乗客・乗員334人を乗せ、北大西洋カナリア諸島沖を航海していたスペインの旅客船で25日に火災が発生したが、船長・乗員の落ち着いた対処で全員が無事に救助された。大事故に発展する可能性のある状況だったが、船長と乗員、そして管制当局が落ち着いて訓練通りに行動したことが奏功した。特に船長の落ち着いた判断が重要な役割を果たしたと外信は伝えている。
1万2000トン級の定期旅客船「ボルカン・デ・タブリエンテ号」は同日午後6時40分、乗客318人、乗員16人、車両60台を積んでテネリフェ島ロス・クリスティアーノス港を出発し、ラ・パルマ島へ向かった。7時ごろ、車庫の方で火災報知器が鳴った。1台の車のエンジンから火が出たのだ。火は周辺の車に燃え移り、ますます広がった。火災報知器が鳴ったのと同時に車庫近くのスプリンクラーが作動し、防煙・防火シャッターが自動的に降りた。
船長は港までの距離を考えて十分な時間があると判断、引き返すことを決めた。船長は港湾管制センターに報告した上ですぐに乗員たちに乗客を避難させる準備を命令した。乗員たちは「船は引き返すが、大きな事故ではない」と告げて乗客を安心させた後、救命胴衣を身に着けて部屋の外の通路に出て一列に並ぶように指示した。また、重心が一方に偏らないよう、乗客を左舷と右舷に半分ずつ配置し、たった数分で脱出態勢を整えた。
事故の報告を受けたスペイン海上警察当局はヘリコプター2機、救助艇2隻を出動させ、引き返す旅客船を護衛した。また、最悪の事態に備えて1300人を乗せることができる9000トン級の高速フェリーを向かわせ、全員脱出に備えた。港では消防車4台と救急チームが待機していた。船は7時30分、無事に港に戻ってきた。スペイン海上警察当局によると、車4台が全焼し、12人がパニック症状に陥ったが、人命にかかわる被害はなかったという。