NNNドキュメント「ござれやナア〜エ 放射能と田植え踊り」 2014.04.28

♪〜
およそ300年前から続く田植え踊り
♪〜
少女のふるさとは津波にのみ込まれた
時とともに姿を変えて行くふるさとへの思い
(横山和佳奈さん)…って今思ったりして。
福島県浜通りに伝わる民俗芸能
原発事故でおよそ6割が存続の危機にある
(佐々木繁子さん)…と思うのは常々考えてるので。
♪〜一度ござれやナア〜エ
「一度は請戸の浜においで」と誘う歌
あの日から3年
いまだふるさとに戻れない人々の揺れる思いを見つめる
震災が起きたのは福島県浪江町請戸小学校の卒業式当日だった
(和佳奈さん)ただいま。
・おかえり!・
(和佳奈さん)あっどうも。
おかえり。
和佳奈さんは郡山市内のアパートで両親と弟と避難生活を送っている
あの日は小学校からそのまま避難した
その後津波が横山家を襲い大好きだった祖父母が流された
実感が湧かないっていうか。
やっぱり…。
…っていうのが頭の片隅にあって。
いまだに信じられないです。
浪江町の請戸地区は福島第一原発から6km
避難指示解除準備区域になっているため日中大人の出入りは自由だが15歳未満の立ち入りは基本的に認められていない
「15歳になったらふるさとをこの目で見たい」
和佳奈さんのささやかな願いだ
事故当時18歳以下だった福島県の子供達が受ける甲状腺の検査
(医師)13mm…13.2mm正常だね。
かわいそうだなと思いますよねう〜ん…。
何か不安をあおるみたいでね。
何でだろうね何もしてないのにね。
いつになったら請戸に戻れるのか
両親は50km離れた郡山に家を建てることにした
そういう一軒家になると何かホントに郡山の人になっちゃうんだなっていうのがすごい自分でも実感するしアパ−トだったらあくまで仮住まいっていうので自分の中では言えるから。
ちょっと一軒家ってなると結構「あ〜…」てなっちゃいます。
浪江町に暮らしホテルで働いていた
福島から来た住民と共に東京で避難生活を送っている
慣れない大都会での一人暮らし
不安に押しつぶされそうな時心に浮かんだ
「田植え踊りの子供達は今どうしているのだろう?」
「少しでも子供達のそばに行きたい」
避難して1年半
繁子さんは踊り子達が避難している場所に近い郡山に移り住んだ
・お客様が・
(繁子さん)アッハハハ!おはよう郡山来ちゃいました。
・待ってましたよ・
(繁子さん)早くお上がり寒くてびっくりだべした。
田植え踊りは春の声が聞かれる頃に行われる祭り安波祭で奉納される
地域の神様に豊作を祈るのだ
震災の19日前最後の安波祭
以来一度も行われていない
繁子さんは参加した13人に連絡を取った
そのうちの1人が和佳奈さん
10歳の時から踊りを続けて来た
♪〜
引っ越して程なく練習が始まった
この日参加できたのは2人だけ
全国に散らばった踊り子達はなかなか集まることができない
♪〜バ〜ンはいのバ〜ン…。
近くになれてありがとう乾杯!
(和佳奈さん)乾杯!
(繁子さん)乾杯!ハハハハ…。
繁子さんは2人に胸の内を語った
やっぱりこうできる限りは続けて行ってほしいな。
せっかく立ち上がったんだから何にもないところからな。
だからつないでつないでつないで行けばいいじゃん。
難しいことはないと思う。
「後を継いでくれる誰かを」
窓の外に請戸とは違うネオンサインの夜が広がっていた
いただきます。
郡山に来てから家にこもりがちになった
一人きりの時間をどう過ごせばいいのか
そんな繁子さんが見つけた日課がある
(繁子さん)これは請戸の地図っていうか。
自分の家を…ここからだんだんだんだん思い出して一軒一軒こう描いてったものなんですけど。
忘れないうちにちょっと描いてみようかなと思って。
模造紙を貼り合わせて作ったふるさとの地図
一人一人思い出しながら描き込んだ家は300軒になった
毎年田植え踊りを奉納した神社も描き込んだ
そのほとんどが津波に流されてしまった
まぁいろんなこと考えちゃう。
この先どうしたらいいのかなっていうそんなのばっかりいつも考えてておかしくなる時あるんですけど。
ここには波の音も井戸端会議のにぎやかさもない
繁子さんの長男…
東京の会社に勤めていて出張などで福島に来た時には必ず立ち寄ってくれる
(佐々木博之さん)ホントにあの宿題終わってねえだ…。
ハハハハ…。
(博之さん)ハハハハ…。
ほら絶対笑うよ。
絶対「何だこれ〜!」っていうような感じで。
(繁子さん)よいしょ。
(博之さん)ん〜?
(繁子さん)何かどっか違う?大したもんだけど何か今いち道が違うような気がすんなハハハ…。
だって40年いたんだかんねここに43年ぐらい…。
このオレンジは踊り子のお家。
いつもとれたての魚を分けてくれた漁師の家
子供達が走り回った路地
回覧板のついでについつい話し込んだお隣さん
博之さんが通学路を描き込む
地図には請戸の思い出が詰まっている
・1年前とかにも来てますけど変わってないじゃないですか・・何にも変わってないよね・
博之さんは浪江町の復興を考える活動にも参加している
放射線量の測定もその一つだ
(測定音)・1cm0.53・
立ち入りをする住民のために一つ一つ線量を書き込んで行く
時が止まったままの町
(博之さん)請戸で育った子達ってもうここに住めないと思うんですねしばらくね。
ホントはねキレイにして元通りの町にして残せるといいんですけど…。
戻らないんでうん。
子供達が「私ここで育ったんだよ」…って今度自分達の子供とか孫とかに言えるような状況にしてあげないといけないなと。
ふるさとは生き返るのか
避難から3年
和佳奈さんは郡山に建てた家で誕生日を迎えた
やめてうち嫌いなんだって。
はい消えた!ハハハ…。
15歳国が定める条件を満たしふるさと請戸に入れるようになった
見たくないかな…。
(恵美子さん)変わったじゃんどうしたの?だって怖いじゃんハハハ…。
(恵美子さん)うん。
以前は「今の請戸を見てみたい」…と話していた和佳奈さんだが
やっとこっちに慣れて来てるのにそこでこうまた請戸が恋しくなったら生活しづらいっていうかすごい寂しくなっちゃうと思うので。
長引く避難生活
「郡山に住む普通の女の子になりたい」
そう願う一方でいつも心の片隅に引っ掛かっているのは踊りのこと
年が明けて3月
間もなく震災から3年になる
いよいよ明日は田植え踊り本番
熱のこもった練習が夜遅くまで続いた
では取りあえず明日よろしく。
(和佳奈さん)はいアハハ…。
(繁子さん)お茶で乾杯。
はいハハハ…。
(繁子さん)ぬるっ!ハハハ…。
ハハハ!何だ?これ。
突然繁子さんが切り出した
(和佳奈さん)入ってないです。
できれば3月中に入れたら…なんて思ったりもして最近。
学校前に?うんそう入学前に。
入学前に。
3月って卒業とかもあって一つの区切りじゃないですか。
だったらその時に同時に他のことも区切りつけたら楽かなって思ったりして。
う〜んだからそれはそれでいいんだけども。
でも…。
来れる時は参加してほしいな。
あんな小っちゃい子もやってんだから。
頑張ってつないで行ってほしいかなって思うね。
「踊りをつないでほしい」
師匠の言葉が重く心に響く
祭りの朝
いつにない緊張が踊り子達を包んでいた
福島市の仮設住宅
多くの住民がかつて請戸に住んでいた
12人の踊り子達が集まった
遠く東京からも駆け付けてくれた
今日の踊りは特別だ
ここに請戸の神様がやって来て踊りをご覧になる
(祈とう)♪〜♪〜オーシナデオーシナデオーシナデサァ♪〜♪〜♪〜あ〜ヤレワサデ
震災後初めてふるさとの安波祭がよみがえった
♪〜♪〜あ〜コレワイ!♪〜
祭りの頃にはいつも田んぼに水を引いた
♪〜
みんなで山に入ってタラの芽やワラビを摘んだ
♪〜
漁に出た船が戻ると大にぎわい
いつも新鮮なシラスを分けてくれた
♪〜
目の前にふるさとの光景が広がっていた
♪〜♪〜
「一度はおいでよ請戸の浜に」
みんなが声を合わせていた
♪〜
路地裏を走り抜ける子供達の笑い声
地域のみんなで成長を見守った
♪〜
懐かしい請戸がここにあった
♪〜
和佳奈さんは2週間後あの日以来初めて請戸に帰る
「全然現実感がない」
「まるでテレビの中にいるみたい」
そう思った
「家があった場所こんなに小さかったっけ…」
「じいちゃんばあちゃんただいま」
「家の跡は防潮堤とかになるらしい」
「記憶の中のふるさとはどこにもなかった」
「いつも海を見たお気に入りの場所」
「幼い頃はだしで走り回った浜辺」
「ただ海だけがそこにあった」
「ふるさとをのみ込んだ海なのになぜだろうほっとした」
繁子さんが地図に記した場所
かつて毎年田植え踊りを踊った神社には風だけが吹き付けていた
「いつか和佳奈ちゃんに歌い手を任せたい」
繁子さんはそう思っている
(繁子さん)和佳奈ちゃん歌ってくれる?おはやしするから。
♪〜すい〜すい
(2人)♪〜相馬流山ナア〜エ♪〜習いたかごされナア〜エ♪〜一度ござれやナア〜エ♪〜請戸の浜にナア〜エタカトンタカトン。
なぁ。
それは請戸はなぁ…。
「一度はござれ」ってお祭りの時になぁ歌ったけども…。
(繁子さん)今はみんな来れねえとこになって来ちゃってる。
和佳奈さんは郡山で高校生になった
でもふるさと請戸を忘れない
ふるさとの誇りを私達の踊りを守り続けて行く

これからもずっと…
一番頂きたいのはお客様の笑顔です。
存亡の危機に直面した植物園
よみがえると信じて立ち上がった一人の樹木医の戦略と情熱を追いました
2014/04/28(月) 00:50〜01:20
読売テレビ1
NNNドキュメント「ござれやナア〜エ 放射能と田植え踊り」[字]

原発事故から3年…13万人を超える福島県民が故郷を追われたままだ。伝統の田植え踊りの復活を呼びかける師匠と15歳の少女…二人の姿を通し揺れる避難者の今を見つめる

詳細情報
番組内容
横山和佳奈さん(15)。小学校の卒業式だったあの日、祖父母が津波にさらわれた。以来、浪江町請戸地区の自宅へは戻っていない。10歳の時から続けている伝統の田植え踊り。師匠の佐々木繁子さん(63)は全国に散らばった教え子に踊りの復活を呼びかけてきた。「ござれやナア〜エ」とは地域伝承の唄の一節。「一度ござれや 請戸の浜に」と誘う。故郷に戻るのか、捨てるのか…二人の葛藤を通して、揺れる避難者の今を見つめる
出演者
【ナレーター】
小室等
制作
日本テレビ

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

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ステレオ
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