

(羽丘)とにかくまずは一度お目にかかってお話をさせて頂きたいのですよ。
はい。
ちょっと待って下さいね。
依頼人は神保町にある出版社の社長と名乗った
ああ…。

(レイコ)じゃあ来月はどうする?
(チヅコ)来月は私のうちにいらして。
いいブランデーがあるの。
頂き物だけど。
あらいいわね。
すてき!
(ルリコ)ブランデー。
思い出しちゃったわ。
どうしたの?ルリコさんたらこの間またお酒でしくじったらしいの。
まあ。
まあ今度はどちらの殿方と?それがよりによって…。
彼のお父様ですって。
嫌だ〜。
(ルリコ)私の悪い癖よいつもの。
最初からお話ししましょうか?行きましょうか。
ええ。
その時女たちが目を稲妻のごとく光らせた

(羽丘)増沢磐二さんでしょうか?あ…。
どうも羽丘です。
遅くなってすみません。
えらく道が混んでましてね。
いや参りました。
上井戸譲治という作家をご存じでしょうか?まあ名前は。
実はその上井戸がここしばらくちょっとまずい状態になっておりましてね。
いわゆる酒浸りというやつです。
当然執筆も滞っています。
がしかしそれ以上に心配なのは彼の夫人の事なんです。
夫人?暴力です。
酔った上井戸の暴力がそれはひどいらしいんです。
先日なんぞとうとう夫人が階段から突き落とされましてね。
入院騒ぎにまでなりまして。
で私への依頼というのは?いやそれでですなとにかく我々は上井戸をこの極めてまずい状態から一刻も早く立ち直らせたい。
あなたにはその手伝いをして頂きたいんです。
医者へ連れていくべきでしょう。
探偵じゃなくて。
いやしかしそこをあえてあなたにお願いしたいというのが夫人のたっての希望なんです。
どういう事です?一つには夫人が言われるには上井戸は医者の手に負えるような男ではないと。
もう一つは例のあなたの事件…ありましたね。
実は昔志津香さんの映画に上井戸が脚本を書いた事がありましてね以来原田家とは少々おつきあいもあるのです。
あなたはお気を悪くされるかもしれませんが例のあなたの原田保に対する義理立て。
夫人はそれを聞いてあなたなら信頼できると踏んだのでしょう。
なるほどね。
何です?いや〜私も仕事柄いろいろ見てきましたけどね羽丘さん。
何ですかこの…夫が妻を階段から突き落とす。
大体そういう場合はね原因は妻にあるんですよ。
何ですって?まあ旦那が留守の間に男でも引っ張り込んだんでしょ。
(羽丘)君何を言うんだ?自分に負い目があるから私のような裏の人間に頼るしかない。
よくある話ですよね。
いい加減にしたまえ!
(亜以子)あ…。
失礼しました。
上井戸の家内でございます。
どうぞ。
お気を悪くなさったらごめんなさい。
いきなりお目にかかるのが怖かったものですから。
私からもおわびします。
ただ夫人は今大変不安定な状態にあられるもので…。
奥さん。
改めてお答えしますけどねご依頼はお引き受けできません。
アルコール中毒患者は私もたくさん見てきましたけど医者でもない限りというか医者であってもね彼らに酒をやめさせるというのはとても難しいんですよ。
身の危険を感じているんであればどこか借家でもいいんで明日にでも…。
ごめんなさい。
いやおかげで腹が決まりました。
とにかく夫人の安全が第一。
後の事はそれからだ。
はい。
しかしあなたなぜ気付いたんです?私は絶対に彼女を見ないようにしてたのに。
フッ。
それじゃ。
むしろ見ない方が不自然なのだ。
これほどの美しい女を
あんな人妻はそれ自体危機である。
磐二は無事脱した事に心から安堵した

しかし

再び危機は訪れたのである

(ノック)はいどうぞ。
熱っ!この窓は西向きになりますか?ええそうですね。
夏場はたまりませんよ。
西日が強くてね。
でもきっと夕日が美しいのでしょうね。
回想ここからは夕日が見えるんですね。
つかぬ事をお伺いしますがあなた殺された原田志津香夫妻と親しかったんですか?いえそれほどでは。
パーティーなどでご挨拶させて頂く事はありましたけれど。
そうですか。
増沢さんはお親しかったと伺っております。
ええまあ。
こちらにも来られた事があるのですか?ありますよ2人とも。
お二人で来られたのですか?いや来たのは別々に。
あなたのおっしゃった事は本当にそのとおりでした。
結局私の弱さがいけなかったのです。
愚かな女とお思いの事でしょう。
ただ私にはどうしても主人を見捨てる事ができないのです。
改めてお願いしたい事がございます。
主人の字です。
実は主人は金曜から家に戻っておりません。
恐らくこのZという医者の所です。
主人はこの医者からお酒ではなく…その…。
麻薬ですか?このZというのはイニシャルですか?そうかもしれません。
え?あなたはこの医者の事ご存じないんですか?ええ何も。
私には何も分かりませんの。
ただ一度だけ妙な若者が明け方に主人を送ってきました。
回想
(六郎)バキュ〜ン!バキュ〜ン!あばよ。
助けてほしいとは申しません。
ただ連れ戻して頂きたいのです。
愚問かもしれませんがね連れ戻したらまたあなたが危険な目にさらされるんでは?もちろん覚悟の上です。
ただそれはあなた様にご心配頂く事ではございません。
そうですね。
ただ行方不明の人間を探してほしいと言うのであれば確かにそれは私の仕事です。

(闇医者)Z?Zのつく医者?ヘッヘ…。
お得意様よ。
ざじず…。
おおゆっくり休みな。
おい瀬々じゃねえか?瀬々?あそれから財前ってのもいたな。
財前…。
まあどっちも俺ほどの堂々たる闇医者じゃねえ。
表向きは普通の町医者でこれによっちゃ融通利かせるってやつよ。
どっちが若いの?若えのか。
そりゃ瀬々の方だよ。
まだ30ちょっとでよ派手に稼ぎやがってよあんなこっちゃすぐにパクられると思うのにこのごろの若えやつは要領がいいっていうかヘマしやがらねえな。
ああいうの見てっとよこっちがそろそろ店じまいかもしんねえよ。
はっ!けったくそ悪い。
へっ!坊主悪いけどこれちょっともらうぞ。
毎度あり!遅えよな。
遅えよ。
いつまで待たせんだ。
次俺…。
増沢磐司さん。
あはい。
失礼。
どうぞ。
はい。

(瀬々)え〜増沢磐二さん。
ええ。
どうぞ。
失礼しやす。
どうしました?いや〜どうもこうも最近元気がなくっていけねえんですよ先生。
ほう。
まあねどこが痛いっていうのはないんですけどこっちも夜の商売やってるもんですからねまあ体がヘナヘナ弱っちょろいんじゃいけねえってんでうちにいる古株のねえさんがここ紹介してくれてねそれでまあ先生だったらスカッとしたやつを処方してくれるんじゃねえかなつって。
ハハハハハハ…。
そんなにスカッと効くかどうかは分からないけれども舌を出して。
ブドウ糖でも注射しておきますかね。
いやいやいやそんな子どもだましなんじゃなくてあるでしょスカッと効くやつが。
う〜んなかなかそんなに効くのなんてねえ。
いやね昨日も居眠りしちまって支配人にぶん殴られたんですよ。
ここ見て。
これ腫れてるでしょ。
これ痛いのなんのって。
そのねえさんというのは?うちらはジェーンねえさんなんて呼んでるんですけどね。
知らないなあ。
やっぱりちゃんとした紹介がないとまずいですかね。
う〜ん。
まあハハハハ…。
それとこれと?それからやっぱり食事とね規則正しい生活早寝早起き。
ねっ。
(看護師)お大事に。
何ですか?あんたねもう何回も言ったろ?ここ病院なんだよ。
男あさりならね夜の街でやっとくれ!ねえ何してんの?ちょっと聞きてえんだけどさ。
なあに?ベッド。
えっ?ここベッドって何台あんの?嫌だ。
あんた何でそんな事知りたいの?いいじゃねえかよ。
頼むよ教えてくれよ。
そうね〜3台ぐらいかな。
3台?ホントにそれだけかい?そうよ。
じゃあ何だ。
入院やなんかはできねえって訳か。
そうよ。
入院はできないわようち。
その3台の中にさアル中の作家なんか寝てねえか?何?アル中の作家?夜中なんかにさそういう患者に君みたいなの誘われんじゃねえかななんてな。
嫌だ〜。
あんたってホントバカね。
何考えてんの?ないわよそんなの。
だって入院できないんだから。
ホントか?そうよ。
だから私とそういう事したければ違う手を考えてよ。
分かったよ。
私今日は6時にあがるの。
6時ね。
またここでやろうとしてたんか!あ〜汚らわしい!
(殴る音)あっ…。
おめえ何探り入れてやがんだ?この病院は俺が張ってんだよ。
余計な事すんじゃねえ。
ああ?
(殴る音)ああそいつは悪かったね。
6時だってさ。
あ?彼女あがるの6時だってよ。
何言ってんだ?おめえ。
まあ頑張ってよ。
回想ざじず…。
財前ってのもいたな。
すいません。
ちょっとすいません。
ここ財前病院でいいんですよね?
(六郎)病院ならやってないよ。
えっいつから?もうずっと前から。
財前先生は?いないよ。
君はそこで何をやってんだ?見てのとおり門番さ。
ならず者を見つけたらバキュ〜ン。
俺がやっつけるんだ。
回想バキュ〜ン。
あばよ。
ちょっとこっち向いてもらっていいかな。
嫌だよ。
ちょっとでいいんだよ。
嫌だってんだろ!俺は今暇ないんだよ。
大事な仕事してるんだから。
ヘイボーイ。
ここは禁煙だよ。
(財前)こら六郎。
そんな物を振り回しちゃいかん。
財前先生ですか?何のご用です?診察ならしませんよ。
いやちょっと先生に頼みたい事がありましてお話だけでも。
ほら行くよ六郎。
いけないって言ってるだろう。
貸しなさいそんな危ない物は。
(六郎)嫌だね。
嫌だね〜。
まあすごいじゃありませんか。
・いやしかし本当にそこに入院施設があるかどうかはまだ。
いいえきっと財前先生の所ですわ。
私が見た若い男もその男に違いありません。
あなた財前をご存じなんですか?え?・今財前先生と。
ええ。
お医者様ですからつい財前先生と。
・おかしいでしょうか?ああいや。
・ごめんなさい。
そうね変ですわね。
手を上げろ!上げろ!バキュ〜ン!
(財前)六郎もう遅いから家に入りなさい。
(六郎)バキュ〜ン!バン!
(犬の鳴き声)誰だ!
(財前)そりゃ私だって言いたくはないさこういう事は。
しかし嘘じゃない。
特に今回は君は初日からほらこの量だったからね。
追加が必要なんだよ。
追加金ってやつがさ。
(譲治)うるさい!金金言うな!だが上井戸君。
我々は男としてねいや人間として言いたくなくとも言わなきゃならないって時があるじゃないか。
例えば私にとってまさにそれが今だ。
君に追加金を払ってほしい。
(財前)10万円。
いやまず5万でもいい。
ぐわ〜!うわ〜!ハハハハハ…敵だ敵だ!うわ〜!こういうのはどうかな?私が君の家に電話をする。
そして家から金を届けさせるんだ。
ほら君んとこ書生か何か置いてただろう。
(六郎)敵だ〜敵だ〜!おいバカ!六郎!撃つな撃つなよ!
(六郎)待て〜!待つんだ〜!バババババババ…ババババババ…!六郎返せ!返せ六郎!絶対撃つなよ!撃つな…。
バキュ〜ン!撃つな。
よしよしいい子だ。
どこだ?どこだ?よしいい子だ。
手を上げろ。
(銃声)こんばんは。
何だ?迎えに来ましたよ。
(譲治)どこの王子様だ?あ王子様。
俺んちから金を取ってきてくれないか。
あのね私は持ってこれませんよ。
あなたを送り届けるだけですから。
それじゃ自分でお金持ってまた戻ってくればいいから。
ほうなるほど。
そうか。
うわっ。
悪くない。
悪くないね君。
手際がいい。
名前を聞いておこうじゃないか。
増沢です。
増沢。
下の名前は?磐二。
ちょっと待て。
君ひょっとして志津香の事件で捕まった男か?ええ。
よくご記憶で。
原田志津香とは親しかったようですね。
まさか。
冗談言うな。
それは失礼。
ところであなたの奥さん。
何だ?あの財前病院に行かれた事があるんですか?ああ?あるよ。
何度か俺を迎えに来たからな。
回想あなたはこの医者の事ご存じないんですか?ええ何も。
あなたは財前をご存じなんですか?え?それがどうした?いいえ。
着きましたよ。
着いたか。
あなた。
先生を寝室へ連れてってさしあげて。
はい。
いらんもう〜構わん。
ありがとうございました。
本当に何とお礼を申し上げたらよろしいかしら。
つかぬ事をお伺いしますけどねあなた初めからご主人の居場所ご存じだったのでは?何の事ですか?いやそんな気がしたんでね。
失礼。
待って下さい!もう少しだけここにいて下さいませんか?主人の状態が落ち着くまで。
どうか…。
怖いのです。
いけませんそんな事なさっては。
あなたはそんな方ではないはずです。
買いかぶりすぎですよ。
私はこういう男です。
キャ〜!キャ〜!キャ〜!キャ〜!なかった?ええ。
その正虎の言ってた第361国境守備隊の記録には城崎保の名前も正岡虎一の名前も見当たらないんですよ。
やっぱり正虎の作り話だったんですかね。

やがて原田志津香遺作の映画公開が迫る頃増沢磐二事務所に死者からの手紙が届いた。
いや正しくは死者が死の直前に書いた手紙
(保)「台湾の鹿港という街の小さなホテルでこの手紙を書いています。
ボーイがコーヒーを運んできたらチップを多めにやってポストに投函してくれと頼むつもりです。
僕を追ってきた男たちが既にドアの向こうにたどりついているらしい。
どうやら僕にはもうあまり時間がないようだ」。
(保)「あなたに多大な迷惑をかけた事をひと言おわびしたかった」。
(保)「僕の事はどうか忘れて下さい。
ただその前にヴィクターズでギムレットを1杯注文してもらえないだろうか」。
(保)「さようなら。
保」。
これがオーキッド社のライムジュースです。
お味が全然違いますよ。

(ドアの開く音)
(マスター)いらっしゃいませ。
(世志乃)すっぽかされたの?これは何?ギムレット。
私もそうしようかしら。
彼女にも同じ物を。
はい。
ねえ誰があなたをそんなに傷つけたの?疑り深い目をして。
私は正直に名乗ってあげる。
あなたがこれ以上悩まなくて済むように。
高村世志乃よ。
旧姓は原田。
原田世志乃。
女優をやっていた妹がこの前死んだわ。
自分の旦那に殺されてね。
2014/04/28(月) 00:55〜01:55
NHK総合1・神戸
土曜ドラマ ロング・グッドバイ(2)「女が階段を上る時」[解][字][再]

ハードボイルドの金字塔「ロング・グッドバイ」のドラマ化。探偵・増沢磐二(浅野忠信)の前に謎の美女・上井戸亜以子(小雪)が登場、新たな「事件」が始まる。

詳細情報
番組内容
ハードボイルドの金字塔「ロング・グッドバイ」のドラマ化。探偵・増沢磐二(浅野忠信)の前に謎の美女・上井戸亜以子(小雪)が登場、新たな「事件」が始まる。【原作】レイモンド・チャンドラー、【脚本】渡辺あや(カーネーション)、【音楽】大良良英(あまちゃん)、【出演】浅野忠信、綾野剛、小雪、古田新太、冨永愛、柄本明ら豪華出演者、スタッフで送る最高峰のミステリー。
出演者
【出演】浅野忠信,綾野剛,小雪,古田新太,冨永愛,滝藤賢一,柄本明
原作・脚本
【原作】レイモンド・チャンドラー,【脚本】渡辺あや

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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