なんでも、父が箱買いしたトウモロコシ茶を妹がおすそ分けしたとかで、そのお礼にわざわざ手土産をぶら提げて参上した。
たかがペットボトルのお茶程度で、家に上がりこんであいさつをする、というのはいささか大仰な気がする。おそらくY氏の本当の目的はお礼を言うことではなく、うちの両親に直接会って「娘さんとお付き合いしています」と真正面から告げることにあったんだろう。
兄である僕は29歳の真正童貞なのでその辺りの機微には疎いんだけれど、Y氏は御歳37歳で、妹とは十近く歳が離れているから、交際する上で不安や焦燥感があるんだろう。そうでなければ、交際一年未満で彼女の実家にあいさつに来るとは思えない。
自分が年上の「オジサン」であるという自覚があるからこそ、不安なのだ。いつ妹がほかの若い男になびくか知れたもんじゃないし、家族からも「そんな年配と付き合うな」と釘を刺されるかもしれない。
だから牽制としてわざわざ理由をつけて会いに来た。彼女の親に会って認められれば、家族の心証もよくなるし、彼女の方も気軽に袖にできなくなる。ゲスの勘繰りかもしれないが、アラフォーともなれば、結婚を焦ってもおかしくない。とくに妹は男をとっかえひっかえするタイプの女性なので、なおさら足元を固める方へと気が急くんだろう。
なんてことを考えるうち、だんだんY氏と顔を合わせるのが億劫になってきたので、部屋に引っ込んで顔を合わせることなくわんこを抱いてすごした。正直、家に親戚が遊びに来たときのニートみたいな気分だ。頼むから呼ばないでくれ、と思いながら、布団にくるまってぷるぷる震えてすごした。
増田に書いて流れていくのがもったいない文章。 最後の締め方とかすごく好き。
>>交際一年未満で彼女の実家にあいさつに来るとは思えない。 交際一年未満でも挨拶行かないか? むしろ彼女からそれとなく言われると思う。家に遊びに来ない?的な。 元増田と...